西川善司の大画面☆マニア

第180回

フルHD/3D大画面を10万円以下で! エプソン「EH-TW5200」

期待の低価格プロジェクタの実力は?

EH-TW5200

 ホームシアター向けプロジェクタ製品は2000年代前半と比べるとメーカーも減り、新製品発表サイクルも鈍化してきている。そんな中、エプソンは以前と変わらぬ気を吐いているメーカーである。

 9月から発売された「dreamio EH-TW5200」は、フルHDパネルを採用し、3D立体視に対応しながら、実売価格で10万円を切るというエントリークラスの製品。なかなか意欲的なハイコストパフォーマンス機となっている。

設置性チェック〜レンズシフトは無いが設置支援機能が沢山。天地反転設置用ゴム

正面。左側にあるスリットは排気口

 本体は297×247×105mm(幅×奥行き×高さ)で、A4ファイルサイズより少し大きい程度の占有面積で設置できるほどのコンパクトサイズ。

 底面後部にねじ式の高さ調整式脚部があり、底面前部にはスライド引き出し式の高さ調整式脚部が実装されている。3点支持での設置になるが、3つの脚部で高さが調整出来るので、傾き、回転方向の設置調整が行なえるのは心強い。前部脚部と後部脚部までの側面から見た時の距離は約18cm。かなり狭い台座にも置けそうだ。

底面。写真下が正面
ネジ調整式の脚部

 天吊り金具としては、「ELPMB23」(31,500円)が純正オプションとして設定されており、天井の高さに応じて天吊り金具と組み合わせて使う延長パイプも、調整幅668mm〜918mmの「ELPFP13」(8,400円)、調整幅918〜1,168mmの「ELPFP14」(8,400円)の二種類がラインナップされている。

 100インチの最短投射距離は272cm、最長等射距離は327cmで、最近の機種にしては、それほど前後設置距離に幅がない。基本的には、コンパクトな部屋で大画面を得るための設計となっているようだ。

投射レンズは手動調整式。レンズシフトは無し

 投射レンズは手動調整式の光学1.2倍ズームレンズ(F:1.58-1.72 f:16.9-20.28mm)を採用する。レンズシフト機構はなし。すなわち、投射光軸は固定となる。投射映像は光軸に対して下側に約1%だけ下に広がる特性を持つ。具体例を示せば、たとえば100インチ(16:9)投射時では光軸に対して約11cmほど映像が下側に広がる。

 投射レンズのスペックは、いかにもエントリー機という感じではあるが、エプソンらしいユニークな補助機能が沢山あしらわれていて面白い。

 まずは、投射レンズの防塵対策機構。こうした入門機では元来はプラスチックのキャップを被せる方式が採用されていたが、EH-TW5200では、高級機のようなスライド式の開閉扉があしらわれている。と言っても、開閉は電動モーターではなく手動式だが、レンズへの埃の付着予防になるし、レンズキャップをなくす心配もないので機能としては嬉しい。

 もう一つは、斜めからの投射に対応するスライドレバー式の台形補正機構。リモコンで操作するのではなく、本体上面に実装されたスライダーで補正量を調整する方式だ。調整量を大きくするほど、映像に歪み変形を適用することになるため、解像度は低下する。

実際にゴム足を取り付けてみたところ。ちゃんと水平に天地逆転設置できた。今回の評価はこのゴム足取り付け状態でオンシェルフ設置で行なった

 3つ目は、それ自体は実にローテクな対応なのだが、その心遣い自体が嬉しくなってしまう「ゴム足」の付属サービス。EH-TW5200でプロジェクタ本体を天地逆転させて棚の天板などに設置する場合、本体上面が曲面処理されているため、水平状態を確保できない。そこで、この付属のゴム足を接着させる…というわけだ。水平を出すためには本体天板のどの位置にゴム足を取り付ければいいのかを、ちゃんと情報公開しているのが素晴らしい。

 エアフローデザインは、側面吸気の正面排気という構成。オンシェルフ設置時には側面を塞がないように気を付けたい。

正面向かって左続面
正面向かって右側面。スリット部は吸気口
フィルタはユーザー交換が可能

 排気騒音は、公称値29dB。これは「明るさ切換」(ランプ輝度モード)が「低」の時の値のようだが、いずれにせよ29dBという値は、最近のホームシアター機の騒音値としては高め。実際、本体を背後に設置したときには「ああ、動作してるなぁ」ということが分かるほどの音がしている。

 ランプ輝度を「高」に設定すると、若干騒音が増すが、もともと動作音が聞こえてしまっているので「さらにうるさくなったなぁ」という実感はない。小型ボディのモデルは物理的制約から大径ファンをゆっくり回せず、小径ファンを高速に回す設計となるため、騒音レベルが高くなってしまうのは致し方ないところ。

 光源ランプは、ボディサイズに似合わず出力200Wの超高圧水銀系ランプを採用している。動作音が大きい原因は、ボディサイズにはややオーバーキルな高出力ランプを組み合わせていることも原因なのかも知れない。交換ランプ「ELPLP78」(26,250円)で、比較的安価だ。

純正の対応3Dメガネ「ELPGS03」。商品セットに一基も付属してこない点に留意したい

 消費電力は300Wで、さすが2,000ルーメンの高輝度スペックを誇るだけあってボディサイズから連想される値よりもかなり大きい。2,000ルーメンクラスのプロジェクタ製品としては標準的な消費電力ではある。

 3D立体視に対応。しかも3Dメガネとの同期制御のためのシンクロエミッターは本体に標準内蔵しており、同期方式は電波(RF)式。遮蔽物に影響されず、赤外線リモコンにも干渉しない設計だ。入門機でも「よくぞここまでやった」と褒め称えたい部分である。

 なお、対応3Dメガネは、純正オプションとしては「ELPGS03」(10,500円)が設定されている。規格自体はフルHDグラス・イニシアチブ規格に準拠しているので、規格品であれば他社製3Dメガネも利用出来る(今回の評価では純正品を使用した)。

接続性チェック〜MHL対応HDMI装備。スピーカー内蔵で簡易音声再生

接続端子

 接続端子は背面にレイアウトされている。HDMI入力は2系統で、DeepColor対応でx.v.Color未対応、3D、HDMI-CEC対応。ただし、HDMI1だけMHLにも対応しており、スマートフォンのMHL出力などと接続できる。

 HDMI階調レベルは「映像」メニューの「HDMIビデオレベル」にて設定が可能。「オート」の他、「通常」(16-235)、「拡張」(0-255)が選択できる。今回の筆者の評価ではPlayStation 3(PS3)のHDMI階調レベルをリミテッド、フルに相互に切り換えて「オート」の認識制度を確認したが、問題なし。オート機能は正しく動作しているようだ。

Deep Colorに対応するがx.v.Colorは未対応
HDMI階調レベルの設定は手動式にも対応

 アナログビデオ入力はコンポジットビデオ入力端子とそれに付随する赤白のアナログステレオ音声入力端子のみ。EH-TW5200では、Sビデオはもちろん、コンポーネントビデオ入力端子も省略された。これも時代というものだろう。PC入力端子は、D-Sub15ピン(アナログRGB)。こちらもクラシックな端子だが、ノートPC接続を想定してか、残されている。

 1系統実装されるUSB端子はストレージデバイスの接続に対応。デジタルカメラやUSBメモリなどの接続に対応しており、それらの機器に格納されたJPG写真を表示させることができる。対応解像度は8,192×8,192ドット(6,700万画素)までで、ほぼ制限はないと考えて良さそうだ。

 なお、USB端子は、オプションの無線LANユニット「ELPAP07」(10,500円)の接続にも対応しており、こちらを接続したときには、PCやスマートフォンの映像を無線LAN経由で伝送できるようになる。この他、アナログ音声出力用のミニステレオジャックが実装されている。これは、HDMI伝送されてきた音声などを外部に出力するために利用する。

出力2Wのビルトインスピーカー

 ところで、EH-TW5200には、出力2Wのモノラル仕様ながらスピーカーも内蔵している。HDMI経由で伝送されてきたデジタル音声はもちろん、アナログ音声入力端子から入力された音声をこのスピーカーで再生することが可能だ。

