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これは“異世界”に行くしかない! 映画「きさらぎ駅 Re:」を観て聖地巡礼してきた

「きさらぎ駅」と「きさらぎ駅 Re:」の両方で登場した八木沢駅に行ってみた。購入したパンフレットと一緒に記念撮影

都市伝説発のホラー映画「きさらぎ駅」を、動画配信サイトで何気なく観たのがすべての始まりだった。不可解で、それでいてどこか懐かしさも感じさせる“異世界”の描写にすっかり引き込まれ、筆者は作品の虜になった。あまりのインパクトに、以前AV Watchでもレビューしているのでご覧いただきたい。

そしてついに、待ちに待った続編「きさらぎ駅 Re:」が2025年6月に公開された。迷うことなく劇場へ足を運び、初日に鑑賞。スクリーンの向こうで再び動き出した“きさらぎ駅”の世界を目の当たりにし、興奮と余韻が冷めず、「これはもう、“あの駅”を訪ねるしかない」と思い立ち、筆者はロケ地を巡る聖地巡礼の旅へ出発した。映画レビューとあわせて、ロケ地を巡った聖地巡礼の様子もレポートしていく。

編集部注:以下、作品の内容に触れる部分があります。未視聴の方はお気をつけください

続編「きさらぎ駅 Re:」は意外な結末へ

2022年8月に公開され、話題となった映画「きさらぎ駅」(監督 永江二朗)の続編が2025年6月に「きさらぎ駅 Re:」として公開された。「きさらぎ駅」は、インターネット上で広く知られる都市伝説を原案にしたホラー映画。2004年、匿名掲示板のオカルト板スレッドに投稿された「はすみ」という女性の書き込みをきっかけに拡散し、たびたび話題になり、2022年に映画化された。現在は各動画配信サービスで視聴できる。

「知らない駅に降り立ってしまった」という不条理な体験談で、筆者は映画化されたアレンジされた世界観である映画「きさらぎ駅」にどっぷりハマった一人だ。もちろん、初日に続編「きさらぎ駅 Re:」を観に行った。

「きさらぎ駅 Re:」の予告動画でワクワクが止まらず。待ちに待った映画だ。主題歌「ガタゴト」も映画の世界観にぴったり

今回は、異世界「きさらぎ駅」から奇跡的に帰還できた宮崎明日香(本田望結)が主人公だ。現実世界に戻ってくると20年が経過しており、当時高校の同級生だった友人は30代に。宮崎明日香の外見は当時と変わっていないので、世間からは好奇の目にさらされてしまう。

正義感が強い彼女は、前作「きさらぎ駅」で自分を助けたせいでとらわれた堤春菜(恒松祐里)を救おうと奔走するが、信じてもらえず、さらにネットでもオカルト女扱いで叩かれ、傷付いていく。

孤独な毎日を過ごす中、出会ったのがドキュメンタリーディレクターの角中瞳(奥菜恵)。この出会いがきっかけで、宮崎明日香はふたたび「きさらぎ駅」へ向かう、というストーリー。

フライヤーと購入したパンフレットと。フライヤーは公開日前に映画館でもらってきた
パンフレットにはきさらぎ駅行きのレプリカ切符が!(これもうれしい)

きさらぎ駅に到着してからの展開は、きさらぎ駅を知り尽くしている宮崎明日香と堤春菜を中心とした、きさらぎ駅ランカーによる最短ゲーム攻略といった展開。

前回とはメンバーもルートも若干変わっているのだが、きらさぎ駅の異世界に慣れている女性陣が、とんでもなくたくましい。迷わず大きな石を振り上げて走りながら敵の頭を狙っていく描写なども、怖いというよりも爽快だ。日本のホラー映画の場合、女性は脅えていることが多いが、最初から「絶対に生きる」という生命力のようなものを感じて、同じ女性として好感が持てた。

