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西田宗千佳の
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E3 2009特別編 SCE 平井一夫CEO インタビュー

「PSP go 誕生」の狙いと「値下げなきPS3」の勝算


SCE平井一夫CEO

 今年も、E3におけるソニーコンピュータエンタテインメント代表取締役社長兼グループCEOの平井一夫氏の単独インタビューをお届けする。PSP goの狙いとプレイステーション・プラットフォームの今後を聞いた。

 またその際に、短時間ではあるが、PSP goの実機を体験することもできた。E3会場におけるデモも合わせ、様々な新情報をお伝えしたい。


 


■ PSP goは「ちょうど良い時期」。すでに持っているUMDを「goで使う」施策も検討中

−まずPSP goについて。ダウンロードに特化しているハードウエアというのは、これまでゲーム機にはなかったもの。市場で、どういう風にダウンロードでビジネスのエコシステムを作るのですか?

平井:まずひとつ目。カンファレンスでもお話しましたが、Playstaion Network(PSN)は、スタートから2年半くらいで、ワールドワイドで2,400万アカウントを突破し、全般的にゲームタイトルも揃ってきました。それから、アメリカを中心としたビデオデリバリーサービス、映画で2,000弱、テレビでも1万弱のタイトルがあるわけです。

 ここまできて、PSPもPS3もそうなんですが、「ダウンロードして楽しんでいただく」ということが、一つのユースケースになってきたと思います。ネットワークを介してなにかをゲットするということは認知されている。その中で、今回PSP goというのを発表させていただいて、半年後に発売するということになります。この間に、様々な施策を用意する予定です。

 ご指摘の通りで、デバイスだけ出すのは簡単なんです。それをバックアップするための、ネットワークのサービスの内情を、どのくらいの方々がすでに楽しんでいらっしゃるんですか? っていうのを、考える必要がある。

 それを思うと、今は「ダウンロード専用デバイス」を初めて提案するのに、ちょうどいい時期かな、と思います。

−例えば、すでにPSPをお持ちの方のライブラリ資産はどうなりますか? UMDドライブがないということは、プレイできないわけですよね?

平井:そのお話は当然です。それについては、今日ここで「こうします」という発表はありません。

 しかし、「そういうユースケースは想定されるよね」というのは、当然議論していますし、わかってますので、いろいろな方策で前向きに検討したいと思っています。

−すでに買われた方は「知らないよ」という話ではない? まだ発表できないだけで、検討はしているわけですね?

平井:はい、社内ではいろいろと。PSP goに関し、一番最初に議論したのがこの問題です。このご質問が出ると思っていましたからね。

 


■ ディスクとネットは「少なくとも自社は併売」 急速に「ディスクがなくなる」ことはありえない

−現在のPSPでのダウンロード販売のスキーム、すなわち、価格帯であるとか認証であるとか、そういった部分は変わらないわけですか。

平井:変わらないもなにも、まさしくそのもの。同じです。PSP goに対して配信するのは、PSPでも楽しめます。

−これからのソフトは、ディスクとダウンロードが併売されるわけですよね?

平井:はい。その通りです。基本方針はそうです。

−ではこれからは、基本的に「両方同時発売」と考えていいんですか?

平井:基本的には、です。ファーストパーティーはまさにそうですが、サードパーティーさんの中には、色々なビジネスプランをお持ちの方がいらっしゃいますので、あくまで彼らのご判断です。

(ディスクとダウンロードの併売を必須のことと)縛ることはできないですよ。ただし、すごく(容量が)小さいゲームがありますよね? 今でも、ネット配信していますが。そういったものはネット専売もあります。今もそうですが。

 おそらく聞いていらっしゃるのは、グランツーリスモのような「大型」タイトルだと思いますが、そういったものはまさしく「ディスクとネット」です。

−これまでのタイトルはいかがですか? 中には入手がすでに困難なタイトルもあり、ダウンロード販売を期待していらっしゃる方もあるかと思いますが。

平井:1つはファーストパーティー。これは社内で調整ができます。ですから「パブリシャー」としての意見になりますが、なるべく、積極的に古いカタログタイトルについても、PSNでちゃんと販売して、楽しんでいただけるようにしていこうと思っています。もちろん、(タイトルによって)タイムラグはありますが。

 サードパーティーさんのタイトルに関しては、みなさんいろんなビジネスの形がありますので、それに対して「こうしろ、ああしろ」とはなかなか言えない。あくまでみなさんのビジネス上の判断になります。

 当然ですが、ダウンロード利用者数が伸びればもっとタイトルが出てくる。タイトルが増えれば利用者が伸びる、という関係にあると思っています。

 ただ古いタイトルになってきますと、権利のクリアーというのが難しいものがあって、そこら辺は実質的な問題として、作業上出てくると思います。でも、出来る限りちゃんとやっていきたいと思います。サードパーティーだろうと、ファーストパーティーだろうと、UMDで出したタイトルがネットで販売されることについて、ちゃんと権利をクリアーした形でないといけない。これはまた、ビジネスの判断とはまた別のところですので……。

−いままではそれを想定していなかったわけですね。

平井:最初にPSPが出た頃のタイトルというのは、「4年後、5年後にUMDがない機種が出るだろうから権利を管理しておかないと……」とは考えていませんからね。そこまでは当初なかなかできていなかった。それはファーストパーティー含めてそうです。

−これまでの、ファーストパーティーのタイトルの場合、ダウンロード販売とパッケージとの価格差は、日本の場合で1,000円くらいでしたかね。そういった部分の政策を変更されるご予定はありますか?

平井:地域によっても社内によっても違います。アメリカとかヨーロッパではまた別の考え方があります。こと価格については、ファーストパーティーとしてこう、ということを示すことはできますが、サードパーティーがどうするかは、まったく関知するところではないですから。

−ディスクからダウンロードへの移行は、どのくらいの時間をかけて進むとみていらっしゃいますか?

平井:まずは確実にお伝えしておかなければいけないのは、PSP-3000というのは「併売」していきます、ということ。カタログに載っているけれど商品在庫はない、というのではなく、きちんと商品をお店に並べる、という意味での「併売」です。UMDのタイトルについても、まったく同じ考え方です。

 もうひとつ申し上げておかなくてはいけないのは、「すぐ変わっちゃうんですか?」ということについてなんです。

 すでに、全世界で5,000万台のPSP-1000/2000/3000がユーザーの手にわたっているわけですから、その市場に対してディスクベースのソフトを出さない、ということは、合理的に言って、あんまりないんじゃないですか、ということです。

「PSPの2000だって3000だってダウンロードできるじゃない(だから一気に移行するのでしょう)」という意見もあるでしょうが……。PSPの販売国は、先進国、すなわちネット環境が整っているところだけじゃないんです。よって、「プレイステーション・ポータブル」というフォーマットのゲームを全世界で楽しんでもらうには、ディスクが必要です。回線が整備されていてダウンロードできるところ、すなわち「ユーザーがチョイスできるところ」には両方、国や地域によってはディスクベース、ということになるわけです。

 そういうことを考えると、急に「ディスクがなくなってしまう」という話は、それが来年だろうと再来年だろうとあり得ない、まったくないと思っています。

 音楽もそうですし、Blu-rayやDVDもそうなんですけれど、やはりユーザーの中には「コレクションをしたい」という方がいっぱいいるわけですよ。そういう方々は、どういう風になろうと物理的に「カタログとして欲しいんだ」と思われるはず。これは、いつの時代でもそうだろうと思います。

 だから、ディスクの流通がなくなるというのは、地域性を考慮しても、まあそう近いうちにはないんじゃないのかな、と。全部がネットということはまずない、と思います。

−すなわち、ユーザーの嗜好に応じてデバイスを使い分けていただけばいい、と。

平井:そうです。

−どちらも大切なビジネスである、と。

平井:もちろんそうです。切ってしまうというのはありえない話です。ビジネスが拡大するんじゃなくて、縮小してしまいますからね。

−ダウンロード販売を始める、ということの決断に、「違法コピー」の問題は関わっていたのでしょうか?

平井:まず申し上げておきたいのですが、PSP-3000のちょっと前から、違法コピーに通じる道はふさいだ、という実績があります。「コピー対策を投げすててダウンロード販売に行った」ということではまったくないです。まずは(正規の対策を)ちゃんとやらないと、と思っていますし、強化はしています。

 とはいえ、確かにおっしゃる通りで、ネットからのダウンロードになれば、海賊版が基本的になくなる、という可能性は非常に高いんです。でも決して、それがあるから「PSPでダウンロードにGOを出そうよ」と思ったわけではないです。

 開発の狙いはあくまで、「もっと軽いデバイスが欲しい」とか、「もっといろんな選択肢を与えましょうよ」とか。いろんなご意見があった上での「PSP go」です。その中で「海賊版の対策になるね」という話もあったのは確かですが。

 結論からいえば、ある意味「プラスアルファ」。(違法コピー対策の)手は考えていますけれど、まずそれありきでのダウンロードではない。もっと大きな意味で対策というのを考えなければいけない。だからUMDでもやっていますし、Blu-rayの方でもちゃんとやっています。

 


■ PSP goは「次世代PSP」ではない! 大切にしたのは「プラットフォームの一貫性」

−PSP goは、基本的にPSPとハードウエア構成が同じですよね。あえて「バリエーション」として開発した意図は、どういったところにあるのですか? 例えば、「タッチセンサーが欲しい」とか「グラフィックやCPUのパワーは上げるべきなんじゃないか」とか、いろんな意見があったとは思うのですが。

平井:基本的には「一貫性」、「Continuity(持続性)」のためです。当然のことながら、技術的には、タッチパネルをつけるだとか、アナログスティックをもう一本つけるだとかいったことはできます。

 ただし、それをやってしまった瞬間にどういったことが起こるかというと、「PSPのソフト」ではなくなってしまうわけです。

 たとえばデュアルスティックをPSP goにつけたとしましょう。PSP goユーザーの方はいいですよ。でも、すでにお持ちの5,000万台のユーザーの方に「ごめんなさい、遊べません」と言えますか?

 プラットフォームホルダーの責任として、それはできないです。やはり一貫性がすごく大事。PSP goのためにつくっていただいたゲームも、オリジナルのPSP-1000で、ディスクベース・ダウンロード両方で楽しんでいただける。これが、PlaystationのDNAです。

 いろんなご意見はあるし、特に「デュアルスティック欲しいよ」というお話はわかるんです。しかし、それを搭載することが本当にユーザーのみなさんのためになるのか?
「新型のみです」ということは「違うでしょう」と判断したのです。

−すなわち、「PSPというものを変えない」まま、別の新しい体験をできる選択を出すということが、プラットフォーム・フォルダーとして重要なことだと?

平井:そうです。PSP goの狙いはあくまで、「PSP2」だとか「次世代ポータブル機」を出すことではなくて、既存の操作性・アーキテクチャの中で、「ドライブを省くことにより可能になる小型化・軽量化」という点。これまで「PSPは大きい」と思っていた方にもPSPの世界を楽しんでいただこう、ということ。そこを喜んでいただけるお客様はたくさんいるのではないかな、と思います。

−UMDがない以外は、ハードウエア的にPSP-3000から落ちているところはないですよね?

平井:ないです。むしろ、Bluetoohなど、加わっているものはいくつかあります。

 例えば閉めた時に、時計やカレンダーなどのアプリケーションが表示されるようになっているんですよ。ビデオや音楽を再生中に閉めても、再生は続きます。ストップ&ゴーは、XMB呼び出しで行うことになります。

−閉めた時にXMBを操作するためだけに、タッチパネルを搭載してもいいと思うんですが。

平井:(goでのタッチは)XMBだけでもいいよね、という議論はまさしくありました。

 でも、やるんだったら全部(のソフトウエア)でやれるようにすべきだ、という話になり、すると、先ほどの「一貫性」の話になり……。「やるんだったらフルに。XMBだけ、というのは中途半端だ」という結論です。

−Bluetoothの用途は、ヘッドセットなどを想定しているわけですか?

平井:はい。それに、携帯電話の接続も。

−それは、携帯電話を通じてネットにつなぐ、ということですか。

平井:ええ。そういうことも想定しています。

 


■ PSP go ファーストインプレッション。薄さからくる「凝縮感」が魅力

 ここで、PSP goのファーストインプレッションと詳細をお伝えしたい。なお、平井氏とのインタビュー中には白を、会場では黒をチェックしている。

 率直に言って、写真で受ける印象と、持ってみた印象はかなり異なり、「高級感」「凝縮感」がある。黒はこれまでのPSPに近い感じで、白はより上品で細かなパールフレークを入れたもの、といったところだ。

 スライドさせて小さくすると、サイズ的にはiPhoneを横に持った時より少し大きいくらい、という印象。厚みはPSP-3000よりちょっと薄いくらいである。

E3会場で「グランツーリスモ for PSP」のデモ用として用意されていたPSP go。サイドのでっぱりは、本体を机に固定するためのもので、製品には存在しない サイズ的には、PSPとPSP goでは大きく異なる。よりポータブルプレイヤー的なgoと、まさにゲーム機であるPSP、という印象だ。
会場展示機の側面。固定されていない白モデルを持った際には、「妙に薄い」感じを受けた PSP goのPOP

 高級感、凝縮感を感じる要因の一つとして、コントローラ部が意外と持ちやすいことも挙げられる。両手でもつと、親指はおおむねアナログパッドに近い位置にくる。操作部(いわゆる下半分)だけだと、厚さはPSP-2000/3000の半分ほどに感じる。ゲーム機のコントローラでは感じたことのない感覚で、これはかなり効果的だ。

 他方で、十字ボタンとアナログパッドの併用は、従来のPSPに比べやりづらく感じた。人差し指を相当器用に動かす必要がある。Lボタン・Rボタンは、自然な位置にあるので特に押しにくさなどは感じなかった。

 液晶のクオリティについては、特定のデモしか見ていないため、詳細な感想を述べるのは差し控えておく。だが、「グランツーリスモ」や動画再生での発色は、十分にきれいだと感じられた。

 仮に、平井氏のいう「すでに持っているUMDに関するなんらかの施策」が本当に行なわれるとしたら、価格を除けば、PSP goを避ける理由はあまり感じられない。

 他方、ダウンロードを多用するデバイスとして気になるのは、無線規格が「802.11b」である、ということだ。消費電力などの問題はあるが、11gや11nに対応していれば、かなり快適さがアップすると思うのだが。

 平井氏のコメントにあるように、PSP goのオリジナル要素として、スライド中に「時計」「カレンダー」などのミニアプリケーションが動作する機能がある。その機能や、ダウンロードによる追加が今までのPSPで可能か否か、といった点は確認ができなかった。また、PS3と同じく、ゲーム動作中にXMBを呼びだして操作する「ゲームスリープ」機能の搭載も確認されている。おそらく「おなじPSPプラットフォーム」ではあるが、PSP goは、ファームウエアの仕様と、それらを動作させるハードウエアに、ある程度違いがあるのだろう。別の言い方をすれば、PSPより「余裕がある」可能性が高い。もちろん確定情報が得られているわけではないので、PSPのファームウエアが将来的に「PSP go」相当にアップグレードされる可能性もある。

 動画や音楽の再生中、スライドを閉じている場合には、XMBを押すとポーズ・再生がトグルする。コンテンツ選択などは、XMBを開いて行うのが基本だ。ただし、現行のPSPと同じ実装ならば「次の曲」「前の曲」への移動はLボタン・Rボタンで行えるはずで、基本的な操作は問題ない、ということだろうと予想される。ちなみに、ゲーム中にスライドさせると、ゲームが「サスペンド」する。現在のPSPでパワースイッチを使った時と同様の動作に似ている。

 なお、外部接続用のコネクタが「独自の汎用コネクター」(平井氏)ひとつにまとめられたため、これまでの周辺機器のほとんどは利用できない。ACアダプターやUSBケーブル、クレードル、AV出力ケーブルなどは、専用品が用意される。

PSP go ケーブルなどの現物は確認できなかったが、「専用品が用意される」旨のポスターが貼られていた。専用の薄型コネクタで、それぞれのケーブルを接続することになる。左に映っているのが専用クレードル

 同様に互換性がなくなったものとして、メモリーカードが「メモリースティックDuo」から「メモリースティック・マイクロ(M2)」になったことが挙げられる。セーブファイルなどはコピーのし直しが必要だ。

 ただし個人的には、16GBのストレージをもつPSP goの場合、M2を差し込む必然性は薄いと思う。PSP向けのダウンロード・タイトルの場合、PSPから消してもPSNのIDから「購入履歴」をたどり、いつでも再ダウンロードが可能である。また、著作権保護はPSNのIDと本体を紐づける形式なので、ファイルをPCにコピーしてとっておき、必要な時にまたPSPに入れる、という形も採れる。だから、「買ったものは必ずPSPのメモリーカードに入っていないといけない」わけではない。平井氏も、「もっと増やそうと思えばM2で」という言い方をしていた。

 


■ 強気の予測「1,500万台」はPSPとgoで実現

−今の段階で、PSP-3000とPSP goの販売比率はどのようになると考えていますか? もちろん、リージョンによって異なるとは思いますが……。

平井:まだそこまではわかりません。これから全世界のリテーラーさんとお話をさせていただきたいと思っているところです。比率を語るのは、まだ時期尚早かと思います。

 ですが、ひとつだけいえることがあります。

 先だって、(2008年度の)決算会見の中で、今年度のPSPの販売予定台数を「1,500万台」とお話させていただきました。当時はまだPSP goの話をできませんので、台数だけをお話していましたが、この計画は、PSP-3000とgoを合わせて1,500万台は狙いたい、という話だったのです。

−正直「1,500万台というのはかなり強気だな」と思ったのですが、そういうことだったのですね。

平井:あの時は(goの存在を)お話できませんでしたからね。「そうです。強気です」と言うしかなかったんで(笑)

−カラーは、今回全世界で「白」と「黒」ですか。

平井:そうですね。他に何色が必要だと思いますか?

−やっぱり個人的には、ビビットなカラーが1色くらいは欲しいですね。

平井:Blumeとかカーニバルカラーズのような扱いでですよね。参考にします。


■ 参入の敷居を下げて「ソフトの可能性」を広げる。キラータイトルより「面」で勝負

−ダウンロード・タイトルを増やすには、ライセンシーの方を増やす、すなわち、PSPのタイトルを作りやすくする、という意味の施策が重要になってくると思います。今回はその面で、ツールの価格を大幅に安くする、という発表をされています(筆者注:従来に比べ85%安くし、開発キットは15万円からとなった)。ビジネスのスキームが違うので直接比較はできませんが、アップルがiPhone向けに提供している「AppStore」では、参入が容易であるがために、たくさんの新しいチャレンジャーが現れ、活況を呈しています。もしかすると、PSPでも「限りなく安いライセンス料」でビジネスに乗ってくる人々を増やさねばいけない時期が来るかもしれない。そういった、「ビジネスにかかわる人々を増やす施策」をどう考えていますか?

平井:非常に大切なことです。

 PSPの上で遊べるゲーム、もしくは別のインタラクティブ・エンタテインメント・コンテンツがどんどん増えていくのは、ユーザーさんへの魅力につながりますので。

 そういった(デベロッパーの敷居を下げる)施策を採ることで、最初はPSPで小さなゲームを作っていたところが、手応えを感じたので「こんどはフルのPSPのゲームに」「今度はPS3のゲームに」という発展も考えられます。いろんなデベロッパーの方々、ビジネス・プレイヤーの方々を増やしていかねば、ということは、当然のことながら、プレイステーションのフォーマットとしても大事ですし、もっと大きく言えば、ゲーム業界全体にとっても大切なことですよ。

 いろんなゲームの世界に広がりを、デベロッパーの方々として出てきていただきたい、という期待を持っています。

 実は昨年、PS3の開発キットの価格を半額くらいに下げているんですよ。そのときは「なぜPSPは下げないのか」というお話があったんですが、今回はPSPを大幅に下げさせていただいた、ということです。

−PSPの、欧米での台数について。日本では「モンスターハンター・ポータブル」という文字通りのキラータイトルがあり、普及に弾みがつきましたが、他の地域ではまだ明確な「キラータイトル」が出ておらず、ビジネス的に元気がない。今回、特に欧米で人気のタイトルのアナウンスがありましたが、PSPのプレゼンスを高める方策をどう見ていますか?

平井:ひとつのキラータイトルというやり方もありますし、もちろんそれはとてもすばらしいものです。

 しかし、元々プレイステーションというのは、どちらかというと1本のキラータイトルというよりは、一般的にいうと「いろんなタイトル」がライブラリーとしてある、という傾向が、特に欧米ではPS1の時からあったのではないかな、と思っています。

 そういった意味では今年は、例年にないほどのソフトがあります。タイトルを挙げていくときりがないんですが。「面」でユーザーの方にアピールするという意味では、今年はいい年なのではないか、と思っています。

−PS3についてはどうですか?

平井:PS3は性能、パフォーマンスの点が圧倒的にありますので、それをいかに使っていくか、というのがキーになっています。去年でいえば「メタルギアソリッド4」でしょうし、今年でいえば「God of War 3」であったりとか「Uncharted2」とか。「グランツーリスモ5」も、もう「徹底的にCellを使いあげるぞ」というところで出来ているもの。そこがすごく大切だと思っています。

−マイクロソフトも任天堂も、ネットワーク・サービスの拡充に力を入れています。特にマイクロソフトは、動画サービスを大幅に改善しましたが、この点は?

平井:ネットワークという点についていえば、トータルで(他のプラットフォームと)どっちがいい、悪いという議論は置いておくとしてですね……。

 PSNというのは2年半で、ここまでサービスを充実してきた。ゲームはもちろん、映画などのノンゲームのコンテンツを、1年間であそこまで持って行くことができた。これは、同じ時期にスタートしたXbox 360のコンテンツ数に比べて、(増加のカーブの角度が)大きく違う。それなりにプレイステーション・ワールドのユーザーに評価していただけていると思っています。

 特にネットワークの環境が発達しているマーケットでは、ネットワークにつながないPSPやPS3というのは……そういうお客様はいらっしゃいますけれど、面白いところをもっと体験していただきたいな、と思います。Homeも始まりましたし、いろんなところに力を入れています。投資もしています。

−ビデオについて。日本ではアニメ中心ですよね。品揃えのバリエーションとして、率直に言って、アメリカなどに比べ寂しく、魅力に欠けます。拡充の予定は?

平井:現状がアニメ中心なのは事実です。各マーケットのインストールベースやユーザーの方のデモグラフィックス(人口分布、特性動向)を見て考えていかなければいけないと思います。

 日本以外にも、ヨーロッパはどうする? という話もあるんです。地域も分かれていて、言語の問題も、ローカライズの問題もあります。アメリカのテレビ番組をもっていけばいい、というものではない。フランス人はフランスのテレビ番組が見たいでしょからね。今後、ここも視野にいれて発展を考えていかなければいかない、と思います。


■ 「値下げ」と同じくらい「大切な要素」がある
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−PS3の台数の件について。日本ではそれなりの認知度を確立しつつあるのかな、と思いますが、特に北米では、Xbox 360に押されている。

平井:アメリカをどうするの? と言う話ですね。奇策があるわけではなくて、原点に返って考えるしかないと思います。あくまでエンターテインメント・ビジネスです。

 各地域のお客様が、「やっぱりPLAYSTATION 3だよね」と思っていただけるソフト・サービス・コンテンツを、今日、明日だけでなく、コンスタントに出していかないと。そこでプラットフォームの真価が問われますし、評価もされるんだと思っています。

 そういう意味では、自信をもっていえるのは、PS3もかなり強力なラインナップをそろえることができましたので、日本はもちろん、アメリカ・ヨーロッパでも、目標として「ワールドワイドで(年度内に)1,300万台」というお話はさせていただきましたので、それを目指していきたいと思います。

−その点に関連して。結局「商品」ですから、どなたでも「安い」方がいいに決まっています。毎回「PS3の値下げ」は、どのリージョンでも期待されているところです。ですが、今回はこのタイミングで価格改定などは行わなかった。

平井:毎回同じ回答で申し訳ないです。おっしゃるとおり、「安ければ安い方がいい」のは本音ですよね。下げなくてすみません、ということになってしまうんですが……。

−逆にいえば、現状の「PS3の価格帯」を、SCEはどう見ているのか、ということです。他社のプラットフォームは、すべてPS3より安い。値段が違う、という点は、いま戦う上でハンデになっていると考えていますか?

平井:それはもちろん、安いにこしたことはないですよ。しかし先期に、「年間1,000万台やります」「価格は下げるのですか?」「いえ、下げません」という形でやらせていただきました。

 ソニーグループの中でも、「1,000万台を実現するのに、なんで値下げをしないのか」という話はありましたよ。でも、ご存じのように価格を維持した形で、「でも内容は良くしていきますよ」「サービスは充実させますよ」「ハードディスクの容量は増やしますよ」という風に、色々やらせていただきました。おかげさまでパブリシャーさんのサポートもあり、1,000万台の目標は達成することができた。しかも「リーマンショック」があった中でできたというのは大きい。

 価格は大切ですが、「同じくらい大切な要因」というのもあるんじゃないでしょうか。お客様にとってのバリューをどう考えるか、ということです。それは「ゲーム」もあるでしょうし、映像のような「ノンゲーム」もあるでしょう。あとは、Blu-rayプレーヤーとしての価値もあります。

 昨年まではまだ「デファクト」とはいえませんでした。HD DVDとの戦いの影響がまだ残っていましたから。しかし現在は、Blu-rayというフォーマットに統一された信頼度があります。

 そのような中で、Blu-rayプレーヤーでもあるし、ネットワークプレーヤーでもあるし、CDやDVDはもちろんかかる。ゲーム機としての価値はもちろんです。

 そして、常日頃申し上げている「10年」のライフサイクル。そういったことを総合して、お客様はご判断いただけたのではないか、バリューをご提供できたのではないか、と考えています。

 値段は否定はしないですが、値段がすべてのドライバーになるかというと、そうではないのではないか、と私は思っています。

−特に、これからPS3、PSP goの数を増やしていく中で、マーケットを盛り上げるためにどのような施策を考えていますか? 特に、今後のソニーグループ内での活用を視野に入れた場合にも、いかにPSNを使っていただくか、ということが重要になりますが。

平井:それはいくつもあって、話し出すときりがないのですが……。

 まずは、コンテンツとサービスの充実。次に、それをいかに周知するか、ということが大切になります。アメリカ商戦では、年末にビデオデリバリーに特化したCMを、TVネットワークで大々的に流しました。日本でも、PSNに特化したものをやりましたね。

 特に日本としては、試遊台がすべてネットワーク対応していますので、そこで遊んでもらう、体験してもらうということに力を入れていきます。

 それに、PS3もPSP、goも含めてですが、「いろんなことができるデバイスである」ということはアピールしていかなくてはいけないと思っています。Blu-rayなどもそうですし……。

−そのあたりのクオリティアップや機能拡張も、どんどんやっていくと?

平井:もちろんです。ただ、それだけやっているということではなくて、あくまで「ゲームが楽しいんですよ」ということがアピールできた上で、ということです。

−すなわち、この2年間にやられてきたことの継続、ということですね。

平井:その通り。ノンゲームが元気だからそちらにがーっと行ってしまう、ということではないですよ。あくまで「ゲームの充実」はやって当然のこと。その上に、ノンゲームやネットワークコンテンツといったものを、ということです。

−他社は、Twitterやfacebookといった、ゲームの外の世界の人気サービスと提携する動きが多かったのですが、その点はどうですか?

平井:今回、発表はないです。ただ、ユーザーの方々に対して、既存のサービスを導入することで「こう喜んでくれるだろうね」とわかるものについては、決して拒むものではないですし、積極的にお話をしていこうと思っています。PSPでSkypeと組んだように、です。

 たまたま現在は、「こうだよね」というものがなかった。内部では色々と議論をすすめていますが、まだ発表に至っていないだけです。

−モーションセンサーの出荷時期はどのような感じで考えていますか?

平井:一応、来年の春くらいをめどに考えていますが、これは技術的に云々というより、「面白いソフトができるかどうか」で決まります。ごらんいただいておわかりのように、技術的にはかなりの精度が出ているので。

 あとは、ファーストパーティー・サードパーティー含め、あの技術を使った新しい体験というのがどんなものなのか、これから議論が始まり、楽しいタイトルが揃ってきてから商品化する、というものかと。コントローラーだけ商品化してもあまり意味はないですからね。

 もう、ソフトとのタイミングでどう見るかです。一応目安として、来年の春くらい、とは思っていますが。

− Xbox 360では、ゲームだけでなくUI操作にもNATALを組みこむ、という方向にあるようです。PS3のXMBにおいては、ああいった技術を取り込む可能性はあるのでしょうか?

平井:やってみて、「これだよね」というものがあればやります。他の機能アップグレードと同じ扱いです。決して、「ソフトの中だけで使うもの」と限定しているつもりはないです。ノンゲームのアプリケーションやXMBなどにも有効ならば、使っていこうと思います。

(2009年 6月 4日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]


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