 実際に音を聞いてみたところ、低音の出が芳しくなく、「素晴らしい音質」ということはないのだが、ちゃんと何が鳴っているかは分かるし、それなりに音量も上げられるので意外に使える機能だとは感じた。PCと接続してのYouTube動画鑑賞程度や、どうしてもスピーカーが準備できない状況でのゲームプレイ時には、便利に使えそうだ。

操作性チェック〜ランプモードをリモコンから変更可能。低遅延モードも

リモコン。ライトアップ機能くらいは欲しい気もする。

 リモコンは全長の短いコンパクトなもので、いかにもエントリークラス向け…といった感じの面持ち。しかしボタンの数はそれなりに多く実装されており、エプソンらしい機能重視で設計意図を感じさせる。

 ライトアップボタンはないため、ボタンは自照式に点灯せず。蓄光式の発光ギミックもない。まぁ、投射映像が明るいので、その光でみて下さい、ということなのだろう。ライトアップ機能がないことから、機能名は各ボタンに刻印されておらず、各ボタンの直下の下地側に印刷されている。

 低遅延モード(ゲームモード)の切り替えのための[Fast/Fine]ボタン、自動絞り機構モード調整の[Auto Iris]ボタン、アスペクトモード切換用の[Aspect]ボタンなど、使用頻度の高い機能はダイレクトにリモコンで操作できるし、入力切り替えも各系統ごとに個別のボタンが実装されているし、見た目はパッとしないリモコンだが操作感は悪くない。

 EH-TW5200の製品コンセプト上、暗室と明室とでランプ輝度モードを変更する機会が多くなるわけだが、その切り替えにいちいち「映像」メニューを出してその階層下の「明るさ切換」までカーソルを持っていかな掛ければ変更出来ないのが少々億劫だった。しかし、大丈夫。そんな筆者みたいな人のために、エプソンは救済策を設けていた。リモコン上には[USER]ボタンというものがあり、このボタンを「3D方式設定」「3D奥行き調整」「3D明るさ調整」「3Dメガネ左右反転」「明るさ切換」「情報」のいずれかの直接ショートカットボタンに割り付けることができるのだ。これはかなり便利。是非活用したい機能だ。

[USER]ボタンの用途はカスタマイズ可能。ランプ輝度の変更に活用するのがオススメ!
「スタートアップスクリーン=オフ」とするとランプ輝度が安定する前から入力映像を見ることが出来る

 電源オンからHDMI映像が表示されるまでの所要時間は約20.0秒。なお、試したところ、EPSONロゴの表示をキャンセルした方が、待ち時間は短くなるようだ。入力切り替えはHDMI間で約4.5秒。あまり早くはないが、順送り式の切り替えではないのでストレスはそれほど大きくはない。

 アスペクトモードは[Aspect]ボタンを押して開くメニューから希望するモードを選択する方式。用意されているアスペクトモードは従来のエプソン機から変わらず。

アスペクトモード
ノーマル アスペクト比4:3を維持して表示。
フル パネル全域に表示。アスペクト比16:9を維持して表示
ズーム 4:3映像に16:9をはめ込んだレターボックス映像を切り出してパネル全域に16:9映像として表示
ワイド 4:3映像の外周に行くに従って強く引き延ばす、いわゆる擬似的ワイド表示

 なお、実際に試してみたところでは、上記のアスペクトモードが選べるのは480pや480iの映像を入力時で、720p、1080pの映像を表示させたときには、アスペクトモードは16:9の全画面表示に固定化されるようだ。実用上は問題無い。

 プリセット画調モード(カラーモード)は[Color Mode]ボタンで呼び出した「カラーモードメニュー」から選択する方式。切り換え所要時間はほぼゼロ秒。高速だ。

 入門機と言うこともあって、画調モードをユーザーが補正してこれを保存しておくためのユーザーメモリ機能は無し。ただ、各プリセット画調モードを直接調整することはでき、その内容はその画調モードに上書きされる形で保持される。

 調整機能自体は「明るさ」「コントラスト」「色の濃さ」「色あい」「シャープネス」「色温度」といった基本項目以外に、RGBのオフセットとゲインで各色のバランスを調整したり、RGBCMYの各系統の色に対して「色相」「彩度」「明度」で出色の傾向を調整する機能もあるので、上級機に見劣りする部分はない。