こういったパワフルな女性が出てくるタイムループものといえば、2017年に公開された明るいホラー映画「ハッピー・デス・デイ」が思い起こされる。

その映画では主人公が何者かに殺され、その犯人を殺すまでタイムループするという映画だが、自分を殺した犯人を見つけるための執念と、華奢な女性がナイフや斧を振り回して戦っていく強さに感動し、スカッとしたものだ。この映画を観ているときも心の中で同じように応援するような感情になった。

「きさらぎ駅Re:」は、いかに最短でゴールを目指して元の世界に戻るか、という攻略要素が強いので、見慣れたシーンも多く、前作以上にホラー映画らしいジェンプスケア(ビックリ演出)や怖い要素もほぼない。

異世界は、一般的なゲームと同じように、回を重ねると脱出ルートが変わり、攻略の難易度が上がるらしい。このことに主人公が気付き、残っている人達で知恵を絞り、助け合うようになる。ただ、映画やドラマでありがちな友情物語になるのではなく、「自分だけ助かりたい」という人間の正直さもコミカルに描かれており、そのドタバタに何回も笑ってしまった。

ラストシーンで、ドキュメンタリーディレクターである角中瞳という存在と、撮影された映像が生きてくる。伏線を回収され、「もしや次回もあるのか?」という含みを持たせて映画は終わった。

上映時間は82分と短く、結末には賛否両論がありそうだが、個人的には、納得できるラストだった。掲示板の都市伝説から、ここまで話を膨らませて2本のホラー映画に仕上げ、一部熱狂的なファン(筆者も含まれる)もいるということは、成功と言えるのではないか。

映画を観た後も「きさらぎ駅」の余韻が続き、どうしても異世界に行きたくなってしまい、聖地巡礼の旅に出た。

ロケ地に1泊2日で聖地巡礼したら最高すぎた

映画「きさらぎ駅」に登場する、不気味でどこか惹かれてしまう“あの駅”。設定上では静岡県の遠州鉄道・さぎの宮駅である。

ただし、実際に撮影が行われたロケ地は別の場所で、“きさらぎ駅”として登場するのは、長野県上田市にある上田電鉄別所線・八木沢駅である。あの象徴的なグリーンの駅舎をスクリーンで目にしたときから、どうしても実際に行きたかった駅だ。

上田駅までは新幹線移動であり、日常の世界だったが、上田電鉄別所線に乗り換えてから雰囲気がガラリと変わった。この電車も映画に登場する車両とそっくりで、黄色と茶色の長椅子が交互に並ぶ車内、丸い窓のデザインなど、まるで映画の中の異世界に迷い込んだような気分になる。乗客はまばらだったが、どこか同じ世界の住人のような気さえしてくる。

上田電鉄別所線の車両。映画のまんま!
車内は、異世界に入って、ループする際に最初に戻る場所でもある

そして八木沢駅に到着。降り立った瞬間、映画で見たきさらぎ駅が目の前に広がっていた。特徴的な明るいグリーンの小さな駅舎。誰もいない、静かな周囲の空気も相まって、あの象徴的なシーンの数々が次々と頭の中によみがえる。思わず「本当に来てしまった」と声が漏れそうになるほど、感動してしまった。少し外に出てみたが、まさに撮影されていた場所で、映画とそのままの景色が広がっていた。

この駅に降りたときの感動は忘れない
この画角も映画ではおなじみ
この場所でも色々なことがあった
酔っておじさんが寝ていたベンチ
駅のすぐそばにあるところも、あのシーンで使われた場所。そのまま……!

