レビュー

小型でも重低音、ボーズ「SoundLink Mini」を聴く

手品のような低音再生能力。ゲーム機ともマッチ

SoundLink Mini Bluetooth speaker

 スマートフォンの普及により、Bluetooth送信機能付きプレーヤーを、意識していなくても誰もが所持している時代が到来。これに合わせ、AVアンプやコンポなどに、Bluetooth受信機能が続々と搭載されており、これまでは“手軽にそこそこの音で楽しめる”存在だったBluetoothオーディオが、“手軽に、本格的な音が楽しめる”存在へと変化しつつある。

 そんな中、AVアンプやコンポなどの大型オーディオ機器ではなく、手のひらサイズの一体型スピーカーながら、驚くべき音を出すBluetoothスピーカーが7月12日に発売される。メーカーはご存知ボーズ、モデル名は「SoundLink Mini Bluetooth speaker」(22,890円)だ。

 ボーズと言えば、キューブ型サテライトスピーカーを複数使ったシアターシステムや、手のひらサイズのスピーカーながら、重低音再生が可能なPCスピーカー「M3」など、とにかく“外観から連想できないサウンド”を出すのが好きなメーカーだ。

 例えば、同社の製品発表会へ取材に行くと、大きなスピーカーが置いてあり、雄大な音が出ている。その音を聴きながら説明を受け、最後に「実はこのスピーカーはケーブルが接続されていませんでした!」とサプライズがあり、下からものすごく小さな新製品が登場。「実はコレが鳴っていたのです」という流れ。新製品の「SoundLink Mini Bluetooth speaker」も、そういった驚きのある製品だ。

コンパクトで高級感のある筐体

筐体はアルマイト仕上げのアルミ製

 まず外観を見てみよう。一体型のスピーカーで、外周はシルバー。前面と背面はメッシュになっている。素材はアルマイト仕上げのアルミで、手触りも良く、非常に高級感がある。外形寸法は180×59×51mm(幅×奥行き×高さ)、重量は655g。細身の外観からするとズシッと重いが、この重さが質感の高さに寄与している部分もある。奥行きが無いので、ビジネスバッグなどにも入れやすいだろう。

 外からはよく見えないが、前面の左右にユニットを各1基搭載したステレオ仕様。ユニットはサイズなどは公開されていないが、小型の新開発のもので、リング型のネオジウムマグネットを採用。口径は小さいが、ストロークを長くとっていると思われ、強力な磁気回路を用いることで、同サイズの従来品と比べ、2倍という出力を実現したという。

正面から見たところ。高さは51mm
重さは655g。見た目よりズシリとしている
新開発のユニット

 背面を見ると、薄っすらと楕円形のパーツが見える。これはパッシブラジエータだ。実は、前面にも同じようにパッシブラジエータが搭載されている。つまり、2つの楕円形パッシブラジエータが、正対するように配置され、その両脇にユニットが各1基搭載されている……というのが、大まかな内部構造だ。

 前述の強力なユニットは、前へ再生音を放出するだけでなく、この2つのパッシブラジエータもパワフルに駆動。これにより、サイズを超える低音再生を目指している。このパッシブラジエータ機構は「デュアル・オポージング・パッシブラジエータ」と名付けられている。

前面。写真ではほとんど見えないのだが、ネット裏の中央部分に楕円形のパッシブラジエータがある。その両脇にあるのがユニット
背面。こちらにもパッシブラジエータが見える
内部構造。中央にあるパッシブラジエータが、正対して2基搭載されているのがわかる

 操作ボタンは天面に、電源やボリューム調整、ミュート、Bluetoothのペアリング用ボタンを装備する。BluetoothのプロファイルはA2DPに対応。対応コーデックは非公開。6個のBluetooth機器とのペアリング情報を記憶できる。

 さらに、側面にはアナログステレオミニの音声入力端子も用意。Bluetooth非対応のプレーヤーも接続できるようになっている。

天面に操作ボタンを用意
側面にアナログ入力、充電用プラグを搭載
奥行きは短く、細身だ
SoundLink Mini soft coverをつけたところ。左から、ブルー/オレンジ/グリーン

 カラーバリエーションは無く、シルバーのみだが、カラフルなソフトカバー「SoundLink Mini soft cover」(2,940円)が別売で用意されている。弾力性のあるカバーで、カラーは、ブルー/オレンジ/グリーンの3色。カバーを装着したままで、再生や操作ができるのが特徴だ。傷防止のために装着しておくのも良いだろう。

使い勝手の良い充電台とACアダプタ

 筐体の底面には大きなゴム足に加え、充電用端子も搭載。また、側面にもACアダプタを接続する端子を備えている。つまり、充電用端子が2つ搭載されている。

 側面の端子は、ACアダプタを直接接続するものだが、底面の端子は、付属の充電台から充電するためのもの。充電台にはACアダプタを接続して利用する。この充電台を使う事で、ACアダプタの着脱が楽にできるようになり、台の上に置いたまま利用したり、持ち運んで別の場所で使った後で、充電台に戻すというスマホのような使い方が可能になる。付属のACアダプタもコンパクトなので、旅行などに持っていくのも苦にならないだろう。

背面には大きなゴム足と充電用の端子
付属のACアダプタは非常にコンパクト
付属の充電台
充電台のACアダプタを接続
台に乗せるだけでスピーカーを充電できるようになる
充電台を使わない時は、本体に直接ACアダプタを接続する

 筐体の内蔵電池はリチウムイオンバッテリで、通常の音量で約7時間の連続再生が可能。充電所要時間は約3時間。天面の電源ボタンのランプが緑になると充電完了、赤く点滅すると充電必要の合図だ。

 ペアリングは簡単で、専用のボタンを押すと、青く点滅してペアリング待受モードになる。この状態でスマホなどから機器を探すと見つけられ、接続できる。一度接続してしまえば、次からはスピーカーの電源を入れるだけで、相手のBluetooth機能がONになっていれば、自動的に接続してくれる。Bluetoothボタンが独立しているので、「○○ボタンを長押しするとペアリングモードになる」などと覚える必要が無いのが嬉しい。

ペアリングしているところ
iPhone 4Sと接続完了。出力先としてスピーカーを選択する

驚きの重低音再生能力

 さっそくiPhone 4SとBluetoothで接続。再生音を聴いてみた。

iPhoneで試聴しているところ

 「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best of My Love」、「山下達郎/アトムの子」など、ベースやドラムが印象的な楽曲を再生すると、「ズヴォーン」と量感のある低域が手のひらサイズの筐体から飛び出し、とにかく驚く。強力なドライバ+対抗配置のパッシブラジエータによるものだと頭で理解はできるが、それでもこの小さなスピーカーから、圧倒されるような低音が飛び出してくるのは意外性があり、手品を見ているようで面白い。手に持ったまま「ちょっと凄いから聴いてみて」と、人に聴かせてまわりたくなる。

 そこで気がついたのだが、手に持った状態でも、あまり低音の量が減少しない。小型スピーカーでは、意図的に、設置した机などを振動させ、机自体を振動板のように使って音を出し、低音の不足を補う製品も存在する。そうした製品では、手で持ち上げると急に低音が痩せ、スカスカした音になってしまう。しかし「SoundLink Mini」の場合は、そうした手法ではなく、スピーカーでほぼ完結しているため、持ち上げても重低音があまり損なわれない。

ベッドの上でも低音が出る

 これは利用シーンの拡大にも寄与する。試しに、ベッドにスピーカーを置き、その横に寝転がって音楽を聴いてみたが、フカフカしたベッドの上でも、しっかり低い音が出せる。もちろんベッドや布団に低音が吸われるので、机の上に置いた時より量は少なくなるが、決してスカスカした音にはならない。置き場所を選ばない再生能力と、持ち運びやすい筐体サイズがマッチしていると感じる。

 机に戻って、正面に座り、しっかりと聴いてみる。六畳の部屋に音が充満するほどボリュームを上げてみたが、筐体がビビって不快な音が付与される事はなく、再生音はクリア。先程“机を振動を使わずに低音を出している”と書いたが、大音量再生中に机に触れてみても、さほど振動は伝わっていない。大型のゴムインシュレータのおかげだろう。筐体に触れると、強烈に振動しているのがわかる。おそらくこのインシュレータが無ければ、机に振動が伝わるどころではなく、スピーカー自体が振動でジリジリ動いてしまう事だろう。

 コンパクトな筐体だが、隣の部屋から怒られそうなほどの音量が出る。流石に、ボリュームを上げ過ぎると、あるポイントから低域が“すっぽ抜け”て、ユニットのストロークが空回りしているように聴こえるところに至る。ただ、この時の音量は、とても通常利用の範囲ではない。通常の音楽リスニングや、複数人がいるリビングで、BGM的に音楽を楽しむ使い方であれば十分対応できる。

 低域の迫力への驚きに慣れてくると、中高域のクリアさに意識が向くようになる。筐体の剛性が高く、アルミ製であるため、激しく振動していても筐体から余計な音が出にくく、出たとしてもプラスチックなどと異なり、不明瞭でボワッとした音になりにくい。これらの要素が組み合わさり、大音量時でも高域のクリアさが維持されている。

 また、DSPでこのスピーカー向けに様々な音響処理が加えられているのだろう。中高域に注意して聴いてみると、一般的なスピーカーの再生音と比べ、中高域の音像のエッジがシャープに強調されているように聴こえる。量感のある低域に負けない工夫だろう。特筆すべきは、この強調が、ボリュームを上げていってもキツく感じない、破綻しないギリギリのところで踏みとどまっている事だ。

PCとの連携イメージ

 それゆえ、ボリューム値を問わず、心地よくて抜けの良い音が楽しめる。小音量時でも同様だ。高域の色づけも少なく、セパレートタイプの人気アクティブスピーカー「M3」(Micro Music Monitor)や「M2」(Computer MusicMonitor)と比べても、“再生音が金属っぽくなる”点は抑えられていると感じる。

 また、背の低いスピーカーだが、正面に座って聴いていると、ボーカルの音像がスピーカーの前ではなく、上部に浮き上がる。音場も、スピーカー筐体から一回り大きく広がるため、ゆったりと音楽が楽しめる。また、正面以外の方向から聴いても、低音が豊富なので音楽が痩せず、あまり違和感が無い。

音楽以外でも活用

PS Vitaと連携したところ

 iPhone以外の接続相手として、Bluetoothに対応した携帯ゲーム機PlayStation Vitaと接続してみた。いつも「nasne」と無線LAN接続して、Vitaを小型テレビのように使っているのだが、そのスピーカーとして「SoundLink Mini」を使おうというわけだ。

 テレビ番組を再生する前に、違いが実感できる。アプリの「torne PlayStation Vita」を起動すると、メニュー画面にSweet forestという爽やかなBGMが流れるのだが、このBGMに含まれているベースが「ズンズン」と迫力たっぷりに再生されるのだ。Vitaの内蔵スピーカーは低音がほとんど出ないので、ベースの存在にすら気付いておらず、「こんな曲だったのか」と驚いた。

 テレビを再生しても同様。洋画のアクションシーンは迫力満点。普通のニュースでも、男性アナウンサーの声に、低域の厚みが加わるため、言葉が聞き取りやすい。プロ野球でも実況や解説、背後の歓声なども、聞いて耳が疲れにくいと感じる。おそらく、Vita内蔵スピーカーだと、高域のみのスカスカした音なので、言葉の内容や、人の声質の違いなどが判断し辛いため、無意識に意識を集中しているのだろう。「SoundLink Mini」では快適に聞き取れるので、いつもより長時間Vitaでテレビを観てしまった。

 ゲームも内蔵スピーカーとは別次元。「ソウルサクリファイス」というアクションゲームをプレイしてみたが、オープニングの「ズシーン」という効果音や、ゲーム名を読み上げるサウンドロゴの段階から、低域が力強く音楽を支え、重厚感が漂う。ゲーム中も魔法の効果音や、敵モンスターの足音などがズシンと響き、ダークファンタジー特有の硬派な世界観にグッと奥行きが加わる。何度もプレイしているのに初めて遊んだような気分になった。

まとめ

 22,890円と、Bluetoothスピーカーとしては高価な部類だが、ボーズ製品のラインナップでは、比較的購入しやすい価格帯のモデルだろう。

 音質は、このサイズと1BOXスピーカーとしてはトップレベル。特に低域再生能力に関しては、並ぶモデルが思いつかない。デザインや質感も高く、気軽に持ち運べるので、利用シーンの多いスピーカーになるだろう。

 1点気になったのは、低域のレベル。もともとのバランスが低域寄りというのもあるが、例えば深夜に利用している時などは、低域の迫力をそれほど必要なく、逆に「もう少し低音を絞りたい」と感じる場面もある。その際に、スピーカー側で、低域の量を調整する機能が無いのだ。

ACアダプタも収納できるナイロン製のトラベルバッグ「SoundLink Mini travel bag」も別売で用意されている。価格は5,040円

 スマホなどと接続している場合、再生機器側でイコライザなどでカスタマイズする事も可能だろうが、そうした機能の無いプレーヤーと組み合わせる時に備え、スピーカー側でもある程度の低域量調整機能が欲しいところだ。

 ともあれ、低音が出ない事で悩むはずの小型スピーカーで、逆に“出過ぎて絞りたくなる”というだけで驚きだ。自室でパーソナルに音楽やゲーム、Radikoアプリのラジオなどを楽しむだけでなく、リビングで複数人でタブレットで動画を見たり、アナログ接続でテレビ用スピーカーとして使うというのも面白いだろう。見た目より重量はあるが、出張のお供としても心強い。1台あると、“ちょっとしたリスニング”が大幅にクオリティアップするスピーカーと言えそうだ。

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(山崎健太郎)