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今期はどれが気に入った? 「グラブル」「すかすか」など4月の新アニメをチェック
2017年5月1日 09:15
4月期のアニメも3話程度放送され、各作品の雰囲気や方向性がわかってきた頃。全部見るのは大変なので、「この作品を最後まで鑑賞しよう」、「これはちょっと合わないな……」と、取捨選択している人も多いだろう。筆者は「それでも可能な範囲で全部観る」派だが“お気に入り作品”は定まってきた。
今期最大の注目作が何か? は難しいところだが、知名度というか、前注目の高さでは「グラブル」こと「GRANBLUE FANTASY The Animation」だろう。言わずと知れた、人気スマートフォンゲームのアニメ化だ。ただ、ゲームや原作の人気が高いと、既にキャラクターのイメージが確立されているため、アニメ化した際に「思っていたのと違う」、「原作の方が良い」といった不満の声が多く出る事もある。「グラブル」のアニメもその可能性はあるわけだが、個人的にはさほど違和感を感じず、落ち着いて楽しめる作品になってる。
もともと、“男たちに追われる謎の少女を少年が助け、共に旅に出る”という王道のファンタジー物語であり、おそらくゲームをまったく知らないという人も違和感なく楽しめるだろう。反面、あまりに普通に作られているので、アニメ化によって“化ける”というか、意外なキャラの新たな一面が見えて人気が高まるなど、何か刺激が欲しいという気もする。
同様に、王道な展開で面白いのが「ゼロから始める魔法の書」。“ゼロの~”とか“ゼロから~”と、タイトルに”ゼロ”が入る作品が多いので「またか」と感じる人もいるかもしれないが、名前だけで食わず嫌いをするともったいない作品だ。
主人公の傭兵は、人間ではあるのだがホワイトタイガーのような顔や体の色で生まれた“獣堕ち”(半人半獣)で、まるでグイン・サーガのようだ。作品のファンタジー世界では、この獣堕ちの首が魔術に使えるという事で、魔女から四六時中命を狙われる気の毒な身の上。そんな傭兵が出会ったのは、天才的な魔女で、態度はデカイが、プロポーションには凹凸が少なく、世間知らずという“ゼロ”。水と油なハズの2人が、共に旅をする。原作は2014年から刊行がスタートしている小説だが、どこか懐かしいライトノベルの匂いがする作品だ。
あいにく筆者は原作小説を読んでいない。アニメ化にあたり、アレンジ点も多いようだが、今のところアニメから入っても十分楽しめている。2人の旅の行方と共に、関係の変化にも注目してしまう作品だ。
王道のファンタジーと思いきや……意外な内容なのは「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」(通称:すかすか)。主人公の青年は、いかにも勇者というルックスなのだが、彼が魔物を倒す話ではない。というのも、彼は人間を救えず、自分一人が生き残り、かろうじて浮遊大陸に逃げ延びた世界で物語はスタートする。人間はもはや迫害を受ける希少種となり、主人公は知らぬまま可愛い少女達の世話役のような仕事を引き受ける事になる。
だが、この少女達は“妖精兵”と呼ばれる存在で、かつて人間の勇者が使っていた聖剣などを装備し、使い捨ての兵器として戦場に投入。人間や多くの種族を滅ぼした、正体不明の“獣”と戦う日々を送っている。つまり、勇者がなし得なかった仕事を、彼女達が肩代わりさせられており、主人公はその面倒をみる事になる……というわけだ。
非常に切ないというか、キツイ設定で、バトルよりも主人公の心情や、いつ死んでしまうかもわからない少女達の儚さや、怪我や死に対してドライにとらえる異様さも浮き彫りになっていく。この先どうなっていくのか? 先の読めない展開が魅力だ。
「先の読めない」と言えば、「Re:CREATORS」も外せない。「ブラックラグーン」の広江礼威、「Fate/Zero」や「アルドノア・ゼロ」のあおきえい、「アルドノア・ゼロ」のTROYCAが手がけるオリジナルアニメで、その豪華なスタッフが放送前から注目を集めていたが、中身もかなり面白い。
簡単に言うと、ファンタジーの女騎士とか、バトル漫画のボスキャラとか、魔法少女とか、アニメやゲームに登場するキャラが、現実の世界に実体化。それらがバトルを繰り広げる……というもの。「バトル漫画のボスキャラと魔法少女はどっちが強いのか?」なんて、考えただけでも斬新だが、作品の枠を越えてキャラが入り乱れる展開は、スーパーロボット大戦のようで面白い。
また、作品の中で生きるキャラクター達にとって、作品を生み出した現実の世界は“創造主の世界”と言える。つまり、キャラと、そのキャラを生み出した作家が遭遇するメタフィクション的な展開も軸になる。キャラ達はなぜ現実の世界に現れたのか? 創造主はキャラにどれだけの影響を与えられるのか? そしてキャラクター達に「創造主達に影響力を行使し、私達の世界を作り変えさせよう」と持ちかける謎のキャラクター“軍服の姫君”とは? 空想と現実がごっちゃになった物語がどこへ向かうのかが非常に気になる。
他にも謎に満ちた「正解するカド」など、「むむむ、どういう事だ!?」と考えながら楽しむ作品も良いのだが、逆に、頭をからっぽにして楽しめる作品が多いのもアニメの良いところ。
「書いた者同士は必ずキスをする」“デスノート”ならぬ“キスノート”が題材の「恋愛暴君」。ドタバタラブコメの王道という感じだが、ぶっ飛んだハイスピードな展開が観ていて気持ちよく、また恋の騒ぎの発端であるキューピッド・グリの、テキトー極まるキャラクターが最高。原作でも純情な一面と、ボケ倒すギャップが可愛いのだが、アニメで動くと魅力が倍増している。中毒になるオープニングも必聴だ。
いわゆるハーレムモノっぽく見えるが、熱いバトルアニメの側面も持つのが「武装少女マキャヴェリズム」。学園を統率する美少女「天下五剣」に、武器も持たず、体術で挑む男子高校生・納村不道という構図で、いわゆる“勝ち気な少女が負けてデレる”展開の宝庫。ただ、超能力も魔法も登場せず、地に足がついた“武術”で戦うバトルシーンは昨今のアニメでは逆に新鮮で、ともすれば浮世離れしがちなハーレムアニメの引き締め効果になっている。
他にも、観ていると脳みそがとろけていく「ひなこのーと」、可愛い義妹と過激な展開が持ち味の「エロマンガ先生」、異能バトルを繰り広げる少女達を、ガンコじじいが「人の迷惑になることをするな!」と叱り飛ばす異色のアニメ「アリスと蔵六」など、癖になる作品が多い2017年4月期だ。