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第482回:「2011楽器フェア」レポート

〜ローランド「R-MIX」や、ティアックのiPhoneマイクなど 〜


2年に1度の楽器の祭典「楽器フェア」 会場の様子

 2年に1度の楽器の祭典、「楽器フェア」が今年も横浜みなとみらい地区にあるパシフィコ横浜で11月3日〜6日の4日間開催された。

 前回に比較するとフロアが狭くなり出展数も減った感はあるものの、各社から新製品がいろいろと登場するとともに、さまざまなライブステージも繰り広げられ大いに盛り上がっていた。最終日には、ヤマハ、ローランド、コルグの3社共同でのシンセサイザーサミットといったイベントも行なわれたようだが、初日に見てきたので、各ブースで見つけた新製品を中心に紹介していくことにしよう。


■ CDなどを“リマスタリング”するローランドの「R-MIX」、「R-MIX Tab」

 まず最初に向かったのがローランドブース。というのも、個人的にとても興味がある「V-Remastering」という技術を搭載したソフトウェア、「R-MIX」が触れる状態になっているという話だったからだ。V-Remasteringというのは、CDなどすでに完成している楽曲をいじることができる技術で、音を分析してグラフィック表示させるとともに、それをリアルタイムにコントロールするもの。

 そのV-Remastering技術を搭載したパッケージソフトとして「R-MIX」が2012年1月にWindows用、Mac用のハイブリッド製品としてリリースされるが、それに先駆けて12月にiPad用の「R-MIX Tab」が登場する。価格は「R-MIX」が16,000円前後、「R-MIX Tab」が1,000円弱となる見込みだ。

 R-MIXの画面中央にはサーモグラフィーのようなグラフィックが表示されているが、この縦軸が音の高さ、横軸は音の定位(PAN)を表しており、色が明るいほど強い音であることを意味している。そして、この中から任意の位置を囲むことができるのだが、囲った内側の音を消したり、反対に外側だけを消すといった操作が自在に行なえる。

 たとえば、センターに定位しているボーカル部分を囲って消すと、カラオケになったり、反対に外側だけを消せばボーカルだけを取り出せる。また左側に定位しているギターだけを抜き出したり、低域で鳴っているベースだけを取り出してコンプレッサをかける……などなど、従来では考えられなかったような面白い操作ができてしまうのだ。

 会場ではiPad版をいろいろ触ってみたが、リアルタイムで音を抜き出せるのは、本当に面白い。iPadのCPUパワーでここまでできるのか、というのも驚きだったが、入手できたらさらに詳しくレポートしてみる予定だ。

R-MIX R-MIX Tab

■ ヤマハはユニークなSteinberg新製品や、NETDUETTO NGN版のデモなど

 次に向かったのが今回最大の広さのブースを構えるヤマハ。この会場で新発表という製品はなかったが、新製品がズラリと並んでいた。入り口付近で結構目立っていたのが11月20日発売予定のレトロデザインなギターアンプ、THRシリーズ、「THR10」と「THR5」の2機種だ。

 ギターアンプといってもステージで使うためのものではなく、定格出力5W+5Wという小さいもの。自分の部屋で小さい音で出したり、ヘッドフォンで使うという変わったコンセプトの機材となっている。最大の特徴は、ここにアンプシミュレータやエフェクトが搭載されているということ。いわばスピーカー付のLINE6 PODといった製品なのだ。

 THR10、THR5とも出力は同じだが、モデリング数がTHR10のほうが多い。また両機種ともにUSB端子が搭載されており、オーディオインターフェイスとして利用可能となっているほか、Cubase AI6がバンドルされている。ともにオープン価格だが実売価格がそれぞれ29,800円、19,800円前後となる模様だ。

 奥に入るとSteinberg製品が並んでいる。先日紹介した、SteinbergのオーディオインターフェイスUR28Mのほか、11月15日発売予定のラックマウントのUSBオーディオインターフェイス、「UR824」も登場した。これはノイトリック XLR/TRS コンボ入力×8、TRS出力×8による8アナログ入出力に加え、ADAT×2のデジタル16入出力を装備し、トータル24in/24outを実現したというもの。実売価格は79,800円前後となる。

THR10 THR5(上) UR824

 同じSteinbergブランドのハードウェア製品として、とてもユニークだったのがコントロールサーフェイスのCMCシリーズ。10月末に発売されたばかりのCMCシリーズは、実売価格が1つ15,000円前後(CMC-FDのみは、17,000円前後)のコンパクトなコントロールサーフェイス。

 タッチセンス式のフェーダーに赤・青・緑・オレンジ……とカラフルなLED入りのボタンが並ぶデザインにも凝った機材で、「CMC-TP(TRANSPORT CONTROLER)」、「CMC-CH(CHANNEL CONTROLLER)」、「CMC-FD(FADER CONTROLLER)」、「CMC-AI(AI CONTROLLER)」、「CMC-QC(QUICK CONTROLER)」、「CMC-PD(PAD CONTROLLER)」の6つがある。

