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麻薬王パブロ・エスコバルの隆盛と落日。「ナルコス シーズン2」
2016年9月13日 09:30
Netflixの日本上陸からちょうど1年経過した2016年9月2日、「ナルコス シーズン2」が配信開始された。Netflixのオリジナルドラマの第2弾だが、個人的には、Netflixオリジナルで最も気に入った作品が「ナルコス」(シーズン1)だっただけに待望のシーズン2の配信だ。
9月3日の土曜日、ドイツからIFA開催初日のレポートが続々と送られてくる中、朝8時前に起床し、午後5時まで(時折レポートをチェックしながら)、「イッキ見」してしまった。
ナルコスは、麻薬王パブロ・エスコバルの史実をもとにドラマ化したオリジナルシリーズ。
80年代後半、大量のコカインをコロンビアからアメリカに密輸した麻薬カルテルのリーダー、パブロ・エスコバル率いるメデジン・カルテルの暗躍と、阻止しにかかるアメリカ麻薬取締官(DEA)、コロンビア警察との攻防戦を描くクライムアクション・サスペンスとなっている。
シーズン1は、パブロがコカインビジネスを始め、世界に名だたる金持ちになり、スラム街のヒーローになり、そして国会議員になるという、右肩上がりの時代。そして、そこから(贅を尽くした)刑務所に収監され、刑務所を脱走するまでの10年が描かれた。
シーズン2は、パブロ脱走後のコロンビア政府、そしてDEA、CIA、米国による追求とエスカレートする戦い、そして競合となる密売組織カリ・カルテルとの全面戦争などが描かれる。パブロの「王国」の崩壊を描くのがシーズン2といってもいいかもしれない。
麻薬カルテルが舞台なだけに、殺人や拷問など目を覆わざるを得ないシーンが多いのだが、麻薬王の豪邸やコロンビアの豊かな自然など、映像の美しさも作品の魅力。
シーズン1は、残虐な攻撃性をもちながらも、市民に愛され、弱者の味方として君臨するパブロの矛盾した人間的な魅力、家族・仲間との友情・愛情も楽しめたが、シーズン2はより陰惨なトーンで、パブロの攻撃性もより高まり、敵対組織との残虐な抗争による殺人など、目を覆うシーンもより、増えているように感じる。
パブロの攻撃性が高まるにつれ、DEAやコロンビア警察も「手段を選ばなく」なり、抗争はより悲惨なかたちにエスカレートしていく。追い詰められたパブロと家族達の関係が変化していくのも痛ましいが、そもそも抗争の最初の火種はパブロだけに複雑な気持ちになる。
ストーリーはほぼ史実どおりで、エスコバルの誕生から事業の拡大、国家との対立、その死までを描くもの。とはいえ、ドラマ化にあたり、ところどころ脚色・演出が加えられているようだ。見る前と見終わった後に、マーク・ボウデンの書籍「パブロを殺せ」も読んだが、ドラマならではというシーンも数多く見受けられた。
個人的には、盟友グスタボの回想シーンや父親との対話などが印象に残った。約20時間の大作ならではの多くの伏線が「ここで繋がるのか!」と驚いたり、弱気なパブロに同情したり、残酷なパブロに怒りを覚えたり、と、ハラハラしながら見られるのは間違いない。残虐なシーンも多いため、「家族で仲良く」というわけにはいかないが、「重厚なドラマをガッツリ楽しみたい」のであれば、ナルコスはおすすめだ。普段は意識しなくても、自分が享受している平穏、平和の尊さに感謝したくなる。過激で過酷な世界を体験できるのが、本作の魅力だ。