レビュー

Vita+nasneがモバイルTV/レコーダに。PS Vita用torneを試す

PS3と同じ操作感。ワイヤレス番組書き出しも

nasneとPlayStation Vita

 「torne(トルネ) PlayStation Vita」は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のネットワークレコーダ「nasne」に対応したPlayStation Vita(PS Vita)用アプリ。

 nasneの録画予約や録画番組再生をテレビを使わずVitaだけで実現できるほか、ビジュアルシーンサーチなどの再生操作や、放送中のテレビ番組視聴、nasneで録画した番組をVitaへ書き出すことが可能になる。

 要するにnasneの録画/放送番組用のディスプレイとしてVitaが利用できるアプリで、このアプリと、Vita(24,980円)とメモリーカード(2,200円~9,500円)、nasne(16,980円)を組み合わせることでレコーダ+家庭内のモバイルテレビ環境が実現できる。

 アプリの価格は800円だが、12月20日から2013年2月27日までは無料でダウンロード可能となっている。今回は、nasneとtorne for PS Vitaを組み合わせたテレビ視聴環境についてレポートする。

アプリ購入はPS Storeから

torne PlayStation Vita

 torne PlayStation Vitaの利用には、アプリのほか、nasne本体と無線LAN環境、さらにPS Vita用メモリーカードカードが必要となる。

 購入はVitaの「PS Store」アプリから。価格は800円だが、2013年2月27日までは無料でダウンロードできる。PS Storeの「アプリケーション」カテゴリから「torne(トルネ) PlayStation Vita」を選択し、利用にはnasneが必要であるとの注意書きを確認した上でダウンロードを実行。ダウンロード終了後にホーム画面へ戻ると自動でインストールが開始され、Vitaのホーム画面にtorneのアイコンが追加される。

PS Storeからダウンロード
ダウンロード時にはnasneが必要である旨を表示
ホーム画面に戻ると自動でインストールを開始

 初回起動時は本体のアクティベーションを行なうためインターネットに接続した無線LAN環境が必要。Vitaで無線LANに接続した状態でtorneを起動すると、同じネットワーク内にあるnasneを自動的に検出し、十字ボタンの右を押していくと設定を進められる。すでにPS3で利用済みであればチャンネルスキャン設定なども省略できて手軽だ。もちろんVitaと初めてnasneを使う場合も、チャンネルスキャン設定などをVitaから行なうことで、PS3がなくてもVita単体で利用できる。

初期設定
ネットワーク内のnasneを自動で検出
PS3で設定済みの場合はチャンネルスキャンをスキップできる
チャンネルスキャン
BSデジタル設定
torneオンラインサービス設定。「トルミル」機能を利用できる
初回利用時はアクティベーションが必要
書き出し用のメモリーカードを設定する

PS3版「torne」そのままの画面UI。タッチ操作にも対応

torne PlayStation Vitaの画面。背景など細かな点を除けばPS3とほぼ同一のインターフェイス

 画面の構成はPS3と同様円状にアイコンを配置。背景のアニメーションがないといった細かな違いはあるものの、8個のアイコンで構成された画面インターフェイスはPS3のtorneアプリそのもので、PS3でtorneを利用したことがあれば違和感無く使い始められるだろう。

 ただし、画面構成が同じでもPS3とまったく同じ機能が利用できるわけではない。最大の違いはnasneの登場まで「torne」と呼ばれていた、PS3専用地上デジタルチューナーがVitaからは操作できないことだ。PS3専用地上デジタルチューナーで録画した番組はもちろん、PS3専用地上デジタルチューナー側に録画予約している番組情報もVitaでは確認できない。torne PlayStation Vitaはnasneと組み合わせでのみ利用可能という点は留意しておきたい。また、Twitter連携機能である「ライブ」機能もVitaでは非対応となる。

 番組の視聴履歴もPS3とは共通化されていないため、どのチャンネルやどのジャンルの番組を見たか、テレビと録画どちらを見たかという履歴を確認できる「CHART」機能はPS Vitaでの再生履歴のみをカウント。また、PS3ではドラマを10本再生するといった条件をクリアすることでトロフィーを入手できるが、Vitaではこのトロフィー機能も省略されている。

チャンネル別の視聴履歴
視聴履歴はチャンネル別やジャンル別に表示できる
四隅にボタン機能が割り当てられている

 アプリの操作は物理ボタンとタッチ操作の両方に対応。PS3と同様のボタン操作、タッチ操作の好きな方を選べるのが嬉しい。また、タッチ操作用のギミックとして、画面右下に△ボタン、左下に×ボタン、左右上下にShiftボタンが割り当てられており、タッチのみで一通りの操作が可能。番組表や録画番組一覧では、本体を振ることで画面の一番上まで戻ることもできる。

録画機能もPS3と同等。操作感も遜色なし

録画設定

 torne PlayStation Vitaの機能は大きく分けて「番組の録画予約」「録画番組の再生」「放送中にテレビ番組視聴」「録画番組の書き出し」の4つに分けられる。録画予約は「GUIDE」の番組表から好きな番組を選んで録画可能。録画設定はPS3と同様で、「3倍モード」「DRモード」という画質選択や繰り返し録画設定に加えて、複数のnasneを利用している場合はどのnasneに録画するかを選択可能。ただし、放送日や放送時間などの情報は省かれている。

 番組表はLRボタンまたは2本指によるピンチ操作で最大9チャンネル、最小3チャンネルと、PS3と同じ情報量を表示できる。テレビに比べると画面サイズの小さいVitaだが、5インチで960×544ドット、220dpiのディスプレイのおかげで、最大8チャンネルの表示でも文字が十分に読めるほど視認性が高い。番組表の移動速度も非常に速く、PS3の操作感と遜色ないほど快適に操作できる。

番組表で9チャンネルを表示
番組表で3チャンネルを表示
番組表の操作動画

 録画予約は番組表以外に「SEARCH」から条件を指定して検索することも可能。「ドラマ」「アニメ/特撮」といった番組ジャンルや日付、時間帯、番組種別に加え、キーワード検索にも対応する。他のユーザーによる番組録画情報や視聴情報を元に人気番組をチェックできる「トルミル」機能を併用することで、「アニメ/特撮ジャンルで人気のある作品のみを録画する」という使い方も可能だ。

番組の検索機能
カテゴリを「アニメ/特撮」に設定、「トルミル」で人気順にソート

nasneの録画番組に加えて放送中のテレビ番組視聴にも対応

録画番組一覧

 録画済みの番組は「VIDEO」から視聴する。こちらもPS3と同様のインターフェイスで、日付別や曜日別、ジャンル別、チャンネル別の切替が可能。複数のnasneを同時に利用している場合、録画先のnasneを切り替えることもできる。

 未視聴の番組は「NEW」アイコンが表示されるほか、ドラマやアニメといったシリーズ作品はシリーズごとにまとめて表示。未視聴の番組またはシリーズ番組のみに絞り込んで表示する機能に加え、シリーズ番組を連続で再生する機能も搭載。ドラマやアニメを撮りためておいて一気に消化したい、という時に重宝する機能だ。なお、番組の視聴管理はPS3と共通となっており、Vitaで視聴した番組はPS3でも既視聴扱いとなる。

シリーズ作品は連続再生できる
未視聴の番組のみ絞り込んで表示

 番組再生時は十字ボタンの左右で早送り/早戻し、LRボタンで15秒単位のスキップ、□ボタンで15秒/30秒/1分/2分/5分単位のシーンサーチ、○ボタンで一時停止が可能。△ボタンからは番組情報や音声切替、字幕切替といった機能が利用できる。また、画面タッチで一時停止、左右へのフリックでスキップといったタッチ操作も可能だ。

シーンサーチ
メニュー画面から音声切り替えや字幕切り替えも可能

 番組はすべて480p(640×480ドット)で出力されるが、5インチの画面サイズでは十分な画質。レスポンスも良好で、早送りやスキップ、シーンサーチも快適に操作できる。

放送中の番組も視聴可能

 また、「TV」からはnasneを利用して現在放送中のテレビ番組を視聴することもできる。前述の通りTwitter連携のライブ機能こそ利用できないものの、テレビを使わなくても番組が視聴できるのは非常に手軽。寝室で寝る前にテレビを見たり、ゲームやPCの傍らでテレビを視聴するなど、ポータブルテレビとしても活躍する。ワンセグと異なり、無線LANエリアであれば宅内のどこでも視聴できるエリアの広さも魅力だ。

実時間の1/3程度で番組をワイヤレスに書き出し

 ここまでの機能は、多少の差異はあるものの基本的にはPS3と同様の機能をVitaで実現しているのに対し、torne PlayStation Vitaならではの機能となるのが、ワイヤレスでの番組書き出し機能だ。これまでVitaに番組を書き出すには専用アプリ「uke-torne(ウケトルネ)」をvitaにインストールした上でPS3とVitaをUSBで接続する必要があったが、torne PlayStation Vitaであれば同一のネットワークにあるnasneの番組をワイヤレスで書き出すことができる。

 番組の書き出しは該当の番組を選択した状態で△ボタンを押し、「ビデオの書き出し」を選択するとおおよその書き出し時間の目安を表示され、「開始する」を選択すると書き出しを開始する。□ボタンで複数の番組を選択しておけば、複数の番組をまとめて書き出すことも可能だ。

△ボタンから録画番組を書き出せる
未視聴の番組のみ絞り込んで表示
書き出し時にはバッテリー残量の注意が表示される
Vitaに書き出した番組はnasneの番組と並列に表示される

 フレッツ光向けルータ「RV-A340NE」にIEEE 802.11g/nで接続し、PS3からワイヤレスで番組を書き出したところ、3倍モードで録画した28分の番組(容量3.8GB)は転送時間目安が7分のところを約9分40秒、DRモードで録画した26分の番組(容量3.1GB)は転送時間目安約11分のところを約10分10秒で完了した。3倍モードのほうが目安より多少伸びているものの、いずれも実時間の1/3程度で書き出せる。複数の番組を選択して書き出すことも可能なため、寝る前に番組をまとめて書き出しておき、通勤中に楽しむ、ということも可能だ。

torne PlayStation Vitaを終了しても書き出しは継続できる

 なお、番組の書き出しはtorne PlayStation VitaではなくVita本体で行なうため、書き出しの最中にtorne PlayStation Vitaを終了しても書き出しは継続され、ゲームをプレイしながら番組の書き出しを行なうこともできる。ただし、ゲームによってはワイヤレス機能をオフにするものもあるため、その場合は当然ながら書き出しが中断されてしまう点は注意が必要だ。

nasne対応クライアントとしては最高水準のスペック

 スマートフォンやタブレット、PCなど幅広い機器と連携できるのがnasneの魅力だが、PS3とほぼ同等の操作感とインターフェイスで利用できるtorne PlayStation Vitaは非常に使いやすい。単に録画番組を楽しむだけでなく放送中のテレビ番組もnasne経由で視聴できるため、1人暮らしで大きなテレビが必要ない、というユーザーであれば、nasneとVitaがあればほぼ事足りてしまうかもしれない。

 書斎でPCを使いながらテレビをながら視聴したり、家族がテレビを使っている間に録画した番組をVitaで楽しむなど活用方法はさまざま。Vitaの標準価格はWi-Fiモデルでも24,980円と値は張るものの、nasne対応クライアントとしては最強のスペックと感じた。Vitaのユーザーは2月27日までの無料期間内にぜひダウンロードしておきたいアプリだ。

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甲斐祐樹