藤本健のDigital Audio Laboratory

第589回

TASCAMの独立マイクプリ搭載USBオーディオ上位機「UH-7000」をチェック

UH-7000

 ティアックのTASCAMブランドからアナログ2IN/2OUT、デジタル2IN/2OUTというシンプルな構成ながら実売価格66,000円前後というオーディオインターフェイス、UH-7000が発売された。

 TASCAM自身、6IN/4OUTまたは4IN/6OUTで実売17,800円のUS-366を主力製品として展開している中、音質重視の高級路線の製品としてUH-7000を登場させてきたのだ。見た目にもガッチリとした重厚な筐体となっているが、実際どんな機材なのか試してみた。

民生機ながらプロ向け設計。マイクプリアンプのみの利用も

 UH-7000は「低ノイズ、高音質を徹底的に追求したプロフェッショナルグレード」とTASCAMが訴えるハイグレードのオーディオインターフェイスであり、スタンドアロンのマイクプリアンプとしても使えるという機材。US-366と並べてみてもわかる通り、2周りくらい大きく頑丈なアルミボディとなっている。重量で比較してもUS-366が500gであるのに対し、UH-7000は2.2kgとズッシリとしたものだ。外形寸法は214×233×81.2mm(幅×奥行き×高さ)。

 アナログが2IN/2OUTであるローランドのDUO-CAPTURE EXやSteinbergのUR-22などと比較しても大きさは明らかに違うし、価格レンジも異なっている。2IN/2OUTの近い価格の製品としてはApogeeのDuet2があるが、これとも違う重厚な雰囲気だ。

 ティアックブランドではUSB DACのUD-501という製品があるが、サイズを見ると高さは81.2mmと同じ。横幅、奥行きはやや小さく、4.0kgあるUD-501よりは軽いが、デザイン的にもちょっと似たイメージだ。

US-366(左)とUH-7000(右)の比較
上から、ローランドのDUO-CAPTURE EX、SteinbergのUR-22、UH-7000
ティアックのUSB DAC「UD-501」
電源はACを使用

 さすがにこの大きさがあるだけにUSB電源供給というわけにはいかず、AC電源が必要となる。ただし、ACアダプタではなく本体に電源部を内蔵しているため、直接AC100Vに接続できるため扱いやすい。

 入出力を見てみると、まずフロントパネルはヘッドフォンジャックが1つあるのみ。リアパネルのほうも比較的シンプル。まず左にあるのが入力で、上にあるTRSフォン×2がライン入力、下にあるXLRがマイク入力となっている。中央にあるXLR出力がアナログ出力で、右側にあるXLRがデジタル入出力。

前面のヘッドフォンジャック
背面

 これを見てもわかるとおり、民生用ではあるものの、XLRの入出力が基本となっているかなり割り切った設計で、業務用として使用可能な仕様。最近のオーディオインターフェイスの大半はコンボジャックを採用し、マイクでもラインでもギターでも何でも接続できる親切な構造だが、UH-7000の場合、「キャノンケーブルを持っていない人は相手にしない」とでも言わんばかりの製品となっているのだ。

 入力レベルはフロントにある2つのノブで調整する。見ての通り、この大き目なノブは重めであり、ロータリーエンコーダではなくアナログのボリューム。そして、その入力レベルは中央にある2つのレベルインジケータに表示されるので、扱いやすい。またその右にある2つのボタンを長押しするとINPUT 1、INPUT 2それぞれのファンタム電源をオンにできるようになっている。

 そのマイク入力に対してはHDIA(High Definition Instrumentation Architecture)という名称のマイクプリアンプ回路が搭載されている。TASCAMサイトには「比較試聴を繰り返しパーツを選定、数値上でのハイパフォーマンスと、実際の音質におけるハイパフォーマンスを両立した」と書かれているが、そのマイクプリアンプはオーディオインターフェイスの1機能として使うだけでなく、スタンドアロンの機材としても使えるのがUH-7000のユニークな点だ。USBでPCと接続しない状態で電源を入れると、UH-7000はスタンドアロンモードで動作するようになっており、マイク信号はマイクプリアンプを経由してアナログ出力やデジタル出力で送り出すことができるようになっている。

入力レベルは中央のインジケータに表示
HDIAマイクプリアンプ回路を搭載

US-366などと同様の使い勝手

クロックにはTCXOを搭載

 ところで、TASCAMの製品情報を見ると、部品選定にもかなりこだわりを持っているようだ。まず内蔵するクロックジェネレーターには、一般的な機器に採用される水晶発振器よりも高い精度のTCXO(温度補償型水晶発振器)を搭載している。一般に水晶発振器は、温度変化によって発振される周波数が変動しするが、TCXOでは水晶振動子の持つ温度特性と正反対の特性を持つ回路(温度補償回路)を内蔵することで、広い温度範囲に渡り良好な温度特性を得られるため、安定したクロックを供給できるのだそうだ。精度的に、一般の水晶発振器が+/-100ppm(48kHzの場合4.8Hz)程度であるのに対し、TCXOでは精度+/-1ppm(48kHzの場合0.048Hz)を実現しているとのこと。

 さらにADコンバータ(ADC)には、TI/バーブラウンのPCM4220を採用。プロフェッショナルオーディオ用に開発されたPCM4220は、単体でのダイナミックレンジが123dB(-60dB input, A-weighted)というスペック。PCM4220でデジタル化されたオーディオ信号は、USB経由でPCに送られるか、デジタル出力端子より外部へ出力される。一方のDAコンバータ(DAC)もバーブラウンのPCM1795を採用している。ちなみに、そのデジタル端子はS/PDIF、AES/EBUのいずれかを選択して利用できるようになっている。なお、USB Audio Class対応ではないので、iPad/iPhoneとの接続には対応しない。試しに接続してみたが、認識はされなかった。

ADCはPCM4220
DACはPCM1795

 では、実際にPCと接続して、いろいろと試してみよう。ドライバのインストール画面を見る限り、従来製品と同様、独Polytec社のものを採用している模様。インストール終了後にフロントのMIXER PANELボタンを押すとミキサー画面が表示される仕様となっている。この画面を用いることで、UH-7000を自在にカスタマイズして使うことができるのだ。

ドライバのインストール画面
MIXER PANELボタンを押すとミキサー画面を表示
各出力の選択は、右側のSELECTボタンで行なう

 アナログ2IN/2OUT、デジタル2IN/2OUTという機材ではあるが、8chのミキサーのように見える。PCからの信号も4chで送ることが可能で、それを合わせた計8chがこのミキサーに立ち上がってくる。ミックスした結果はアナログ出力、デジタル出力へ送ることが可能だが、それぞれの出力に何を出すかは、右側のSELECTボタンで選択できるようになっている。

 また、外部入力のいずれか1ch(ステレオLINKさせた場合には、ステレオで1chの扱いになる)に対してダイナミクスエフェクトが掛けられるようになっているのもUH-7000の特徴。具体的にはコンプレッサ、ノイズサプレッサ、ディエッサ、エキサイタ、EQ、リミッタ&ローカットのいずれか1つ。これはUH-7000内にあるDSPで動作するようになっているので、PC側に負担をかけないのもポイントだ。さらに、センドエフェクトとしてリバーブが用意されており、HALL、ROOM、LIVE、STUDIO、PLATEのいずれかを利用する。

コンプレッサ
ノイズサプレッサ
ディエッサ
エキサイタ
EQ
リミッタ&ローカット
センドエフェクトとして用意されているリバーブ
UH-7000にもStereoMixモードが用意されている

 これらの画面を見て、「おや? 」と思った方もいるかもしれない。画面のデザインこそ、シックになっているが、機能的にはUS-366、US-322搭載のミキサーとソックリであり、エフェクト自体もまったく同じものとなっているのだ。US-366、US-322の場合、DAWで利用することを前提としたMultitrackモードのほかに、外部入力とPC出力をミックスして外部へ出力するStreoMixモードというものがあったが、UH-7000にも同じStereoMixモードが用意されているため、必要に応じて切り替えて使うことができる。

 実際使ってみたところ、やはりUS-366と同じ使い勝手で利用できて便利だったが、厳密な音にこだわった使い方、という意味ではこれらDSPはすべてオフにして使うのがいいかもしれない。

 なお、Multitrackモード、StereoMixモードそれぞれのブロックダイアグラムは以下のようになっている。

Multitrackモード
StereoMixモード

原音に忠実なモニター向け音質

 では、いつものようにRMAA Proを用いてオーディオインターフェイスのアナログ回路の性能をチェックしてみよう。44.1kHz、48kHz、96kHzでの結果が以下の通りだ。192kHzで動作させた場合、なぜかうまく測定できなかったが、これを見てもなかなかいい結果になっているのがわかるだろう。オーディオコンポのような音作りをしてはおらず、あくまでも「原音に忠実」を実現するためのモニター用機材で、正確に音を入出力していることが見て取れる。

44.1kHz/24bit
48kHz/24bit
96kHz/24bit
レイテンシーの設定画面

 一方、レイテンシーの測定のほうも行なった。このレイテンシーはドライバ画面のAudio Performanceの設定で調整するようになっており、highest latencyからlowest latencyの5段階で設定する。44.1kHz動作時も192kHz動作時もlowest latencyで問題なく使うことができたが、なぜかこのCENTRANCE ASIO Latency Test Utilityを使った場合、lowest latencyでの測定がうまくできなかった。こちらは唯一192kHzのときのみlowest latencyでの結果を出すことができたが、これを見ると往復で10.29msec。悪くない値といえるだろう。

44.1kHz(128 samples)
48kHz(128 samples)
96kHz(128 samples)
192kHz(256 samples)
192kHz(192 samples)

 以上、TASCAMのUH-7000について簡単に見てきたがいかがだろうか? かなり、音質にこだわった機材でありマイクプリアンプとしても非常に高品位な製品だ。マルチチャンネルのオーディオインターフェイスを持っていたとしても、音にこだわるのなら、ボーカルレコーディング用に、またミックスダウン用、マスタリング用として持っていてもいい機材だと思う。

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UH-7000

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto