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LG、HDR対応の4K有機ELテレビ。Dolby Vision/Netflix認証、“有機EL普及の年”に
(2016/4/13 13:49)
LGエレクトロニクス・ジャパンは、有機ELテレビ「LG OLED TV」3シリーズ5モデルを発表した。5月下旬より順次発売。55型と65型を用意し、価格はオープンプライス。店頭予想価格は、最上位「OLED E6P」シリーズの65型が90万円前後、55型が70万円前後。曲面型の「C6P」シリーズ55型は47万円前後。スタンダードな「B6P」シリーズは今夏に発売予定で、価格や仕様は「改めて発表する」という。
4月1日に発表した、Dolby Vision対応4K液晶テレビ「UH8500シリーズ」などと合わせて、'16年のテレビ新製品として展開する。
Dolby Vision対応、Netflix認証も
E6P/C6Pに共通する仕様として、解像度3,840×2,160ドット、自発光の有機ELデバイスを搭載している。ハイダイナミックレンジ映像の「HDR」に対応し、ハリウッド・スタジオなどで支持されるHDR技術「ドルビービジョン(Dolby Vision)」にも対応。HDRを推進するUHD Allianceの「Ultra HD Premium」ロゴも取得している。
画質面では、「HDRを活かしきる」という有機ELの特徴を訴求。HDR対応液晶テレビが表示できるダイナミックレンジは約14 Stopsとする一方、有機ELテレビでは、20 Stopsまで対応するという点をアピール。自発光素子によって純度の高い黒などを実現し、「HDR規格の持つ膨大な明暗情報をあまさず受け取り、たとえば真昼の太陽から夜の星まで豊かに表現することができる」としている。
パネルは10bit。広色域規格のBT.2020をサポートする。色深度などを繊細に調整するという「3D Color Mapping」技術も搭載する。視野角は178度。
最上位で平面デザインの「E6P」は、前面の3mmのガラス製バックカバーの上に、2.57mmの極薄パネルを一体化。左右と上下のフレーム幅はいずれも1mm(ガラス部分を除いたオフベゼルの幅)。「4面がぎりぎりまで画面となり、まるで映像だけが浮かんでいるような感覚」としている。本体の最薄部は約7mm。
一方、曲面モデルの「C6P」は最薄部が奥行き5mmで、「有機ELだからこそ実現したスリムデザイン」としている。
スピーカーはharman/kardon製。広帯域に渡って音圧の乱れを抑え、フラットで整ったサウンドを追求。上位機のE6Pシリーズは、フロントにメインスピーカー4基と、ウーファ2基を搭載する2.2ch/総合40W(10W×4)のサウンドシステムを採用。さらに、有機ELに最適化したサラウンドアルゴリズムにより、高域の音の粒立ちをクリアにしたという。スタンド部は、音質にも貢献するという「Sound Bar Stand」を採用している。
付属の有機ELテレビ専用マジックリモコンを使い、空間の音響環境を測定可能。設置された空間に合った音質に自動補正するマジックサウンド機能を搭載する。
スタンダードダイナミックレンジ(SDR)の映像を、HDR画質へ近づけるという「HDR Effect」機能も搭載。独自の画質アルゴリズムにより、明るい領域と暗い領域で、それぞれ最適に色補正を行なう。
映像エンジン「OLED Mastering Engine」を搭載。パッシブ方式のメガネを使った3D「4K CINEMA 3D」や、2D-3D変換機能などを搭載し、2つの3Dメガネが付属。別売専用メガネ「AG-F310DP」を使って、2人のプレーヤーが別々の画面でゲームを楽しめる「デュアルプレイ」にも対応する。
チューナは、地上/BS/110度CSデジタル×2で、別売USB HDDへの録画に対応。映像配信サービスのNetflixに対応し、E6PとC6PはNetflixをスムーズに視聴できるという「Netflix Recommended TV」に認証されている。Netflixが'16年の認定モデルとしている製品は、国内ではLGとソニーの一部製品のみとなっている。
OSはweb OS 3.0で、マジックリモコンを使ってポイント&クリックによる画面を指示しての操作や、注目したいポイントを最大500%まで拡大できる「マジックズーム」、テレビを音楽再生専用に使う「ミュージックプレイヤー」、登録チャンネルをすぐに呼び出せる「お気に入りチャンネル」、2画面表示の「マルチビュー」などの機能を利用できる。Webブラウザを備え、Hybridcastにも対応する。
