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第162回:パナソニックの液晶が大画面に。VIERA DT5

最上位液晶VIERAでデザイン新提案。「TH-L47DT5」



TH-L47DT5

 「大型画面サイズはプラズマテレビで」という、自らへの縛りを解いたパナソニック。今シーズンのVIERAシリーズは、液晶テレビの画面サイズを55インチにまで拡大した。

 しかし、「画面サイズの呪縛」から解放されたことでパナソニックは、自社ブランド内で展開される「プラズマテレビ対液晶テレビ」という構図について、「画面サイズ」以外で説明する必要が出てきてしまった。

 そこでパナソニックは新しい切り口を見出す。それは「デザイン性と性能の両立は液晶で」という方向性だ。この液晶VIERA新戦略の先鋒モデルが今回取り上げる液晶VIERAのDT5シリーズだ。今回は47型のTH-L47DT5を取り上げる。5月10日現在の実売価格は246,000円程度。



■ 設置性チェック〜 一人で軽々運べる47型。2.1Chスピーカーシステム搭載

圧倒的な狭額縁デザインのため、ボディが小さく見える

 DT5シリーズには、55/47/42型があるが、今回評価したのは47型のTH-L47DT5。薄型のスリムデザインが特長のモデルだが、実は、梱包箱も驚くほど薄い。その薄さたるや奥行きわずか約11.5cm。壁に立てかけないと自立できないほど薄いのだ。

 この薄い梱包箱には、組み上がっていない状態のスタンド部とディスプレイ部が押し込まれており、設置の際には自分でこの2つのパーツを接合させる必要がある。ネジ止めは10箇所ほどだが、プラスドライバーがあれば誰にでも組み立てられる。

 筆者の仕事場のAV評価ルームは2階にあるため、毎回、送付されてきた評価機を2階に運ぶのだが、本機は、47V型でありながらディスプレイ部だけだと約13kgしかないため、筆者一人で余裕で2階に持って上がることができた。ちなみに、ディスプレイ部だけの重量は55型で約17kg、42型で約11kgと、やはり軽い。

 TH-L47DT5のスタンド部は重さ約4kg。台座部分は幅43cm、奥行き26.5cmで、ディスプレイ部の薄さとは裏腹に、意外に底面積は広めで重く、しっかりとした安定感がある。接地面からディスプレイ部の下辺までの距離は約46mm程度。BD/DVDのパッケージが3個入るくらい程度の隙間で、背の低い設置台に置くと、画面が意外に低い位置に来る印象がある。スタンドの首振りは左右±15度ずつ、上下へのチルト機構はなし。なので、設置高については事前のシミュレーションは行なっておきたい。


ディスプレイ部だけの奥行きはわずか2.7cm。壁掛け設置にしても突き出し感がないはず スピーカーがあるにもかかわらず表示面下部の額縁も狭い。Panasonicロゴは白く発光するが、エコ設定によっては消灯も可能

 ディスプレイ部は、さすがにスリムデザインを売りにしているだけあって、すっきりしている。ディスプレイ部だけの寸法は106.7×2.7×63.1cm(幅×奥行き×高さ)。なんといっても特徴は狭額縁デザインで、左右と上の額縁の幅はわずか約10mmしかない。下部はスピーカーが内蔵されている関係で約27mmあるが、ここも他機種と比較すればかなり狭く押さえられている。

 そのためかTH-L47DT5は、47型という画面サイズの割には小さく感じる。よく言えば圧迫感がない。ディスプレイ部の奥行きも約2.7cmしかないこともあり、壁掛け設置でも、せり出し感なく美しく設置できそうだ。なお、壁掛け設置金具は「TY-WK4l1S」(26,250円)がオプションとして設定されている。

 表示面は光沢加工がなされており、暗い映像表示時や電源オフ時には室内情景の映り込みは比較的ある。表示は十分明るいので、普段の視聴に映り込み情景が邪魔をすることは殆ど無いが、設置場所は、表示面に相対する場所に窓や照明のないところにしたいとは思う。

 こうしたスタイリッシュデザインモデルでは、スピーカーの音質を心配する人もいるかと思う。DT5シリーズの場合は、メインのステレオスピーカーとして小型の8連スピーカーユニットをディスプレイ部の左右下部に実装しているだけでなく、背面上部に75mm径のウーハーユニットを搭載しており、意外にも贅沢な2.1chサウンドシステムだ。

 実際に音を聞いてみた感じでは、音量の大小によって印象が変わる。音量をやや絞り気味の状態では、中音域の解像感と比較すると低音の存在感が乏しいと感じる。しかし、音量を上げていくと、背面のウーハーが仕事をちゃんとし出して、先述したアンバランス感が解消されていく。音響設計を、ある程度音量を上げた状態で行なったのではないか、と想像できる。そして、新搭載された「音像アップ」回路の影響か、スピーカーは下部にあるにもかかわらず、画面中央、あるいはそれよりもさらに上から聞こえるのが面白かった。

 定格消費電力は108W、年間消費電力量は97kWh/年。42型の同世代プラズマVIERAのTH-P42GT5がそれぞれ350W、120kWh/年であることを考えると、かなり優秀な省エネ性能だということがわかる。


■ 接続性チェック〜D4以外のアナログ入力は変換ケーブル経由。無線LAN搭載

側面接続端子パネル。薄型デザインのためか、側面側がメインの接続端子パネルになる 背面接続端子パネル。ここには常時接続が前提となる端子が並ぶ

 接続端子は正面向かって左側の側面と左側の背面側にある。

 HDMIは4系統あり、その全てが側面側に実装される。側面にはUSB端子なども並ぶため、配線機器が多いと、左側面からヒゲのように無数のケーブルが生えたような見栄えになりがちだ。スタイリッシュな本体デザインとは裏腹に、配線後の見栄えは気を付けないとカオスになるかもしれない。

 4系統あるHDMI端子は、3D対応などといった基本仕様は全端子共通だが、HDMI1のみがARC(オーディオリターンチャンネル)対応になっている。アナログビデオ入力端子は、端子そのものが実装されているのはD4入力1系統のみ。そのD4入力端子も、音声入力には付属する変換ケーブルを利用しなくてはならない。

 変換ケーブルは一端が3.5mmのミニジャック、もう一端が音声RL+コンポジットビデオのRCA×3で、これが商品には2本付属している。前述のD4入力端子は、「ビデオ入力1」として、この変換ケーブルを用いて行なえるコンポジットビデオ入力と兼用であるために、音声入力にはこのケーブルが必要になるのだ。コンポジットビデオ入力は「ビデオ入力2」としてもう1系統ある。なお、Sビデオ入力端子はサポートされず。「Sビデオ撤廃」の流れは他社にも及んできており、2012年内には姿を消しそうだ。


アナログ入力用の変換ケーブルは2本付属 本体にD4入力を備えているが、アナログ音声入力のためにはこのケーブルが必要になる

 PC入力端子は無いが、HDMI端子をPC接続に利用できる。本連載でよく指摘しているHDMI階調レベルの設定や、PC画面の全域表示のためのDot by Dotモードの設定は、ちゃんと行なえる。HDMI階調レベルは「設定する」-「初期設定」-「接続機器関連設定」-「HDMI RGBレンジ設定」にて「オート」(自動)、「エンハンス」(0-255)、「スタンダード」(16-235)から選択するようになっており、PCやPS3などと接続する場合は「オート」があてにならないので明示設定をしたい。Dot by Dotモードの設定は「設定する」-「画面の設定」-「HD表示領域」にて、「標準」(オーバースキャン)、「フルサイズ」(Dot by Dot)から選択できる。

HDMI階調レベルは「設定する」-「初期設定」-「接続機器関連設定」-「HDMI RGBレンジ設定」。VIERAに慣れていないと見つけるのが大変 Dot by Dotモードの設定は「設定する」-「画面の設定」-「HD表示領域」にて設定可能。こちらも、やや見つけにくい

 音声関係の端子としては、背面には光デジタル音声出力端子、側面にはヘッドフォン端子を備える。ヘッドフォン端子は、スピーカーからの音声を消して聞くための目的のほか、二画面モード時の片側画面の音声だけを出力するのにも利用できる。

 USB端子は3系統。1つは録画用のUSB HDD接続専用、もう一つは、Skypeベースのテレビ電話用カメラ「TY-CC20W」を接続するためのものになる。3つめのUSB端子は、USBメモリやデジカメ、ビデオカメラなどとの接続用。なお、実際には、USBメモリやデジカメ、ビデオカメラはどのUSB端子に接続しても機能していた。また、今回の評価で、USBキーボード(ELECOM TK-U109JPW2)やジョイパッド(Logicool RumblePad2)の接続を試してみたが、ちゃんと認識して使用できた。これらは両方ともVIERA用のものではなくPCと接続して使っていた筆者の私物だ。

 ネットワーク関連では、100BASE-TXのEthernetのほか、IEEE 802.11.b/g/nの無線LANも内蔵している。SSIDの文字入力は、前述したUSB接続のキーボード経由で行なえたので、設定の面倒くささもない。

 ネットワーク機能は、VODサービスを初めとしたインターネット関連機能を利用すること以外に「お部屋ジャンプリンク」と呼ばれる、DLNAベースの家庭内ビデオ配信や、DMS(Digital Media Server)、DMC(Digital Media Controller)、DMR(Digital Media Render)に対応した各種機器との連携にも利用できるので是非とも活用したいところ。

SDカードに記録された写真のスライドショーが可能。デジカメ時代の昨今では、喜ばれる機能だ

 接続端子ではないが、DT5シリーズはSDメモリカードスロットも装備しており、SDHCカードのほか、SDXCカードにも対応。デジカメやビデオカメラで撮影した写真や動画を収録したSDカードの再生用途がメインとなるが、この他、リモコンの[静止]ボタンで止めたテレビ画面をキャプチャ保存する用途にも利用できる。ただし、キャプチャ映像には著作権保護の観点から暗号が掛かっており、保存したテレビ自身でしか再生が出来ず。さらに言えば、そのSDカードをPCに持っていってもキャプチャ映像は見られなかった。

 また、DT5シリーズはネットワークプリンタへの接続にも対応できるが、このテレビ画面のキャプチャの印刷は、やはり著作権保護の観点から行なえない。なお、ネットワークプリンタで印刷できるのはインターネット画面、オンライン取説画面、データ放送画面、デジカメ、ビデオカメラで撮影した写真に限定される。実際に使っていて気がついたのは、録画用USB端子を利用していると、SDカードの脱着がしづらいということ。イジェクトしたSDカードをツマミ出そうにも、スロット直下の録画用USB端子に刺さっているUSBケーブルの端子が邪魔で指が入らないのだ。地味な部分だが改善を期待したい。



■ 操作性チェック〜充実のネット機能でスマートTVの本領を発揮

リモコン

 リモコンは、VIERAではお馴染みの左側が突き出たような左右非対称デザインのものを引き続き採用している。ボタンのレイアウトが過密でごちゃごちゃしている感じはあるが、各ボタンに刻印された文字は大きく読みやすい。

 電源オン操作をしてから、地デジ放送の映像が出てくるまでの所要時間は約4.5秒。なかなか高速だ。地デジチャンネルの切換所要時間は実測約1.5秒と、こちらも早い。

 入力切換は[入力切換]ボタンを押して開く入力メニューから十字キーの上下で選択する方式。切換所要時間はHDMI→HDMIが約4.5秒であまり早くないが、HDMI→D4は約1.0秒の方はまずまずの早さ。

 アスペクトモードの切り替えは、メニューの最上階層にある「画面モード設定」から希望のアスペクトモードを選択する方式だ。切換所要時間はほぼゼロ秒で、操作を行った瞬間に切り替わる。搭載されているアスペクトモードは以下の通り(HDMI、1080p入力時)。

モード名 内容
フル パネル全域に映像を表示する
サイドカットノーマル 左右に黒帯を表示し、上下を若干オーバースキャンして
アスペクト比4:3映像を表示
サイドカットジャスト アスペクト比4:3映像の外周を伸張して表示する疑似16:9モード。
若干オーバースキャン気味になる
サイドカットズーム アスペクト比4:3映像にレターボックス記録された
アスペクト比16:9映像を切り出してパネル全域に表示する
サイドカットフル 上下左右に黒帯がある16:9映像をパネル全域に拡大表示する

 プリセット画調モードの切り替えは、「画質の調整」メニューから行なう方式。切換所要時間はほぼゼロ秒で、操作した瞬間に切り替わる。

 最近は、各入力系統ごとに再生するコンテンツの種別をある程度固定化してしまう使い方が主流になってきているためか、プリセット画調モードやアスペクトモードを切り換えるための操作ボタンがリモコンから姿を消すようになってしまった。個人的には残念な風潮だ。

 さて、実際に様々な調整項目をいじるためにリモコン操作をしていると、正面向かって画面中央よりも左にいる状態でリモコンを正面に向けて操作すると、時々、操作を受け付けてくれないことに気がついた。理由を調べてみたら単純で、リモコン受光部が表示面右下の端っこに設けられていることが理由のようだ。リモコンを画面の正面に向けずに右下に向けて操作するようにしたら、反応がずいぶんと改善された。

 昨今の節電ムードの世相を反映してか、DT5シリーズには「エコナビ」と呼ばれる誰でも簡単に省エネが出来る機能が搭載されている。デフォルトではオフになっているが、エコナビを有効化すると、画面の明るさが若干絞られるだけでなく、周辺機器への通電なども節電に特化した制御に切り替わったり、ニュースなどのような大音量が不要な番組に対しては最大音量を絞る調整も行なわれる。つまり、本機側が自動的に最良と判断する範囲で自動的に節電な振る舞いをしてくれるのだ。

 また、「エコナビ」オフ時にも、リモコン上の[エコ視聴]ボタンを押すことで、ユーザーが自発的に節電視聴モードに移行できる。[エコ視聴]ボタンを押すたびに25%節電、35%節電、65%節電(映像オフ/音声のみ)と順送り式にモードを切り換えることが出来る。切換は画面の消失もなしに瞬間的に行なわれるのでストレスは少ない。実際に試してみたが、部屋の照明をオフにして暗室にした状態ならば、35%節電視聴モードでも十分に楽しめると感じた。今年の夏は昨年にも増しての節電ムードになりそうなので、DT5シリーズのオーナーになった暁には積極的に活用してほしい。


■ 画質チェック〜液晶としては最上級の3D画質。ただし、輝度ムラは改善余地あり

 パナソニックは液晶パネルとしてIPS液晶を強く推進してきたことから、DT5シリーズも当然IPS液晶パネルを採用している。解像度は1,920×1,080ドットだ。

極めて開口率の高いサブピクセル構造。格子筋はほとんど感じられない

 IPS方式では、画素セル内に平面的に配置した電極で横電界駆動を行うことで液晶分子を制御する。IPS型液晶の美点は、液晶分子が横電界駆動により表示面に対して平行に回転するため、光が進む方向軸に対する液晶分子の動きがほとんど無いところにある。このため、視線角度に依存した見え方の違いが少なく、このため「視野角が原理的に広い」という定評を獲得することとなった。

 今回評価したTH-L47DT5も、画面全域において色味が安定しており、視線角度を変えても色調変化が殆ど無い。

 また、15倍ルーペで画素を観察してみたが、サブピクセルの開口率が非常に高いことに気づかされる。単色の塗りつぶし表現において、粒状感が少なく感じるのは、このためだろう。画素仕切りの格子筋が極めて細いのだ。

 黒の沈み込みは、プラズマVIERAと比較すると劣り、若干の黒浮きを伴う。最近の競合製品と比較しても一歩及ばずといった感じで、この辺りは、「黒の沈み込みはプラズマの方で訴求する」というパナソニックなりの商品戦略によるものなのかもしれない。

 バックライトは白色LEDで、画面左右にレイアウトしたサイドエッジ方式で、画面端から中央に向けて導光板で光を導く構成だ。全漆黒背景に画面中央にだけ白色マスを表示するテスト画像を出すと、本来黒の部分は一様な黒でないといけないはずだが、画面の左右が薄明るく、中央に向かって暗くなる輝度ムラを生じる。根本的な光路設計の問題か、広報機のためボディにねじれが出ているためなのか分からないが、四隅が特に明るくなる傾向がある。色調変化はIPSのせいではないが、輝度ムラはやや気になった。

全黒背景中央に白色正方形を表示。輝度ムラが大きく、特に四隅が明るくなる。この黒浮き具合は、最近の他社の液晶機と比較すると見劣りする。「黒はプラズマ」ということか この輝度ムラによる黒浮きは映像表示にも支障を来している。前出の写真の黒浮きがそのまま表示映像にも出てしまっている点に注目

 なお、TH-L47DT5は、サイドエッジの白色バックライトを水平方向に8エリアに分割して、映像中の明暗分布に応じた発光制御を行なっていると説明されている。この簡易型エリア駆動効果により500万:1のダイナミックコントラストを実現しているとアピールされているが、実際にテスト映像を見た限りでは、そこまでのコントラストはない。エリア駆動の効果はかなり控えめだ。

 ただ、高輝度方向の伸びは、確かにあるので、コントラスト感は明部のダイナミックレンジで稼いでいるような印象だ。また、明部と暗部が同居するような映像では、明らかに明部の方の伸びを優先させる画作りをしている。逆に言えば、暗部は“浮き”を覚悟の画作りとしている感じだ。こうした画作りもまた、プラズマVIERAと差別化する意図があるのかもしれない。

同一フレーム内に極度の明と暗が同居すると確実に階調は明側に引っ張られてしまう

 色調変移はないが、発色そのものはどうか。

 これについては不安材料はない。赤、緑、青の純色がとても鋭く、広色域ディスプレイのような深みのある出色になっている。赤には朱色っぽさはなく、緑にも黄味は感じられない。暗部は前述したような黒浮きはあるが、色味自体は残っているので、色深度は深い。二色混合グラデーションなども見てみたが非常にアナログ感のある描画で心地よい。

 肌色も良好で、黄味が乗ったり、赤みが強く出たりもせず、自然な透明感のある発色になっている。肌色のダイナミックレンジも広く、肌色の明暗がとても立体的に描き出される。


ビビッド=オフ ビビッド=オン。広色域な味付けとなり豊かな色彩になる。写真からも青と緑の鮮烈さの違いが見て取れる

 TH-L47DT5は、4倍速240Hz駆動に対応している。入力映像は60Hzなので、存在しない3フレーム分を算術合成して240Hz表示にしている。この倍速度数が上がれば液晶パネル特有のホールドボケが解消されると誤解している人もいるかもしれないが、2倍速であろうが4倍速であろうが、補間フレームの品質の善し悪しこそが表示品質に直結する。

 4倍速駆動の振る舞いは、「設定する」-「画面の設定」-「4倍速」にて、「オフ-弱-中-強」の4段階で設定できる。この設定は、実際には、算術合成された3枚分のフレームを実在フレームに対して、どの程度の支配率で表示していくかを設定するものになる。

4倍速駆動の設定は「画面の設定」の最後のページにある

 本連載ではよくテストに用いている「ダークナイト」のオープニングのビル群を飛行するシーンで試してみたところ、競合他機種では派手に振動してしまうビルの窓枠が、TH-L47DT5では振動しなかった。「4倍速=強」設定でも振動が起こらないので、ピクセルのベロシティ予測アルゴリズムがかなり優秀なのだと思われる。ただ、このテストシーンは有名になってきた感もあり、個別に対策された可能性もある。そこでチャプター9の(ヘリコプターが着地した後のシーンの)ビル飛行シーン(0:32あたり)で検証して見たところ、中央のカーキ色のビルの広い範囲で激しい振動が確認された。まだ完璧ではないようだ。

 さすがに意地悪な感じもするので、実際のテレビ番組などを視聴してみたところ、そこまでの振動シーンは滅多に遭遇しなかったことを報告しておく。

 ただ、長く見ていると、移動体の輪郭部分に揺らぐようなノイズ・アーティファクトに気付く。

 自分で試してみたい場合は、PC画面を出して、Webサイトのウインドウを幾つか開き、そのうちの1つをドラッグして動かしてみるといい。動くウインドウ自体はスムーズにみえるが、その動くウインドウの輪郭と重なる背景側のウインドウに揺らぎノイズが視覚出来るはずだ。実際のテレビ番組の映像などでは背景を動体が横切る際に、発生しやすい。

上から下に向かって、横長の8エリアに分割した単位での8相バックライトスキャニングを行ない、ホールドボケ低減に取り組んでいる

 ホールドボケや残像を低減させる「n倍速駆動」技術だが、こうした一連のアーティファクトによって元の映像よりもはるかに見栄えが悪くなってしまうのがもどかしい。n倍速のnの数値を上げても、画質は向上せず、むしろアーティファクトの支配率が上がるだけなので、根本的な解決がそろそろ欲しい。

 やや話が長くなったが、TH-L47DT5の4倍速駆動は、「昨年よりも進化したとは思うが、アーティファクトが目立ちにくい『弱』設定か『オフ』設定で常用すべき」、というのを筆者の結論としたい。

 実際のところ、「4倍速=オフ」設定にしても、映像のホールドボケはそれほど気にならない。これはTH-L47DT5が「4倍速=オフ」時であっても、水平方向に8分割したサイドエッジバックライトシステムが、8相のスキャニング表示を行なってくれるからだ。このバックライトスキャンの効果はとても大きく、部屋を暗くして映画を視聴する際には4倍速駆動なしでも、ホールドボケは気にならない。フィルムジャダーは残るが、これは元の映像がそうなのであり、液晶パネルのホールド表示に起因するものではない。

 もっとも、動画性能に関しては、これまで定説的に「プラズマ有利」とされてきたが、いまでは液晶もかなり力を付けてきている。補間フレーム挿入型の4倍速駆動に対して筆者は疑問を感じるが、8相スキャニングの効果は十分に感じられたので、視覚的には「同等」といっていいと思う。プラズマには、フィールド駆動特有の階調割れがあるので、それがない分、液晶の方が見やすいという局面もある。

 VIERA VT2シリーズから搭載された超解像処理は、TH-L47DT5にも搭載されている。ただ、機能的な進化はなく、相変わらず1080i、1080pの映像に対して適用できず、480i/480p/720pのみの適用に留まっている。また、効かせても油彩シェーダーを掛けたみたいな映像になってしまうため、あまり利用価値はないと感じる。VIERAの超解像機能に関しての詳細については、本連載「TH-P50VT2編」を参照して欲しい。

 プリセット画調モードは、スタンダード、シネマ、ダイナミック、リビングなど。基本的には従来のVIERAシリーズと同様で、ダイナミック以外の各モードの実用度は高い。今回の評価は基本的にはスタンダードでのものだ。

「NR」(ノイズリダクション)、「HDオプティマイザー」、「ビビッド」、「カラーリマスター」などの各高画質化機能については特に進化ポイントはないので、これらのインプレッションについては本連載の「TH-P42V1編」も参照して頂きたい。

 

【プロセット画質モード】

スタンダード シネマ
ダイナミック リビング

 

 本連載では液晶VIERAでの3D立体視の評価は初めてなので、この辺りのインプレッションも述べておきたい。

 プラズマVIERAの3D立体視は、明るさの面では液晶勢と比較すると暗いと言わざるを得なかったが、そこは明るさ重視の液晶VIERA、3Dメガネを掛けても相当に明るい3D映像を見ることができた。蛍光灯照明下で3D眼鏡を掛けてもそれほど映像が暗いとは感じなかったほどだ。

3D奥行き設定

 3D立体視において最大の敵であるクロストーク現象(二重像現象:本来見るべきではない反対側の目用の映像が見えてしまう)は、ほとんど気にならないレベルにまで押さえ込めている。3D元年と言われた2010年のパナソニックは「液晶よりもプラズマの方がクロストークは少なくできる」としてきたが、この点に関して液晶VIERAは、もう負い目はないと言い切れる。

 本連載でクロストーク確認用ベンチマークとして使用している「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターシーンにおいても、初期のプラズマVIERAでは盛大に出ていたトンネル内照明の表現におけるクロストークが、本機ではほとんど感じられない。クロストークは皆無ではないので、シーンによっては「あ、ある」と気がつく場合もなくはないが、そうした場合でも「3D奥行き設定」を調整すると視差が変わるためか、解消する場合があった。


3Dメガネは純正オプションとして別売り扱い。Mサイズの「TY-ER3D4MW」(写真)とSサイズの「TY-ER3D4SW」が用意される

 3D画質は、クロストークが少ないだけではなく、その映像の表示品質自体も素晴らしかった。

 特に、3Dオブジェクトの輪郭の描写が非常にクリアで視力がよくなったかのような見え方をする。そのためか、微細の凹凸表現に対しても確かな立体感が得られており、3D映像全体として見ると「立体的な情報量」の多い映像として実感できた。液晶テレビの立体視としてはかなり上質だと思う。

 また、今期VIERAより、3Dメガネは2.4GHz帯の電波式となったので、3D立体視時でも赤外線リモコンがちゃんと効く。これは筆者もかねてから指摘し続けてきた改良方針だったので、この対策は歓迎したい。


電源は充電池式。USB充電が可能 約27gと非常に軽い 電波無線式を採用し、これまでの赤外線方式の3Dメガネよりも安定した使用感が得られるのが特徴

 本連載ではお馴染みの表示遅延についても調査してみた。比較対象は、表示遅延約0.2フレーム(約3ms)の 業界最速の東芝レグザ「26ZP2」だ。

ついにVIERAも「ゲームモード」搭載。その実力は!?

 VIERAは、薄型テレビ製品の中では最もこの類の問題への取り組みについて遅れていたのだが、ついに重い腰が上がり、最新のVIERAでは「ゲームモード」が搭載されるに至った。

 プリセット画調モードを「スタンダード」、「HD表示領域=フルサイズ」のDot by Dotモード、「4倍速=強」設定とし、「ゲームモード=オフ」では、1080p/60Hz時の表示遅延は約3フレーム(約50ms)であった。

 ここから「ゲームモード=オン」として計測し直すと、約1フレーム(約17ms)にまで短縮。ここまで来ればVIERAでもリアルタイム系のゲームがプレイできるはずだ。

 「ゲームモード=オン」設定のまま、3D立体視時の表示遅延も調べてみたが、こちらは約2フレーム(約33ms)であった。こちらも3D立体視時の値としては悪くない。

 なお、「ゲームモード=オン」時は、設定とは無関係に4倍速駆動はキャンセルされていた。


「ゲームモード=オフ」での表示遅延は約50ms 「ゲームモード=オン」では表示遅延は約17ms 3D立体視時のゲームモードでは表示遅延は約33ms

■ ネット機能も充実。ゲームプレイやもっとTVも

ネットメニュー

 ネット機能が充実しているTH-L47DT5なので、特徴的な幾つかの機能の評価も行なってみた。

 まずは、パナソニック独自のスマートテレビプラットフォームである「VIERA CONNECT」から、ゲームをダウンロードしてプレイしてみた。「Hangman」、「ILLUSTRATION LOGIC」、「FREE THROW」、「Gem Reversi」といった無料のミニゲームをインストールしてプレイしてみたところ、全てがジョイパッドで普通に遊ぶことが出来てしまった。もちろんテレビのリモコンでもプレイ出来るが、パッドでプレイしたほうが各段に遊びやすくなる。


「ビエラ・コネクト・マーケット」画面。最新VIERAはスマートTV化してアプリが動作する。アプリは無料から有料のものまでがあり、無料のものだけでも相当楽しめる。インストール先は本体内蔵ストレージ USBジョイパッドが使え、ゲームプレイに対応。メニュー操作も可能

 Webブラウザも、キーボードとジョイパッドの両方に対応。テレビ内蔵のブラウザでは、縦方向にやたら長い筆者のブログなどは時々メモリエラーが出てしまう事があるのだが、問題なく表示できていた。ただし、埋め込みYouTubeなどは再生出来ず。単体のYouTubeアプリから再生せよと言うことのようだ。

Webブラウザは地味にバージョンアップ。ほとんどのサイトを正しく表示出来る

 内蔵Webブラウザは、キーボードとジョイパッドに対応しているのに、なぜかマウスには対応しておらず、縦に長いサイトのページ送りをスムーズに行なえないがやや残念。

 筆者も遅ればせながらGALAXY NOTEを購入してAndroidデビューを果たしたので、Androidアプリの「VIERA Remote」をインストールして活用してみたが、無線LAN経由で繋げるのはかなり便利だと実感した。GALAXY NOTE側で見ているWebサイトをTH-L47DT5側に映し出したり、GALAXY NOTE側の写真、音楽、動画などのコンテンツ再生をTH-L47DT5側で行なえるのが楽しい。VIERA Remoteはインストール後、スマートフォン側に出ているVIERAを選択するだけで、すぐに使えるため初心者にも優しい。VIERA側はネットワークさえセットアップできていれば、それ以上の設定が不要なのだ。

VIERA Remoteでスマホ内のコンテンツを表示させた状態でドラッグしながら上にスライドさせれば自動的にVIERA側でスマホ側のコンテンツが表示される Web画面も、スマホ側で出しているものを、ドラッグ操作するだけでVIERA側に映し出すことができる。Web画面の場合はURL情報を飛ばし、VIERA側のWebブラウザでの表示となる
「もっとTV」はリモコンから一発起動できる操作系になった。力の入れようがうかがえる

 この他、本機は民放キー5局と電通が共同で推進運営するVODシステム「もっとTV」に直ジャンプできる[VOD]ボタンが搭載されているが、こちらの使用感については、本誌のレビュー記事を参照いただきたい。



■ 液晶ならではの“明るさ”と着実な進化

 ついに大画面サイズでも液晶が選べるようになったVIERAシリーズ。画質面でも、輝度を活かしたコントラスト感などはこれまでのプラズマVIERAとは一線を画しており、この“明るさ”が3Dにおいても効いている。クロストークの少なさも含めて、「3Dを積極的に見たい」人にとっても、魅力的といえる。3Dメガネの無線化や、スマートフォン連携などの使いやすさも、従来モデルからの向上が感じられる。

 VIERAシリーズを指名買いする場合、ますます「液晶かプラズマか」でユーザーは悩むことになるかもしれないが、「より大画面で」となると、60型まで用意されているのはプラズマVIERA(VT5、GT5)だけなので、必然的にそちらを選ぶことになる。

 55型と42型は液晶、プラズマ、両方のVIERA(DT5、GT5、ET5)にあり、どちらを選ぶべきか悩む人は多そうだ。「同画面サイズで」という条件だけで「どっちにすべきか」を考えてみると、消費電力に関して言えば、やはり液晶の方が優位だ。

 画質に関しては、今回の評価を踏まえると明るさ重視の液晶VIERA、黒表現重視のプラズマVIERAということになるだろう。といっても今回のDT5の黒浮きや輝度ムラは他社に見劣りするので対策を要するとは思うが。また、動画性能に関しても、プラズマのもはや独壇場ではなく、液晶もかなり力を付けてきている。3D画質に関しては、液晶VIERAの3D画質が予想外によかったので優劣付けがたいが、部屋の照明を落とさずとも日常環境で明るい3Dが楽しめるのは液晶VIERAの方だ。プラズマの優位性が無くなったわけではないが、TH-L47DT5からは、液晶の特徴を活かした着実な進化が実感できる。

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(2012年 5月 11日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。