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True 4Kゲーム機「Xbox One X」の誕生。E3 2017詳報

 今年のE3レポートは、マイクロソフトのカンファレンスからお伝えしたい。マイクロソフトでの最大の話題は、新型機「Xbox One X」のお披露目だ。昨年のE3でのプレスカンファレンスで「Project Scorpio」としてその存在を公表して以降、何度かの情報公開を経て、今回製品として改めてお披露目されることになった。本レポートでは、プレスカンファレンスで語られた詳細を中心にお伝えしたい。細かなゲームタイトルの詳細については、僚誌GAME Watchのレポートも併読していただけるとありがたい。

会場となったGalen Center。ここ数年、毎年ここでマイクロソフトはカンファレンスを開催している
Microsoft Head of Xboxのフィル・スペンサー。終始壇上に上り、プレスカンファレンスをリードした

「True 4K」でライバルとの差別化を狙う

 結論からいえば、マイクロソフトのカンファレンスはほぼ全編を「Xbox One X」とそのタイトルのアピールにあてた。

Project Scorpioの正式名称は「Xbox One X」。499ドルで11月7日から米国などでは発売を開始する。ただし、日本での発売は「後日」。11月7日より後になる
Xbox Oneシリーズはスタンダード版となる「S」と、4K対応の「X」の2ラインナップ構成に

 Xbox One Xの特徴は、なによりも「4K」にある。逆にいえば、それ以外はまさにXbox Oneであり、「ゲームの体験を4K世代に持ち上げた」ことに注力したコンソールがXbox One X、といってもいい。Xbox One Xは、従来同様AMDのアーキテクチャを採用しつつ、GPUを6Tflopsの演算力を持つパワフルなものにし、メモリーアーキテクチャも変更し、帯域幅を326GB/secにまで増やした。容量も12GBとPlayStation 4 Pro(PS4 Pro)より多い。

Xbox One Xではプロセッサーを含めたアーキテクチャを一新し、性能に特化した再設計が行われた。結果、PS4 Proを超える性能を実現

 4Kテレビ・モニタに対応する、というだけであれば、すでにPS4 Proが行なっていることなので、マイクロソフトとしてもより上に行かなくてはならない。そこでアピールしたのが「True 4K」というキーワードだ。

Xbox One Xでは「True 4K」をキーワードに差別化する

 現状、多くの「4K対応ゲーム」は4Kで表示しているものの、テクスチャーやモデルまで含めて4K向けに作っているわけではない。また、レンダリングターゲット解像度は4Kよりも低いものを、表示としては4Kにしている……という場合がほとんどだ。PS4 Proであってもそれは変わらない。解像感とマシンパワー、コストのバランスがとれているところで表現を行なっている。だが、Xbox One Xは「True 4K」を謳い、4Kでのレンダリングを目指す。例えばFORZA MOTORSPORT7では、アセットからレンダリングまで「フル4K」で行い、画質を向上させている。しかも描画は4K・60fpsだ。

FORZA MOTORSPORT7は4Kアセットを使い、描画も4K・60fpsで行なわれるという

 今回プレスカンファレンスで発表されたタイトルの中には、わざわざ「4Kからの実際の画面である」と注釈を入れた上でトレイラーを流したものも多い。そのくらい、「4K」であることにこだわったプレゼンテーションが行なわれていた。プレスカンファレンス自体も、まず2001年(初代Xbox)の640×480ドットから始め、次に2005年(Xbox 360)の1,280×720ドット、次に2013年(Xbox One)の1,920×1,080ドットときて、最後に「4K Ultra HD」をアピールするという感じだったのだ。

プレスカンファレンスの冒頭は、Xboxにおける解像度の変化からスタート。640×480からスタートしたものが、Xbox One Xにて4Kになることをアピール

 4Kという解像度に対応するのはもちろん、HDRや広色域、さらにはDolby Atmosにも対応する。Xbox One Sに続き、Ultra HD Blu-rayにも対応するため、スペック面でいえば、AV的にはより見どころのあるゲーム機と言えそうだ。

 そして、パワフルになったものの、Xbox One Xは「これまでのXboxでもっとも小型になった」ことが発表された。Xboxシリーズはゲーム機としては、ライバルに比べかなり大柄なものが多かった。今回プロセッサーパワーは増大し、それに比例して熱量も増大したものの、パワーマネジメントを高度化したことに加え、液体によってヒートシンクから熱を移動する、いわゆる「液冷」を採用する。さらに強力だが静音性の高い空冷ファンによって冷却することで、静かでありながら小型かつ効率よく冷却された本体になっているという。この辺のサイズ感は、改めてE3会場で確認し、レポートをお送りしたい。

プロセッサーは「液冷」によってヒートシンクへ熱を流す。ゲームコンソールとしては初めて採用される機構だ。
パワーマネジメントの最適化も行なわれており、冷却効率と小型化、省電力化に寄与している
歴代Xboxでもっとパワフルでありながら、最小のボディに。どのくらいのサイズ感なのかは、E3会場で改めて確認する

Xbox Oneとの互換性を維持、年末には「初代Xbox」との互換も

 Xbox One Xはアーキテクチャを変えて大幅にパワーアップしたものの、すべてのXbox One用アプリケーションと周辺機器の互換性が維持されることも発表された。アーキテクチャをいじらずにパワーアップしたPS4 Proとは異なり、互換性維持にはそれなりの手間も掛かりそうなのだが、Xbox OneはOSレイヤーが比較的厚く、パワーも十分であるため、そのあたりのソフトウエア的な工夫で互換性維持ができたのだろうか。