EthernetとWi-Fiを搭載し、対応スマートフォンなどとのWi-Fi Direct接続も可能。HDMIは4系統(C6Pは3系統)。コンポーネント映像入力、コンポジット映像入力、アナログ音声入力、光デジタル音声出力、ヘッドフォン出力などを装備する。USBは3系統。
消費電力と年間消費電力量は、「65E6P」が430Wで217kWh/年、「55E6P」が330Wで191kWh/年、「55C6P」が350Wで192kWh/年。待機時はいずれも0.5W。スタンドを含む外形寸法と重量は、「65E6P」が146.1×20×89.3cm(幅×奥行き×高さ)、24.8kg、「55E6P」が123.7×17.5×76.7cm(同)、18.5kg、「55C6P」が122.5×19.1×76.2cm(同)、16.5kg。
グローバルでハイエンドテレビ市場の1/4獲得へ。出光やドルビー、Netflixも連携
LGエレクトロニクス・ジャパンの李 仁奎社長は、今年の新モデルについて、3つの大きな進化として「デザイン、機能、映像美」を挙げた。デザインについては、「映像が一枚のガラスに張り付いたような薄さとデザイン。液晶テレビでは難しかった進化」とした。機能については、「Web OS 3.0で使いやすくなったスマート機能の進化」を挙げた。そして、最も大きなポイントとしたのが映像美で、HDRが映像業界のトレンドとなっていることに触れ、深い黒から明るい部分まで、元の情報を失わずに再現できるといった理由から「HDRに最適なのは有機ELテレビ」と強調した。
なお、今夏発売で、詳細が明らかにされていないスタンダードモデルの「B6P」シリーズ「65B6P(65型)」と「55B6P(55型)」については、デザイン性の高さを継承しつつ、コストを抑えることで、「液晶テレビより1.2倍くらいの価格にすることで、有機ELテレビの普及を考えている(李氏)」とした。
ゲストとして、出光興産の松本佳久副社長も来場。同社は高機能材料事業の一環として有機ELの発光材料をLGに提供している。両社の提携は'09年からスタートし、'12年には出光が工場を韓国に建設し、両社で技術評価を行なっている。松本氏は、0.97mmという薄い有機EL層の中に様々な素材や高度な技術が詰め込まれていることを紹介し、「有機ELテレビには日本の最先端の技術が採用され、LGと共同で開発されたもの。早い動きでも目が疲れず、今後の東京オリンピックを見るのにももってこい」とアピールした。
Netflix アジア日本法人社長のグレッグ・ピーターズ氏も来場。「かつてコンシューマは新しいビデオフォーマットが登場してからそのメリットを感じるまでに、新しい撮影技術、プロダクション、ディスプレイ技術など全てがアップデートするまで何十年も待たなければならなかった。今やユーザーは新しいビデオを体験するまでに数年に一度、場合によっては毎年感じられるようになった」とインターネット映像配信の広がりによるメリットを強調。新たなフォーマットとして注力するHDRコンテンツを拡充し、LGやドルビーらとも連携していく姿勢を示した。HDRコンテンツとしては、アニメ「シドニアの騎士」をNetflix初のアニメHDR作品として配信予定。NetflixのHDRへの取り組みや、Netflix推奨テレビの認定などについては、別記事で掲載している。
また、ドルビービジョンに対応したことに合わせて、ドルビージャパンの大沢幸弘社長も来場。「太陽の輝き、漆黒の暗闇が、自然に近い形で表現できる時代が近づいてきた。従来、日本のテレビ市場は、解像度の向上に特化した面があった。本当に画像を良くしようとすると、解像度だけでは無く、輝度の幅の広さ、HDRの範囲の拡張がどうしても必要。ドルビービジョンは極めて優れた最先端HDR技術。輝度/コントラスト/色合い/画像のディテールの4点に置いてほかのHDRより優れている。LGの有機ELテレビはHDRの映像美を表現するのに最適なデバイス」と対応を歓迎した。
LGは有機ELについて、今年が“転換期”であり“普及の年”と表現。従来よりも歩留まりの向上などで量産に向けた体制が整いつつあることをアピールした。有機ELテレビの出荷は、グローバルで100万台を目標としており、「2,500ドル以上のハイエンド市場は約400万台。その1/4を占める」との見方を示した。
報道陣からの「シャープと鴻海の提携についてどう感じるか?」という質問に対しては、シャープはスマホなどの小型ディスプレイが中心と見られることから直接のライバルでは無いとの見方を示しつつも、「有機ELを知らない人もまだまだ多く、LGだけでやっていくのは良くない。中国のパネルメーカーや、シャープなど、OLEDという新しいディスプレイの名前を広く伝えるために、一緒に参加してくれればうれしい」と歓迎し、ディスプレイ製造子会社のLG Displayについても、「来年は他のメーカーへパネルを供給できるように広げていきたい」とした。