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西田宗千佳の
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CELLのDNAを継承。「レグザエンジンCEVO」の秘密に迫る

REGZA ZG2の高画質/機能を実現する半導体の力


左から商品企画担当の毛塚氏、本村氏。ソフトウェア/画質関連技術担当の住吉氏、半導体開発を担当した山内氏

 今期のテレビ新製品の中で、プロセッサを大きく変えたメーカーとして、ソニーと並び注目なのが東芝だ。そもそも東芝は、デジタルテレビ世代の製品で「半導体とソフトの力」を最大限に活用し、商品の魅力につなげてきたが、今期は主力商品である「REGZA Z2」シリーズを皮切りに、最上位機「ZG2」、パーソナル向けの上位機「ZP2」という「Z」系ラインナップで、新プロセッサ「レグザエンジンCEVO」を導入し、さらに機能アップを狙った。

 レグザエンジンCEVOはどのような狙いで作られ、高画質化・高機能化にどう貢献しているのだろうか? 開発陣に狙いを聞いた。

 今回インタビューにご登場いただいたのは、商品企画を担当する、東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 デジタルプロダクツ&サービス第一事業部 国内マーケティング部 商品企画第二担当 参事の本村裕史氏と同主務の毛塚英夫氏、プロセッサー開発を担当した、同コアテクノロジーセンター AV技術開発部 第四担当 グループ長の山内日美生氏、そして、画質関連技術を担当する、東芝デジタルメディアエンジニアリング デジタルメディアグループ デジタル映像商品技術担当 TV映像マイスタ アシスタントシニアマネジャーの住吉肇氏の4名だ。


 


■ CELLのDNAを新「Z系」ラインナップに

REGZA 55ZG2

 最初に、「レグザエンジンCEVO」を搭載した製品について整理をしておこう。日本では、この春に発売された「REGZA Z2」シリーズからこのプロセッサが採用された。

 同様に、ハイエンドモデルにあたる「REGZA ZG2」シリーズと、中小型のパーソナルモデル「REGZA ZP2」シリーズにも採用されている。レグザエンジンCEVOをどう使っているかは、それぞれの製品毎に異なるが、現状はREGZAの代表格であるZ系に採用されており、最上位機のZG2はデュアル構成のレグザエンジンCEVO Duo、ZP2とZ2シリーズは1基のレグザエンジンCEVOとなる。

 今後REGZAのラインナップが更新されていくのにあわせ、採用が広がると見られる。


47ZG2 42ZG2 32ZP2

 とはいえ実際には、レグザエンジンCEVOの最初の利用例は、日本国内向けの製品ではない。昨年9月、ドイツで開催された「IFA2010」にて発表され、年初に製品投入された欧州向けのハイエンドテレビ「ZL1」シリーズに「CEVOエンジン」として搭載されている。

デジタルプロダクツ&サービス第一事業部 国内マーケティング部 商品企画第二担当 参事の本村氏

本村氏(以下敬称略)ZL1というのは欧州向けのCELL REGZA、と考えていただいてかまいません。実は液晶パネルはCELL REGZAと同じもので、エンジンだけはCELLでなくCEVOを使ったもの、という製品です。

 「CEVO」という名前を考えたのも、我々国内マーケティングチームではなく、欧州のマーケティング担当なんですよ。CELL以上の進化をした製品、「CELLエボリューション(進化)」の略で「CEVO」というわけです。

 そもそも映像エンジンというのは、早いサイクルでつくりかえるものではありません。実は今回は、「Z」が生まれてから初、Z1000(発売は2006年。テレビブランドを「face」から「REGZA」に変えた初代製品でもある)以来の完全新規リニューアルになります。

 東芝がこれまで使ってきたのは「メタブレイン」(後に「レグザエンジン」と改称)シリーズと呼ばれるLSI群だった。本村氏が「Z1000以来のリニューアル」といっているのは、メタブレイン世代からレグザエンジンCEVOへの変更、ということを指している。

 他方で、プロセッサを生かしたテレビという意味で、東芝には「CELL REGZA」があった。2009年末の登場以降、プロセッサーパワーをふんだんにつかったある種の「モンスターモデル」である。

本村:CELL REGZAというのはソフトウエアの塊です。研究成果をすべて入れ込みました。色々なことができたので、研究所は大喜び、という製品でもあります(笑)。

 一方、CELL REGZAがコスト的に非常識なものである、ということも分かっていました。しかし、これを作っていくことで「次」が見えてくる。そうしなければ次のプロパーモデル(普及価格帯で販売できるモデル)のステップアップはない……。そう思ってCELL REGZAを出したのです。

 2009年のCEATECで、弊社・大角(正明社長)が発表の中で「CELL REGZAのDNAを広げて行く」と申し上げているのですが、それがレグザエンジンCEVO、ということになります。

 


■ 「2セット」使って画質と操作性を両立!