 EH-TW5200には、低遅延モードが搭載されている。この機能はリモコンの[Fast/Fine]ボタンから呼び出すことが可能で、機能名としては「映像処理=速い」(Fast)、「映像処理=きれい」(Fine)となっている。

[画質]メニュー。調整項目は上位機種と比較して見劣りする部分はないが、ユーザーメモリは無し。
「映像処理」は実質的には低遅延モードのオン/オフ設定に相当する。「速い」が低遅延モードに相当

 今回もテレビ製品として業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2との比較の形で行なったが、Fastモードで約34ms(60Hz時、約2フレーム)、Fineモードで約100ms(60Hz時、約6フレーム)となった。Fastモードの遅延時間はまずまずだが、Fineモードの遅延時間はかなり大きい。

Fastモードでは遅延時間は約2フレーム(60Hz)
Fineモードでは遅延時間は約6フレーム(60Hz)

 1つ気になったのは、低遅延モードでは、圧縮表示のようなドットが間引かれたような表示になってしまうところ。PC画面などで文字などを映してみるとその画質の格差が大きいことが確認できるはずで、文字の曲線などにジャギーが出ていたりするところに気がつくと思う。低遅延モードでこのようになってしまう機種を見たことがないので、この点については改善を望みたいと思う。

Fineモード
Fastモード。解像感が落ちてしまう。

画質チェック〜圧倒的な輝度性能。良好な3D画質

 映像パネルは、エプソン製の高温ポリシリコン透過型液晶パネルで、「C2FINE」というブランドが与えられているタイプだ。パネルサイズは0.61型、世代的には「D9」とのことなので、おそらくEH-TW6000系のものと同一だと思われ、480Hz駆動にまで対応している。ただ、補間フレーム挿入による残像低減機構は搭載されていないので、あくまで高速描画対応パネルとしてD9パネルを活用しているということになる。

Fineモード
Fastモード。黒目と白目の境が無くなってしまった

 画素をスクリーンに近寄って観察すると、D-ILAやSXRDなどの反射型液晶パネルと比較すると、本機の画素はまだ格子筋は太く、従来機と同様に将棋の駒のような画素形状が確認される。反射型液晶パネルだと完全な四辺形画素になっているので、この差は歴然として存在するわけだが、2000年代前半までと比較すれば、最近は透過型液晶パネルでも画素開口率は向上してきている。今回は100インチ投射での評価だったが、以前の透過型液晶プロジェクタの映像の印象と比較すれば、各段に粒状感は低減されている。

 レンズシフトを省いているため、設置自由度の面では上級機に及ばない本機だが、光学系がシンプルになっている分、投射レンズのフォーカス精度は高いようだ。中央でフォーカスを合わせれば、画面全域がほぼ一様のフォーカス感で投射され、気になるフォーカス斑はなかった。

 そして、本機の最大の特長とも言える2,000ルーメンもの輝度性能だが、たしかにとてつもなく明るい。ランプ輝度モードを「高」にしたときは、蛍光灯照明下でもデータプロジェクタ並に映像がくっきりと見える。ランプ輝度モードを「低」モードにしても1,500ルーメン程度はあるのではないかというほど明るい。暗室で見る際には「低」でも十分だが、「高」にすると部屋の中が結構明るくなるので、映像の明るさを間接照明変わりにして食事をしながら映像鑑賞、というのもありかも知れない。

 公称コントラストは15,000:1。この値は、動的絞り機構(オートアイリス)を有効化してプリセット画調モードを「ダイナミック」にした時の参考値になる。

 今回の評価は暗室で行なっているが、ランプ輝度モード「高」「低」いずれにおいても、やはり透過型液晶パネルの宿命で黒浮きは多めであった。なので、暗いシーンでは、動的絞り機構を有効化しても、暗い部分が鈍く輝いてしまう。しかし、一般的な明るさの映像では、圧倒的な高輝度に視覚が引っ張られるので、確かにハイコントラストな映像には見える。包み隠さず言えば、EH-TW5200は高輝度の伸びでコントラストを稼ぐ映像にはなっていると感じる。これは「明るい部屋でも気軽にプロジェクタで大画面」という製品コンセプトを考えれば、「それもそうか」という感じではある。

明るさ切換(ランプ輝度モード)=高。写真でも分かるくらい黒浮きは大きい
明るさ切換(ランプ輝度モード)=低。暗室ではこちらでもいいかも

 黒浮きはあるが、その浮いた黒からの階調は非常にリニアにまとめられていて、カラーグラデーションなどを見てみると、ちゃんと暗部まで色味が残ってはいる。ただ、最暗部は浮いた鈍い黒に色が乗っているような感じだ。印象として、モノトーンに近い映像よりは、カラフルな映像の方が良好な階調表現ができていると感じられる。

 動的絞り機構は、その応答速度「標準」と「高速」が選択できるが、明暗差の激しい映像を幾つか見てみた感じでは、「標準」の方が違和感のない動作が実現できている。「高速」は明暗の切り替えポイントに気が付くことがしばしばあり、「標準」のほうが切り替えに気がつきにくかった。

オートアイリス(動的絞り機構)=オフ。左側に黒浮きを生じている
オートアイリス(動的絞り機構)=標準(高速も静止画では同じ結果)。左側の黒浮きが低減されたのが分かる

 発色の傾向はランプの輝度モードで若干変わる。

 「高」モードでは、純色の発色は緑はやや黄緑っぽく、赤は朱に寄った感じ。青は艶やかで鋭い。そう、若干黄味が乗った色あいで、水銀系ランプ特有の色味特性を感じる。

 「低」モードでは幾分か、この傾向が弱まるようだ。ただ、「低」でもこの傾向が全くなくなるわけではない。

 以前、EH-TW8100Wを評価したときには、もう少し色の純度が高かった記憶があったが、EH-TW5200には調色フィルタの「エプソンシネマフィルタ」が搭載されていない。黄味が強い発色傾向の主因はこの機能差異から来ているものと推察される。コスト削減の意味合いも強いとは思うが、フィルターを噛ませると透過光が減るので、EH-TW5200では高輝度性能を優先させてあえて搭載しなかったのかもしれない。

 映画コンテンツとして「ヤングアダルト」と「THE NUMBERS STATION」のブルーレイを視聴。視聴して気がついたのは、人肌にも「高」モードだと若干黄味が乗ること。ただ、色深度自体は高いので、色ディテールはよく表現出来ている。人肌の陰影が生じる立体感などもうまく描写できているし、高輝度表現が得意な本機ならではの伸びのあるハイライト表現は美しい。「低」にすると、黄味はやはり低減される。人肌はプリセット画調モード「ナチュラル」が一番自然に見える。

 3Dコンテンツも視聴してみた。ソフトは毎度お馴染みの「怪盗グルーの月泥棒」だ。

 さすが480Hz駆動対応の液晶パネルを採用しているだけあって、クロストークは皆無とは言わないまでも、極限まで少ない感じで、ほとんど気にならない。クロストークが出やすいジェットコースターシーンのトンネル内でも、二重映りはほとんど分からない。かなり上質な3D画質が得られていると思う。

 3D映像設定関連に「3D明るさ調整」という項目があり、3D映像の輝度を「低」「中」「高」と設定できるが、本機の場合、意外にも、「高」とした方が、クロストークがさらに少なくなる。映像中の高輝度領域が一層明るくなることで明暗差が広まり、クロストークを視覚上目立たなくしてくれる効果があるのかもしれない。

「映像サイズ」は画面サイズの設定だが、実質的には奥行き感と飛び出し感の微調整のような効果をもたらしている

 それと、もう一つ、3D映像設定関連に「映像サイズ」という項目があり、画面サイズを60インチから300インチにまで設定できるようになってる。これは、基本的には自宅環境にあわせた設定を行なえばいいのだが、あえて値を変更することで奥行き感を微妙に調整できて面白い。視聴距離が近めのときは、実際の画面サイズよりもやや大きめに設定した方が、よりアグレッシブな飛び出し感が味わえて面白い。本機には「3D奥行き調整」という項目もあるのだが、こちらよりも「映像サイズ」での調整の方が細かく設定できる。両パラメータを組み合わせて、自分の好みの立体感を探るのも楽しいかも知れない。