駅舎には「きさらぎ駅 Re:」のポスターが貼られており、設置された聖地巡礼ノートには、先客たちの熱い書き込みが残されていた。どうやらここを訪れる“きさらぎ駅ガチ勢”は自分だけではないらしい。筆者もこの特別な時間を過ごせた感謝の気持ちを、ノートに記しておいた。

映画告知のポスターが貼られている
聖地巡礼ノートにはファンの書き込みが多数

上田駅に戻り、レンタカーを借りて向かったのは、塩野神社だ。ここは「きさらぎ駅」で登場した場所で、あの扉が出現した場所でもある。手前のアーチ型の太鼓橋、拝殿は映画で見たままで、ここでも異世界に入り込んだ感覚になった。あの太鼓の音が聞こえてきそうだ。

門からアーチ型の橋まで、映画内でも映っていた場所
市が指定している有形文化財であり、二階建ての拝殿が見事で、厳かだ
扉が出現したのは、このあたり

次は旧宣教師館だ。ここは開拓期アメリカの木造建築を見ることができる、明治期の本格的西洋館として貴重な建物だという。土曜日、日曜日、月曜日、休日であれば観覧料を払えば中を見られるそうで、見学させていただいた。

映画「きさらぎ駅」の重要なシーンで使われた場所で、中の様子も映画のまま。「ここにこん棒が置かれていたなあ」などと思い出しながら、ゆっくりと見て回る。映画のさまざまなシーンを思い出した。

旧宣教師館
玄関も映画内で映っていた場所
脱出する際の扉。この角にこん棒を置いていた

軽井沢に移動して、好きなシーンのロケ地へ

2日目は軽井沢駅へ移動し、レンタカーを借りて旧熊ノ平駅へと向かった。ここも映画「きさらぎ駅」の(個人的に)重要な聖地のひとつである。印象に残っているのが、「親切そうな男」が車で登場するあのシーンだ。その撮影に使われたのが、この旧熊ノ平駅である。

現在は使われなくなったレールが残され、トンネルを歩くことができ、かつての変電所も見ることができる。全体的に廃線跡らしい空気を色濃く漂わせており、異世界の入口と言われても不思議ではないような静けさがあった。

「ここだ!」と思わず言ってしまった場所。予告にも登場しているので見返してほしい
遊歩道を歩ける。トンネルが多い。誰もいない日だったので、ちょっと怖い

筆者が訪れた日はあいにくの土砂降りで、観光客の姿は一人もいなかった。静かな場所に、映画で観たままの風景が広がっていて、少々怖くなってしまった。

ここは、信越本線アプト式鉄道時代の廃線敷を利用して、横川駅~熊ノ平駅の間の約6キロメートルを遊歩道として整備されている。ほかにも、めがね橋を代表する鉄道煉瓦構造物群などの碓氷峠鉄道遺産にふれることができるので、天気のよい日であればハイキングをしても楽しそうだ。

アプトの道を旧熊ノ平駅から1.2km歩くと到着するめがね橋。ここは昨年テレビ朝日で放映されたドラマ「Believe」の聖地。木村拓哉と天海祐希がここにいたことを思い出した。ドラマを見ていたのでこちらの聖地巡礼もできてうれしい

映画と現実が交差する、“きさらぎ駅”という体験

映画を観終わった後も続く“きさらぎ駅”の余韻は、ロケ地巡礼というかたちで現実の旅へとつながった。上田市・八木沢駅の静寂と、旧熊ノ平駅に残された廃線の空気は、まさに映画の中の世界そのものであり、観るだけでは得られないリアリティを筆者に与えてくれた。

都市伝説がネットを通じて拡散され、映画という物語に姿を変え、さらに現実の風景と交わる——“きさらぎ駅”は、まさにフィクションとリアルの境界線を曖昧にする存在だと感じた。映画を観た人も、まだ観ていない人も、機会があればぜひ“きさらぎ駅”に足を運んでみてほしい。

上田駅で配布されていた浜松ロケ地マップ。浜松も行きたくなる……
石井 和美

家電プロレビュアー。白物家電や日用品のお役立ちグッズなどを中心に製品レビューを得意とする。テストスペースとして守谷市に一戸建てタイプの「家電ラボ」開設し、冷蔵庫や洗濯機など、大型家電のレビューも行なっている。レビュー歴10年以上。

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