コアテクノロジーセンター AV技術開発部 第四担当 グループ長 山内氏

 ではそもそも、レグザエンジンCEVOというLSIはどのように生まれたものなのだろうか? LSI開発を担当した山内氏は次のように解説する。

山内:開発は弊社コアテクノロジーセンターが担当しました。

 CELLを使ったテレビセットを開発中であった2009年春には、すでに「CELLをブレイクダウンした形のLSIを開発する」というコンセプトが存在していました。ですから、レグザエンジンCEVOを開発する段階で、「画質のウリはなににするか」「アプリケーションはどうするか」といったことは見えていた、ということになります。

 問題になったのは「次にはなにをするか」ということです。「地デジ全チャンネル丸録り」「タイムシフトマシン」といった機能はCELLの象徴です。これは必要になるでしょう。また、超解像についても継続して研究を行なっていました。単一フレーム超解像は製品化できましたので、ここから二の矢・三の矢と打っていきたい。

 そこで出てきたのが「三次元フレーム複数枚超解像」。これなら「三の矢」に匹敵するだろう、と考えました。

 レグザエンジンCEVO、といっても、製品によって使い方は異なる。もっとも基本的なモデルにあたる「Z2」では、レグザエンジンCEVOを1セット使って映像系・アプリケーション系の両方の処理を行なっている。よりパーソナルに振ったモデルである「ZP2」も同様だ。

 だがフラッグシップモデルである「ZG2」では、レグザエンジンCEVOを2セット使って「レグザエンジンCEVO Duo」としている。基板写真を見ると、同じサイズのLSIが2つの基板に配置されているのがわかる。ZG2と他モデルの主な違いは、「全チャンネル録画」と「3D」、そしていくつかの「高画質化機能」といったところだ。

レグザエンジンCEVO Duoの写真。基板が2つあり、左右に似たようなLSIがあるのがわかる。これが「CEVOが2セット」ということだ

 パソコンならばデュアルコア・デュアルチップで処理高速化、と言われても分かる。しかし家電においては、LSIの仕事は単純な「演算」ではない。汎用的な仕事ばかりではなく、LSIもそのように作られてはいないので、LSIの数を増やせば性能が上がる、という単純なものではない。CELLがマルチコア構成でパワーを発揮できたのは「ソフト比率」が高かったからであり、むしろ例外といえる。

 ではなぜ東芝は、「ハイエンドでは2セット使う」という構成を選んだのか?

 「実は布石がありました」と山内氏は明かす。

山内:2セットでハイエンド向けに、という発想は最初から想定していたものです。布石は「REGZA Z1」(2010年6月発売モデル、Z2の前身)にありました。

 Z1ではそれまでのレグザエンジンを2つ搭載し「レグザエンジンDuo」として利用しました。この構成ならタイムシフトマシンに応用できるな、という想定をしていました。ですからこの時期から、複数LSIによる役割分担を実験的に行なっていたんです。

 こういう発想は、LSIを開発していく段階でのジレンマから生まれました。

 機能を実装していくと、どうしてもリソースの取り合いになり、「この機能とこの機能を同時に使いたいのにできない」ということが起きます。いわゆる「同時動作時の機能制限」というのはここから生まれるんです。複数のLSIで役割分担をするように設計しておけば、こういった点を解消できます。

 では具体的に、レグザエンジンCEVOというのはどのようなLSIなのだろうか?

