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“TVモード”搭載無線LANルータに変えてみた

−DLNAの操作レスポンス改善。NEC「Aterm WR8600N」


Aterm WR8600N(PA-WR8600N-HP)とEthernetコンバータの「WL300NE-AG」

 最近のテレビやレコーダでは、ネットワークを使った提案が増えているが、その中でも各社が力を入れているのが、「DLNAホームネットワーク」機能だ。

 レコーダをサーバーとし、デジタル放送録画番組を、DLNA/DTCP-IP技術を使ってホームネットワーク内のテレビなどで再生するというもの。レコーダとテレビの双方でDLNA/DTCP-IPに対応している必要があるが、シャープ、東芝、ソニー、パナソニック、日立など大手メーカーのテレビは下位モデルを除いてほとんどがこの機能に対応している。各社の機能名はまちまちだが、最新テレビ/レコーダの標準機能といえるくらい搭載率は高い。


【各社テレビ/レコーダなどのDLNA/DTCP-IPネットワーク機能の名称】

メーカー 機能名
シャープ ホームネットワーク
東芝 DLNA
ソニー ソニールームリンク
パナソニック お部屋ジャンプリンク
日立 AVネットワーク

 この機能があるため、たとえば「2階の寝室のテレビから、リビングのレコーダで録画した番組を視聴する」、「リビングのテレビが占有されている場合、別室で録画番組を見る」といった使い方が可能になる。

 使ってみると便利なDLNAネットワーク機能だが、各テレビ/レコーダメーカーに聞くと、利用率、認知率ともまだまだ低いそうだ。「テレビ/レコーダをネットワークにつなぐ」行為がハードルになっていることもあり、各社がレコーダやテレビに無線LANを内蔵したり、USBタイプの無線LANアダプタを配布するなど、ネットワーク接続を促す施策を強化している。というのも、配信サービスとの連携や、レコーダ、スマートフォン/タブレットの連携など、今後家庭内のAV環境の差別化や利便性向上の際に、ネットワークの重要性が高まることが予想されるからだ。

 筆者も無線LANホームネットワークは構築しているが、最近の無線LANルータは、よりAV利用を考慮した提案がされている。今回“TVモード”搭載を謳うNECアクセステクニカの「AtermWR8600」を使って、ホームネットワーク環境の改善に取り組んだ。

商品名 型番 店頭予想価格
AtermWR8600N PA-WR8600N-HP 1万円前後
AtermWR8600N
イーサネットコンバータセット
(WR8600N+WL300NE-AG)
PA-WR8600N-HP/E 17,000円前後
AtermWR8600N
USBスティックセット
(WR8600N+WL300NU-AG)
PA-WR8600N-HP/U 13,000円前後

 


 

■ シンプルな本体デザイン

パッケージ

 Aterm WR8600Nは、IEEE 802.11n/a/b/gに準拠した無線LANルータで、5GHz帯と2.4GHz帯の同時利用が可能。LANは4ポートで100BASE-TX対応。USB端子を装備し、接続したUSBメモリ内の動画や音楽をDLNAで共有できるサーバー機能を備えている。

 最近の無線LANルータでは、アンテナがゴテゴテとついたものが多いが、WR8600Nはすっきりとしたデザイン。外形寸法は35×128×160mm(幅×奥行き×高さ)で、縦置きスタンドが付属する。無線LAN設定は「らくらく無線スタート」と「WPS」が利用できる。無線LANセキュリティは64/128/152bitのWEP、WPA/WPA2(AES/TKIP)などをサポートする。また、省電力機能「ECOモード」を装備し、本体側面のECOモードボタンにより、3段階のECOモードを切り替えできる。


Aterm WR8600N 側面 無線LAN設定用ボタンと、「ECO」ボタンを装備する
背面。1系統のWANと4系統のLAN、カメラやサーバーを追加できるUSBメモリを装備する