Xbox One向けのゲームタイトルと周辺機器はすべて動作。同じ世代のパワーアップ版という位置付けだけに、そうであるのが当然……という流れでもあるが。

 Xbox One XではすべてのXbox Oneタイトルが動く。メモリーが増え、性能も上がっていることなどから、ロード時間短縮も含め、より快適な体験ができる……とされている。また、4Kテレビ・モニターにつなげない時でも、Xbox One Xのパワーは有効に使われる。4Kレンダリングをしたものをスーパーサンプリングして2Kに落とすため、同じ2Kでも、Xbox Oneより快適で美しい表示になる、とのことだ。

2Kのテレビにつないでも、Xbox One Xの画質向上の能力は十分に有効、と主張

 一方で、4K・HDR化も含めた部分については、より最適化を進めなければならない。そうした最適化が最初から行なわれるものもあれば、過去のタイトルに最適化パッチが提供されるものもある。マイクロソフトの主要なタイトルには無料でパッチが提供されるし、スクウェア・エニックスの「ファイナル・ファンタジーXV」やカプコンの「バイオハザード7」を含む30以上のタイトルについて、Xbox One Xへの最適化される。どうやら「Xbox One X ENHANCED」というロゴのついたタイトルは、それらの最適化が行なわれるものであるようだ。

マイクロソフトの主要タイトルは、もちろんXbox One Xに最適化され、最適化パッチも無料で提供される。
紹介されたタイトルにはこうした表記が。これらの有無で「最適化の度合い」を判断できそうだ

 また互換性という意味では、Xbox 360との互換機能に加え、初代Xboxとの互換機能も年末までに実装する、と発表された。こちらはXbox One Xだけでなく、Xbox Oneでも実現される。今回のプレスカンファレンスにおいて、もっとも盛り上がったのはこのシーンだった。

 Xbox Oneでの互換機能は、過去のPS2におけるPS1の互換などとは異なり、ソフト毎に対応していくスタイルを採っている。そのためすべてのゲームが対象ではなく、順次増えていく……という形になっている点に留意していただきたい。Xbox Oneで動作するXbox 360は385を超えた、とのことだが、初代Xboxタイトルの増加も、同様に順調に進めてもらいたいところだ。

初代Xboxタイトルの動作にも、年末より対応。Xbox One全体で利用可能になる

日本での発売は他国の後に、VR/MRへの言及はなし

 Xbox One Xの世界での発売は11月7日、価格は499ドルと発表された。残念ながら、日本では発売こそ決定しているものの、日本マイクロソフトより、「11月7日には発売されず、後日の販売となる」ことが発表されている。日本での価格や正式な発売時期は未定だ。なお、アメリカではXbox One Sの249ドルへの期間限定値下げが発表されているのだが、こちらも、日本での展開は不明だ。

 今回、発表会を見ていて気付いたのは、Xbox Oneタイトルの発表でありつつ、「Xbox OneおよびWindows」といういい方のタイトルが非常に多かった、ということだ。

同じタイトルがWindows 10のWindows StoreとXbox One、両方で提供される印。このように、「PCとXbox One」の両方、という形をアピールするタイトルが目立った

 現在のゲームシーンでは、1つのタイトルを販売する際、開発を効率化して販売機会を最大化するために、PCとPlayStation 4、Xbox Oneに同じタイトルを供給する場合が多くなっている。今後はそこにNintendo Switchも一部のタイトルで仲間に入るだろう。ゲーミングPCの勢いも強い。「Xbox OneおよびWindows」といういい方はそれを表している。「コンソールにおいてはエクスクルーシブ」といういい方も多かったが、これも同様だ。

 マイクロソフトとしては、Xbox Oneも盛り上げたい一方で、Windows上でのゲームが盛り上がるならそれもありがたいこと。そして、Xbox Liveサービスを使い、両者がプラットフォームをまたいでプレイされれば、それでいいのである。この辺が、SIEや任天堂と事情が異なる点である。

 一方、プレスカンファレンス全体を見ると、どうにも盛り上がりには欠けていたように思う。Xbox One Xこと、Project Scorpioの詳細がすでに発表済みであったこと、対応タイトルは公表されたが「4Kになった」こと以上の変化が見つけづらかったことなどが理由だろうか。そもそもTrue 4Kといっても、どれだけのタイトルが「他と違う4Kクオリティ」になるか、「2Kと4Kでどこまで感動が違うか」が見えづらい。そこのアピールには欠けていたのではないだろうか。

 そして、筆者も意外だったのは、このタイミングでVirtual Reality(VR)やMixed Reality(MR)に関する言及がまったくなかったことである。昨年Project Scorpioの存在をお披露目した時には、この新型機でVRにも対応することが明言されていた。また、Windows Mixed Realityについては、計画リーダーであるアレックス・キップマン自身が「コンソールもMRに含まれる」と公言しているので、てっきりこのタイミングでなにか話があるものだ……と思っていたのだ。そうした「広がり」の部分への言及のなさも、物足りなさにつながっている。

 逆にいえば、今年のE3において、そして年末商戦に向けて、マイクロソフトはとにかく「4Kでのゲーミング」に絞ってメッセージを出したいのだろう。だとするならば、「True 4K」のパワーがどこまでのものなのかを、知らしめる必要がある。

 その辺は、E3会場取材をした上で、改めてお伝えしたいと思う。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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