レビュー

個性が大事! 尖ったBluetoothスピーカー【Klipsch編】

カバーがスタンドに変形!「GiG」。音にも効果的

Klipschの「GiG」

 個性的な機能やデザインを持ったBluetoothスピーカーを紹介している特集企画。第1回のJBLに続き、第2回目に取り上げるのは、フロンティアファクトリーから12月18日に発売された、米Klipschの「GiG」(ギグ)だ。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は19,800円前後。

 Klipschと言えば、Klipschホーンなどのオーディオ用スピーカーや、Image X10などのイヤフォン・ヘッドフォンがお馴染みだが、Bluetoothスピーカーにも注力。最近ではバッテリ内蔵で持ち運びできる「KMC1」(オープン/実売30,800円前後)や、横幅43.2cmの大型筐体タイプで、2.1chスピーカー内蔵の「KMC3」(実売40,800円前後)なども投入している。

 「KMC1」と「KMC3」は、サイズの違いはあれ、デザインの方向性は同じ。横長筐体に、カーブを描いた側面、天面にはスマートフォンなどを設置できるスペースを用意。実用的かつ、シンプル&オーソドックスなデザインと言えるだろう。

 一方、今回紹介する「GiG」は、よりコンパクトなBluetoothスピーカー。アシンメトリーな外観で、ギミックが特徴となっている。

左からKMC3、GIG、KMC1
左からKMC3、KMC1

カバーで利用スタイルやカラーをカスタマイズ

 片手で持てるサイズで、前面と背面、両方がメッシュ張り。どちらが前で後ろなのか、よくわからないデザインだ。天面の片側に、ボリュームつまみのような円形のパーツが搭載されている。外形寸法は53×178×91mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は600gだ。

アシンメトリーな外観のGIG
幅は53mm
GIGのロゴ

 大きな特徴は、この円形パーツを“蝶番”のようにして、スピーカー側面を保護するボディケースカバーが可動し、分離もできる事だ。カバーは“コの字型”で、単純に取り外すだけでなく、開いた状態で固定し、GiGを支えるスタンドのように使う事もできる。

 例えば横向きの場合は、安定性を高めるスタンドとして機能。さらに、90度に開いた状態でカバーを固定すると、カバー部をスタンドとして縦置きもできる。

天面と底面をカバーするように、コの字型カバーを装着している
カバーはズラして、スタンドのように使うこともできる
カバーをスタンドとして使い、縦置きしたところ

 このカバーは、磁力と凹凸で固定されているので、縦に自立させた状態でもスタンドとして安定感があり、そのまま長時間の縦置きも可能だ。パチンと完全に取り外せば、カバーを外した状態でもスピーカー部分は利用可能だ。

カバーは着脱もできる
ボール状の突起で、カバーの窪みを固定する仕組み
カバーを外したところ。この状態でもスピーカーとして問題なく利用できる

 さらに、カラーの異なるカバーパーツだけが別売されており、“着せ替え”を楽しむ事もできる。製品としてのカラーはブラック、ホワイトの2色だけだが、カバーパーツは各2,625円で、ブルー、イエロー、レッド、オレンジ、ピンク、ブラック、パープル、ホワイトの8色が直販サイトで販売されている。置き方やカラーを自由にカスタマイズできるBluetoothスピーカーは珍しい。

カバーを変更すれば、スピーカーのカラーカスタマイズが楽しめる

ボリュームノブはやっぱり便利

 使っていて便利だと感じるのは、天面に設けられたボリュームノブだ。回すと音量調整ができるのだが、とっさに音量を変えたい時に、直感的な操作ができるのはやはり便利。Bluetoothスピーカーではボタンで音量調整する製品が多く、スマホ側からもボリューム調整は可能だが、やはり直感的に、素早く調整できるのはボリュームノブだ。グリグリまわしていると、“オーディオっぽさ”も感じられて楽しい。

 なお、このノブはバッテリのインジケーターも兼ねており、残量がおおよそ把握できる。最初は「常に光る必要あるのかな?」と思っていたが、深夜に部屋の電気を消した状態で、スマホの動画を見ながら利用していた際に、ボリュームノブの位置が光ですぐに把握できて便利だった。

天面にボリュームノブを装備
緑色のインジケーターがバッテリ残量を示している
直感的なボリューム操作が可能。再生制御もこのノブで行なえる

 また、このボリュームノブは押しこむ事もでき、1回押して再生/一時停止、2回押して曲送り、3回で曲戻しが可能。マイクを内蔵し、ハンズフリー通話にも対応しているので、ボタンを押して電話に出る事もできる。