 いずれも単独で利用でき、Cubaseのコントロールに最適な設計となっているが、複数の機材をチョイスし、それらを必要なだけドッキングさせて使うといったことも可能になっている。1つずつはコンパクトなので、狭いDTM環境でも気軽に置いて使えるのが大きなメリットとなっている。

CMC-TP(TRANSPORT CONTROLER)(左)CMC-CH(CHANNEL CONTROLLER)(右) CMC-FD(FADER CONTROLLER)(左)CMC-AI(AI CONTROLLER)(右)
CMC-QC(QUICK CONTROLER)(左)CMC-PD(PAD CONTROLLER)(右) 複数の機材を必要に応じてドッキングさせて使うことも可能

 同じヤマハブース内の正面ステージでは、NETDUETTO NGN版のデモが行なわれていた。これはNTTのフレッツ光NEXTを用いて2拠点を16bit/44.1kHzで双方向通信を行なうというもの。楽器フェアのステージ上には日本シンセサイザープログラマー協会の上杉尚史氏がギターを持って演奏しながらシステムを解説。相手は大阪にいて、ギター同士でのセッションが行なわれた。

 それぞれの場所にはPCとSteinbergのオーディオインターフェイス、MR816csxが設置され、専用のミキサーソフトが動いている。これを見ると、20〜22msecで接続されているようで、確かにこれなら問題なく演奏ができそうだ。ちなみに、音速が340m/secだと仮定すれば、20msecのレイテンシーは6.8mの距離差ということになるので、同じステージ上での演奏と考えて問題ないだろう。NETDUETTOはインターネット回線上で使えるNETDUETTO βが無料で公開されているが、このNGN版も今後一般向けへの展開が検討されているようなので、楽しみにしたいところだ。

ヤマハブース内の正面ステージでは上杉尚史氏がギターを持って演奏しながらNETDUETTO NGN版のデモを行なった 2拠点にPCとSteinbergのオーディオインターフェイス、MR816csxが設置され、専用のミキサーソフトが動く 回線速度は大体20〜22msecで接続されている

■ コルグはmonotron新シリーズ2機種や新DSDレコーダ

 コルグのブースで目をひいたのは、小型のアナログシンセサイザ、monotronに新シリーズが2つ追加されたこと。「monotron DUO」と「monotron DELAY」で、標準価格はいずれも4,700円というもの。これまでのmonotronと並べるとほぼ同じ大きさとなっているが、それぞれ性格の異なるアナログシンセとなっている。

 monotron DUOはVCOとVCFを2つずつ備えたことで、より過激なサウンドを作れるのが特徴。またコルグのレトロマシン、Mono/Polyに搭載されていたX-MOD(クロス・モジュレーション)機能を装備しており、オシレータ1のピッチをオシレータ2の波形でモジュレーションするなどFM音源的な音作りが可能となっているのが特徴だ。

小型のアナログシンセサイザ、monotronに新シリーズが2つ追加された monotron DUO monotron DELAY

 それに対し、monotron DELAYはその名のとおり、ディレイを搭載したモデル。演奏用というよりも効果音作成に主眼が置かれており、アナログ・テープ・エコーのように、ディレイ・タイムを変更した際に生じるピッチの変化などが再現できる。LFOは三角波、矩形波から選択できるようになっている。

DSDレコーダのMR-2000Sの新モデルも展示されていた

 同じコルグブースにはDSDレコーダであるMR-2000Sの新モデルが展示されていた。従来シルバーボディーであったMR-2000Sがブラックになるとともに、内蔵のHDD容量も従来の80GBから160GBへと倍増。また再生時にLEDのレベルメーターが光らなくなるモードも搭載された。

 これはMR-2000Sをオーディオリスニング用に使う人が増えてきているため、そうしたユーザー向けに追加した機能となっている。この新モデルの登場に伴い、シルバーの旧モデルはなくなる。価格的にはこれまでとほぼ変わらない模様だ。


■ ティアックがiPhone/iPad用デジタル接続マイクを参考出品

 ティアックブースで参考出品されたのがiPhone/iPad用のステレオコンデンサーマイク、「TASCAM iM2」。これはDOCKコネクタに接続するマイクだが、以前数社から出ていたアナログ接続のものではなく、デジタル接続によるもの。搭載されているのは単一指向性マイクで、マイクの向きを回転させることも可能になっている。