 今回Aterm WR8600Nに興味を持ったのは、5GHz帯を使ってHD映像なども安定した通信ができるという「TVモード」を搭載していること。筆者の自宅では無線LANを10年以上使っているが、最初はパソコン用だったが、今は2台のテレビ、レコーダ、BDプレーヤーなどほとんどのAV機器でもネットワーク接続している。ただし、ルータは「AtermWR7600H」という2003年発売のNECアクセステクニカの製品だ。

 ネットワーク環境は一度安定して運用できれば、あまり変更したくないため、8年ほど使い続けていたが、既存の環境にも不満はあった。リビングのレコーダ(DIGA DMR-BZT700)の録画番組を、寝室のセカンドテレビ「DMP-HV200」でDLNAを使って見ている(お部屋ジャンプリンク機能)のだが、30秒送り、5分送りなどのトリックプレイのレスポンスがとても遅く、さらに、1時間番組の後半になると再生を一時停止してしまうという現象がたびたび発生していたのだ。

 もっともパナソニックの「お部屋ジャンプリンク」では、IEEE 802.11n(5GHz帯)での利用が推奨されており、従来のルータはIEEE 802.11g(2.4GHz)だったので、そもそも推奨要件を満たしていない。そのため十分に使えないのは当然ではあった。今回、お部屋ジャンプリンクをフルに使うために、AVネットワーク対応を謳うAtermWR8600Nに変更した。

これまで使っていた無線LANルータ「AtermWR7600」。2003年発売 AtermWR76000(左)とW8600N(右)

■ TVモードに対応。安定受信だけでなくレスポンスも向上

DLNA(お部屋ジャンプリンク)クライアントとして使った「DMP-HV200」

 リビングのテレビ、レコーダ、LAN HDDなどをハブを介してWR8600Nと有線接続。寝室の「DMP-HV200」に無線LAN接続してTVモードをテストした。なお、WR8600Nはボタン操作だけで無線LAN設定ができる「らくらく無線LANスタート」や「WPS」に対応しており、DMP-HV200もWPSに対応しているため、HV200の設定画面で決定ボタンを押して、WR8600Nの設定ボタンを押すだけで、パスワード入力なしに登録できた。

 「TVモード」は電波干渉の少ない5GHz帯で通信を行なうことで、安定した映像配信を可能にする機能だが、WPSによる登録後、DMP-HV200はIEEE 802.11n(5GHz)で自動登録された。一方、Macbook ProやVAIO Zなどのパソコンを専用ツール「らくらく無線スタートEX」で設定したところIEEE 802.11g(2.4GHz)になった。なお、iPhone 3GSやiPad 2はWPSなどの簡易無線LAN設定機能を有していないため、ルータのSSIDを選択し、パスワードを入力する必要がある。

 2.4GHzと5GHz帯の別々のネットワークが1台のルータにより実現されるが、それらの間で相互に接続可能となっている。2.4GHz/5GHz帯の速度差については、INTERNET Watchで清水氏のレビューで検証しており、詳しくは当該記事を参照してほしいが、確かに差があるようだ。

 では、実際の利用シーンではどうか? 無線LAN環境をWR8600Nに入れ替え、DMP-HV200からDIGAの番組リストを選択し、再生するとすぐに違いが分かった。まず、再生開始までの時間が明らかに早く、また30秒スキップ、5分スキップ/バックなどのトリックプレイもレスポンスが圧倒的に良くなった。

 再生ボタンを押してからの再生開始(1時間の地デジテレビドラマ)までの時間は約5秒(3回計測の平均値)。一方、従来使っていたWR7600Hは約10.8秒だった。さらに、従来はボタン操作後2秒ほど経って実行されていた30秒スキップも、ほぼボタン押下と同時にスキップを開始。操作のストレスはグッと減った。

【DMP-HV200からDIGAの録画番組再生する際の開始時間】

WR8600N WR7600
約5秒 約10.8秒

 もちろん、最大の不満であった動画が途中で途切れるという問題もなくなった。約1週間使っているが、一度も途切れたことはない。元の環境が推奨条件を満たしていいなかっただけとはいえ、ルータ交換による効果は十分に実感できた。「数年前のルータを使っていて、それほど不便を感じていない」という人でも、ホームネットワークを本格的に使う時代になると、ルータの性能差がテレビやAV機器の操作感を左右することになる。家庭内のAV環境を考えるうえでも無線LAN環境は要注意ポイントだ。