カバーをしたままでもNFCペアリング可能

 使い勝手の面では、NFCに対応しているのもポイントだ。センサーを天面に備え、対応スマホをタッチするだけでペアリング可能。本体のNFCセンサーとスマホの間にカバーがあっても、この程度の厚みなら問題なくペアリングできる。

 カバーを横にズラすと、スピーカー本体の横端にステレオミニのアナログ入力×1系統と、電源スイッチ、充電用のUSB端子が現れる。Bluetooth非対応の機器とも接続可能だ。電源は内蔵のリチウムイオンバッテリを使用。駆動時間は通常の音量で約12時間、最大音量で約4時間となる。

 なお、操作性に優れたモデルだが、使っていて1点気になったのは電源スイッチの位置だ。アクセスしやすいボリュームノブに電源ON/OFF機能も持たせてしまえば良いと思うのだが、何故かカバーをズラした横端にあるので、電源操作のたびにカバーをズラす必要があるのが気になった。まあ、常にカバーを開いたスタイルで使っていれば良いのであるが。

カバーをズラすと電源ボタン、充電端子、アナログ入力が現れる

スタンドは音にも好影響!?

 BluetoothのコーデックはaptXとAACに対応する。ユニットは、2.5cm径のフルレンジを2個搭載。定格出力は20W。さらに、5.1cmのパッシブラジエータも搭載。再生周波数帯域は77Hz~20kHz。最大出力は96dBだ。

 スマホのXperia Z1と連携し、音を出してみる。側面は両側ともメッシュになっているので、どこにユニットが搭載されているのか、外からではわからない。

 フルレンジ×2個なので、前面、背面に1個ずつ搭載しているのかと思ったが、耳を近づけてみると、ボリュームノブを左側に持ってきた状態で、前側に来る部分に2個共搭載されているようだ。カバーをスタンドとして縦に自立させた場合でも、フルレンジ×2個を搭載していると思われる面が、ユーザーの方を向くようになっている。

 コンパクトな製品だが、音質は良好。クリアで抜けの良い中高域が持ち味で、ボリュームを上げても、筐体の震動によって音に色がつく事がない。抜けの良い高域と、鳴りっぷりの良さがKlipschスピーカーの持ち味の一つだが、この小さなBluetoothスピーカーでも、同社の思想が感じられるのが面白い。

 とはいえ、このサイズなので低音はズシンと地面に響くほどではない。重低音を期待する人には物足りないだろうが、バランスは良好。抜けの良い中高域をハイ上がりにさせないレベルの中低域はシッカリと出ており、まとまりの良いサウンド。決して安っぽい音ではない。

 音楽だけでなく、スマホで格闘ゲームもプレイしてみたが、スマホ内蔵スピーカーの音とは次元が違う。敵を殴るボコッという音も重みと厚みがあり、しっかりと“痛そう”だ。組み合わせに使っているXperia Z1は防水仕様のためか、内蔵スピーカーの音が今ひとつなので、別体Bluetoothスピーカーと接続した時の音のグレードアップぶりに驚かされる。

 筐体の剛性も高いため、8人が入れる会議室で、全員がしっかりと音楽を聴き取れる程度にボリュームを上げていっても、筐体がビリつかず、再生音の濁りも少ない。例えば部屋に友達が何人か遊びに来て、BGM的に音楽を流したり、一緒に動画を見る時の外部スピーカーとして利用するようなシーンでも、複数人視聴にシッカリ対応できるだろう。

接地面が軟な場合は縦置きも有効だ

 前述のようにカバーをスタンドにして縦置き可能だが、これも音に変化がある。ベッドの上に横置きして、寝ながらスマホで動画を鑑賞すると、吸音材の上にスピーカーを置いているようなものなので、当然音が布団に吸われて痩せてしまう。

 そこで、試しに縦置きしてみたところ、音が斜め上に向かって放出されるため、痩せたバランスが回復。中低域の量感と厚みが戻ってくる。もちろん、シッカリと硬い机に置いた方が音は良いのだが、ふにゃふにゃした場所でも工夫で音質を向上できるところが面白い。

 また、編集部の会議室にある、天板がプラスチックの大きな机に置いた場合でも、横置きすると机に音があたり、その部分から硬くてプラスチックっぽい反響音が生まれ、再生音と一緒に耳に入ってしまう。そこで縦置きしてみると、机の反響音が軽減され、特に高域がクリアになる。使い勝手が良くなる機構だが、音質面でも侮れない効果がある。

