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M2TECH、レコード再生をディープに楽しめるデジタルフォノEQ+ADCや小型DDC

 トップウイングは27日、イタリアM2TECHの新製品発表会を開催。レコードプレーヤーと接続し、384kHz/32bitのPCMデジタルデータとしてPCへUSB出力したり、DACなどにデジタル出力が可能なデジタルフォノイコライザ兼ADC「Joplin MKII」など、5製品を紹介した。「Joplin MKII」の発売日は12月下旬で、価格は22万円。

左の上から2段目が「Joplin MKII」、一番下が電源ユニットの「Van der Graaf」。右は上からhiFace Evo Two、hiFace Evo Clock Two、Evo Supply Two

 なお、12月からM2TECH製品のカスタマーサービスと広報は従来のzionoteからENZO j-Fiへと移管される。輸入販売元はトップウイングから変更は無い。

Joplin MKII

 据え置き型のデジタルフォノイコライザー兼ADコンバータ。型番にMKIIとあるが、初代モデルは日本未導入。

 入力端子として、アナログRCA、同軸デジタルを各1系統装備。出力端子としてUSB 2.0、AES/EBU、同軸デジタル、光デジタルを各1系統備えている。

左の上から2段目が「Joplin MKII」

 レコードプレーヤーを含めたアナログ出力機器と接続、最高384kHz/32bitのPCMデータに変換し、USB経由で出力、PCでデジタル録音する事が可能。同軸、光、AES/EBUのデジタル出力も可能で(USB以外は192kHzまで)、デジタル入力を備えた様々な機器と連携できる。同軸デジタル入力からの音声をUSB経由でPCに伝送する事もできる。

 USB伝送にはアシンクロナス伝送を採用。ADコンバータのICとUSBポートをシームレスに接続するため、FPGAを使用。アナログステージにはPGA(Programmable Gain Amplifier)を搭載し、65dB(0dBで1.43mVrms)の高いゲインを得ることが可能。入力ゲイン調整は0dB~65dBの範囲で選択可能。

一番上が「Joplin MKII」

 大きな特徴として、デジタル領域でのイコライゼーション・カーブを幅広く選択できる。これにより、1925年から現在まで使用されてきたあらゆるフォノ・フォーマットに対応できるとする。LPレコード用にはRIAA、AES、Angel、Audiophile、Capitol、Columbia、Decca/London FFRR、MGM、NABなど、SP用にもColumbia 1925、Columbia 1938、MGM 78rpmといったカーブを用意。例えばLP用のDecca/London FFRRは、SP用とLP用は同じ名称だがカーブは異なり、いつまで採用されていたのか諸説あるという。こうした事を踏まえ、ユーザーがレコードを聴きながら、より好みのカーブを適用して音の変化を楽しむといった使い方も可能。

上から2段目が「Joplin MKII」。赤いディスプレイ表示にあるように、イコライザ・カーブをリモコンで切り替えられる
付属のリモコン
ENZO j-Fiの嶋田亮氏

 さらに、オープンリール・テープ・レコーダ向けのカーブも用意。再生ヘッドから直接出力された信号に対してカーブを適用してデジタル出力する事もできる。プリセットカーブはLP用で16種類、SP用で7種類、オープンテープ用に4種類を用意。

 幅広い対応が可能な入力インピーダンスにより、MM、MCカートリッジどちらも利用可能。MCカートリッジも昇圧トランスを間に入れずにダイレクトに接続可能。VUメーターで視覚的に調整する事もできる。

 「PCと接続しても利用できる製品だが、スタンドアロンでリモコンを用いてこうしたカーブを切り替えられるのが大きな利点。また、こうしたカーブの変化をアナログで実現すると数百万円もするような機器になってしまうが、デジタルで行なう事で22万円という価格を実現できた」(ENZO j-Fiの嶋田亮氏)という。

hiFace Evo Two

 「Evo Two」はコンパクトなDDC。入力端子はUSB、同軸デジタルを各1系統装備。出力は同軸デジタル、AES/EBU、I2S(HDMI)、光デジタルを各1系統装備。外部クロック入力も備えている。発売時期は12月下旬、価格は75,000円。

上からhiFace Evo Two、hiFace Evo Clock Two、Evo Supply Two

 PCからUSB出力したデータを変換し、DACなどに伝送する。PCMデータはI2S端子を使う場合のみ384kHzまでをサポート、その他の出力端子は192kHzまでのサポートとなる。I2SのHDMI端子は、PS AudioとFIDELIXの機器と接続できるもので、この端子を利用した場合はDSD 11.2MHzまでのデータも伝送できる。「DDコンバータでDSDに対応しているモデルは珍しい」という。

 同軸デジタル入力からの信号は、USB経由でPCに伝送する事もでき、DAWソフトなどを使って録音する事も可能。

 外部クロック入力も備えており、ワードクロックとマスタークロックを受け取れる。後述する「Evo Clock Two」とセットで利用する場合は、自動的にクロックのスイッチングも可能。

 WindowsのASIO、Mac OS XのInteger Modeをサポート。リモコンも付属する。

hiFace Evo Clock Two

 「Evo Clock Two」はワードクロック、マスタークロックジェネレーターで、前述のEvo Twoとマッチするように作られているが、他の機器とも組み合わせが可能。発売時期は2016年1月~3月期で、価格は75,000円を予定している。

 TCXO(温度補償水晶発振器)を内蔵し、10MHzクロックに対応。DSD伝送に適合したスペシャル・クロック・コンフィギュレーションも利用できるという。Evo Twoと専用光リンクで接続している場合は、周波数選択が自動で行なえる。

上からhiFace Evo Two、hiFace Evo Clock Two、Evo Supply Two

電源ユニットも用意

 「Van der Graaf」は、M2TECHの全ての製品に電力を供給できるユニット。「Evo Supply Two」は、EVO Twoシリーズ専用の9V電源ユニット。どちらも発売時期は2016年1月~3月期で、価格は「Van der Graaf」が120,000円、「Evo Supply Two」が60,000円。

一番下が「Van der Graaf」

 「Van Der Graaf」は、定格負荷において出力ノイズが低く、リチウムイオン電池のノイズに匹敵するという。これにより、「細部の解像度の向上」などが図れるとする。出力電圧の選択機能や、ユニバーサル・ボルテージ入力にも対応している。

 「Evo Supply Two」の設計は、Van Der Graafをベースとしており、残留ノイズを低減。低ノイズのディスクリート・コンポーネント・レギュレータから3つの機器への電流供給が可能。各出力には過電流からの保護機能も搭載する。

発表会は東京・神保町の喫茶「ジャズ オリンパス!」で行なわれた。店名の通り、JBLの名スピーカー「OLYMPUS」が設置され、音楽とともにコーヒーやカレーなどの食事が楽しめる

(山崎健太郎)