ミニレビュー

佳境に入ったNBA。全試合見放題の「リーグパス」で、優勝の瞬間もライブ視聴

 今年も全米バスケットボールNBA(National Basketball Association)のチャンピオンを決めるプレイオフが始まった。これをテレビやスマートフォンなど様々なデバイスで存分に楽しめる有料映像配信サービスが「NBA LEAGUE PASS(リーグパス)」だ。

テレビとChromecastでの視聴画面

 NBAは10月~4月に全30チームがレギュラーシーズンのリーグ戦を戦い、東西カンファレンスの上位各4チーム、計8チームがシーズンを締めくくる4月16日(現地時間)からのプレイオフに参戦。先に4勝したチームが勝ち上がるトーナメント方式で、最終的なチャンピオンが決まる。

 そんなNBAの観たい試合をいつでもオンデマンドで視聴できるのが、今回紹介するリーグパス。NBAが運営する公式サービスで、パソコンやスマートフォン/タブレットで視聴できるほか、GoogleのChromecastやApple TVなどを使えば、テレビでも観られる。また、PlayStation 4などのアプリからテレビで観ることも可能だ。

 現地から試合をライブ配信するほか、終了した試合も後から視聴可能なため、契約期間中であればいつでも観られる。試合結果と、詳細な個人のスタッツ(シュート数やリバウンド数など)、関連動画も合わせて用意。料金は、iPhoneなどの「2016 NBA App」のアプリ内課金で購入した場合は月額3,100円(全チームの試合と過去の名勝負なども見放題のNBA LEAGUE PASS PREMIUMの場合)。年間プランは11,400円(同)、1試合のみの場合は960円。

 NBA好きの人はご存じだと思うが、約80試合の長いレギュラーシーズンと、4敗すればそこで終わりのプレイオフの試合の雰囲気は大きく変わる。普段から真剣勝負なのは変わらないものの、プレイオフでは1つのリバウンド、1回のディフェンス、1本のフリースローの緊張感が全く違う。レギュラーシーズンで調子の良かったチームを、下位のチームが破る“アップセット”や、プレイオフになって急に活躍しだす選手の登場も珍しくなく、それが毎年の楽しみとも言える。

 特に'15~'16年はレギュラーシーズンからチームごとの戦力差が拮抗し、一部のチーム以外はわずかなゲーム差の間でひしめき合い、どこが勝ってもおかしくない面白い1年となった。自然と、優勝を決めるプレイオフの盛り上がりにも期待がかかってくる。そんなプレイオフと、現地時間6月2日から始まるファイナル(決勝)を存分に楽しむため、iPhoneアプリから1カ月3,100円のプランに加入した。

プラン別のサービス詳細(料金は5月19日時点のもの)。PREMIUM会員だと、過去の名試合視聴や、中継音声の選択なども可能
iPhoneのNBAアプリでプランを選んで購入

コンテンツは満足、操作性は改善に期待

 試合の映像を視聴する場合は、カレンダーから対戦カードを選ぶ。[WATCH]を選ぶと、フルで視聴するか、ハイライト(Condensed)を視聴するか選んで、再生できる。

iPhoneアプリでのライブ視聴画面

 配信される映像は、ESPNやTNTといったテレビ局が制作した内容なので、放送とほとんど同じと考えていい。かつてのNBAスターが解説者として登場するのもテレビと同様だ。番組内の選手インタビューなどのコーナーも、もちろんカットせず配信されていた。ハイライト映像も、テレビのスポーツニュースのようなダイジェスト版よりは充実しており、多くのシュートシーンや、流れを変えたプレーなどが観られる。それほど好きではないチームの試合であれば、ハイライトでも十分楽しめる。

映像/音声を選択。[HEAT Feed]はマイアミ・ヒート側、[Raptors Feed]はトロント・ラプターズ側の音声

 PREMIUM会員向けサービスで面白いのが、中継の音声がホームチーム側とアウェイチーム側のどちらかを選べる試合もある点。特にひいきのチームがある場合は、気持ちよく試合を観られる。音声は英語のみ(一部はスペイン語もある)で日本語は無いが、試合で使われる単語は分かりやすいものが多く、雰囲気を楽しむには現地の中継が適している。また、日本の中継と違う点として、アナウンサーやコメンテーターの歯に衣着せないやり取りが面白く、審判の下したジャッジに対しても「今のは違う」と遠慮せず指摘する。実際に映像と照らし合わせて判断できるため、視聴者として共感する場面も多い。

 米国とは時差があるが、せっかくなら現地での開催に合わせてライブで楽しみたい。リーグパスであれば、アプリ内で試合開始時刻を現地時間または日本時間でチェックできる。例えば今行なわれている準決勝~決勝までの試合は、だいたい日本時間で午前9時~10時ごろからスタートする。あらかじめ、設定画面で「フェイバリットチーム」を選んでおけば、そのチームの試合が開始/終了した時にプッシュで通知してくれるため、ライブの見逃しも防げる。移動中にスマホで途中まで視聴して、続きを宅内のテレビとChromecastで視聴するといったことも可能だ。

