【新製品レビュー】

ラジオレコーダ期待のニューフェイス2機種を紹介

-ソニー「ICZ-R50」、ビクター「RyomaX RY-MA1」


ソニーのポータブルラジオレコーダ「ICZ-R50」
ビクターのAVレコーダ「リョーマックス」(RY-MA1)

 radikoやLISMO WAVEの登場で、再び注目が集まっているラジオ。聴取スタイルが多様化すると、番組を録音したいという欲求も高まるもの。そんな中、登場したラジオレコーダ新製品の中から、2機種を取り上げる。

 1つはソニーのシンプルなポータブルラジオレコーダ「ICZ-R50」。そして、ビクターによる新機軸のAVレコーダ「RyomaX」(リョーマックス/RY-MA1)だ。

 価格はどちらもオープンプライスで、3月4日に編集部でネットの価格を調べたところ、「ICZ-R50」は16,000円前後、「RY-MA1」は16万円を切る程度で販売されている。

 なお、リョーマックスは、既に小寺氏の連載でレビューを行なっているが、ここではラジオレコーダとしての機能に絞って紹介する。




■操作性や受信感度を重視した「ICZ-R50」

ソニー「ICZ-R50」
 「ICZ-R50」は、こう見えてもICレコーダにカテゴライズされているモデルだ。ソニーは24bit/96kHz対応の「PCM-M10/D50」などの高価なリニアPCMレコーダから、低価格なエントリーモデルまで、ICレコーダーを総合的に手掛けている。しかし、意外な事にラジオ録音に特化したモデルというのは、今まで投入して来なかったという。

 市場を見ると、ICレコーダを手掛ける他のメーカー、例えばオリンパスは「PJ-10」、三洋電機は「ICR-XRS120MF」、「ICR-RS110MF」など、ラジオ録音をメインとした機種をラインナップしている。こうした分野に、ソニーが初投入するのが「ICZ-R50」だ。


三洋電機「ICR-XRS120MF」。据え置きに見えるが、リニアPCMレコーダを分離できる形になっている
 特徴は一目でわかる。他社のようなICレコーダサイズではなく、据え置き型の製品となっている。ソニーによれば、開発前の調査で、「ラジオを聴きたい場所」は外出先よりも家の中のほうが多く、ラジオの録音に関しては「受信感度の高さ」や「操作がしやすい事」などを求める声が多かったという。

 そうした声を取り入れて開発された「ICZ-R50」は、コンパクトさよりも、操作の簡単さ、ディスプレイの大きさ・見やすさ、受信感度の高さなどに注力したモデルとして、据え置き型になったという。なお、据え置き型ではあるが、ACアダプタ駆動のほか、乾電池(単3電池4本)での駆動にも対応している。




■シンプルだが必要な機能を厳選

 仕様を紹介しよう。4GBのフラッシュメモリを内蔵し、32GBまで対応するメモリースティック デュオとSD/SDHC両対応のカードスロットを装備している。録音時、一番低いビットレートのSPモード(モノラルMP3の48kbps)を選べば、4GB内蔵メモリに178時間、32GBのメモリーカードに1,431時間の録音ができる。長期間番組を保存するラジオサーバー的な使い方もできるだろう。受信はAM/FMに対応。録音ファイルは本体で再生する以外に、USBやメモリーカード経由でPCに取り込むこともでき、PCからウォークマンやiPodに転送する事もできる。

天面操作部。左端に「録音/一時停止」ボタンを備え、右側には再生速度の変更系ボタンを用意。いずれもボタンが大きく、説明文字も見やすいディスプレイは2.6型と大きい。右に操作パネルを用意する右側面には32GBまで対応するメモリースティック デュオとSD/SDHC両対応のカードスロット、さらにUSB端子を備えている

 前面パネルの電源ボタンをONにすると、初回起動時に時刻と地域を設定するナビがスタート。選択すると、使っている地域のラジオ局がプリセットされた状態で立ち上がる。あとはコントロールボタンの上下を押して選局し、側面のボリュームで音量調整するのが、基本的なラジオの使い方となる。また、前面パネルに3つの「お気に入り選局」ボタンを備えており、2秒以上押したままにすると、聞いている放送局を登録でき、以降はボタン1つで呼び出せるようになる。

電源、AM/FM切り換えの隣にあるのがICレコーダ機能のボタン。マイクを内蔵し、録音もできる。下にある小さなボタンが「お気に入り選局」ボタンディスプレイに放送局名も表示できる「お気に入り選局」ボタンに放送局を登録可能