 また、Ethernetコンバータの「AtermWL300NE-AG」も使って、リビングのレコーダやテレビの接続も無線化してみた。WL300NECは、2ポートのEthernetを備えたコンバータで、WR8600Nの子機として動作。IEEE 802.11a/b/g/nに対応し、離れた場所のデジタル家電機器などをAtermと同一の無線LANネットワークで利用可能にするもの。外形寸法は34×133×98mm(幅×奥行き×高さ)。

Ethernetコンバータの「WL300NE-AG」 背面
iPad 2(WR7600に接続)のRZタグラーからREGZA 42Z2(WL300NE-AGに接続)を操作

 Aterm WR8600NとWL300NE-AGの間は5GHz帯のTVモードで接続される。実際に使ってみたが、5GHzと2.4GHzの混在でも特に問題なく、MacBook ProやiPad 2(2.4GHz/11g)からWL300NE-AG(5GHz/11n)に有線接続したレコーダやLAN HDD、テレビとのデータ転送や機能連携が行なえた。



■ 簡易サーバー機能やスマートフォン連携に対応

USBメモリ内のファイルを共有できる

 付加機能も充実している。便利なのはUSB端子を使った簡易サーバー機能。NASを起動せずに、接続したUSBメモリなどのデータをLAN内で共有できる。対応ファイル形式は動画が、MPEG-4 AVC/H.264、MPEG-2(.mpg、.mpeg、.mts、.m2ts、.ts)、WMV、QuickTime(mov)、flv。音楽がリニアPCM、MP3、WMA、AAC(3gp、mp4、m4a、adts)、写真がJPEG、PNG。

 機能的にはシンプルだが、NASなどを常時起動せずに簡易的な利用頻度の高いファイルなどを家庭内で共有できるという点は便利だ。

 また、ダイナミックDNS機能「ホームIPロケーション」が無料で利用でき、外出先からルータのUSBストレージ領域にアクセスすることも可能。新たにUSBカメラにも対応し、USB接続したカメラで留守中の自宅の模様をチェックできるWebカメラ(映像のみ)機能も搭載した。ただし、USB端子は1ポートしかないため、NASとUSBカメラを同時に利用することはできない。

 スマートフォン連携機能も搭載し、Android用にAnchorZが「ホームコネクト for Aterm」をプライムワークスが「PicupShare for Aterm」を提供している。いずれも、iOS版とAndroid版が用意され、ホームコネクト for Atermは、AtermのUSBカメラの表示やUSBメモリ閲覧、Wake On LAN操作などをスマートフォンから行なえる。外出先から、AtermへのUSBストレージのアクセスも可能なので、Atermをクラウドサービス的に使うこともできる。

 「PicupShare for Aterm」は、外出先からAtermにアクセスし、スマートフォンの内蔵カメラで撮影した写真をAtermのUSBメモリに保存できるアプリ。

ホームコネクト for Aterm PicupShare for Aterm

■ 重要度を増すネット連携のためにも無線LANルータをチェック

 テレビやタブレット、レコーダなどデジタル家電におけるネットワーク対応は今後ますます重要になる。TVモード自体は2010年発売の「AtermWR8700N」から搭載しており、2.4GHz/5GHz帯が同時に利用できるルータはWR8600N以外にもあるのだが、USBサーバーやDDNSなど機能/サービス面でも充実している。実売価格も1万円を切っており手ごろ感がある。

 操作レスポンスの向上という点も、今後スマートフォンやタブレットによるコントロールが一般化するにあたり重要になりそうだ。ホームネットワーク内でのデジタル機器連携において、快適性を左右する無線LANルータ。パソコンや通信機器だけでなく、AV機器との連携も考えて選択したい。


(2011年 8月 30日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉 ]