小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1208回

これがハイエンドジンバルというヤツか……。より簡単に強力になった「DJI RS5」
2026年2月4日 08:00
Roninシリーズの系譜
DJIの業務用カメラ向けスタビライザーは、2014年の初代「Ronin」が始まりである。両手ハンドル型で耐荷重が7.25kgもあったので、かなり大型のカメラが載せられた。その後、同型の改良型Ronin-M、Ronin-MXをリリース、円形ハンドル型のRonin 2も製品化された。
一方Roninシリーズの中で小型・中型カメラ用シングルハンドだった製品が、2018年発売のRonin-Sである。このラインナップがのちに「RSシリーズ」となって展開し、現在に至っている。
そんなRSシリーズも世代を重ねて第5世代、1月29日に発売されたのが「DJI RS 5」である。価格は68,860円で、スマートトラッキングモジュール、電子ブリーフケースハンドル、L字型ケーブル、キャリーケースが追加された「DJI RS 5コンボ」が79,200円となっている。
人物などを自動的にトラッキングできる機能は、まずはドローンで実用化し、次第にOsmo Pocketやスマホ用ジンバルへと展開されていった。カメラとジンバルが一体化していたり、スマホのようにジンバルと通信できるカメラならトラッキングも可能だが、カメラとジンバルが完全別体の業務用ジンバルでの採用例は比較的最近である。
本稿では2024年に「Feiyu SCORP Mini 2」をレビューしているが、DJI製品では昨年の「RS 4 Mini」が最初で、本製品で2機種目となる。
今回は「DJI RS 5コンボ」をお借りすることができた。DJIの業務用最新ジンバルとはどのようなものなのか、早速試してみよう。
バランス調整が格段に楽に
業務用3軸ジンバルは、基本的には搭載カメラの種類を選ばないのがポイントとなるため、柔軟に重量バランスが取れる設計であることが重要になる。基本的にはアームの長さを微調整してバランスを取るのだが、この可変長が広いほど、またモーターにパワーがあるほど、多くのカメラに対応できるということになる。
バランスが取り切れない場合は、カウンターバランスを載せるなどしてバランスを取ることは可能だが、その分重くなるため、モーターのトルクが重量に負けるといったことも起こる。
またレンズを交換したり、液晶ディスプレイを横に展開するなどするとバランスが変わるので、そのたびに微調整が必要になる。これが簡単ならば何も問題ないが、廉価な製品だとアームのスライダーが動かしにくい、いちいちネジを外したり締めたりしないと調整できないといった使いづらさがある。一旦動き出せば結果はどれもそれほど変わらないのだが、セッティング変更が大きな課題なのである。
今回のRS 5は、最大モータートルクを50%向上させ、最大積載量が3kgとなった。巨大シネマレンズや全長がやたら長いレンズなどは無理だが、一般的なレンズとフルサイズミラーレスなら問題なく乗るだろう。その点では、汎用的な中型クラスの製品ということになる。
RS 5の最大のポイントは、なんと言ってもアームバランス調整のために、すべての箇所に調整ノブが配置されたことである。最初は近くまで手動でスライドさせたあと、ノブで微調整するだけかと思っていたのだが、実際には調整範囲全長をノブで調整できる。動きも滑らかで、スライドに引っかかりもないので、これはかなり楽だ。
細かい工夫としては、付属の三脚も改良された。1つの足を操作するだけで、全部の足が連動して開閉するのだ。バランス調整のためには水平な場所に三脚でジンバルを立てる必要があるが、毎回3つの足を展開するのも、ちょっと面倒ではあった。こうしたものすごく細かいところに手を入れてくるのも、DJIの特徴である。
バッテリーはハンドル部分に仕込まれており、ハンドルとジンバル部分が着脱可能になっている。小さく収納できるのはもちろん、バッテリーグリップのみ別売されているので、長時間の撮影の場合はグリップの付け替えでバッテリー交換できる。
充電速度も改善されており、約1時間でフル充電可能。お昼休憩の際に充電しとけば、100%復帰するわけだ。
ジンバルコントローラとしては、液晶ディスプレイを備えるほか、ジョイスティック、Recボタン、マルチファンクションのMボタンのほか、動作モード切り替えスイッチ、ジョイスティックの操作切り替えスイッチがある。
前面にはセンターへのリセットボタンのほか、マルチファンクションダイヤルも備えている。
水平アームはレバー状のネジを緩めて押し込むことで簡単に着脱できる。アーム底部にも接続用の穴があり、カメラを取り付けたままで縦撮りにも変形できる。
「DJI RS 5コンボ」には、電子ブリーフケースハンドルが付属している。これはジンバル脇に取り付けられるオプションハンドルで、グリップ部の角度調整も可能だ。単に両手持ちをサポートするだけでなく、ローアングル撮影時にはここだけを持って撮影がコントロールできるよう、REC/シャッターボタンやジョイスティック、センタリングボタンなどが付いている。
逆サイドにも付けられるが、こちらには電子接点がないので、グリップ部のボタンは使えなくなる。
またコンボには、スマートトラッキングモジュールが付属する。マグネットと前後のツメで簡単に着脱できる。自動トラッキングができるかどうかで使い勝手は大きく変わるので、ほとんどの人はコンボを選択するだろう。
本機では、電源をOFFにすると自動的にアームが既定の位置に閉じられ、ロックされる。移動の際にもわざわざ自分で畳んでロックする必要がないのも楽である。またスリープモードにした場合は、バランスセッティングされている状態でロックされる。電源を切った途端にフニャフニャになってカメラやレンズをぶつけるみたいな事故が起きないのも安心である。
電源を入れると自動でロックが外れ、元の状態に復帰する。
かなりガッチリしたトルク感
では早速撮影してみよう。今回使用するカメラは、ソニー「ZV-E10」である。カメラとジンバルの接続は、USBとBluetoothがある。
ZV-E10の場合、USB接続ではオートフォーカストリガーと露出調整が可能だが、ズームコントロールができない。一方Bluetooth接続ではオートフォーカストリガーと露出設定はできないが、Zoomコントロールはできる。フォーカスや露出はオートでも撮影できるが、ズームはカメラ本体かレンズを触らないと操作できないので、今回はBluetooth接続を選択した。
このあたりはカメラごとにそれぞれできることが異なるので、アプリを使って確認していただきたい。なおRS 5は基本的にアプリ設定なしで本体メニューだけで使用できるが、アクティベーションしないと動作しないので、初回だけはどうしてもスマホアプリを使用することになる。
バランス調整は、アプリから動画チュートリアルが参照できる。三軸ともにダイヤルを回せばいいだけなので、レンズ交換やマイクの取り外しなどでバランスが変わる際も、再調整も簡単だ。
背面のディスプレイには、標準画面でジンバル調整やフォローモード、スムーズ調整といったメニューが並ぶ。また右側には、上下のブレを示すメーターがある。3軸ジンバルは縦方向の揺れを吸収しないので、膝を曲げて腰を安定させて撮影する必要があるが、それがうまくいっていないとメーターが大きく振れて警告するわけだ。ただ実際の撮影中には、なかなかこのメーターを確認している余裕がないのが正直なところだ。
画面を上から下にスワイプすると、基本設定画面にアクセスできるところは、DJIのアクションカメラなどと同じである。
では実際にジンバルの動きを確認してみる。カメラ内の手ぶれ補正はOFFだ。上下方向のスタビライズはないにしても、かなり滑らかに撮影できている。回り込みながらの撮影も綺麗だ。今回は電子ブリーフケースハンドルを併用しているので、通常撮影でも安定するほか、ローアングルの撮影も楽に状態を保持できる。
撮影中は、かなりモーターのトルクが高く、がっしりした保持力を感じさせる。カメラを振っても、慣性モーメントに負ける感じはなく、余裕を持って柔らかく受け流すように感じられる。
ジョイスティックでパン・チルト・ロールがコントロールできる。またスライドスイッチを切り替えると、上下でズームコントロールができる。ズームコントロールしている時はパン・チルト・ロールがコントロールできないが、どれか1つだけはダイヤルにアサインできるので、それほど困ることはないだろう。
Mボタンは、デフォルトでは静止画のシャッターボタンに割り当てられる。ZV-E10は動画モードにしていると写真が撮れないが、静止画モードでは写真も動画もどっちでも撮れるので、RecボタンもMボタンも両方動作する。このあたりはカメラによって挙動が変わってくると思うので、お手持ちのカメラで動作を調べてみてほしい。
精度の高いトラッキング機能
RS 5には単にスタビライズするだけでなく、特殊撮影用の機能がいくつか搭載されている。背面モニターを右から左にスワイプすると、タイムラプス、トラック、パノラマの3つの機能にアクセスできる。
トラックは、アングルをいくつか指定しておくと、そのポジションを経由して連続撮影してくれる機能だ。1つのポイントに対し、その位置での静止時間と、動きにかかる時間を指定できる。
今回は3点を指定して、走らせてみた。「開始」を押すと、カメラの録画をスタートさせて最初のポジションへ移動し、順次経由地を通って録画停止まで自動でやってくれる。ジンバルの電源を切ると指定ポイントがクリアされてしまうので、セッティングを変えて何度か同じ動きを撮りたい場合は、ジンバルをスタンバイモードで待機させる必要がある。
パノラマは、カメラを自動的に動かして写真を撮影し、パノラマ用の撮影を行なってくれる機能だ。撮影モードは3×3、横方向に3枚、720VRがあり、自分で撮影角度を入力するカスタム撮影もできる。ただ撮影後の写真は、自分でPhotoshopなどでパノラマ合成する必要がある。
続いてコンボに付属の「スマートトラッキングモジュール」を試してみた。人を撮影する場合は、トラッキングモジュールに向かって手を上げるとトラッキングが開始され、カメラインジケータが赤から緑に変わる。
また背面モニター液晶を左から右にスワイプすると、カメラで撮影中の映像をモニターできる。ZV-E10は購入して4年ぐらい経つが、Bluetooth接続で映像をリアルタイムで飛ばすことができる機能が搭載されているとは、今まで知らなかった。
このモニター上でターゲットを囲むようにドラッグすると、人間以外のものもトラッキングできる。茂みの中の植物など、どこまでが1体なのかよくわからないものはあまりうまくトラッキングできないが、車や動物など、背景とよく分離されている物体は問題なくトラッキングできる。
人物トラッキングはAIで判定できるが、任意の物体のトラッキングは何らかの形で指定しなければならない。カメラ別体のジンバルではなかなかできなかった機能だ。
総論
ワンハンドルのジンバルは、サイズ的にも価格的にも手頃であることから、プロ以外にもVロガーやインフルエンサーなど、クリエイターにも売れ筋の商品である。よって中国メーカー同士で、かなり競合が厳しい。
そこで競争力を持つのは大変だが、DJIは工作精度の良さで差をつけてきた。各調整がすべてノブで滑らかに動くというのは、これまで低価格路線を走ってきたワンハンドジンバルでは見かけなかった構造である。
電子ブリーフケースハンドルも魅力の一つだが、すでにダブルハンドルの製品は他社からも出ているので、後追いにはなる。ただ着脱式にしたり、グリップ角度が変えられる、逆向きにつけられるなど、後発ならではの工夫も見られるところだ。そもそも別の三脚などに固定する場合は、オプションハンドルは邪魔なだけだからである。
また電子ブリーフケースハンドル先端にアクセサリーシューを付けて、モニターなどが固定できるようにしたのはいい工夫だ。モニターアームとしても使えることになる。
スマートトラッキングモジュールは、競合他社もすでに搭載しているが、着脱式にしたのは珍しい構造だ。マグネットでくっつけるといった構造は、同社アクションカメラで培った技術である。もしかしたら今後、ここにくっつける別モジュールやアップグレードモジュールも登場するかもしれない。
RSもシリーズ5作目まで進化し、「ジンバルめんどくせ」を極限まで排除した。めんどくさがりのカメラマンにはマストバイの製品に仕上がっている。
