テレビにChromecastをHDMI接続
スマホからの操作で、テレビ視聴
PLAY BY PLAY画面

 試合中や、終了後のスコアも、詳細に渡って確認できる。チーム/個人の成績はもちろん、何クォーターの残り何分で、どの選手がどんなプレイ(得点/シュートミス/リバウンド/ファウルなど)をしたかを箇条書きした[PLAY BY PLAY]も記録されている。例えば「第3クォーター残り7分20秒で、ジェームス・ハーデンがフィンガーロール・レイアップで23点目を入れた」といった細かなプレイまで書かれており、得点シーンなど一部は動画で振り返れる。iPad用アプリでは情報を多く表示できるため、スコアも確認しやすい。

iPadアプリでのスコア表示

 なお、デフォルト設定では、試合が終わると両チームの最終スコアが表示されるため、動画を観る前に結果が分かってしまう。それを防ぐには、設定画面の[スコア]はオフにしておく。これで、動画を観終わるまで勝敗の楽しみを取っておける。

[スコア]をオフにしておくと、試合終了後も得点は非表示に

 画質はどのデバイスでもHDで、PlayStation 4アプリの場合は「最低2Mbpsのデータレートのネットワーク接続が必要」と再生前に表示される。PCの場合は400kbps~3Mbpsの間で選べるほか、自動で回線に合わせた画質に調整するよう設定することも可能だ。iPhoneアプリの場合はビットレートなどは明示されていないが、視聴した限りではほぼ同等のようだ。

PS4アプリで視聴
再生時の選択画面

 iPhoneアプリから視聴すると回線状況に応じて画質は自動で調整され、再生し始めたときは少し粗く感じる場合もあるが、安定すればスマホでは十分な解像度だ。46型のテレビ(ソニーBRAVIA KDL-46W900A)にキャストしても不足は感じない。ただ、BS1で同じ試合(テレビ局も同じ)の中継と見比べると、やや放送の方が画質が良い。ハーフコートが見渡せる状態で、BSだと奥にいる選手の顔もある程度分かるのに対し、リーグパスの配信映像では顔がベタ塗りのようになってしまうシーンもあった。なお、筆者の環境では、テレビで観た場合はPS4(Ethernet接続)よりも、Chromecast経由(5GHz帯のIEEE 802.11a接続)で観たほうがわずかに画質が良いと感じた。

 画質はどのデバイスで観てもおおむね満足しているが、iPhoneアプリで気になったのは視聴中の操作性。緊迫した場面ほど、一つのシュートやファウルなどを巻き戻して観たくなることは多くなるが、NBAアプリの視聴画面では30秒送り/戻しのボタンしかなく、ワンプレイだけ戻る/進めるには長すぎる。1~2秒で大きく試合が動くことも多いスポーツだからこそ、せめて10/15秒送りなど、もっと細かな調整が効くようになることを望みたい。

iPhoneアプリでは、細かな調整はしにくい

 また、画面上のシークバーで再生位置を前後に少しだけ変えたいときも、動きがシビアでなかなか目的の場所に合わせにくい。iPhoneユーザーであれば、シークバーにタッチして指を上下にスライドすると、移動の幅を細かく調整できるスクラブ操作がおなじみだが、NBAアプリではこれができない。「今のシュートがもう一度観たい」という時、iPhoneのシークバー上で指を細かく動かしてそっと離しても、瞬間的に別の時間へ移動してしまい、ストレスがたまる。

 iPadだと画面が大きい分、iPhoneよりはやや操作しやすい。PS4アプリの場合は、コントローラの十字キー左右で早送り/戻しが行なえ、iPhoneアプリよりは使いやすいが、10秒単位でしか止めることができないようだ。

PS4視聴時のシークバー

 パソコン視聴の場合はWebブラウザを使用する。こちらでは10秒送り/10秒戻しなどの細かい操作ができて、さらにスロー再生も行なえるので便利。

パソコンのWebブラウザ視聴時は、細かな操作ができて便利

 選手がラインを踏んでいたかどうか、ディフェンスが触ったのがボールなのか手なのかといった微妙な判定があると、どうしても見直したり、ピンポイントで静止したくなる。終盤の勝負を分ける場面なら、番組側で様々な角度からのスロー映像を流してくれるが、ある程度良い画質で視聴できるので、好きなタイミングでストレスなく操作できる方がうれしい。

 試合前半のボール運びやフリースローなどのシーンは早送りしたいという、せっかちな筆者のような人にとっては、今のところはPCでの操作が一番使いやすい。ただ、テレビで観るためにはiPhoneを使う方が手軽なので、このアプリでも早送り/戻しがスムーズにできるようになれば、もっと利用頻度が上がると思う。

