ミニレビュー

今日もアニメ尽くし。dアニメストアがChrome/Edge対応、アニソン動画、グッズ購入も

 約1,600番組、約29,000話のアニメを配信している「dアニメストア」。このサービスが3月23日に機能強化され、PCでのブラウザ視聴向けにHTML5プレーヤーを提供開始したほか、新たにアニソンのミュージッククリップ追加、アニメイトとのショッピング連携なども開始した。同サービスのヘビーユーザーである筆者(大和 哲)が、早速これらの新機能を使ってみた。

dアニメストア

HTML5対応でGoogle chromeとMicrosoft Edgeでの再生をサポート

 dアニメストアは、最近では「ガールズ&パンツァー」のOVAや、「刀剣乱舞」のミュージカル、「僕だけがいない街」スペシャルWebラジオといったオリジナルコンテンツなどコアでアニメファンの見たいコンテンツが非常に充実していて、人気の高いサービスだ。また、月額400円という低料金で、ドコモ以外の携帯電話契約者でも利用が可能ということでも支持されている。

 重度のアニメ中毒者である筆者も非常に重宝していたのだが、'15年9月ごろからちょっと困ったことになっていた。

 というのも、dアニメストアは、PCでは特に専用アプリなどのインストールを必要とせずWebブラウザだけで視聴が可能なのだが、その再生環境にSilverlightを利用していたため、筆者の利用しているブラウザのGoogle Chromeでは視聴できなくなっていたのだ。

Chromeでは視聴ができなくなっていた、3月23日リニューアル以前のdアニメストア

 観られなくなっていたのは、dアニメストア側が変わったわけではなく、セキュリティ上の問題からChromeが「NPAPI」プラグインを無効としたためだが、これに依存しているSilverlightが巻き込まれて使用不可になってしまっていた。しかし、この3月のdアニメストアのリニューアルで、配信環境がこれまでのSilverlightベースのものからHTML5を使ったものに変わり、再び再生が可能となったのだ。

 このHTML5ベースの動画再生環境のおかげで、dアニメストアは機能もアップした。

 例えば、話を早回しで見たい時には倍速再生、ちょっと巻き戻したいときには、10秒/30秒だけ巻き戻し、というようなこともできるようになった。この倍速再生は、音声の高低(音程)などは変えずに速度だけを倍の速さで再生でき、時間がない時の“積みアニメ”解消などには非常に便利だ。できればもう少し速い、例えば3倍、4倍速での再生もあればさらにうれしいが、これならば半年、対策を待った甲斐があるというものだ。

 ほかにも、今回のリニューアルでは通信環境に合わせた画質の自動調整機能が働くようになり、例えばノートPCを自宅外に持って行った場合、未だにIEEE 802.11b/gで遅い公衆無線LANや、LTEといった環境でも、それほど構えずにアニメを見られるようになったのもうれしい改良点だ。ただ、30分アニメ1本で、300MB程度の通信量があるので、LTEなどの携帯電話回線での視聴は推奨しない。これに関してはスマートフォンを使ってアプリの機能であるダウンロード視聴の利用をお勧めする。

動画再生環境のリニューアルによって2倍速再生なども可能になった。音声の高さが変わらず、再生速度だけを調整できる優れた機能だ
10秒、30秒の巻き戻しも可能に

 また、Windows 10で標準のWebブラウザとして用意されたMicrosoft Edgeも、以前のInternet Explorerで使えていたActiveXのサポートをやめており、これに依存しているSilverlightが使えず、同様に再生ができなくなっていたが、こちらもHTML5で再生が可能となった。

 HTML5であれば、Edge/Chrome以外のブラウザが今後メジャーとなっても、再生ができないということはまずなさそうだ。そう考えるとこのリニューアルは、非常によかったのではないだろうか。

ミュージッククリップでアニメのノンテロップOP/EDも

 今回のdアニメストアのリニューアルでは、従来あった機能の強化のほかにも、全く新しい、さらにアニメを楽しむための仕掛けも追加されている。これらは現時点では、実用的に使うにはまだまだ更なる強化が必要になるだろうと考えられるものの、将来が楽しみなサービスだ。

ミュージッククリップで再生できるアニソンの一覧

 中でもこれからが最も楽しみなのは「ミュージッククリップ」再生。

 これは、従来dアニメストアで再生が可能だったテレビアニメ番組やOVA劇場版アニメなどに加えて、アニソンビデオが加わったというものだ。2016年4月現在、200曲少々のアニメのオープニング・エンディングテーマが用意されているほか、番組中挿入歌や、アニソンではないが声優ソング(上坂すみれの「革命的ブロードウェイ主義者同盟」など)も何曲かラインナップしている。

 再生できるアニソンは基本的にCDなどに収録されているフル尺の音声に、映像もついている。この映像は曲によっては「アーティスト映像」「ノンテロップアニメ映像」、それに「dアニメストア限定オリジナル映像」が付いている。

 余談だが、楽曲選択画面を見ると、その曲が採用されたアニメ番組のポスターやCDジャケット写真の絵柄であるにも関わらず、楽曲再生時はアーティスト映像が表示されるというものが結構あった。「明日へのbrilliant road」(宇宙のステルヴィア)、「black bullet」(ブラック・ブレット)などがそうだ。

 アーティスト出演映像は、基本的に既存のプロモーションビデオそのままが多いようで、好きな番組の曲を聴いているときに「あ、この映像見たことある」と思うことも多いだろう。

主な配信曲。映像は「アーティスト画像」、「ノンテロップアニメ映像」、「dアニメストアオリジナル映像」がある

 現在では、YouTubeなどでレーベルが公式チャネルを開設しプロモーションビデオを公開していることも多いが、これはショートサイズで、フルサイズのものはCDの初回限定特典として付いてくるのみだったというケースも今までは多かった。そのような映像がdアニメストアで今回見られるようになったのは非常にうれしい。

 筆者の場合、「sister's noise」(とある科学の超電磁砲Sオープニング)で「キレッキレのダンスを踊る集団の妹達」をフルで見るのが念願だったのだが、今回のdアニメストアのアニソン公開で見ることができるようになり、ちょっと感動してしまった(話には聞いていたが、本当に妹達、EXILEだな……と)。

「キレッキレのダンスを踊る妹達集団」を見られる「sister's noise」(とある科学の超電磁砲S)。筆者も念願のフル画像を見ることができた

 また「ノンテロップアニメ映像」の方では、dアニメストアのページやプレスリリースでは「炎のさだめ」(装甲騎兵ボトムズ)や「ケロッ! とマーチ」(ケロロ軍曹)などがアニメのオープニング映像と共に再生できるように表示されている。

 しかし、残念ながら一部のものに関しては、ノンテロップオープニング映像が残っていなかったのか、番組のオープニングをイメージして画像を付けた内容になっていて、厳密には“オープニングをノンテロップにした”もので、まれに期待を裏切られた。具体的には「炎のさだめ」などは、よくアニソンカラオケなどでよくあるような本編画像の切り貼りで作ったようなビデオになってしまっていて、オープニングと似た構成にもなっていないのが残念だ。

「炎のさだめ」は、ボトムズのオープニング映像とは異なるものだった。写真の映像は歌詞でいうと「さよならは言ったはずさ……」辺り。アニメではキリコは立ち姿になっているはず

 とはいえ、比較的最近のアニメのものでCDの曲をそのままの構成でオープニング・エンディングに使っているものは、歌詞の1番まではほぼノンテロップオープニング、2番以降がアニメ本編からという構成のものが多いようなので安心してほしい。例えば、昨年放映の「君じゃなきゃダメみたい」(月刊少女野崎くん)、「Clattanoia」(オーバーロード)、「あの森で待ってる」(ユリ熊嵐)あたりは特にイメージが壊されない良い映像で、視聴をお勧めしたい。

ユリ熊嵐のオープニング再生画面。1話のオープニングからテロップを消し、2番以降はアニメのハイライト画像を集めた構成

 アニソン選択画面からは、その曲が使われた番組へのリンクもあり、曲を聴いて懐かしくなったらそのアニメを見に行くことも簡単にできる。筆者の場合も「明日へのbrilliant road」を聞いていたら、懐かしくなってしまい「宇宙のステルヴィア」を最初から見始めてしまった。何話か見たら、なんかキャラクターにムカついて途中で見なくなったことも思い出し、結局、最初の何話かしか視聴しなかったが……。このdアニメストアがなかなか強力な“思い出再生機”であることは、わかってもらえただろうか。

 なお、このアニソン再生機能はほぼアニメ番組視聴の仕組みをそのまま利用しているようで、画質などの設定可能な項目はアニメ番組再生同様、回線状況に応じて自動的に選択されるがユーザーが設定することもでき「ふつう」~「HD」の中から選べる。音質も同様に128kbps/192kbpsから選択可能だ。0.5倍速~倍速再生の速度調整も同じようにできる。アニメ番組再生用の「連続再生」設定などもそのまま使える。

1曲終わると「次話がありません」となるのは残念。プレイリスト機能の早期追加を望みたい

 ただ、アニメ番組視聴と同じ仕組みを使っているためか、操作性にはまだ難があるのも確かだ。例えば、アニソン機能は今ところ一曲ずつししか再生できないのに、連続再生設定が生きていると、曲が終わるごとに「次話がありません」と表示される状況になっている。

 「繰り返し再生」をONにして、一曲聴きたい曲をヘビーローテーションで再生するのにはいいのだが、それ以外の使い方、例えば操作なしに複数の曲を連続再生することなどはできない。夏以降にはプレイリスト機能が追加されるというアナウンスがされているので、この辺りはバージョンアップに期待したい。

アニメイト連携で、いま人気のグッズが分かる、買える

 もうひとつ、新機軸の機能として「アニメイトオンラインショップ」との連携がある。ページ中の「関連グッズを見る」をクリックすると、番組に関連するグッズの中でも、特に人気のあるもの(でアニメイトオンラインショップで販売されているモノ)が何点か表示される、という機能だ。

 例えば、ライトノベルが原作の「オーバーロード」であれば原作本が表示される。アニメBlu-ray第1巻の発売が3月25日に始まった「この素晴らしい世界に祝福を!」であれば、1巻の購入から、7月発売予定の5巻の予約まで可能になっている。

ショップで人気の番組関連グッズが買える

 アニメイトオンラインショップのアカウントを持っていれば、表示されるグッズはすぐに購入することが可能だ。この辺はニコニコ動画での「ニコニコ市場」と似ているが、ニコニコ市場では基本的にニコニコユーザーが選んだものが表示されるのに対し、こちらはdアニメストアだけでなくアニメイトオンラインショップでの「現在の」人気グッズなので、表示されるグッズの傾向がかなり違う。

 例えば、dアニメストアの場合、(2016年3月末現在)「艦隊これくしょん -艦これ-」のページを表示させると、3月29日に発売と同時に瞬殺に近い形で商品が売り切れた音楽CD「加賀岬 KanColle Vocal Collection vol.3 和てぬぐい同梱初回限定版」などが表示される。つまり、dアニメストアの場合、常にそのとき最も流行っているグッズが優先的に表示されるわけで、これはうれしいユーザーも多いだろう。

 ただ、人気のグッズが表示されるというのは非常に購買意欲を掻き立てられるのだが、困ったことに、このグッズ表示では「人気が高すぎて一瞬で売り切れてしまったグッズ」というのも先頭に出てきてしまう。先に挙げた「加賀岬」のCDもそうなのだが、限定版だけでなく通常版すらアニメイト店頭でも発売開始と同時にほぼ売り切れており、入手不可能なグッズが最初に表示されてしまう。

人気グッズが表示されるのはいいが、発売と同時に売り切れてしまいもう買えないグッズも表示される

 アニメファンとしては人気のグッズを確実に知ることができるというのは非常にありがたいのだが、反面こうした悔しい事態に直面することもあり、少々ジレンマだ。だからといって、売り切れ品を表示から除外すると、(今後再入荷されるかもしれない)人気の商品を見逃してしまうと思うので、良い策とは思えない。強いて考えを挙げるとすれば、アニメイトに「人気が出そうな品はもっと在庫を増やして」と願うくらいか。今後、何か改善が行なわれることに期待したい。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身のライター。88年、パソコン誌「Oh!X」(日本ソフトバンク)にて執筆開始。PCやスマートフォン、モバイル関係のQ&A、用語解説、プログラミング解説などを書く。代表作は「ケータイ用語の基礎知識」(インプレス・ケータイWatch) Oh!X誌上では「オタッキー(で)」とも呼ばれた、その筋人。最終学歴は東海大学漫画研究会。ホームページはhttp://ochada.net(イラスト : 高橋哲史)