ミニレビュー
日本のバスケが面白くなる!? B.LEAGUEを「スポナビライブ」で丸ごと楽しむ
2016年10月31日 00:00
バスケットボールファンにとって、大きな期待とともに9月22日から始まった新たなプロリーグ「B.LEAGUE(ビー・リーグ)」。その全試合を、スマートフォン/タブレット向けのライブ配信で観られるサービス「スポナビライブ」に加入して楽しんでいる。
バスケットボールは、世界的には競技人口がサッカーを上回り世界一(FIBA/FIFA/スポーツ・マーケティング・サーベイ調査)とも言われる。マンガの「SLUM DUNK」は、連載終了から約20年経っても、世代を超えて人気だ。しかし、プロ野球やJリーグの試合をテレビや生で観たことはあっても、プロバスケットボールを1試合まるごと観たことがある人は、日本ではそう多くないと思う。
そんな状況が変わるかもしれないという期待を背負って、新しく始まったのが「B.LEAGUE」。開幕が近づくにつれてスポーツニュースなどでも扱われる機会が増え、開幕戦は地上波のテレビでも生放送。田臥勇太など、有名選手がテレビ番組に出る機会も急に増えた。以前からBSなどでバスケットボールに力が入っているフジテレビやNHKを中心に、ここ1~2カ月のメディア露出の増加は、ファンでない人でもなんとなく感じているだろう。
B.LEAGUEの試合をライブなどでスマホ/タブレット向けに配信しているのが、ソフトバンクのサービス「スポナビライブ」。バスケット以外にも、日本のプロ野球や米国MLB(メジャーリーグ)、サッカーのプレミアリーグやリーガ・エスパニョーラ、なでしこリーグ、ヨットのアメリカズカップ、大相撲の計8競技を配信している。
料金は、ソフトバンク携帯電話の契約者が月額500円、他社ユーザー向けは月額3,000円。ソフトバンクユーザーにとっては、お試しでも加入できそうな料金だが、他社スマホユーザーは、他のスポーツ動画配信サービスなどに比べると、割高に感じるかもしれない。B.LEAGUE以外のスポーツも見たいかどうかが、判断が分かれるポイントになりそうだ。なお、'17年3月までは、通常の半額となる1,500円になるキャンペーンも実施している。
「全試合配信」が魅力。操作性向上に期待
筆者は、世界最高峰である米国NBAはよく見ているが、国内の試合は観ることが少なく、高校生や大学生の大会などは時々観る程度。学生の頃は、当時“実業団”と呼ばれる企業チームの試合を生で観る機会もあって、「あんな風に上手になりたい」と思っていたものだが、大人になってからはあまり観なくなっていた。
しかし、川淵三郎氏の強いリーダーシップのもとで、新リーグ設立が決まったとのニュースを知って期待が高まり、ソフトバンク契約者ではないが、NBAがまだ開幕する前のタイミングだったこともあって、スポナビライブへ加入してみた。
視聴までの手順は簡単で、スマートフォンからスポナビライブのサイト上で登録し、新規でメールアドレスなどを入力して契約。なお、Yahoo! JAPANのIDから登録することも可能だ。視聴できる機種は、iOS 8.0以降と、Android 4.4以降(Google Play非対応機種など一部を除く)のスマートフォンやタブレット。登録したら、アプリをダウンロードしてログインすれば観られるようになる。
ログインすると、まず好きなチームを選択。これを決めておくと、そのチームの試合が始まる前などにプッシュで通知して、ライブ配信の見逃しを防げる。また、トップページにも、お気に入りのチームの動画が表示され、アプリ起動からすぐに観られる。お気に入りチームは、最大3つまで登録可能。
画面上に表示されている[プレミア]や[プロ野球]、[Bリーグ1部]などの項目から観たいスポーツを選んで、画面下にあるタブから、生配信の[ライブ]、ハイライト映像などの[ビデオ]のどちらかを選択し、一覧に並んだ動画から視聴するのが基本的な使い方。
9月22日に行なわれた注目の開幕戦は特別番組が編成され、スポナビライブの他にLINE LIVEでも同番組が配信。スポナビライブの登録者以外でも観られるようになっていた。元プロ選手でありWOWOWのNBA解説などでも知られる佐々木クリス氏と、かつてNHK BSのNBAの解説も務めていた島本和彦氏によるトークと、現地からの選手の状況などが配信。LINE LIVEを開くと、視聴者からのコメントが次々と流れ、開幕の盛り上がりを多くの人と共有する気分が味わえた。
アーティストのPKCZ(EXILEのHIRO、MAKIDAI、m-floのVERBAL、DJ DARUMA)によるステージ演出で盛り上がった後、いよいよ試合もスタート。今回はスポナビライブの配信に合わせて、テレビ放送(BS1とフジテレビ)も同時に視聴してみたが、もう一度観たいシーンを、何度でも観返したり、一時停止ができるのが、配信の良さ。左上にある「ライブへ戻る」のボタンを押すと、現在のライブ配信の映像になる。
画質は、[高画質]、[標準]、[低画質]の3段階から選択。iPhone 6sや第4世代iPadなどで視聴すると、[高画質]では、動きの激しいシーンでも選手の背番号まではっきり見えた。外出先など通信状況によっては[低画質]を選ぶ状況もあるかもしれないが、ワンセグよりも見づらく感じるほどで、選手の顔のパーツもはっきりわからない。シュートが入ったかどうかぐらいは判別できたが、選手の細かな動きはわかりづらく、残り時間表示が見にくいときもあったので実用性は低い。無線LANが使える状況なら、選手の細かな動きも見逃さないように[高画質]で観るのが理想的。[標準]でも、ノイズは多いが背番号は判別できるレベルなので、大きな支障はないだろう。
終了後の試合は、[見逃し]の中から選んで視聴できる。また、全部の試合をフルで観る時間がなくても、3~4分のハイライトで1日の試合を一通りチェックできる[ビデオ]があるのは便利。また、ヒーローインタビューの部分だけを編集したビデオも用意され、好きな選手がいるファンは、逃さずチェックできる。活躍した試合だけを後でゆっくり楽しむのもいいだろう。試合の解説者の中に、NHK BSのNBA中継で見せる豊富な知識が面白い元日本代表・北原憲彦さんが加わっているのが、個人的には大きな魅力だと思う。
試合の映像そのものに大きな不満はなかったが、できれば再生画面の操作において、もう少し細かなスキップ/スキップバックができるようになってほしい。これは以前レビューした「NBA LEAGUE PASS」でも感じたことだが、1回の攻撃の流れや、1本のシュート、パスだけをリプレイしたい場合に、30秒単位でしか前後できないのは長い。攻守交代が激しく、1~2秒で大きく試合が動くことも多いので、例えば10/15秒送りなど、もっと細かな調整が効くようになると便利そうだ。
なお、同じスポナビライブのプロ野球公式戦の配信では「タイムライン再生」というサービスが始まっている。これは、ライブの速報から、例えば「中田 1アウト 1,2塁の3-2からセンターへのタイムリーヒット 日1-2ソ 1,2塁」といった観たいシーンのテキストを選んでタッチすると、その部分を動画で観られる機能。ハイライト動画には含まれなかったシーンでも、好きな選手のプレーがピンポイントで多く観られて便利だ。プロ野球以外の競技でも今後追加されるとのことなので、いち早く対応することを期待したい。
また、開幕戦がLINE LIVEでも同時配信されていた時は、次々に流れるコメントを見ると、会場にいなくても他の視聴者と開幕の瞬間を待つ興奮で一体感があった。LINE LIVE配信が試合の第1クォーターのみだったため、続きはスポナビライブで観たが、コメントがあった方が楽しめたのは確かだ。今後、優勝を決める試合や、オールスターといったビッグゲームに向けて、コメント投稿や閲覧機能も検討して欲しい。
若い世代が憧れるリーグ、使いやすい配信サービスに
筆者は開幕半年前の3月に行なわれたB.LEAGUEとソフトバンクの発表会にも参加し、孫正義氏から、「全試合ライブ配信」という言葉を聞いてワクワクした反面、「本当に全部配信できるのか、日本で一定の視聴数を得られるのか」という心配も少しあった。