 アニメは「星を追う子ども」のブルーレイを視聴。高い輝度を基準にしたEH-TW5200の画作りはアニメとの相性はいい。アニメの場合は、漆黒の表現は少なく、夜空や暗闇の表現に置いては紺色や青を基軸にした画調になっているので、EH-TW5200が持つ先天的な黒浮き特性も気にならない。むしろアニメの宇宙や夜空のシーンにおいては、明るい紺の宇宙空間に高輝度で煌めく星々が美しく、むしろ黒浮きがアニメ画質特有の味わいに貢献しているとすら感じられる。

プリセット画調モードのインプレッション

【ダイナミック】

 ランプモード高。高輝度重視のモードで、水銀ランプ特有の黄味の強い色調となる。他の画調モードでも十分明るいので、よほど明るい部屋での活用でなければあえて選ぶ必要はなし。

【リビング】

 ランプモード高。輝度は重視するが、色調も重視した、輝度と色調バランスに優れたモード。若干暗めの薄明るい程度の部屋であれば、こちらがオススメ。

【ナチュラル】

 ランプモード低。実質的な標準画調モード。肌色も一番自然に見える。暗室で映画コンテンツを楽しむ場合は「シネマ」との二択。

【シネマ】

 ランプモード低。暗部の階調表現がより豊かになる。「ナチュラル」に並び、もう一つの標準画調モード的存在。モード名の割にはやや冷ためな色あい。

【3Dダイナミック】

 ランプモード高。3D立体視モード専用の「ダイナミック」モード。

【3Dシネマ】

 ランプモード高。3D立体視モード専用の「シネマ」モード。その名の通り、色調や階調は「シネマ」に準じた物になる。映画コンテンツはこちら一択。

まとめ〜3D映像やアニメ視聴に適した入門機。低遅延モードの画質は要改善

 本連載は、どうしても上級機を評価する機会が多いため、今回もそうした視点を変えずに評価している。気になったところは、エントリー機という括りをあえて度外視して指摘しているので、ある意味、絶対的な性能を評価したといっていい。

 もちろん、9万円未満という価格帯と、エントリー機といった部分を基準にして評価をすれば、気になった部分にも目をつぶることもできることだろう。最後は、そうした視点でまとめてみることにしたい。

 まず、2,000ルーメンという絶対輝度は、このクラスで考えれば必要十分どころか、やりすぎというくらいの高スペックで、評価すべきポイントだ。「大は小を兼ねる」ならぬ「高は低を兼ねる」で、遮光が十分でないときは高輝度モードで、暗室では低輝度モードで…という二極的な活用が出来るのも、このクラスのユーザーにうまくハマった機能設計になっている。

 調色フィルタがない点や、黒浮きの多さは、製品クラスを考えれば妥協されている部分で、ここは責められない。レンズシフトがない点も同様だが、ここは、光学系がシンプルになった分、良好なフォーカス特性が得られているという点でイーブンな部分だ。

 本文で触れたように、本機の発色は水銀系ランプ特有の色味があったわけだが、その範囲内でうまくチューニングされた映像になっている。本文で述べたようにアニメでは画質的に不満は無し。実写系も明るいトーンが中心の映画であれば普通に見られる。

 ただし、トーンが暗めの映画は、上級機の映像を知っているユーザーからするとややつらいかもしれない。今回「レ・ミゼラブル」のブルーレイを本機で見てみたが、本機向きではないと感じた。

 しかし、3D映像になると、眼鏡である程度輝度が落ちるため、黒浮きも気にならなくなる。3D映像であれば、暗めの実写系映画も普通に見られる。

 エントリー機という括りがあったとしても、強く改善を望みたいのは、低遅延モードで解像感が減退してしまう特性だ。ゲームユーザーの多くは、低遅延モードのレスポンスと、Fineモードの画質を両立して欲しいと思っているはずである。フルHD大画面を手軽な価格で、3Dまでサポートした意欲的な製品は、ゲームファンにも魅力的なはず。今後の対応を望みたい。

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トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら