データで読み解く家電の今
1TB以上でダブルチューナ以上が主流に。縮小傾向のBDレコーダ市場
2016年11月29日 08:15
かつてはAV Watchで最も人気のある製品カテゴリであった「レコーダ」。しかし、ここ最近はメーカー間競争も落ち着き、また、映像配信サービスの伸長もあり、あまり大きなトピックが無くなってきたようにも見える。今回は、データからBDレコーダ市場の“いま”を確認してみよう。
BDレコーダ市場は地デジ移行による特需を受けて販売が急伸した2011年以降、縮小傾向にある。'09年には290万台だった販売台数は、'11年には620万台に拡大。しかし、12年は特需の反動を受けてマイナス成長に転じ、'15年には230万台となった。'16年(1-9月)もその傾向は変わらず、前年⽐12%減となっている。
平均価格(税抜)を見ると、右肩下がりで、'09年の91,000円だったが'12年の44,000円にはとなった。ただし、その後はほぼ横ばいで、'14年、15年は46,000円となっている。
ざっくりいうと、“販売台数のピークは'11年で、その後は縮小が続いている。平均価格は'13年あたりから下落が一段落した”というのが、BDレコーダ市場の実体だ。
製品スペックを見てみると、トレンドと言えそうなのがHDD容量増と、複数チューナ化。特に1TB以上の大容量HDDを搭載した製品が拡大している。'12年には販売台数の28%が1TB以上だったが、'15年には51%、16年(1-9月)では57%を占めるまでに成長した。
複数のチューナを搭載した製品を見ると、'15年の販売台数のうち2チューナが65%、3チューナ以上は19%を占めるまでに拡大。さらに'16年(1-9月)ではそれぞれ66%、22%となった。また、いわゆる“全録機”といわれる6基以上のチューナ搭載製品は'16年(1-9月)で約1割に達している。
高機能化が進む中で平均価格は下がっている。
一方シングルチューナの製品は縮小傾向にあり、12年は32%だった数量構成比が15年は17%、16年(1-9月)では12%となった。GfK Japanでは、「外付けHDDへの録画に対応したテレビが増加した影響が大きい」と分析している。
テレビの外付けHDDへの番組録画は、BDレコーダによる録画と並び主要な録画手段となっており、同タイプのテレビの数量構成比は'09年頃から拡大し、'13年に9割を超過。その後も高い水準を維持しているという。
GfK Japan 中里見慎一アナリストは、「現在チューナ数や内蔵HDD容量が多い高スペックな製品は構成比が拡大傾向にあり、今後もこの傾向は続くとみられる。外付けHDDの使用増加やテレビ離れを考えるとBDレコーダ市場の拡大は見込みづらく、今後もメーカーが高スペック製品に注力してくることが考えられる。2015年秋以降、新規格のUltra HD Blu-ray(UHD)対応のレコーダが徐々に出てきているが、従来のレコーダの約3倍と高価格であることもあり販売台数で見ると市場への影響は今のところそれほど大きくない。4Kテレビの更なる普及伸展と、コンテンツの拡充により、今後の同製品の販売拡大が期待される」とコメントしている。
11月下旬には、パナソニックからUHD BD対応で約10万円の「DMR-UBZ2020/1020」も発売される。こうした新製品により縮小傾向のBDレコーダ市場がどう変わっていくか、注目したい。
出典:販売実績を基に推計した市場規模データ/GfK Japan調べ