実際のところ、開幕戦はLINE LIVEでの配信もあって、公式発表によれば約300万人が視聴したという。Twitterトレンドランキングでも、B.LEAGUE関連が上位20のうち半分以上を占め、Yahoo!リアルタイム検索は、20のキーワードのうち19ワードがB.LEAGUE関連だったとのこと。「各デバイス視聴者を合計すると8~10%相当の視聴率効果があった」とB.LEAGUEは発表している。ただ、最初に無料で楽しんだユーザーが、これからも観続けるかどうかは、試合の面白さはもちろん、今後のサービスの充実もカギになるだろう。
現在、スポナビライブのアプリが提供されている端末はスマホ/タブレットのみだが、HDMI出力できるSTBなどのミラーリング機能を使って、テレビ画面で観る方法も案内されている。手持ちのiPhone 6sから、Apple TVへのAirPlayを試したところ問題なくテレビに表示され、スマホ側でスキップや一時停止の操作もできた。画質的にも、46型フルHDテレビで観て満足できた。今後の対応デバイス拡充として、PCや、Chromecastにも11月中旬以降に対応予定とのことなので、視聴方法の広がりにも期待したい。
思い返せば、国内の統一プロリーグ設立がなかなか決まらず、国際試合への出場が禁止されるなど厳しい時代が続いた日本のバスケットボール。その後、川淵三郎氏が当時の日本バスケットボール協会会長に就任して注目され、本当に新リーグ開始までこぎつけた。10月からは、テレビのスカパー! でもB.LEAGUEのライブ配信が決定。月額2,480円のプランで、B1リーグの公式戦を340試合以上生中継すると発表している。観られる手段が増えるのはうれしいことだ。
ただ、ファンにとっては、サービス提供者が考える“注目の試合”よりも、自分が“観たいチーム/選手が見られるか”が重要。そのため、「全試合配信」と「数多くの試合を配信」は、単に試合数だけではない大きな違いがある。新人の急成長や主力選手のケガなど、チームの浮き沈みは予測が付かないことが多い。せっかく有料で契約するなら、全試合の中から、好きな選手やチームを逃さずチェックできる方が、長い目で見て満足できるだろう。
そうした点で、スポナビライブにはこれからも「B.LEAGUEが一番楽しめるサービス」であって欲しい。ソフトバンク契約者は月額500円、それ以外は月額3,000円という明らかな差があるのは筆者にとって残念だが、これからも試合が面白ければ、シーズンの間だけ契約するなどで使い続けたい。ただ、同時期に配信しているNBAの「LEAGUE PASS」は月額2,400円(単月買い切りは3,100円)なので、両方使い続けるかどうかは、これからの試合や、サービスの内容によっては気が変わるかも知れない。
今後、B.LEAGUE単独サービス(または海外のバスケも楽しめるバスケ専門チャンネル)になって、ソフトバンク以外の契約者でも月額2,000円ほどで利用できれば、もっと魅力的になるだろう。また、リーグが始まったばかりの今だからこそ、より多くのファン獲得のため、例えば好きなチームの試合だけ観られて月額1,000円を切る程度にするなど、ライトなプランも検討して欲しい。
筆者が国内の試合をあまり観なくなっていた理由の一つに、「体格の優位な外国人選手や帰化選手にボールを集めた方が得点を取りやすい」状況が長く続いていた点がある。B.LEAGUEでも依然として得点ランキングは外国人選手が占めているが、そんな中でも日本人選手の成長や活躍は増えている。
例えば全日本のエースである比江島慎(シーホース三河)をはじめ、身長2m超でもスピーディに動ける竹内公輔(リンク栃木ブレックス)・譲次(アルバルク東京)兄弟や、高速ドリブルで大きな相手をかわしてアシストを量産する鈴木達也(三遠ネオフェニックス)、20歳でチームの中心へと急成長するベンドラメ礼生(サンロッカーズ渋谷)など、注目の若手選手のプレーを、映像でも楽しめる機会が増えた。選手にとっても、観られる機会が増えたことは刺激になるだろう。
現在、米ジョージワシントン大学で活躍する渡邊雄太や、明成高校からゴンザガ大学へ進んだ八村塁など、NBA入りが期待される頼もしい選手もたくさん育ちつつあり、こうした若い世代からも憧れを持たれるリーグになって欲しい。スポナビライブなどの配信サービスも、利便性の向上を続けて、今の盛り上がりを一時のブームで終わらせないでくれることを期待しつつ、今後の試合を楽しみたい。