ミニレビュー

録音対応USBカセットプレーヤーで、昭和のラジオをPCレスでMP3化

 古い音源を探し求めていると、自ずと必要になってくるのが「カセットテープ」というメディアだ。先日も貴重な音源を入手して喜んだものの、自宅にはカセットテープの再生環境が無い。ホームセンターなどで新品のラジカセを2、3千円程度で購入することもできるが、どうせ購入するなら、カセットテープの音声をデジタル化し、スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーで聴けるようにしたいと思い、サンワサプライの「カセットテープ USB変換プレーヤー」(400-MEDI007)をAmazon.co.jpで購入した。購入時の価格は4,980円(税込)。

カセットテープ USB変換プレーヤー(400-MEDI007)

単体で使える便利な再生機一体型

 400-MEDI007は、カセットテープの音声をデジタル化して、別売のUSBメモリなどにPCを使わずに録音できる。USBカードリーダーを使えば、SDカードなどにも録音可能だ。録音ファイルはMP3形式で、ビットレートは128kbpsとなる。ステレオミニのイヤフォン出力を備え、単体でポータブルカセットテーププレーヤーとしても使用可能だ。アナログ音声をデジタル化するためのキャプチャ製品は数多くあるが、それらを利用するにはアナログメディアの再生機が別に必要となる。筆者のようにカセット再生環境が無かったり、すでにプレーヤーを処分してしまったという人なら、再生機一体型の方が便利だろう。

前面にMP3操作用のボタンを装備
上部にはテープの操作ボタン
側面にイヤフォン出力やUSB、ボリュームダイヤルを備える

 本体のサイズはカセットより一回り大きく、厚さはカセット2本分程度。シャツの胸ポケットには入らないが、片手で簡単に持ち運べる。外形寸法は115×35×85mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約154g。プラスチック製のため、外観はおもちゃっぽい印象だ。電源は単3電池2個か、付属のUSBケーブルを使って給電する。USBケーブルは、給電用プラグと、USBメモリなどを差し込むプラグの2股になっており、給電しながらUSBメモリへの録音が可能だ。スマートフォン用などのUSB-ACアダプタを使えば、PCを用意しなくても給電できる。電池使用時の動作時間は約2時間なので、カセットを何個も続けてMP3化する場合はUSB給電で使用した方がよいだろう。

カセットテープより一回り大きい
厚さはテープ2本分ほど
イヤフォンと2股のUSBケーブルが付属する
USBメモリなどに録音可能
PCから給電する場合の利用イメージ

 使用できるテープは90分以下のノーマルポジション(Type I)のみで、ハイポジ(Type II)やメタルテープ(Type IV)は使用不可としている。カセットプレーヤーとしては再生専用で、ラジオ受信やマイク録音などの機能は備えていない。本体上部のボタンで再生、停止、巻戻し/早送りが可能。本体にスピーカーは備えておらず、イヤフォンを使って聴取する。テープを再生して付属のイヤフォンで聴いてみたが、ノイズも少なく普通にポータブルカセットプレーヤーとして使えた。

 MP3再生機能は、本体で録音したMP3ファイルを再生するものだが、筆者が試したところCDをリッピングしたMP3ファイルも再生できた。操作はカセット用とは別の、本体前面のボタンで行なう。再生/停止や選曲スキップが可能だが、液晶画面がないので、大量のファイルから聴きたいファイルを選んだり、複数のフォルダから選択することはできない。MP3再生機能は、録音した音声を確認するためのオマケ程度に考えたほうがいいだろう。

 サンワサプライでは、400-MEDI007以外にも、PCに接続して使用するタイプの「400-MEDI002」(直販3,480円/税込)もラインナップしている。こちらはUSB接続したPCに直接録音するもので、付属の録音ソフトでファイル形式やビットレートの変更ができたり、無音部分を検知して自動でファイルを分割する機能が利用できるなど、細かい録音設定が可能となっている。

シンプルな操作性。録音の自動停止機能がないのは不便

 先日発掘したカセットテープはTDK製で、ケースのインデックスには「'88.3.5 あっぱれ土曜ワイド 帰ってきたちあきなおみ」と書いてある。ちあきなおみは、1992年に活動を休止して以来、現在まで20年以上もメディアに露出していないため、若い人や昭和歌謡に興味の無い人には馴染みがないかもしれない。代表曲の「喝采」はコロッケのものまねでお馴染みだが、最近では歌手の一青窈がカバーしていたりする(アルバム「歌窈曲」収録)。

 ちあきなおみは、1992年に活動を休止する前にも約10年間に渡り、表立った歌手活動を控えていた時期があり、この録音はその沈黙期から復帰したばかりの1988年3月に、新曲の宣伝のためにラジオに出演したときのもの。そのため「帰ってきたちあきなおみ」と題されている。番組の中では、MCの伊東四郎とトークをしながら、活動を控えていた10年間のことや、自身の音楽のルーツ、音楽に対する想いなどを語っており、ファンにとっては垂涎モノの音源となっている。

カセットテープはTDK製
テープケース
テープの挿入口はそれほど大きく開かない

 録音を始める前に、まず本体側面のボリュームを確認しておく。再生音量の大きさが録音データの音量となるので、誤って音量が最小になっていたりすると無音のファイルが作成されてしまうためだ。音量を確認したら、本体にUSBメモリとカセットテープをセットし、録音開始ボタンを押してからテープを再生する。録音ボタンを押しただけではテープが再生されないので注意が必要だ。録音中もイヤフォンで音を聴ける。

 録音にかかる時間はテープの再生時間とイコールで、90分テープなら片面録音するのに45分かかる。オートリバース機能は備えておらず、A面の後にテープを取り出してひっくり返し、同様にB面を録音する必要がある。今回は2、3本のテープを録音しただけなのでさほど気にならなかったが、大量のテープをMP3化したい場合は、倍速録音やオートリバース機能が欲しくなるだろう。

 録音をしていて不便を感じたのは、テープの停止と録音停止が連動していない点だ。テープが停止しても、もう一度録音ボタンを押して録音も止めなければ、延々と無音部分が続く長大なファイルができてしまう。そのため、寝ている間に録音したり、録音中に外出することが難しく、他の用事をしていても録音停止するタイミングが気になってしまう。音声ファイルをPCに取り込んで無音部分をカットするのは簡単だが、もし次のモデルが出るのなら自動録音停止機能は搭載して欲しい。

USBメモリにMP3ファイルが番号順に記録される

 録音したUSBメモリをPCに繋いでみると、メモリ内に「TAPEMP3」というフォルダが作成されており、「FV0001.mp3」、「FV0002.mp3」というようにMP3形式のファイルが順番に記録されている。ビットレートは128kbpsだ。ファイルのサイズは、45分のデータで42MBと、1分あたり1MBくらいになる。曲間などの無音部分でファイルを自動分割してくれる機能はなく、録音開始してから停止するまでが1ファイルとなる。

 録音した音声データは汎用性の高いMP3形式なので、スマホやポータブルオーディオプレーヤーなどでも再生可能だ。さらに、データをPCに取り込み、音声編集ソフトを利用して、トラック分割やノイズ除去を行なうと、より聴きやすく仕上げることができる。編集のしやすさはデジタル音源ならではのメリットといえる。

録音の音質は良好。デジタル機器に慣れていない人にも

 400-MEDI007を実際に使ってみて、カセットテープをデジタル化するという目的は十分に果たすことができた。MP3化した音源はPC経由でスマホに移し、通勤時に繰り返し聴いている。今回の音源は26年前のAMラジオ放送を録音したものだが、MP3化することで音が極端に変わってしまうこともなく、トークも歌声もしっかり聴き取ることができる。音量を上げるとカセットテープ特有のサーッというホワイトノイズが気になるが、通常の音量で聴くなら十分な音質だ。

 機能を絞っている分、操作がシンプルなので、デジタル機器に慣れていないような世代の人でも扱いやすいだろう。価格も約5,000円でお手頃なので、テープをなるべくお金をかけずにデジタル化したいと考えている人にもお勧めする。

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400-MEDI007

一條徹