 アンテナは、FM用にはロッドアンテナ、AM用には内蔵アンテナを備え、据え置き型らしくAMでは外部アンテナも利用でき、ループアンテナも付属している。なお、外部アンテナ使用時は背面のアンテナ切り換えスイッチを、外部に設定する必要がある。杉並区の自宅で、シャープの据え置き型ラジオ録音機「ミュージックキャリー」と同じ場所に設置し、AMラジオの同じ局を受信してみたところ、どちらもクリアに受信できるが、「ICZ-R50」の方が「ザー」、「ピー」という背景ノイズが少ない。天戸を閉めた状態で比較しても「ICZ-R50」の方が良好な受信状態を維持しやすいように感じる。

 上手く電波が入りやすい場所に設置できればそれが最良だが、「ICZ-R50」にはクリアに受信できない場合に使える機能も備わっている。側面にある「ラジオノイズカット」というスイッチで、これをONにすると、「ジー」とか「ギャピー」というような耳障りなノイズを低減できる。受信感度そのものが向上するわけではないが、電波がクリアに入る場所が無く、長時間聴くには雑音が気になるという人には嬉しい機能だ。

FM受信用のロッドアンテナを装備背面には外部AMアンテナ接続用端子も装備。内蔵アンテナか外部アンテナかをスイッチで切り換える
外部AMアンテナが付属する左側面に備えている「ラジオノイズカット」スイッチ

 聞いている番組の録音は、上部パネルにある「録音/一時停止」ボタンを押すだけでわかりやすい。予約録音は、予約ボタンから行なう。最大予約件数は20件。予約スタイルは「日時(1回のみ)」、「曜日指定」、「毎日」から選択でき、曜日を選んだ場合は曜日を指定する。月曜日から金曜日まで毎日で土日に放送が無いなど、ラジオでよくある番組放送形式に対応できるようになっている。

予約スタイルは「日時(1回のみ)」、「曜日指定」、「毎日」から選択曜日指定も可能時刻を指定しているところ

 録音先は自動設定も可能だが、ユーザーが内蔵メモリかメモリーカードかを指定する事もできる。保存先のフォルダも選択可能。自動分類では放送局名が設定されている場合、局名でフォルダが作られる。指定されていない場合は周波数でフォルダが作られる。ユーザーが作ったフォルダも指定できるため、例えば番組名のフォルダを作り、そこにその番組の放送を蓄積していくという使い方もできる。

録音フォーマットはMP3。ビットレートはステレオの192kbps、128kbpsと、モノラルの48kbpsから選択録音先も指定できる番組毎に、異なるフォルダを録音保存先に指定する事も可能だ

 ディスプレイは2.6型と大きく、バックライトも備えて視認性が高い。ボタン類も大きめで操作しやすいのだが、録音したい番組が沢山ある場合は、やはり本体から予約していくのは面倒くさい。そんな時はPCから予約する事も可能だ。付属のUSBケーブルでPCと接続し、同梱アプリ「Sound Organizer」をインストールすると、本体と同じような予約録音設定がウインドウで現れる。ここから、マウスとキーボードを使ってサクサク登録できる。

同梱アプリ「Sound Organizer」。左側がPC、右側が「ICZ-R50」に保存されたファイル。取り込みや転送が可能だPCからの録音予約も可能予約の一覧もPCからチェックできる
番組ごとの録音先フォルダの作成・指定もPCからなら楽だ

 ただし、ラジオのEPG機能を取得する機能は無いため、その番組がどの局で、何時に放送されているかといった情報は、ユーザー自身が入手してくる必要がある。このあたりはテレビ録画機に比べて大きく劣る部分だ。radikoではEPGが閲覧できるため、この情報と連携するなど、将来的には改善策が欲しいところだ。

 ラジオ録音時のフォーマットはMP3。ビットレートはステレオの192kbps、128kbpsと、モノラルの48kbpsから選択できる。トーク中心の深夜AMラジオならばモノラルの48kbpsでも十分楽しめる。また、録音したファイル以外にも、リニアPCM/MP3/WMA(DRM非対応)/AAC-LC(DRM非対応)の再生に対応。メモリーオーディオプレーヤーとして使う事もできる。さらに、外部入力も備えており、マイクやテープレコーダなどを接続し、それらの機器の音を録音する事も可能だ。

 さらに、前面両サイドにマイクも内蔵。ICレコーダとして使う事もできる。音がした時に録音を自動で開始するVOR機能も搭載しており、カラオケの練習や、お稽古事の録音などに使うこともできる。ラジオの英会話番組を録音して勉強しつつ、自分の発音もマイクで録音してチェックするといった事も可能だ。語学学習時に便利な機能として、「Digital Pitch Control」と呼ばれる再生速度調整機能が用意されている。0.5倍速のゆっくりした再生から、2倍速までの間で調整でき、デジタル処理により音程を自然に近いレベルで再生するのが特徴。AB間リピート再生機能や、「戻る」ボタン1回で3秒前、「進む」ボタン1回で10秒進む「イージーサーチ機能」も語学学習や、ラジオ番組のCMスキップなどで活用できる。


単3電池4本でも動作できる付属のACアダプタはかなり大きい


■PCとの連携で活用の幅が広がる

 USBでPCと接続していると、本体はストレージデバイスとして認識されているため、そのまま内部に保存された録音ファイルを取り出し、PCにコピーや移動が可能だ。「Sound Organizer」を使ってファイルを取り出したり、管理する事もできる。逆に、音楽CDから取り込んだファイルなどを本体に転送する時にもこのソフトが利用できる。PCに転送したファイルは、それぞれの同期用ソフトなどを使ってウォークマンやiPodなどに転送できる。

 試しにウォークマン「NW-A855」に、エクスプローラーでフォルダごとドラッグ&ドロップしてみたが、ちゃんと放送局名フォルダが認識され、ファイルのタイトル名には録音の“年月日_録音開始時刻_放送局名”がつくので、後からわかりやすい。

ウォークマン「NW-A855」との連携をテスト転送した録音ファイルを確認しているところファイルのタイトル名には録音の“年月日_録音開始時刻_放送局名”がつく
「Sound Organizer」でポッドキャストを登録・取得し、「ICZ-R50」に転送できる

 「Sound Organizer」にはポッドキャストの登録・更新機能も備わっており、ネット上のポッドキャスト番組を登録し、そこから新しい番組をダウンロードし、接続した本体に転送することもできる。当然、転送したポッドキャストは本体からも再生可能。ポッドキャスト番組も、普通のラジオのように再生できるのは面白い。




■「ICZ-R50」のまとめ

 使用して実感するのは、大きめのボタンやディスプレイを搭載した事での操作のわかりやすさだ。録音ボタンを押せばすぐに録音でき、予約録音自体もナビゲーションでわかりやすい。AV機器やPCの操作が苦手なお年寄りなどでも使えるだろう。マイクも内蔵し、英会話や稽古事などに活用できるなど、機能面で不満は少ない。

 同時に、PCと接続して録音予約を管理できたり、ポッドキャスト転送ができるなど、デジタル機器に詳しいユーザーが、PCを使ってカスタマイズしやすい機能も内蔵。ユーザーに合わせて広がる活用の幅も持っている。隙の少ない製品という印象だ。

 逆に言うと、ソニーらしい“とんがった”機能は見当たらない。内蔵メモリが大容量で、追加メモリーカードの価格も下がっている事から、かなり長期間のラジオ番組を蓄積できるため、例えば古い録音ファイルから自動で削除していくような機能を搭載したり、DLNAサーバとして他の機器に配信するような機能があっても面白い。メモリ容量が増えると頻繁にPCと接続する必要も無いため、ポッドキャスト更新用やネットラジオ受信用などに無線LAN機能は欲しいところ。もっと言えば、radikoの受信・録音ができるようになると、エリア内であれば設置環境に左右されない高音質が実現できるのでユーザーメリットは大きいはずだ。



■ リョーマックス第1弾「RY-MA1」

 RY-MA1は、一見すると普通のBDレコーダのように見えるが、コンセプトがかなり異なるモデルだ。機能を挙げるとBDレコーダ、500GBのHDDレコーダ、デジタルTVチューナ、AM/FMチューナと、2chのデジタルアンプも内蔵。レコーダのようにテレビの近くに設置する事を想定し、3波デジタルチューナでテレビの録画もできるが、CDやBlu-rayの音楽/映画ソフト、録音したラジオ番組などを、内蔵の高音質なデジタルアンプで、オーディオ用スピーカーをドライブして高音質再生できるオーディオ機器としての側面も強い。

リョーマックス第1弾「RY-MA1」。スピーカーは別売前面パネルを下げ、BDドライブが現れるテレビと組み合わせたところ。上部にあるスピーカーは、「RY-MA1」との組み合わせも想定したバー型スピーカー「SP-MA1」

 また、新ネットワークサービス「MELINK」に対応しているのも特徴。新メディア・プラットフォーム協議会と参加企業が実証実験を行なっているもので、ラジオの難視聴対策としてネットワークを通じて番組をサイマル配信するほか、例えば地方の観光協会や自治体などが、CSのテレビ放送などと比べて低コストで専門のプロモーションチャンネルが開設できる事などが特徴となっている。

背面。デジタルアンプも内蔵しているため、スピーカーターミナルを備えているフロントパネルの周囲にSDメモリーカードスロットやUSB端子を用意する

MELINKの画面


■ 強力なラジオ録音機能。追いかけ再生も可能

 「ラジオをリビングに」をコンセプトの1つに掲げている製品でもあるため、ラジオとの親和性の高さも特徴だ。AM/FMチューナを内蔵しており、ラジオを聴く時はリモコンの「AM」「FM」ボタン、もしくはメインメニューの「ラジオ」から「AM」、または「FM」を選択する。

 なお、リモコンには大きな「A」と「V」のボタンが設けられており、「A」を押すとオーディオ関係の、「V」ではビジュアル関係の機能メニューが表示される。ラジオは「A」側に含まれている。また、ラジオ局をプリセットしている状態では、リモコンのテンキーからダイレクトに放送局が選択できる。

付属のリモコン。大きな「A」と「V」のボタンが設けられており、それぞれに特化したメニューが呼び出せるAとVの間にあるのが「MELINK」用のボタン

 ラジオを聴きながら「録画/録音」ボタンを押せば、録音スタート。モードはリニアPCMと、MP3 XP(320kbps)、MP3 SP(128kbps)の3つから選択できる。ラジオ受信時、画面にはスクリーンセーバー的なカラフルなビジュアルが表示される。テレビを消してラジオの音だけを楽しむ事も可能だ。

Aボタンで呼び出せる、オーディオ用メニューVボタンで呼び出す、ビジュアル用メニュー。テレビなどの機能はこちらにある録音モードはリニアPCMと、MP3 XP(320kbps)、MP3 SP(128kbps)の3つ

 予約録音もテレビ画面を見ながら行なえる。縦軸を時間、横軸を日付にした「予約スケジュール」と呼ばれる画面が用意されており、8日分のテレビとラジオの予約を一緒に確認できる。これ以外に、テレビのみ、ラジオのみの予約状況を表示するモードも備えている。予約の確認だけでなく、この画面から予約登録も可能で、カーソルで目的の日時・時間に移動し、「予約/確認」ボタンを押すと、「ラジオ日時指定」、「テレビ日時指定」、「テレビ番組表」という項目が現れる。

 ここでラジオを選べばラジオ番組の、テレビを選べばテレビ番組の予約ができるという仕組みだ。コンテンツとして、テレビとラジオを同列として扱っているところに、製品コンセプトを感じる。なお、ラジオにEPGは用意されていないが、テレビには用意されているため、通常のBDレコーダのようにEPGを見ながらテレビ録画予約していく事もできる。

 多くのラジオレコーダでは、日付や録画開始時間を全て手動で入力しなてはならないが、リョーマックスの場合は一覧で日付と時間の枠に移動した状態から予約設定を開始できるため、予約作業そのものが楽だ。

予約スケジュール画面。8日分のテレビとラジオの予約を一緒に確認できるこの画面から、ラジオとテレビ、両方の予約が可能予約の設定画面

 繰り返し録音も設定でき、毎週や毎日に加え、月~金、月~土と、曜日選択も用意する。予約状況の確認も、大きなテレビの画面でできるため、一覧性が高くて快適だ。また、リモコンを使っての文字入力も可能なので、番組名も付けられる。予測変換にも対応しており、PCを使わずに完成度の高い予約録画ができるのはメリットだ。それにしても、テレビの画面を見ながらラジオの録音予約をしていくというのは、新鮮かつ不思議な気分である。

繰り返し録音の設定も可能。ラジオ番組の形態に沿ったものが用意されている曜日の指定も可能なので、変則的な番組にも対応できるリモコンを使って文字入力も可能

 あとは放送時間になれば自動的に録音されるわけだが、実際に使ってみて発見があった。録音中の、追いかけ再生ができるのだ。録音済コンテンツを表示するメニューから、録音中の番組を選択すると、番組の冒頭から普通に再生できる。早送りや巻き戻しも可能だ。

 よく考えればBDレコーダで当然のように実現されている機能で、音声のみを録音しているだけなので“できて当然”なのだが、ラジオレコーダで追いかけ再生ができる製品というのはあまり記憶に無い。深夜の番組は放送時間が長いものが多いため、録音終了まで待たずに頭から再生できると、残業などで帰宅が遅くなった時は便利だろう。さらに、裏でラジオの録音をしながら、テレビの録画済み番組を再生したり、ラジオ録音中に、録音済のラジオ番組を再生する事もできる。



■ 録音番組の書き出しも可能。クオリティの高い再生機能

録音ファイルはSDメモリーカードやUSBメモリなどに書き出せる

 録音したラジオ番組や、CDからリッピングした音楽ファイルなどは、SDメモリーカードやUSBメモリなどに書き出せる。ラジオサーバーと考えた場合、500GB HDDの容量は十分過ぎるが、PCなどでバックアップしたり、ポータブルプレーヤーなどに転送できるのは便利だ。DLNAに対応していないため、ネットワーク経由で録音/録画番組を配信するような機能は無い。このあたりは今後のモデルで実現して欲しいところ。

 ビクターのブックシェルフスピーカー「SX-L33」と組合せ、ラジオ番組を再生すると、当然ながら「ICZ-R50」の内蔵スピーカーとは次元の違う音が出る。ミニコンポやイヤフォンなどで聴く事が多いラジオだが、しっかりしたオーディオ機器で再生すると情報量の違いが如実で、トーク番組でも収録スタジオの部屋の広さや、パーソナリティの音像の定位もよくわかる。パーソナリティが部屋の中にやってきて、目の前で喋ってくれれいるような、リッチな気分になれる。


ビクターのブックシェルフスピーカー「SX-L33」と組合せたところ

 搭載されているデジタルアンプの最大出力は30W×2ch(4Ω)で、TIの32/64bit Floating Point DSPも搭載。内部でフルデジタル信号処理を行なうことで、鮮度の高い再生音を実現している。「クリス・ボッティ/ライブ・イン・ボストン」(北米版BD)を再生すると、非常に精密な音場が展開。ボストン・シンフォニー・ホールの広さがよくわかり、2chでも天井から降り注ぐような反響音が良く再現できる。アニメBD「化物語 第一巻 / ひたぎクラブ」を再生すると、効果音の分解能の高さが印象に残る。オープニングで、戦場ヶ原ひたぎがアスファルトに足を下ろす瞬間、音楽に隠れるように入れられている「ズシャン」という音も聴き取れる。


ビクターとケンウッドのモデルに限られるが、組み合わせるスピーカーに合わせた音質チューニング設定があらかじめ用意されている

 ほかにも、16bitの音声信号をDSPで24bitまでビット拡張し、最大4倍のオーバーサンプリング処理を行なう「HRS+」や、接続するスピーカーに合わせた音質でドライブできる「スピーカーセレクト」というユニークな機能もある。音響担当の技術者が、ビクター、ケンウッドのスピーカーに最適な、14バンドのパラメトリックイコライザの設定値をプリインストールしているもので、スピーカーの商品名、シリーズ名を選択することで、最適な設定になる。ビクターとケンウッドの協業により生み出された製品であることを実感できる部分でもある。

 他社のBDレコーダと比較してしまうと高価に感じるが、高品質な2chデジタルアンプや、大容量HDDを搭載したラジオサーバー機能も搭載している事を考えると、独特の存在感があるモデルと言える。リビングで、テレビと同じような頻度でラジオや音楽CD再生、BD/DVDの音楽ソフトなどを楽しみたいが、大きなAVアンプや多チャンネルスピーカーを導入するほどでは.....という人にはマッチしそうだ。本格的なシアタールームが既に存在し、シンプルで音の良いサブシステムを構築したいという場合にも気になる製品ではないだろうか。

 なお、4月2日にはJVCケンウッド丸の内ショールームにて、RyomaXの特別視聴会も開催される。製品の特徴と共に、音質や画質も体験できるイベントとなっており、入場は無料。ただし、予約が必要。定員は25人。予約方法などはショールームのページで案内されている。



(2011年 3月 4日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]