西川善司の大画面☆マニア

第184回

CES編:17cmから147型! ソニーの超短焦点4Kプロジェクタの秘密

VR対応版ヘッドマウントディスプレイも体験!

 米ラスベガスで1月7日(現地時間)、International CESが開幕。その基調講演にソニー社長兼CEOの平一夫氏が登壇。その講演の後半で、新しい映像体験の提案として超短焦点のローボード型4Kプロジェクタをアナウンスした。

 この基調講演終幕後、ソニーブースでは、この製品のデモンストレーションをブース内で公開。多数の来場者で賑わうことになった。「大画面☆マニア」CES編の第1弾では、この超短焦点4Kプロジェクタの詳細についてまとめてみたい。

ソニー社長兼CEOの平一夫氏が、基調講演の中で紹介した超短焦点4Kプロジェクタ。北米では今夏に発売を予定

SXRDパネル採用。光源は青色レーザー

 この超短焦点4Kプロジェクタユニットは、コンセプトモデルではなく、実際に北米地区で今年夏から発売が予定されている。予価は3万〜4万ドルだ。日本での発売は未定とされているが、ソニー関係者の話によれば、前向きに検討がなされているそうで、その場合の販売価格は、概算で300万〜400万円相当になるという。

超短焦点4Kプロジェクタのデモの様子
超短焦点4Kプロジェクタ製品の本体設置例。この白い長細いボックスが商品セット全体。その長さ2.7m

 価格は相当高いわけだが、現状は民生向け商品と位置付けられている。

 ソニーのプロジェクタ製品には、ホームシアター向けは既に「BRAVIA」ブランドが与えられているが、この超短焦点4KプロジェクタがBRAVIAブランドになるかどうかは未定だそうで、型式番も決定していない。なお、こういうソニーらしいというか、唯我独尊的な商品には、かつて「QUALIA」というブランドで販売されたことがあったが、「この超短焦点4Kプロジェクタに、QUALIAブランドが付くことはない」とのこと。まぁ、当然か。

投写イメージ。背後の壁に4K映像を投写している

 解像度は4K。……といってもテレビのような3,840×2,160ドット(16:9)ではなく、DCI規格の4,096×2,160ドット(1.90:1)だ。映像パネルはソニー独自の0.74型反射型液晶(LCOS)パネル「SXRD」を3枚使用。4,096×2,160ドットという解像度から連想されるように、プロジェクタの「VPL-VW1000ES/500ES」に採用されたSXRDと同等品を採用していることは自明。

 光源はレーザー光源を採用。レーザー光は青色レーザーで、これを黄色蛍光体に当て、拡散光学系で拡散し、完全な平行光源に形成してから3枚のSXRDパネルに照射している。輝度スペックは2,000ルーメンを謳う。

 この新開発の青色レーザーベースの白色光源ユニットは、超高圧水銀系ランプと比較して、色域特性に関してはほぼ同等だという。光源寿命は2万時間で、これは超高圧水銀系ランプの約10倍に相当する。ユーザーによるランプ交換は想定されておらず、光源ユニットが寿命に達した場合や故障時はメーカー交換となる。ソニー関係者によれば、超高圧水銀系ランプに対しては寿命だけでなく、経年による色度変化が少ないこともウリとのこと。これは業務用用途にも強いということでもある。なお、コントラスト値は非公開だが、基本的にはVPL-VW1000ES/500ESとほぼ同等と思われる。

左側の凹みが投射レンズ側。右側が曲面ミラー

 投射レンズは1つ。投射レンズから投射された映像は湾曲した曲面ミラーによって拡大されて壁面側に投写される。投写レンズ内では「映像下辺を広げ、映像上辺をすぼませた映像」を光学的に生成しており、曲面ミラーによる反射で四辺が直交する映像となるような光学設計になっている。

 曲面ミラーを駆使したプロジェクションシステムは、他社からも発売されていたことがあるが、ソニーのこの超短焦点4Kプロジェクタが恐ろしく高度なのは、ここに光学1.6倍のズームレンズを組み込んでしまっているところ。

 ズーム制御は電動。もちろんフォーカス制御も電動だ。1.6倍の拡大光学系と曲面ミラーを組み合わせた投写系に適合する、逆歪曲像を光学的に生成する技術は相当に高度である。

