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西田宗千佳の
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E3 2010特別編 任天堂の発表会詳報&3DS実機レポート

自然な裸眼立体視。ハリウッドと協力し3Dムービーも


会場となったNokia Thater前には、早朝から長蛇の列ができた

 今回、特に日本の消費者から注目を集めていたのは、おそらく任天堂の動向ではないだろうか。3月に裸眼での立体視対応ゲーム機「ニンテンドー3DS(仮)」の開発を公表、その発表が「E3である」と予告していたからだ。

 そして、みなさんもすでにご存じのように、ニンテンドー3DSは「(仮)」のとれた正式名称となり、製品仕様が公開された。同社のプレスカンファレンスとその直後のハンズオン、そして夕方に開かれたプレス向けラウンドテーブルでのコメントから、任天堂の狙いを紐解いてみたい。



 

■ テクノロジーは「道具」、勝負は「体験」で

任天堂米国法人・Nintendo of America社長のレジー・フィザメイ氏
 毎回、E3における同社のプレスカンファレンスを取り仕切るのは、任天堂米国法人・Nintendo of America社長のレジー・フィザメイ氏。今回も、彼の言葉からカンファレンスはスタートした。

「E3はテクノロジーにあふれている。ハイデフ、3D、モーションコントロール……。だが、テクノロジーは道具に過ぎない。なにが重要なのか? それは“体験”だ」

 同社は一貫し、最先端のテクノロジーでゲームビジネスをドライブする立場からは一線を画してきた。今回もまた、その路線がまったく変わっていないことを、その後に控える「発表」のために強調したのだろう。

 事実、次に壇上に上がった任天堂専務取締役・宮本茂氏のプレゼン内容は、Wiiの特性をより生かした、新しい「ゼルダの伝説」(「The Legend of Zelda: Skyword Sword」、2011年発売)がどのように遊べるのか、というものだった。


任天堂の「顔」の一人、宮本茂氏は、新作ゼルダ「The Legend of Zelda: Skyword Sword」をプレゼン。WiiリモコンとWiiモーションプラスを使い、より「剣と盾」のような感覚でプレイしつつ、体力回復などの作業も快適で素早くできる「ゲームとしての手触り感」を強調した

 そこから続く「タイトルの紹介」も、同様のポリシーが貫かれている。各タイトルの紹介は僚誌GAME Watchの記事に譲るが、「多くの人が知っているタイトルを、多くの人が知っている遊び方を変えず、イメージや体験は新しいものにする」といった方針に見えた。うがった見方をすれば「確実にヒットが見込めるシリーズタイトルの味付けを変えたもの」だが、新しい機能やビジュアルは確かに魅力的であり、むしろ「新しいグラスにビンテージワインを注いだ」ようなもの、と言った方が良い。

任天堂が「新しい感触のタイトル」の例として発表した、「星のカービィ」シリーズ新作。グラフィクスが刺繍のステッチを模していて、実に「CGらしくない」のが特徴。でも操作性は昔ながらの横スクロールアクション感覚だ

 そして、ニンテンドー3DSの発表は、会も終盤にさしかかった頃に始まった。

「ここまでは既存のものを紹介してきたが、こんどは”はるかな未来”を紹介したい」
 フィザメイ社長はそう語り、ニンテンドー3DSの説明をスタートした。

 冒頭に映し出されたのは、実につまらなそうな顔をした家族の写真である。全員が3Dグラスをかけ、どこか不満げだ。

 もちろんこれは冗談である。だが、「メガネをかけて3Dを見るのは、決して快適な体験ではない」「やっと家庭に3Dがやってきたとはいえ、高価な対応テレビが必要。人数分の3Dメガネも必要で、こちらも決して安価ではない」と、現在の3Dのあり方をチクリと批判した。


ライバルであるソニーが打ち出す「大画面テレビで3D」をチクリ。メガネの不快感とコストの高さを攻撃した。実際には、家族の人数分の3DSを購入するとそこそこな金額になるので、比較としては弱いと思うが……
これまでの3Dの流れをまとめ、「これからは間になにもない」=裸眼の時代、という主張を行なった

「でも、ニンテンドー3DSなら安価に、みんなが3Dを楽しめる。しかも、メガネなしでだ」。 そう宣言すると、壇上の袖からは、スモークと共にニンテンドー3DSの実機が登場、任天堂・岩田聡社長が、変わって詳細の説明に入った。

「ニンテンドー3DS」を発表する、任天堂・岩田聡社長

「任天堂は15年前、『バーチャルボーイ』という3Dマシンを発表した。ムーブメントをおこすことはできなかったけれど、我々はそれ以降もずっと、ハードウエアのことを考えるたび、3Dのことを頭において検討を重ねてきた」

 岩田社長は自社における「3D」の歴史を振り返りながら、それが「3DS」へとつながっていることを示す。

 そのこともあってか、最初に岩田社長が強調したのは「見やすさ」だ。3.5インチのワイドスクリーンによる3D表示はクリアーなものだが、それをサイドにあるスライドバーで調整することができる。飛び出し量を増やすことだけでなく、まったくなくすこともできるのだ。会見中では、日本での正式な機能名称は触れられなかったが、このスライドバーは「3Dボリューム」という名称になっている。文字通り、ボリュームを調整する感覚で立体視の見やすさをコントロールできる、直感的な仕組みといえる。


 

■ 「ハリウッドの3Dムービー」も3DSで配信へ?!

 もちろん、単に立体視に対応しただけではない。詳細なスペックは語られなかったもののの、「インパクトのある視覚効果を得るにはグラフィクス性能も重要」(岩田社長)という判断から、グラフィック性能の大幅な強化が行なわれている、とのコメントがなされた。さらに、十字キーの上にはアナログパッドが、内部にはモーションセンサーとジャイロセンサーが内蔵され、携帯ゲーム機でありながら、Wiiで培った「新しい操作体系を生かした、新しいゲーム」(岩田社長)ができるようになっている。このあたりは、iPhoneなどが「直感的操作」をウリにしていることへの対抗でもあるだろう。

 他方、ニンテンドーDSから引き継いだ「デュアルスクリーン」の下側は、既存の2D液晶である。ニンテンドーDSiの設計思想を引き継ぎ、互換性を持たせた製品であるため、下側の画面はタッチスクリーンになっている。「開発の段階で、タッチパネルにつく指紋などの汚れが、3Dの立体感を損ねて透明度も低下させるのがわかってきた」(岩田社長)という理由から、こちらは3.02型・縦横比4:3の2D表示のままである。

 ニンテンドーDSiに比べ強化されたのは「カメラ」だ。自分側に向いたインカメラは従来通り単眼だが、本体天面にあるアウトカメラは「二眼」。すなわちステレオ撮影が可能になっているわけだ。スペックを確認してみると640×480ドット程度で、決して解像度が高いわけではない。だが、本体だけで簡単に撮影ができることから、「3Dで撮影できるプリクラ」的な感覚で使うなら面白そうだ。従来のDSiのカメラも同様のコンセプトで作られており、それをそのまま「3D化」した、と思えばいいだろう。

3DSには「二眼」のステレオ写真用カメラを搭載。立体写真でのコミュニケーションなどに活用する

 意外だったのは、この段階で岩田社長の口から、ゲーム以外への応用が語られたことだ。

「どのような形で供給するのか、現状ではコメントできない」と断った上で、「ニンテンドー3DSは、映画会社に協力をあおぎ、ハリウッドの3Dムービーを3D映像を楽しめる」と発表したのである。

 現時点で「協力企業」として発表されたのは、ワーナーブラザーズとドリームワークス、そしてディズニー。現状の映画界の「3Dへの動き」を前向きに捉えた上で、「裸眼で楽しめる」ことを武器として、ゲーム以外のコンテンツへと、積極的に応用する姿勢を見せたことになる。


映画会社と組んで3Dムービーの再生機能も搭載する。まずは上記3社からデモ映像を借り受ける形で情報公開を行なった

 ■ ユニークな通信へのアプローチ、カギは「すれちがい」

 ニンテンドー3DSのコンセプトは「3D」だけに終わらない。むしろ興味深かったのは、ユニークな「通信モデル」の構築だ。

 ニンテンドーDSには「すれちがい通信」と呼ばれる、スリープ中の機器同士がすれ違う際に「ユーザーの操作を介在せずに通信でデータを交換する」機能が盛り込まれている。例えば、ペットゲーム「Nintendogs」でペットを交換したり、ヒットゲーム「ドラゴンクエストIX」で宝の地図を交換したりすることに使われている。

「Wifiネットワークのない場所でも、簡単にマップやアイテム、情報などを交換できるようにしたい」との考えから、3DSではこの「すれちがい通信」を積極的に活用できるようになる。

すれちがい通信の概念図。3DSがスリープモードでも、近くに3DSがきて「通信可能範囲」になると、各種情報が自動的に交換される仕組みだ

 これまではゲームが動いている時に、そのゲームに関する「すれちがい通信」だけができる仕様だったが、3DSでは本体に「すれちがい通信用の領域」が用意され、複数のゲームのすれちがい通信が同時に、常に動き続ける形に変わった。だから、多くのタイトルで「すれちがい」によるコミュニケーションが発生しやすくなるのである。同様に、自宅の無線LANや公衆無線LANなどに定期的に接続、自動的に「最新のゲームデータや追加アイテム」などをダウンロードする仕組みも備わった。

「ネットワークを利用する敷居を低くしたい」(岩田社長)という発想からだ。

 これらのことを武器に、任天堂は3DSでのタイトル開発を加速する。「自社のソフトでハードを普及させることが我々の仕事だった。あくまで、これまでは。」(岩田社長)と語り、サードパーティーとの連携も強調した。すでに協力企業が21社あり、「バイオハザード」や「メタルギア・ソリッド」、「ファイナルファンタジー」のように、ハードの浮沈を左右するような著名タイトルの供給も決定している。もちろん、任天堂自身もオリジナルのタイトルを供給する。

サードパーティーの支援が厚いことを強調。日本でおなじみのタイトルも、3DSで登場することになりそうだ

 3Dに注目が集まるが、「3Dだけでない」姿をアピールして、カンファレンスにおけるニンテンドー3DSのアピールは終了した。

 そして、会が終わると同時に、数が定かでないほどたくさんの「3DSを持ったデモンストレーター」が登場、その場で3DSの立体視表示の体験会がスタートした。これは演出的にもインパクト十分だ。

会見終了後に登場した美女デモンストレーター軍団。彼女たちから3DSを受け取り、映像をチェックする趣向だ

 

■ 解像度を感じさせない「自然な裸眼立体視」。「わかりやすさ」が楽しさにつながる

3DSのデモ機

 では、3DSの立体表示がどのような感じなのか? 詳細をお伝えしよう。

 3DSで使われている裸眼立体視対応液晶は、800×240ドットのワイド画面。実際には、横方向で1ラインおきに左右の視差を表示し分ける「視差バリア方式」と思われるディスプレイだったので、横方向の実解像度はさらに半分の400ドットになる。

 数字を見せると「低解像度で荒そう」と思われそうだが、むしろ印象はまったく逆だ。会見後にプレスリリースを見て、数字を確認するまでは、こんなに解像度が低い映像とはとても思えなかった。グラフィック性能が進化し、テクスチャーマッピングが精細なものになったことも、解像度の低さを感じさせにくい理由だろう。

デモ機は製品版とデザインが異なること、映像が写真では2Dにしか見えないのがご愛敬。ただし、製品イメージはかなり「DSi」を踏襲する

 視差バリア方式にしろレンチキュラーレンズ方式にしろ、裸眼での立体視ディスプレイの欠点は、立体に見える「スイートスポット」が狭く、すぐに像がぶれて見えることだ。だが3DSのそれは、かなりはっきりと見やすい立体表示になっていた。会場のあちこちからどよめきや歓声が上がっていたのが印象的だ。

 これには秘密がある。実のところ、今回3DSで利用されているディスプレイは、どうやら「縦方向の移動」による視差ぶれが極端に少なく、逆に横方向のずれには弱い性質を持っていた。携帯ゲーム機を持ってみていただけると分かるが、両手で持つと「縦位置のずれ」は起きやすく、自分で見やすく無意識に「位置の調整」を行なうくらいなのだが、よほどプレイに熱中しない限り「横方向へのずれ」は起きない。また、手の長さで「ディスプレイからの距離」もおおむね決まった範囲になるので、そちらの調整も容易だ。

 すなわち「携帯ゲーム機で使うことを前提に、見やすくなるよう慎重な調整が行なわれている」ことが、3DSの見やすさの秘密だろう。他方、モーションセンサーなどを生かすために「本体を動かす」と映像はぶれやすくなると思われるため、体感系ゲームとの相性は必ずしも良くない。ゲームの制作時には工夫が必要になる点だろう。またハード的に見ても、大きなサイズのディスプレイだと適切な視差バリア効果を維持しづらくなるため、極端な大画面化、例えば6インチ・8インチといったサイズに拡大したモデルを出すと、今の快適さ・クロストークのなさは実現できないだろうと思われる。まさに3DSのサイズ感は「スイートスポット」なのだろう。

画面右にあるのが「3Dボリューム」。調整幅は意外と広く、反応も即時。自分の体調などに合わせて視差を気軽に変更できる

 飛び出し量の調整を行なう「3Dボリューム」の効果も高い。非常にスムーズに飛び出し量・奥行きが変化するので、見やすい位置を見つけやすい。これは3Dテレビなどでもリモコンにつけてほしい機能だと思った。

 他方、現状でデモされたのは「表示」のみで、ゲームとしてのプレイはE3展示ブース内のみとなっている。ブースでは3時間待ち、と言われており、取材が目白押しだった本日はチェックすることができなかった。

 だが、別途夕方に行なわれたプレス向けラウンドテーブルにて、別の面白いデモ映像を見られたので、その内容をお伝えしよう。撮影は完全に禁止されていたので、文章のみで申し訳ない。

 表示されているのは城のある平原。そこを、奥から馬にまがたった青年が走ってくる。こう書くと、任天堂のゲームが好きなファンはもうピン! と来たかも知れない。3Dゲームでは一つの金字塔となっている、NINTENDO64版ソフト「ゼルダの伝説 時のオカリナ」のオープニング・シーケンスである、ハイラル平原を走るリンクの姿なのだ。

 現在任天堂はニンテンドー3DS向けに、「ゼルダの伝説 時のオカリナ」や「スターフォックス」など、従来ヒットした「3Dらしいタイトル」のリメイク版を制作中だ。

 ラウンドテーブルにて、宮本茂氏は「3Dの効果」を次のように説明している。

「3Dになると、位置が簡単に分かるようになるんです。マリオでは、空中にぶら下がった綱に飛び移る、という動作があり、2Dだと位置が分からず結構難しかったのですが、3DSでは簡単になっちゃうんですね。スターフォックスでも、弾がどこであたったのか、2Dの時はなんとなくわかりづらかった。でも、3Dだとすごくわかりやすいんです。『時のオカリナ』の映像を作ったのも、ハイラル平原を走るリンクをみせるとすごいんじゃないかな、と思ったからです。自分で操作できるようになると、もっと『広がり』を感じると思いますよ」


E3会場内の任天堂ブース。3DS体感コーナーは黒山の人だかりで、入場までには3時間以上が必要だったという。

 このことに、筆者も強く同意する。すでに何度か、テレビを使った3Dゲームなどを体験しているが、こちらでも感じたのは、単に迫力が増すということではなく、「奥行きを含めた相対位置が直感的に分かる気持ちよさ」がある、という点だった。

 携帯型なので迫力という点でマイナス、ということもあるのだろう。だがそれ以上に「わかる気持ちよさ」「動かせる手触り」といった3Dゲームの本当の魅力は、任天堂がアピールしたいと考えている「体験」に直結している。



 ■ 日常の使い勝手を改善、「すれちがい」と「3D」で技術の壁を越えろ

 E3会場に展示された製品を検討してみよう。実は、会見後に触れたものは「プロトタイプ」らしく、カラーリングや細部が展示されていたものとは異なるのだ。

行列付近に展示されていた、カラーバリエーションモデルのモックアップ。発表されているものはここまでビビットな色ではない
デザインイメージが同じであり、サイズも似ている事から、DSiとの違いは感じにくい。だがアナログパッドがあることで、操作感は相当変わるだろう

 製品に近い外観(カラーは除く)と思われるモックアップを見ると、全体の印象が驚くほどニンテンドーDSiに近いことが分かる。ワイドスクリーンやアナログパッドが、実に自然にとけこんでいる。おそらくはすでに(3Dを組みこむ以前から)同様の配置は研究済みだったのではないだろうか。若干厚みが増しているようだが、触って気になるほどではない。

 パッケージサイズはDS用と同様だが、カードの形状は微妙に異なる。これは単純に「3DSのソフトがDSには刺さらないようにする」ための配慮だろう。

 特に気に入ったのは、充電のためのクレードルが用意され、日常的な使い勝手が増したように思えることだ。「日常的な使い勝手」については、3DSでは相当な配慮がなされているように思える。特に、難しくなりがちな「通信」は、立体視以上のキーではないか、と感じるほどだ。
3DSのソフトカートリッジとパッケージ。DSと同じように見えるが、ソフトカートリッジの形状が異なっており、DSには刺さらない 背面

 

充電用クレードルもついに登場。映像などを固定して見るにも便利そうだ

 任天堂で3DSの開発プロデューサーを務める、同社開発情報部の紺野秀樹氏は次のように語る。

「DSのすれちがい通信を、もっともっと多くのお客様に楽しんでもらいたい、と思い、本体に内蔵してしまったんです。複数のソフトの“すれちがい”を実現したり、新しいデータを自動的にとりにいくようにするために、本体内に新しい仕組みを採り入れています。3DSを持ちあるいて、どんどんすれ違い通信をしてもらえれば、と思います。それが私の野望ですね。通信をバックグラウンドに利用するので難しいのですが、バッテリー持続時間は可能な限りDSiのと同等にしてみたいと思います」

 実は紺野氏は、「すれちがい通信」を最初に実装し、ゲームとしての価値を世に知らしめた「Nintendogs」の開発者でもある。通信を簡単にし、コミュニケーションを活発化することに注力する、というのが、3DSの狙いの一つなのだろう。宮本氏は次のように続ける。

「すれちがい通信のようなものは、常にネットにつながっていればいつでもできるじゃない、と思われるでしょう。でも、それだとなんか違うんですよね。バーチャルなつながりではなくて、リアルに”そこにいる”感じ、『このデータはどの人が持ってるのかな』と考えられるくらいのところがいいと思います」

 こういった仕組みに加え、朝などに自動で新規コンテンツを取得する「プッシュ的な仕組み」(紺野氏)も組み合わせることで、ネットワークの利用はより透明化する。そして、それらの情報がさらに「すれちがい」で広まることも想定している。

 実はカンファレンスで、岩田社長は次のように話している。

「ネットワークがない場所でも、情報をやりとりしてコミュニケーションができる。もちろん、そのための月額利用料などはない」

 これはもちろん3Gネットワークなどによる通信を想定した話ではなく、「すれちがい通信」をはじめとした「ゆるいメッシュネットワーク」の構築をイメージしての話だろう。宮本氏も「将来的にはキャリアーと組んで、といった話も出てくるのかな、とは思いますが、いまはそういう計画はない」と話す。

 裸眼立体視という「技術からくる体験」をフックとしながらも、狙うは「立体の手触り」や「ゆるくて意識しないネットワーク」だ、というのが、3DSというハードのコンセプトだ。

 これは、ニンテンドーDSでタッチを導入した時よりも野心的なことといえる。我々は「Aというサービスの導入でBという企業に対抗」という考え方で語りがちだ。だが今回任天堂が狙ったのは、「今でもできるが”壁”があるものを、アイデアの組み合わせで乗り越えていった機器」を提案することなのだ。

 こういう戦い方をされると、他のメーカーはつらいだろう。なにしろ「ルールの違うスポーツ」で戦うようなものなのだから。


(2010年 6月 16日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]