 マルチデバイス対応を活かし、例えばChromecast経由でテレビに試合を映しながら、他の試合を手元のスマホやタブレットで同時に再生するということが可能。PCなら、何と1画面で2~4分割して同時視聴までできる。1画面で同時視聴している場合、音声はクリックした画面の中継の内容が流れる。同時刻に試合が行なわれるプレイオフにも万全の態勢で挑める、行き届いた配慮だ。

パソコンでは4試合同時視聴もできる

 余談だが、今秋から日本で新たなプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」が開幕し、ソフトバンクが全試合ライブ配信することが決まっている。このNBAアプリなどの先行サービスを参考に、単なる“動画配信アプリ/サービス”の一つではなく、コンテンツに最適化したUIで実現して欲しいと願っている。

気軽に契約/解約できて、1カ月でもNBAをたっぷり楽しめる

 現状、日本でNBAを視聴する方法はリーグパス以外にもいくつかあり、テレビ放送では最も充実しているのがBS放送の「WOWOWライブ(一部試合はWOWOWプライム)」。このほか、「フジテレビNEXT」や、NHK BS1でも、いくつかの試合が放送されている。

 放送サービスのメリットは、NBAだけでなく他のスポーツやコンテンツも含めて視聴できるため、料金が割安に感じられる点。特に、中継する試合の数が多く、関連番組にも力を入れているWOWOWは、開幕からプレイオフまで年間を通して観たい人にもお得感は高い。ただ、お気に入りのチームや、ピンポイントで観たい試合があっても、それが観られるかどうかは局の編成に左右される。ファイナルやオールスターなど重要な試合は観られることが多いが、それでも、シーズンを通して全試合を観ることができないのは仕方ないところだ。

 リーグパスなら、全試合を家でも外でも通信さえできれば観られるほか、ライブを見逃しても後から視聴できる。加入する前の過去の試合もさかのぼって観られるため、2月にカナダ・トロントで行なわれたオールスターはもちろん、ステフィン・カリーが史上初のシーズン400本目のスリーポイントを決め、かつマイケル・ジョーダン時代のシカゴ・ブルズによる記録を超える73勝目を飾ったレギュラーシーズン最終戦も観られる。

 さらに、20年の現役生活を終えたレジェンド、コービー・ブライアントの60得点という驚異的なパフォーマンスを見せた最終戦も配信。特にこの引退試合には、過去の試合やミニドキュメンタリー風の映像が数多く含まれていて、見ごたえ十分だ。

 iPhoneアプリやPCの場合、試したところ'12年10月30日に行なわれた試合までさかのぼって観ることができた(5月19日時点)。1カ月だけでも契約すれば、かなりの試合数を楽しめるだろう。ファイナルは6月2日に始まるが、もし有料契約期間内に優勝チームが決まってポストシーズンが終わっても、これらの過去の試合を観られるので、元は十分取れるはず。

VIDEO VAULTのコーナーでは過去の動画も充実
ニュース記事のページ。好きなチームを優先表示するようにパーソナライズできる
ライブ試合中継後に[NBA TV]を選ぶと、解説者らによるレビューをライブで観られる

 もう一つ、リーグパスをアプリ内課金で購入して便利だと感じたのは、解約も気軽にできるところ。通常、月額プランの場合は1カ月が過ぎると自動更新されるが、解約し忘れを防ぐには、iPhoneアプリで有料プランを購入した後、iPhoneの設定画面で[iTunes & App Store]から[Apple:ID]をタップし、[管理]の項目に表示される[2016 NBA App]を終了の状態にする。これで、自動更新されずに期間内だけ見放題となる。再契約する場合は[更新オプション]で購入すればOK。思いついたタイミングですぐに契約/解約できる。この辺りはApple Musicなどの有料契約と同じシステムだ。

 今シーズンは1回戦から延長などの接戦が多く、さらにはスーパースターのケガなどもあって、波乱の試合展開も起きている。トーナメントとは言え、勝ち抜けが決まる4勝までは長丁場なので、経験豊富なベテランの活躍、若手の爆発力、ケガの有無など、様々な要素が勝敗の一つ一つのカギになってくる。昨年優勝のゴールデンステイト・ウォーリアーズと、レブロン・ジェイムズ率いる東カンファレンス1位のクリーブランド・キャバリアーズが本命視されているとはいえ、例年と同様に何が起こるかわからず、1試合1試合の内容がとても濃い。

 全試合をじっくり楽しみたいなら、年間プランを契約するのがファンとしての理想で、コンテンツの充実を考えると決して高い料金ではない。ただ、そこまで時間がない人も、1~2カ月あれば今シーズンの注目試合や、自分の好きなチームの試合がいつでもどこでも楽しめるのが、リーグパスの大きな魅力。試合数は残り少なくなったが、ライブで楽しめるときはリアルタイムで会場の雰囲気を味わい、終了しても何度でも振り返れる。テレビやスマホの前で喜んだり文句を言ったりしながら、注目のシーズンを最後まで楽しみたい。

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中林暁