 ここにさらにフォーカス制御も組み合わさるので、筆者は思わず担当者に「画面全域にフォーカスがちゃんと合いますか?」と質問してしまったのだが、これに対しソニー関係者は「対策済み」と自信を見せる。

 実は、この超短焦点4Kプロジェクタでは、通常の「ピント合わせ」的なフォーカス合わせ以外に、映像面外周の歪曲/焦点微調整ができるようになっている。なので、画面全体のピントと画面外周のピントの両方を調整する必要があるのだ。画面外周の歪曲/焦点微調整についての詳細は教えて貰えなかったが、おそらく、ソニーのプロジェクタ製品ではお馴染みのピクセルアライメント調整的なアプローチで補正するのではないかと思われる。

 なんだか面倒臭そうだが、大丈夫。実は、ズーム倍率、フォーカス設定、映像面外周の歪曲/焦点微調整のパラメータを最大5つの設定を記録できるようになっており、記録した設定はリモコンのボタン一発で呼び出せるのだ。リモコン上には設定呼出し用のダイレクトボタンが3つ用意されている。

 これにより、視聴するコンテンツやそのアスペクトごとに、画面サイズを切り換えることができるわけだ。

額縁なしの4K映像が壁に浮かび上がる感動

 この超短焦点4Kプロジェクタは、3D立体視にも対応する。3D立体視エミッターは無線電波(RF)式を採用する。3Dメガネはブラビア用の「TDG-BT500A」が利用出来るとのこと。

 映像エンジンは「4K X-Reality PRO」を搭載。フルHDから4Kへの超解像変換も高品位にこなす。x.v.Colorにも準拠し、広色域規格TRILUMINOS Displayブランドが与えられている。HDMI入力は4端子。いずれもHDMI 2.0対応で4K/60Hzの入力に対応する。

スピーカーとキャビネットも付属。メカニカルに開閉する投射部

キャビネット部。ここにはプレイヤーなどを収納できる。反対側も同様の構造。このキャビネット部とプロジェクタ部との間にあるのがスピーカーユニット

 プロジェクタ本体の外形寸法は1,100×535×265mm(幅×奥行き×高さ)。なお、投写軸は奥行き535mmのうち、約400mmのあたりに来る。

 プロジェクタ本体ユニットの左右には、サイズが200×535×265mm(幅×奥行き×高さ)で、同一デザインの別体ステレオスピーカーが合体する。さらに、600×535×265mm(同)のローボードキャビネットがスピーカーの左右に合体。トータルで横2.7mの本体外形となる。

 つまり、一見すると白色で横幅2.7mのローボードだが、中央がプロジェクタ本体で、その左右にスピーカー、さらにその外側の左右にキャビネットという構成になっている。

 ソニー関係者によれば、バラ売りは予定されておらず、プロジェクタ本体、スピーカー×2、キャビネット×2のオールインワン商品になるとのこと。カラーバリエーションも現在は考えられておらず、白1種類のみとなる。

 電源を入れると、上面側のカバーがガシャコンとせり上がって曲面ミラーが露わとなり、投射が開始される。電源をオフすれば上面カバーは閉じられ平らになる。

投写部開閉の様子

 気になる画面の大きさだが、本体を壁にくっつけて設置した場合でも、最大106型の大画面が得られる。ちなみに、最小では66型となってしまうが、その分、映像輝度は106型時の体感約2倍となり、とても明るい映像が得られるという。

 なので、前出の設定メモリー機能を駆使して、昼間など室内が明るいときには、画面は小さいが高輝度なモードで活用する、といったこともできる。

 本機が出力できるスペック上の最大画面サイズは147型で、このサイズの映像は本体を壁から17cm離し、ズーム倍率を最小にしたときに得られる。ちなみに、本体を壁から離せる距離はこの17cmが最大で、それより遠くすると正しい映像表示が得られない。17cm離した時にズーム倍率を最大にすると92型相当になり、この時も同様に、92型時の画面の明るさは、147型時の2倍明るくなるようだ。

 デモンストレーションが比較的短かったのと、映像投射が完全暗室で行なわれなかったこと、そして映像の投射がスクリーンではなく、建材のような壁面への投射だったこともあって、厳密な画質評価はできなかったが、それでも「超短焦点プロジェクタだから」という負い目のない、「VPL-VW1000ES/500ES」直系の高画質が実現出来ていたように思う。

 高価ではあるが、映像マニアにとっては憧れの製品となりそうだ。映像マニアで、しかも直近で新築で住宅を建てる機会のある人は、このシステムをリビングに組み込むのを検討するといいかもしれない。

 ソニーでは、今回紹介された超短焦点4Kプロジェクタ以外にも、平行してレーザープロジェクタの研究開発を進めており、デモンストレーションでは、発売予定のないプロトタイプ2製品も公開された。

 1つは照明器具にビルトインされてテーブルトップに映像を投射するもの。2眼カメラで、テーブルトップの状況を撮影し、タッチインターフェースを実現するユーザー体験などを実演した。

モーション入力対応のレーザープロジェクションシステム
テーブル上の映像にタッチ操作できるインターフェイスも同時構築

 もう一つは、天井に映像を映し出すレーザープロジェクションのデモだ。こちらは天井に環境映像を作り出し、これが同時に間接照明の役割を果たすというものだ。

 この2つのレーザープロジェクションシステムは、SXRDパネルを一枚だけ用いた単板式レーザープロジェクタを使っているとのこと。そう、時分割でRGB光をSXRDパネルに対して照射する仕組みだ。こちらは映像鑑賞用途というよりは新しいユーザー体験を提案する目的なので、画質に関してはやや妥協したソリューションとなっているようだ。

天井に空模様を映し出すレーザープロジェクションシステム
環境映像の楽しみと間接照明の楽しみを両立させるような贅沢な照明環境を構築出来る

Oculus Riftに対抗? HMD「HMZ-T3」にヘッドトラッキング機能を加えた試作機

 2013年、米Oculus VR社が、プロトタイプ版でありながら、3DOF(Degree of Freedom:3軸自由度)対応型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)「Oculus Rift」を300ドルで発売したところ、6万台を超えるヒット商品となり、瞬く間にUnreal Engine3、Source Engine、Unityなどの著名ゲームエンジンが対応を完了。北米のゲーム業界では、ヘッドトラッキング対応型HMDがちょっとしたブームとなっている。

 そんな動きを受けてか、ソニーは、720p解像度の有機ELパネルを2枚使った3D対応HMD「HMZ-T3」を改良し、Oculus Riftと同等の3DOFのヘッドトラッキング機能を加えた試作機を3台展示。実際に体験できるデモをブースで行なった。

 3DOFとは、首の上下、左右、そして時計回り/反時計回りの回転方向の動きに追従すること。

筆者も3DOFヘッドトラッキング機能付きHMZ-T3を体験

 デモは、HMZ-T3を装着した来場者が、3DOFの範囲内で首を動かすと、その動きにちゃんと追従し、首を動かした方向の映像が観られるという内容。映像はソニー製アクションカムでレーシングカートによる公道走行を広角撮影したもので、これをスマートフォンのXperiaで再生していた。

 3DOFのヘッドトラッキングユニットは、HMZ-T3のヘッドバンド後部に後付けされており、3DOFの動き情報はUSBケーブル経由でXperia側にフィードバックされる仕組みになっていた。

ヘッドトラッキングデバイスはHMZ-T3に後付けする実装スタイル。モーションデータはUSBで出力される
左がホストデバイスとなっているEXPERIA、右がHMZ-T3のコントロールボックス

 実際に筆者も体験してみたが、レイテンシーはそれほど大きくなく、見た方向の映像をリアルタイムで見る事ができた。ただ、アクションカムで撮影された映像の画角がそれほど広範囲ではないため、首を大きく傾けすぎると映像がない漆黒の空間が見えてしまったりと、「映像への没入感」という意味ではOculus Riftが提供してきた数々のバーチャルリアリティ体験デモより劣ると感じた。また、映像デモが3D立体視に対応していないのも残念ではあった。

 ちなみに、「発売予定なしの技術デモ」とのことだったが、HMZ-T3を改造するのではなく、後付けでシンプルに機能を追加する形態であったため、装置自体の完成度は高い。

 このまま製品化されることはないとのことだが、今後のHMZ-Tシリーズの進化の方向性を感じとることは出来たように思う。

 せっかくソニーにはPlayStationファミリーがあるので、次回デモではぜひとも、PlayStation 3用レーシングゲーム「グランツーリスモ6」のリプレイ映像などを、この装置で3D立体視でコクピット視点からヘッドトラッキング付きで見られれるようにして欲しいと思う。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちら