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西田宗千佳の
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E3 2010特別編 新型Xbox 360を箱から出してチェック!

飛躍的に高まった完成度と静音性。3Dにも対応


マイクロソフト株式会社・執行役員常務・ホーム&エンターテインメント事業本部長の泉水敬氏。抱えている本体のサイズを見ると、かなりコンパクト化したのがわかるはず

 本日のプレスカンファレンス後、新型Xbox 360の実機を、じっくりとチェックする機会に恵まれた。

 なお、取材の場には、米国側で新型のプロダクトマネージャーを務めたアルバート・ペネロの他、日本でのビジネス責任者である、マイクロソフト株式会社・執行役員常務・ホーム&エンターテインメント事業本部長の泉水敬氏も同席していた。彼らのコメントも交え、現行モデルとはどこが違うのか、詳細をお伝えしたい。

 今回の取材は、後藤弘茂氏、西川善司氏と合同であったため、各質問内容には、両氏が発したものも含まれる。

 なお、Kinectについては、ソフト・サービス面についての記事に合わせて紹介する予定なので、今回は「ハード面」のみとお考えいただきたい。 


■ デザインを洗練、コンパクトに。Kinectにケーブル1本で接続

 今回の取材は、「New Xbox 360 Unboxing」と題した形で行なわれた。写真を見ておわかりのように、製品版の「パッケージ」を実際に開けて、内容物と動作状況を確認する、という体裁になっていた。

「Box」は包装した形で提供された。ここから「Unbox」していく。
アメリカ版新Xbox 360の化粧箱。印象としては現行モデルと大きく変わらない 中を開けると、本体と共に解説書などが現れる。

 箱そのもののイメージはさほど変わらない。だが、中を開けて新型を取り出すと、印象は一変する。細かい仕様は関連記事に譲るが、サイズが小さいのはもちろんだが、重量もかなり変化している。残念ながらまだ大き目のACアダプタを使っているものの、その重量ははっきりと「軽く」なっている。発売当初のモデルとは、比較にならない。

新型本体。中央の「くびれ」など、基本的なデザインコンセプトは同じなのだが、光沢感のある黒に変わり、「締まった」感じになった
新型のACアダプタ。現行モデルとサイズはさほど変わらないと思うが、重量は大幅に軽くなっている

「以前のXbox 360のデザインコンセプトを踏襲しながら、さらに洗練して、日本のみなさんにも好んでいただけるデザインになったと思っています」

 泉水氏はそう自信を見せる。

 確かに、以前のものに比べると高級感・凝縮感が増している。例えば、電源ボタンはスイッチではなく「タッチセンサー」になり、背面のコネクタもすっきりした配置になった。特に、光デジタル音声出力がケーブル側から本体側に移動し「アダプターが不要になった」(泉水氏)のも大きい。


本体背面。新たに光デジタル音声出力端子とAUX端子が登場。より家電的に使えるようになった印象だ

 従来と大きく異なるのが、HDDの装着方法だ。現行モデルでもそうだが、Xbox 360では専用HDDを利用する。現行モデルでは本体上部に取り付けるような構造であったが、新モデルでは、底面から内蔵する構造に変わった。

「実は、新HDDは“爪”で内部にひっかかるようになっていて、この爪はリボンを引くと引っ込むようになっているんです」

 細かいことですが、と笑いながら、泉水氏は新モデルの構造を解説する。明らかに現行モデルとは異なる「凝った作り」で、ハードに対する「手のかけ方」が異なるのが感じられる。細かい点だが、パッドなども機能こそ同じだが「Xボタンのクロームの質感や、細部の彩色が異なる」(ペネロ氏)という。


自らHDDの交換方法を説明する泉水氏。専用HDDを使うところは異なるものの、位置は「PS3」的。ただしこちらはドライバが不要だ 中央の四角い部分に注目。ここが「爪」になって本体内にひっかかる。下のリボンを引くと爪が引っ込み、HDDが取り外せるようになる構造だ
新型に付属のパッド。機能はまったく同じだがカラーリングが変わった。 新型と同時に発売されるアクセサリー群。デザインテイストが統一され、新モデルとなった

 コンパクトになった一方で、現行モデルの特徴であった「フェイスプレート」変更ができなくなった。一般的なゲーム機と同様、デザインは出荷時のまま変更ができないようになっている。また、外部記録用に用意されていた「Xbox 360 メモリーユニット」のスロットもなくなり、USBメモリで代替することになった。この点は既定路線といえる。

 新たに登場したのが、背面の「AUX」端子だ。これは「主にKinectを接続するための端子」(泉水氏)だという。

 Kinectは、すべてのXbox 360で利用可能なハードウエアだ。そのため基本的には、USBケーブルで本体と接続する。しかし、Kinectは利用する電力量が大きいようで、「現行モデルに接続する場合には、USBケーブルの他、外部電源を接続する必要がある」のだという。実際には「USBケーブルと電源アダプタがつながる、現行モデル向けの接続コネクタ」が付属するわけだ。

 他方新型の場合には、AUX端子が「USBと、Kinectが必要とする電源供給も兼ねている」(泉水氏)ため、ケーブル1本でシンプルに接続できる。要は新Xbox 360のAUX端子は、端子形状こそ異なるものの、ハイパワーなUSB端子であるようだ。新型のパッケージには「Kinect Ready」の文字が刷り込まれているのだが、それはケーブル1本でつながるよう配慮されている、ということを示しているのだという。

 泉水氏は新モデルの位置づけを「現行のXbox 360 エリートを置き換えていくような存在」と説明する。ハードウエアのスペックで言えば、無線LANの内蔵やHDDの250GB化など、「パーツ単位での強化」なのだが、後述するように、マザーボードを含む設計はまったく異なる。

 今後はこのモデルがスタンダードとなるのは間違いなさそうだ。ちなみに現状では「カラーバリエーション的なものは考えていない」という。

 現状では、HDDを搭載しない「コアシステム」も販売しているが、新型はHDDなしのモデルは用意されない。また発売当初は、ソフトウエアとセットにした「パックモデル」も用意されないという。

 ただしそれでも、スペックアップとデザイン変更を考えると、価格据え置きは十分にお買い得と感じる。 


■ CPUとGPUは「統合」、45nmルールに。消費電力と発熱は大幅低下か?!

 Xbox 360の新モデルについて一番気になるのは、静穏性や消費電力がどうなったか、という点だろう。Xbox 360は、ライバルであるPS3やWiiに比べ、動作音が著しく大きい。LSIの製造プロセスルール変更も含めた「抜本的な設計変更」が必要とされていた。

 今回の新モデルは、明らかにそれが一つの狙いだ。

「CPUは45nm世代になっています」。泉水氏はそう語る。別途発表した技術情報によれば、CPUとGPUは統合され、ともに45nm世代へと進化している。すなわちこれが、消費電力・発熱の低下と低コスト化につながっているのだ。ただし、CPUとGPUがどのように統合されているのかは、実際に分解したわけではないので不明である。

 ただ少なくとも、これが相当に静音化につながっているのは間違いない。周囲が静かとはいえない環境だったので、実際の動作音を録音してお聞かせするのは難しいが、耳を近づけて聞いた感じでは、あまり気にならないレベルに変わっている印象を受けた。

 実は、現行モデルでは比較的小型なファンが2つ搭載されていたのに対し、新モデルでは比較的大きめ(直径8cm程度?)のファン1つで排気を行なっている。外見から判断するに、PS3内蔵のファンほど高級なものではなさそうだが、静かにゆっくり回して排気する、という用途には「必要十分」といった感じだ。

 静音化がなされているのはファンだけではない。ディスクドライブも同様だ。「もう、HDDにゲームをインストールしなくても、静かに動きますよ」と泉水氏は自信を見せており、ペネロ氏も「DVDドライブのパーツは変更した。動作音はかなり小さくなっているはずだ」と頷く。

 無線LANは筐体に内蔵し、IEEE 802.11nにも対応している。どうやら内部的にはUSBで接続されているらしく、初回起動時に「USB無線LANアダプター」として認識されていた。とはいえ、それはあくまで初回だけの話で、使い勝手にはなにも問題ない。

 なお、HDMI端子が内蔵されたモデルではあるが、付属のケーブルは黄・赤・白のコンポジット端子。当然ハイビジョン出力はできないが、この種のケーブルは「お試し版」的な位置づけであることが多く、PlayStation 3も同様なので、しかたがないのかもしれない。 


■ HDMI対応モデルはすでに「3Dレディ」? 「これからのユーザー」にもインパクト大

 ここで少し気になることがある。

 ライバルであるPS3は、先日ファームウエアをアップデートして「3D」への準備を整えた。Xbox 360はどうなのだろう? はっきりとしたアナウンスはいまのところない。だが今回、面白いコメントを得ることができた。

「新型でも、HDMIのスペックは変更になっていません。ですが、元々Xbox 360は3Dに対応しているのです。現行モデルも新型も、3Dの出力が可能です。フレームパッキング方式も、サイドバイサイドもです。現状ではゲーム版“アバター”が対応していますね。ただし、我々はそれを強く押し出すつもりはありません」

 すなわち、HDMI搭載のXbox 360用であれば、3D対応のゲームタイトルは作れる、ということのようだ。他方で、Blu-ray Discへの対応予定ははっきりと否定された。

 マイクロソフトとして、3D対応については、現状でもできるものの、今後テレビが普及し、ユーザーが「3Dを選べる」ようになるまでは選択肢の一つとして用意しておく、というレベルにとどめるつもりのようだ。

「Kinectレディ」で、日本人を含む「これからXbox 360を買う人」をしっかり引きつける新デザイン・新設計。この2つの要素が、新Xbox 360の魅力といえそうだ。

(2010年 6月 15日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]