 入力レベル調整用のボリューム、リミッターが搭載されているほか、ミニUSB端子が搭載されているが、これは外部からマイクへ電源を供給するためのもの。これを接続しない場合は、本体からの電源供給となる。発売時期、価格は未定だが、年内を目指すとともに、15,000円以内には抑えたいとしている。

iPhone/iPad用ステレオコンデンサーマイクのTASCAM iM2 マイクの向きを回転させることも可能 マイクへ電源を供給するためのミニUSB端子を搭載

 同じティアックブース内には、ティアックが流通とサポートを手がけているLINE6製品も展示された。その中での注目は先日発売された、iPhone/iPad用のギター入力インターフェイス、「Mobile In」。11月末に実売価格8,400円前後で店頭に並ぶ予定の、このMobile Inの最大の特徴はアプリにある。iTunes App Storeに並ぶ予定のユニバーサルアプリは、iPhoneやiPadをLINE6のアンプシミュレータ、PODにしてしまうというツールなのだ。アンプ32種類、キャビネット16種類、エフェクト16種類の計64種類の機材をモデリングすることができてしまうという優れもの。

 Mobile InはDOCKコネクタに接続するコンパクトなもので、これ自体にはギター入力とライン入力のそれぞれを装備。出力端子はないので、エフェクトのかかった音はiPhone/iPadのヘッドフォン端子から聴く形となる。

 なおアプリ自体は無料で配布されるが、Mobile Inを接続していないと音を入力できないため、操作感のみが確認できるということのようだ。会場には実際に触れるデモ機が置いてあり、実際に少し試してみたが、PODというよりも、それをさらに進化させた強力なアプリのようだった。

iPhone/iPad用ギター入力インターフェイス Mobile In iPhoneやiPadをLINE6のアンプシミュレータ、PODとして使用可能なツール アンプは32種類を搭載

■ DigiTechはiPadを使ったギター用マルチエフェクターを出品

 そのMobile Inに対抗する形で登場してきたのが、DigiTechのプログラマブル・ペダルボード、「iPB-10」だ。これはiPadをコアにして使うギター用のマルチエフェクター。6月に海外では発表されていたが、国内の代理店が神田商会に決まり、11月1日から標準価格73,500円で発売されていたのだ。

 見てのとおり、真ん中にiPadまたはiPad2を埋め込むような形で搭載させ、右側にはボリュームペダル兼ワウペダルが、エフェクトのオン・オフを行なうためのフットスイッチが10個用意されている。こちらも、アプリ自体は無償ダウンロードできるようで、ここには54種類のアンプ、26種類のキャビネット、87種類のエフェクトが搭載されており、自由に組み合わせることが可能となっている。

 もちろんオーディオインターフェイス機能も装備されているので、これを通じてギターとの接続、ヘッドフォンや外部機器への出力も可能。もちろん、そのオーディオインターフェイス機能をGarageBandをはじめとするアプリで使うこともできる設計となっている。

DigiTechのiPB-10 真ん中にiPad/iPad2を埋め込むように搭載可能

■ 「SX-150markII」や謎の楽器「ウダー」を展示した学研

 もう一つ小さいブースながら目立っていたのが学研。学研では以前、大人の科学の別冊「シンセサイザークロニクル」にアナログシンセサイザ、SX-150を付録につけて大きな話題となったが、そのSX-150を進化させた「SX-150markII」が、10月31日に7,350円で発売された。キーボードではなく電極棒+カーボンパネルという演奏スタイルは従来のままで、1VCO、1VCF、1EG、1LFOといった構成も変わっていないが、RESONACEがボリュームで調整できるようになったり、回路的にも大きく見直されてより高音質になるなど進化を遂げている。

 同じ学研のブースで異彩を放っていたのが宇田道信氏がデモ演奏を行なっていた謎の電子楽器「ウダー」。「ウダー」はこれまでもYouTubeの演奏動画などが各所で話題になっていた不思議な楽器で、手榴弾のようなものを両手で回しながら動かすことで演奏するというもの。これまで宇田氏が演奏してきた機材は圧力センサーで演奏情報をキャッチし、それを小型冷蔵庫のような箱の中でMIDIに変換し、GS音源のSC-8820で音を出すという構造になっていた。それだと、どうしても大掛りになってしまうし持ち運びもなかなか大変であったが、そのウダーがもっとコンパクトになって学研から発売されることが決まったのだ。

 コンパクト化と低コスト化のために従来の圧力センサー式を静電容量センサーに切り替えるとのこと。またMIDI出力は持たず、内部に搭載した音源とスピーカーを通じて音が出せる形になるという。

 当初は年内発売が予定されていたが、少し遅れるようで来年になってしまうとのことだった。

SX-150markII 謎の電子楽器「ウダー」
ウダーは手榴弾型の物体を両手で回しながら動かすことで演奏する 従来のウダーは大掛りで持ち運びも大変だった

 以上、楽器フェア2011で個人的に面白く感じられた機材を取り上げてみたがいかがだっただろうか? R-MIXや各種iPhone/iPad用機材なども今後入手できたら、詳しく紹介していきたいと思う。


(2011年 11月 7日)

= 藤本健 =  リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
 著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto

[Text by 藤本健]