KM1/3とも聴き比べ

 オマケとして、同じKlipschのBluetoothスピーカーで、兄貴分にあたる「KMC1」、「KMC3」とも比較してみよう。2機種ともaptX/AACコーデックをサポート。コンパクトなのが「KMC1」だが、GIGよりは一回り大きい。天面にNFCのセンサーを装備している。

 一方、外形寸法43.2×14×18.3cm(幅×奥行き×高さ)と大型なのは「KMC3」。重量は3.5kgあるが、上部にくぼみに指を入れれば持ち運びやすい。天面にはスマホを設置するスペースもあり、背面にはスマホ充電用のUSBポートも備えている。50mm径のフルレンジユニット×2と、133mm径のロングスロー・ウーファ×1を搭載した2.1chタイプだ。

 なお、NFC対応は小型の「KMC1」のみで、何故か「KMC3」は対応していない。

コンパクトな「KMC1」
大型の「KMC3」
左が「KMC3」、右が「KMC1」
「KMC1」はNFC対応。天面にはスマホ用のすべり止めも
「KMC3」はNFC非対応だが、スマホを設置する台を天面に搭載。スマホ充電もできる
「KMC3」は大型だが、持ち運びやすいように取っ手もついている

 いずれのモデルも、Klipschらしい抜けの良い中高域が楽しめ、GIGと音の方向性は似ている。「KMC1」は一回り大きいので、低域の量感もGIGよりアップし、リッチな再生音だ。

 ただ、低音をパワフルに聴かせようという意図なのか、中低域が若干強調されている。また、思ったほど低音は出ていないので、膨らんだ中低域と、抜けの良い高域が主張する、ちょっとドンシャリ気味なバランスだ。ナチュラルさ、バランスの良さではGIGの方が優れており、聴き疲れしない。「KMC1」はヴォーカルが際立つ、派手目のバランスだ。個人的にはGIGの方が好ましく感じる。

 「KMC3」はサイズの大きさを活かし、スケールの大きな再生音を実現。当然だが、他2機種とは世界が違う。クラシックやビッグバンドのJAZZなど、音場が広く、音数の多い楽曲も余裕を持って再生できる。いわゆる“Bluetoothスピーカー”というイメージから連想する音ではなく、据え置きコンポのスケールだ。正面から聴くと、ヴォーカルがスピーカーの上部に明確に定位する。

 分離の良い音で、ヴォーカルとベース、ギターなど、個々の音の境界がクッキリしており、聴き取りやすい。低音も他の2機種と比べると次元が異なり、ズシンと響く本物の低音がシッカリと出ている。特定帯域の誇張も少なく、バランスの良さはGIG寄りのナチュラルなもの。派手さは無いが、長時間じっくりと聴ける、素性の良いワイドレンジサウンドだ。

活用シーンを広げるギミック

 コンパクトながら独自のギミックを備えたGIGは、それにより多様な使い方ができるモデルだ。標準でカバーに覆われているので、日常生活のちょっとした隙間に設置し、そこをリスニング空間に早変わりできる。スタンド兼用カバーにより、その設置場所を拡大させており、持ち運びやすさもそれに拍車をかけている。欲を言えば防水・防滴なども実現し、お風呂場にも持って行きたくなるスピーカーだ。再生音のバランスも良いGIGは、トータルで完成度の高いモデルだ。

 上位の大型モデルと比べると、スケールや低音の再生能力ではかなわないが、コンパクトながら、バランスの良さを追求した音質は高く評価したい。無理に低音を出そうとしてボンついたり、高域が不必要に綺羅びやかで聴き疲れするようなサウンドになっておらず、長く使える飽きの来ない真面目なサウンドだ。

 Bluetoothスピーカーも様々なサイズが登場し、KMC3のような大型据え置きモデルも増加している。また、ハイコンポや一体型コンポでも、Bluetooth対応は当たり前の機能になりつつある。“Bluetoothスピーカーが複数ある家”も珍しくなくなるだろう。そうした時に、コンパクトなBluetoothスピーカーには設置性の高さ、持ち運びやすさ、より生活に密着するためのカスタマイズ性の高さなどが求められていくだろう。そうしたニーズを先取りしようという意欲が感じられる製品だ。

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Klipsch GiG
Black
Klipsch KMC1
White
Klipsch KMC3
Black

山崎健太郎