山内:時代の流れとして、ネット対応、高度なグラフィック対応が必要になっています。サクサク動くことが求められているわけです。LSIの処理速度を高速にすることで、基本プラットフォームの能力は高くなります。

デジタルプロダクツ&サービス第一事業部 国内マーケティング部 商品企画第二担当 主務の毛塚氏

毛塚:ユーザーインターフェースなどの描画は、できる限りGPUに渡して高速化・軽量化できるようになっています。

 LSIの外部クロックは従来のレグザエンジンと同じですが、内部クロックの段数は多くなっていますね。CPUはデュアルコアのARM系です。そこにGPUやビデオデコーダーを別ブロックで用意し、I/O回路も入れている、という構成です。

山内:画質処理を差異化するためのブロックもメインLSIに入っています。あらゆる処理をCPUにやらせよう、という発想のLSIではないですね。

 レグザエンジンCEVOは、メタブレイン/レグザエンジンに比べ、単体でも約3.4倍、「Duo」ならば約6.8倍の処理能力を持っているという(REGZA Z1搭載のレグザエンジンとの比較において)。レグザエンジンCEVOに入っている「デュアルコアARM系」というのは、最近スマートフォンなどでも採用が増えた「Cortex-A9」系だ。処理能力はそれなりに高いが、CELLやパソコンに搭載されているIntel系CPUほどの汎用処理能力を持っているわけではない。

 ZG2はCELL REGZAのように、地デジを6チャンネル同時に録画し、過去30時間分の番組から好きなものを再生できる「タイムシフトマシンCEVO」を搭載している。また、パネルのスペックは異なるものの、16分割、バックライトスキャン、4倍速、3D対応という、かなり高レベルな制御を必要とするパネルを採用している、という点も、CELL REGZAに似ている。

LSIの世代による処理速度の違いのイメージ。あくまでイメージであり、実処理速度とは異なるだろうが、大幅な進化であるのは間違いない。ちなみに、レグザエンジンCEVOは40nmプロセスで作られているという 「全チャンネル録画」こと「タイムシフトマシンCEVO」の概念図。内蔵ハードディスク(2TB)のうち1.5TBを使い、最大6チャンネル・30時間分の映像を自動録画する

 だが、ZG2にはCELL REGZAより劣るところもあれば、逆に優れている点もある。

 劣るところは、8チャンネルを同時に表示する機能がないことや、見たい番組を関連情報から探し出す「ローミングナビ」がないことだ。これらはどちらも、CELLの演算力に物を言わせて実現していたものであり、レグザエンジンCEVOでそのまま実現するのは難しいものだ。ただ後者については、今後ネットワーク側でサーバーと連携して実現する可能性もあると感じる。

山内:CELLはパワーがあります。実直にプロセッサをフル稼働させて膨大な演算をし、全部ベースバンドの品質で、マルチチャンネルの映像を一気に扱えます。

 CEVOにそこまでの能力はありません。しかしCELLのエッセンスをもらうような考え方で作っています。

 画質や操作性については、むしろ優れる点が多い。特に操作性については、ユーザーインターフェースを実現するためのGPUが強力になり、そちらを生かすようになったためだろう。CELL REGZAは価格の割に操作が遅いと感じる部分があったが、レグザエンジンCEVOを採用した世代の「Z系」は、かなり動作が俊敏になったと感じる。

 冒頭で述べたように、レグザエンジンCEVOはZ1000世代から5年ぶりの刷新となる。そのため、相当に長く、世界レベルで利用することを前提とした設計が行なわれているようだ。

本村:世界中で映像の文化というのは異なります。まだきちんとお答えできるわけではありませんが、欧州と日本では「レグザワールド」は違ったものになるでしょう。例えば録画文化がそうですよね。そこで、ハードウエアは同じだとしても、ソフトとしては違うものになると思います。

毛塚:ネットTVなどの新しい要素は、今のプラットフォームの上に追加していける構造になっています。

本村:我々の持つ(テレビ用)プラットフォームが業界で一番か、はわかりません。しかし、少なくとも我々は、数年間はこのプラットフォームを使わねばなりません。それだけの能力を備えたものにはなっていると考えています。

 現状、ネットTV/スマートTVと呼ばれる機能がどのようになるのか、どのような機能が求められるかはまだわからない。タブレットやスマートフォンと連携するアプリ機能も必要になるだろう。今回より、REGZA AppsConnectにも対応しており、クラウドと連携したサービスの方向性はより追求されていくのは間違いない。

 画質面だけでなく、動作制限が少なく、アプリケーション処理能力が高いプロセッサである、という点が、レグザエンジンCEVOの特徴といえる。

 


■ 狙うは「原画再現」、ハイファイ思想でLSIを作る

 そして、ZG2を見た場合、特に大きく進化しているのが「画質」だ。それにはもちろん、レグザエンジンCEVOに組み込まれた新しい画質向上の仕組みが効いているからだ。

デジタルメディアグループ デジタル映像商品技術担当 TV映像マイスタ アシスタントシニアマネジャー 住吉氏

 ZG2の映像を見ると感じるのは、とにかく「すっきり」していることだ。地デジソースのようにノイズが多くなりがちな映像も、ノイズ感がかなり減り、見やすい映像になっている。ノイズに超解像がかかるとエッジが破綻して不自然な映像になりやすいのだが、ZG2の映像はそうなっていない印象だ。画質技術を担当した住吉氏は、「その印象は、特に『ブロックノイズクリアCEVO』の効果でしょう」と話す。

住吉:今回のコンセプトは「放送波をきれいにしよう」というものです。要は、地デジとかビットレートが低い映像がターゲット、ということです。ブロックノイズクリアCEVOだけでなく、複数フレーム超解像も、地デジをきれいにするために採用したものです。

 そもそもビットレートが高い映像、例えば高品質なオーサリングがされたBlu-rayの映像などは、ノイズリダクションの効果は限定的です。もちろん、BDはBDでやることはあるのですが。

 MPEGノイズリダクションは、以前からありましたが、非常に微少な高域成分の帯域を落とす、要は画質を甘くしてあげるというものでした。また、エッジの周りの解像度を一律に落とす、という手法もあります。ただ、それをやってやると精細感のない甘い映像になります。「ハイファイ思想」として、我々はやりたくありません。

 ノイズは、エッジ周辺であっても、特にフラットなところ、例えば空などにのっているのものは視認しやすい傾向にあります。他方、ディテールの部分では気になりづらい、という視覚的特性があります。それを踏まえ、処理できる回路を考えました。

 実はこのノイズリダクション回路は、CELL REGZA第二世代(X2およびXE2)には入っていたものです。しかし、ストリーム信号にしかつかえなかった上に、アルゴリズムの問題でどうしても映像が少し眠くなっていて、平板なものに感じるという問題がありました。

 今回は新しいアルゴリズムを開発し、さらにプラスアルファで遠近感を損なわないものにしています。

毛塚:判定は、同じ場所でも縦横ななめ、すべての方向について分析・評価を行なっています。

 ブロックノイズクリアCEVOは、数ある高画質化機能のうち、ZG2にしか乗っていない機能である。というと、レグザエンジンCEVOを2つ使った時のみの機能と思われそうだが、実はそうではない。レグザエンジンCEVOとは別に搭載された特別なLSIが担当しているものだからだ。

毛塚:ZG2では、パネルの前の最終出力段に新規開発のLSIを搭載しています。このLSIでは、バックライトや3Dの制御、4倍速対応なども行なっています。より出力に近いところでさらなる高画質化を図ろう、という狙いです。

住吉:4倍速、3Dなどの制御のためにせっかく新規のLSIを作るんだから、ちょっと無理してでも入れてね、という経緯なんです。

 ここで一つ、確認しておくべきことがある。住吉氏の言う「ハイファイ思想」とはどういうものだろうか? これは、住吉氏が、ひいては東芝がずっとテレビで追求している方向性でもあり、今回搭載された「複数フレーム超解像」にもつながるものである。

住吉:我々が目指している画質というのは、「カメラの目の前で起きていることを再現する」、すなわち原画復元です。そのためには、 データに元々ある情報で再現することが大切です。パターンにあてはめて「それらしい映像」にするわけではありません。

 今回の超解像は、複数フレーム、すなわち他のフレームにある情報をつかって、サブピクセル精度で超解像を行なう、というものです。あくまで“もともとある”情報をつかって復元します。ですから、ちゃんと正しく処理できれば、原画の通りに復元できるはずなのです。

 住吉氏がこう語るのは、ソニーが採用している「データベース型複数枚超解像」との違いを意識しているからであろう。ソニーはDRCの時代より、映像をパターンによって分類し、それぞれに合った処理を行なう、という手法を採用している。以前連載で取り上げた「X-Reality Pro」に含まれる「XCA7」の処理も同様だ。

 この手法は、パターンにあった処理を行なうので破綻が起きにくい一方で、元々の映像とパターンの適応後が必ず一致するとは限らない、という指摘がある。要は、元の映像にない情報を使って処理を行なうため「原画とは違う映像を作ってしまう」ということだ。そのため、効果が効き過ぎたり副作用が出たりすると、不自然な絵になりやすい。XCA7については、実機デモでプラスの効果は確認したものの、こうした問題が解決しているかはまだ確信を持って語れないが、DRCでは、特にデジタル放送導入後に、副作用が目立ちやすい場面が見られた。

 ソニーとの比較はともかくとして、東芝の「ハイファイ思想」は新しい世代のプラットフォームでも生きている。超解像もノイズリダクションも、同様の思想で作られているということになるだろう。

複数フレーム超解像処理の概念図。差分を時間軸方向にも検出することで、ゆっくりとした動きや微細な動きに伴う「ちらつき」「不自然さ」を改善し、映像をすっきり見せる効果を生む

住吉:従来の一枚超解像と複数枚超解像の違いは、「すこしでも動きがあるところなら復元する」というところになるでしょうか。別な言い方をすると、ゆっくり動くところのノイズリダクションの質が上がり、動きが自然になり、IP変換に起因するちらつきが減る、ということになります。

 例えば、カメラがパーンしていなくても、撮影時には空気の揺らぎがあります。複数枚超解像では、その感触がうまく生きてきます。また特に地デジでは、エッジ周辺のモスキートノイズの低減効果が大きいでしょう。

 複数フレーム超解像は、ZG2だけでなくレグザエンジンCEVO世代すべてで採用されている技術だ。そして、その効果をより高めているのが、レグザエンジンCEVOすべてで搭載されている「パターン抽出型ノイズリダクション」だ。画像は、レグザエンジンCEVOでの高画質化処理のダイヤグラムだが、映像入力の前段にパターン抽出型ノイズリダクションが入ることで、超解像の効果が増しているという。


レグザエンジンCEVOの高画質化処理のブロック図。前段に「パターン抽出型ノイズリダクション」が入り、それを複数フレーム超解像や色超解像で高画質化していく、という流れだ。ZG2では、この後段にブロックノイズクリアCEVOや3D、4倍速処理などを行なう専用LSIを搭載する

住吉:SN比の向上については、パターン抽出型ノイズリダクションの効果も大きいはずです。

 この機能は、信号的に見ればインパルス状のノイズ、すなわち「動いているところでない部分に出ているノイズ」を外すものです。実はこの機能、REGZA Z1にもあったのですが、メインLSIの後段に配置されていて、一枚超解像がかかったあとに適用されていました。

 今回は(レグザエンジンCEVOという)LSIを新規に開発することになり、あるべき位置、すなわち最前段という効果的な位置でノイズリダクションを効かせることができるようになりました。この結果、複数枚超解像の効果が非常に良くなりましたね。

 すなわちZG2の場合には前後二段のノイズリダクションが、他のZシリーズの場合には前段のノイズリダクションが効果的に働くことで画質の向上が図れている、ということなのである。

 ノイズリダクション系の強化は、画質の向上について大きな影響を与えている。商品企画の面からも、この機能は待ちに待ったものであったようだ。

本村:最初にこの効果を見たのは、3、4年前のことでしょうか。社内で研究成果を内覧する技術研究展で見たのですが、そのとき「これだ!」と大きな声で叫んでしまったのを覚えていますよ(笑)。テレビでは地デジを見ている時間が長いので、地デジ画質の改善が大切なのはわかっていました。絶対商品に入れよう、という話をしました。

 実装と画質向上にはかなりの技術開発が必要になったようだが、ZG2での効果を見ると、それだけの価値はあったようだ。

色再現性に関する改善点。CMでおなじみの色超解像はもちろん、採用しているIPSパネルとバックライトの改善も合わせ、全体での色再現性向上を図っている

 「原画再現」という意味では、もう一つ注目されるのが「色超解像」、4:2:0で入力されるデジタル放送の信号を4:4:4にアップサンプリングする機能も効いている。こちらもCELL REGZAで実現されていたものを、レグザエンジンCEVOでも実現した、という形である。

山内:CELL REGZAでは4:2:2までで終わっていて、やりきれていないという意識を持っていました。本当は一気に4:4:4まで持って行きたかったのですが。

住吉:色超解像の効果は、複数フレーム超解像に比べるとわかりにくいかも知れません。ですが、赤の濃い、高彩度の映像のうち、斜めの部分に着目していただけるといいと思います。例えば、ハイビスカスの花の輪郭などです。

山内:あとは、赤いスポーツカーが走るようなシーンであるとか。

本村:色と色が戦うようなシーン、輝度成分が入るとそちらに引っ張られるようなシーンで効果的ですね。

住吉:実はゲームが効くんです。HDMIの1080ライン・4:4:4で入ってきた映像には効きませんが、SD解像度のゲーム、例えばWiiなどの映像ではかなり大きな効果が見込めるはずです。

ゲームの表示遅延もさらに改善。特にパーソナルモデルであるZP2での改善が大きい

 ゲームの話が出たので、ついでに「表示遅延」についても触れておこう。東芝のテレビは表示遅延が小さくゲーマー向けと言われてきたが、今回もその点は変わらない。それどころか「来るところまで来た」状態になったようだ。

住吉:もう、理論限界に近いところまでもってきました。

 特に高速なのは「ZPシリーズ」です。倍速読み出しを行う32ZP2で、理論上は0.5フレーム分遅延します。それに対し製品では、それに加え0.2フレームしか遅延せず、0.7フレームの遅延(約12ミリ秒)になります。倍速パネルでない26ZP2の場合には0.2フレーム(約3ミリ秒)の遅延です。ZG2の4倍速パネルの場合は、読み出し遅延が0.75フレームの遅延ですから、トータルで約1.1フレーム分(約18ミリ秒)になります。

 他方で、これだけの映像処理を行なっている分だけ、開発側からもある種のお願いがあるようだ。

住吉:画質向上の効果を万全に感じていただくためにも、ぜひフルサイズ切り替えは「ジャストスキャン」でご利用いただきたいです。照明を落としてダイナミックレンジもあわせていただければ万全です。我々は1ピクセル以下の単位で画質を合わせようとしているので、スケーラーで拡大される「オーバースキャン」設定では意味がなくなるんです。

 残念ながら、テレビは出荷状態では「オーバースキャン」になっている。放送によってはアナログソース映像に存在する信号端のノイズが見えてしまい、クレームにつながる可能性があるからだ。

 画質にこだわる、Z以上のグレードを購入するようなユーザーであれば、まず最初にここの設定は変更するようにしていただきたい。

 


■ NHKと民放では設定が違う?! こだわりの「新アニメモード」

 高画質化という点では、アニメのために最適化された「新アニメモード」についても触れておかなくてはならない。このモードでは、映像ソースが24pなのか30pなのかを判断し、最適なプルダウンを行なってコーミングやジャギーの発生を防いだ上で、さらには原画解像度をメニューから指定して、より最適な超解像を行なうようになっている。

住吉:そもそも今回の超解像処理は、アニメ系・実写系にわけて考えています。アニメの場合、特にセルアニメの場合、エッジの周辺にブロックノイズが目立つので、それに超解像処理のパラメータを合わせています。

新アニメモードを含む、アニメに関する画質改善の一覧。最新のアニメだけでなく、4:3のアナログソースに対しても効果的だという 原画の解像度を選んで、最適な超解像を行なうよう設定できる

 面白いのは、特に放送波を入力した場合、特殊な処理を加えていることだ。

住吉:入力が放送波であった場合については、NHKと民放でパラメータをわけています。どうやら、デジタル化する際の量子化行列がNHKと民放は違うようなのです。

 そのため、NHKと民放ではモスキートのノイズの出方が違います。特にエッジから遠くでも出やすい映像があるのです。

 同じ放送でも、実写系ではあまりパラメータでは変わらなかったが、アニメについては変化が大きかったので、EPGのデータを見て設定を変更しています。外部入力については手で設定を変えられます。設定には「オート」「オン」「オフ」があります。

 「オート」はEPGなどを見て判断しているのですが、多くの人がそのまま常用してもいい範囲で設定しています。「オン」は、より積極的に効くように設定しています。コンテンツモードをアニメにすれば、アニメに適したものになります。

 現在の画質エンジンは、オートでもいかに適切に効くか、というレベルになってきています。その際には、やはりEPGなどの情報は大切ですね。

 他方、細かく設定を突き詰められるよう、マニュアルでの設定項目もできる限り解放されている。その結果、メニュー階層が深くなり、表示も相当大変なものになっているが、そのあたりは「わかる人のためのもの」というところだろうか。

(2011年 5月 20日)


= 西田宗千佳 =  1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]