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「壁のないゲーム環境」を目指すPS4

リード・システムアーキテクト マーク・サーニー氏インタビュー

PS4のリード・システムアーキテクト、マーク・サーニー氏(右)と、ソニー・コンピュータエンタテインメント SVP 兼 第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏(左)

 今回は、PlayStation 4(PS4)でリード・システムアーキテクトを務める、マーク・サーニー氏と、PS4の技術開発・ビジネス開発を統括する、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)SVP 兼 第一事業部 事業部長の伊藤雅康氏のインタビューをお届けする。

 PS4の発表において驚きの一つであったのは、ゲームクリエイターとして実績の大きいサーニー氏が、SCEの次世代コンソールのコンセプト開発をリードしている、という点だった。サーニー氏の考える「次世代のコンソール」の姿とはなんなのだろうか? そして、PS4のハードウエアやOSの残る秘密はどんなものになるのだろうか?

「良い部分」にフォーカスしてx86アーキテクチャへ移行

 サーニー氏(以下敬称略)が「次世代コンソールのこと」を考え始めたのは、2007年秋のことだという。SCEはPS3発売からすぐに次世代技術の基礎的な検討に入っていたはずだが、その時期と、サーニー氏の検討の時期は符合する。

サーニー:2007年のことです。PS3の次の世代のことをディスカッションしはじめていました。この頃、私が次の世代をどのようにすべきか、検討を開始したんです。その時に、「x86アーキテクチャを使うことはできないのだろうか」と発想したんです。その辺りを検討とリサーチに、感謝祭(筆者注:11月第四週)の休暇を全部使ったんですよ! アメリカ人にとって、この休暇はすごく大切なものなんですけどね。そうやって、休暇を我々の将来のために犠牲にしつつも(笑)、今後どのような可能性があるかをじっくり検討したんです。
 そしてその後、私はフィル・ハリスン(筆者注:元SCE・ワールドワイドスタジオ プレジデント、現在はSCEを離れ、マイクロソフト・Interactive Entertainment Business部門バイスプレジデント)の所に行きました。彼はゲームソフト開発部門のトップでしたからね。それから、当時SCEのCTOであった、茶谷公之を紹介されました。彼は次世代プロジェクトの統括を担当していました。なにより私が驚いたのは、彼らが私が次世代コンソールに関わるということに「イエス」と言ったことです。

 x86系アーキテクチャにするということは、PS3との互換性を失うということでもある。そして、サーニー氏のビジョンの根幹は、x86系アーキテクチャを使ってゲームコンソールを開発する、という点だ。大きなトレードオフだが、SCEはこのビジョンを受け入れた。

PS4のアーキテクチャ。PCでよく知られたテクノロジーを使うことで、開発難易度の低下とパワーの向上の両方を狙っている

サーニー:その点については悩みました。感謝祭の休暇での検討の中で、もっとも考えたのはその点です。x86と、現在のCPUの間でどうすべきなのか……。
 我々はCPU変更に伴う要件の中で、x86にすることで生まれるより「良い部分」にフォーカスすることに決めました。x86には、ゲームにより必要とされている良い命令セットがあります。マルチメディア命令、具体的にはSSE 4.1および4.2の存在、そしてもちろん、APUの存在は、十分に我々がSPUで行っていたものに近い結果を与えてくれます。
 x86への移行を決断する上での条件は非常に複雑です。もちろん、互換性実現に関する問題もありますし、ベンダー側の問題もあります。とはいえ、最も大きな条件は「開発者にとってどれだけ親和性が高いか」という点だったろうと考えます。過去3年の間に、x86向けにはとても洗練されたツールと技術が数多く登場しています。他のアーキテクチャを選んだとすれば、もっと難しいことになっていたでしょう。x86アーキテクチャはよく知られており、開発が容易でした。

伊藤:互換性については、特に日本で強く言われることが多いので、かなり考えました。
 しかし、PS3との互換性を保つためには、現状、現実的にはCELL Broadband Engineを搭載しないといけない、ということがわかっています。現状、ソフトウエアエミュレートができません。CELLだけなら、まだいいのです。周辺部品も含めて今後ずっとサポートしていかなくてはいけない、ということになります。CELLは我々の側の判断で自由に作れるのですが、周辺の部品はそうではないんです。今後、なかなか入手が難しくなってくるという側面があります。IT業界にとって、7年は長いので……。
 この際、流れを断ち切って、マークさんの言う通り、デベロッパーが作りやすい方に舵を切るべきだ、と決断しました。

 すなわちSCEとしても、「長期的にPS3を含めたハードウエアの供給とメンテナンス」を考えると、より汎用性の高いプラットフォームへの移行を検討していた、ということなのだろう。そこに、x86系アーキテクチャによる開発難易度低下などの新しい可能性も加わり、「独自路線からの脱却」が決断された……という判断につながった、と理解できる。

 なお、互換性の問題については、まだSCEから結論は示されていない。長期的ビジョンとしてクラウドの活用も視野に入れる、とされているが、正確には「互換性の維持も含めた、様々な形でのコンテンツの提供のあり方を検討する」(SCE広報)というのが正しい。

GPGPU活用を前提にGPUをカスタマイズ。ローンチタイトル数で「違い」が

 x86系アーキテクチャを採用するということは、外部からPCとの差異が見えにくくなる、ということでもある。いかに「PS4としての独自性」を打ち出すかが、重要な価値になる。その点を、サーニー氏はどう考えたのだろうか?

サーニー:我々の第一のターゲットは、パワフルなシステムでありながら、開発者にとって親和性が高いものにする、ということです。x86CPUは、いうまでもなく親和性の高いものです。パワーの面、そして今後の新しい可能性を切り開くという面では、さらにGPUを生かしたテクノロジーが重要になるでしょう。GPUはまず、グラフィックス・パフォーマンスを高めるために使われてきました。ですが今後、より様々な側面で、演算力を生かして見たこともないようなことを実現するために、GPUが使われることになるはずです。

PS4の発表会見で示された、GPGPU機能のデモ。100万のオブジェクトの相互物理衝突による動作を実演。こうした要素をゲームの中に自然に組み込めるようにすることが、PS4の一つの目標と見られる

 これはすなわち、CPU性能だけでなくGPU性能を活用した、いわゆる「GPGPU」を活用したゲーム機に仕上げる、ということである。実際、2月20日の会見では、GPGPUを使った物理演算デモも行なわれており、PS4は「高性能なGPGPUを基本機能として使えるプラットフォームである」ことを付加価値として利用することになる。そのために、PS4のCPUとGPUには、独自の工夫が凝らされているという。

サーニー:GPGPUは我々にとって、きわめて重要な機能です。我々は、GPUをより実践的な目的に使えるようにしたい、と考えています。そのため、非常に多くの項目で、現在すでにある技術に対してカスタマイズを行ないました。
 一例ですが……。一般的なPCアーキテクチャでは、CPUとGPUが情報をやりとりする場合、CPUが情報をインプットし、GPU側は一旦キャッシュを消去し、読み込まなくてはいけません。GPUが演算結果を返す場合にも、GPUのキャッシュを消去し、その後CPUに結果を渡さなくてはなりません。我々はキャッシュのバイパスを作りました。GPUの演算結果を、ここを通して渡せます。この仕組みを使うことで、メインメモリーからGPUのシェーダーコアに、直接データを受け渡せます。要は、GPUのL1・L2キャッシュをバイパスできるんです。もちろん、データの読み込みだけでなく書き込みもできます。このためのバンド幅はとても速く、10GB/秒になります。
 また我々はL2キャッシュにちょっとしたタグをつけました。我々は「VOLATILE」タグと呼んでいます。キャッシュの中で、この属性を持つものとそうでないものをマーキングしてコントロールできるようにしています。このタグを使った場合、メモリーに直接書き込まれます。結果、すべてのキャッシュをグラフィック処理に効率的に使えるようになります。
 これらの仕組みは、グラフィック処理と演算処理をハーモナイズさせ、共に効率的に動作させるための仕組みです。日本語で言う「調和」ですよ。これらの大きなキャッシュとバスのカスタマイズによって、PS3で成功した「SPURS(筆者注:SPU Runtime System)」を再現しようとしています。SPURSは、SPUなどのリソースを仮想化し、自律的にマネジメントする仕組みです。
 PS4においては、ハードウエアは、GPUでもx86-64と同じようなフィーリングで、様々なレベルでリソースを利用できます。このアイデアでは、8つのパイプがあり、それぞれに8つの演算キューがあります。それぞれのキューで、物理演算のミドルウエアや、自ら作ったワークフローなどを実行できます。それを、グラフィックス処理を同時に行なった状態で、です。
 こうした機能は、ローンチタイトルでは大々的には使われていません。しかし、コンソールの寿命全体の中で、より広く、多くのゲームで使われるようになり、年月が経つに従い、この種の機能はもっともっと重要なものになっていくはずです。

 サーニー氏の挙げた実例は、GPUの仕組みに詳しくない方には、少々わかりにくい話かと思うが、要は、彼のいう通り「グラフィック機能と演算処理の調和」のために用意されたもの、ということである。GPGPUの難点は、グラフィック処理とGPGPUによって実現される処理の両立にある。GPGPUの演算処理を優先すると、グラフィック処理にリスクが出る。同じ演算器を使う以上、どちらを優先にするか、という判断は必要になるのだが、現状は「GPUの余っている部分を適宜演算に回す」といった楽な使い方は難しい。処理の切り換えにリスクを伴うからだ。

 SCEは、GPGPUの活用のために、PS3時代に得られたノウハウを活用しようとしている。それが、サーニー氏のいう「SPURS」だ。SPURSは、「活用が難しい」と指摘されたSPUをより上手く使えるよう、開発者側が厳しいカスタマイズをしなくても、ある程度自律的に「余ったSPUをうまく演算処理に使う」ことができるようにする仕組みだった。これとまったく同じものではないだろうが、同様に「グラフィック処理と演算処理」をうまく調和させ、開発難易度を下げつつ、GPUの可能性を生かそう、という狙いがある。

 他方、GPGPUの活用という意味では、AMDが計画中の「HSA」(Heterogeneous System Architecture)との関係が気になる。PS4ではAMDのプロセッサーを使うため、HSAを使ってGPGPUでのソフト開発を容易にするのでは……とも言われているからだ。ただこの点については、結論から言えば、SCEはまずは独自の最適化手法を使い、HSAそのものには前向きではない、ということのようだ。

サーニー:次の数年で、我々はまた別のアプローチにも対応する予定です。
 我々は自らのシェーダー言語を持っていますが、今後、より深いハードウエアレベルへのアクセスに関する機能を提供していき、シェーダー言語から直接ハードウエアを制御できるようにしていきます。さらに中期的なターゲットとして、OpenGLやDirect XなどのPCで一般的な言語に加え、ハードウエアへの完全なアクセスを提供します。
 CPUについてはとても良く知っているものがつかえますし、GPUについては、時間をかければその分だけいままでにないことができます。
 CPUとGPUはかなり特質の違うものですから、今、現段階で、HSAのようなアーキテクチャに基づく統一的な言語を利用した場合、効率を高めて使うのは難しい。しかし、CPUとGPUで同じ言語を使えるようになれば、開発の効率は飛躍的に高まるでしょう。その点はきわめて大きな助けになります。ですからこうした部分については、長期的な目標ということになるかと思います。

 こうした開発難易度の低下とパフォーマンスの両立により、「ゲームが作りやすくなる」ことが、PS4の最大の特徴だ、とサーニー氏は強調する。

 サーニー氏自身、SCE・ジャパンスタジオと共同で、アクションゲーム「KNACK」を開発中だが、彼自身が、ゲーム開発難易度の低下と、その効果を強く感じている、と話す。

サーニー:たくさんのデベロッパーと話していますが、やっぱり「圧倒的に作りやすい」と、ほとんどのデベロッパーが言います。
 実際、自分でゲームを作っていても、それは本当のことだと思いますよ。「KNACK」を開発中ですが、PS4は、PS3に比べてとても、本当にとても、ゲームを開発するのが簡単なんですよ。

マーク・サーニー氏がジャパンスタジオと共同で開発中のPS4向けタイトル「KNACK」。大量のオブジェクトが同時に表示され、相互に干渉しあって動く様が目立つアクションゲームで、いかにも「PS4らしい」印象だ

 それは、PS3時代との一番の違いにもつながります。一番の違いは、ローンチから色んなタイトルが揃っていることだと思います。作りやすいので、今までのようなバリアーがないはずです。PS3は作りにくいイメージがありました。PS2も、そんなに簡単ではなかった。PS4にはPCのCPUやPCより強化されたGPUが入っているのでラインアップがものすごく豊かになるでしょう。
 なによりの違いは、技術にそんなに時間をかける必要がないので、ゲームプレイの部分に時間がもっとかけられるはずです。それが理想的ですよね? 結果、もっと豊かなゲーム体験を楽しめる世界になるはずです。

PS4発表会見では、「デベロッパーの向上を助ける縄ばしご」という表現が使われた。開発を容易にし、ゲームとしてのクオリティ向上を助けたい、という狙いを表した言葉だ

 一方で、「4K画像でのゲームプレイ」については消極的だ。4K動画の再生機能は検討されているが、ゲームプレイについては言及がない。

サーニー:うーん(笑) 個人的には非常に興味はあります。
 ゲームでの4K×2Kサポートについては、まだまだ初期の段階だと考えています。我々のフォーカスは、きちんとしたフルHD体験を提供することです。ゲームとOSのディスプレイバッファは別に確保できますし、それぞれのスケーリングも別々に提供できます。(4Kに対して)非常にスムーズなユーザーインターフェースを提供することはできます。
 純粋にメモリーのバンド幅のことだけを考えると、4Kでは、2画面分のディスプレイバッファを確保するために、単純に10GB/秒のバンド幅が必要になります。それも、単に表示するためだけに、です!
 これが、我々がフルHD体験にフォーカスする、シンプルな回答になるかと思います。

 すなわち「ゲームでの4K体験」を満足に提供するのはまだ時期尚早であり、リッチな1080pまでのクオリティを提供した方が現実的と判断している、ということなのだろう。

 すでに述べたように、動画については4K対応が検討されている。また、2Kの動画、すなわちBDビデオタイトルの再生もサポートされる。

伊藤:Blu-rayビデオ同様、DVDビデオは再生できます。CDについては読み込む機能がありません。これは、ゲームの互換性とはまた別の話です。

 PS4の光学ドライブは、Blu-ray/DVDと同様、CDの読み込み機能を持つ。ただし、PS4の機能として、音楽CDを再生する機能は持たない、という。「ゲームの互換性とまた別の話」とは、そういう意味を指すという。

【訂正】
SCEより、PS4のCD読み込み機能について訂正。記事初出時に、「光学ドライブとしてCD系を読み込む機能を持たず、DVD・Blu-rayのみをサポートしている」と記載していましたが、「ドライブとしてはBD/DVD/CDの読み込み性能を持つが、PS4の機能として音楽CD再生をサポートしない」に変更。それに伴い、表現を修正しています。

CPU内蔵の「第二のカスタムチップ」で省電力性と快適さを実現

 もう一つ、SCEがPS4の独自性として挙げるのが「第二のカスタムチップ」と呼ばれるものだ。PS4では、ゲームを快適にプレイするためにこのチップが大きな役割を果たしているとされているが、その中身はどのようなもので、どういった発想で生まれたものなのだろうか?

サーニー:第二のカスタムチップは、いわゆるサウスブリッジにあたります。しかし、組み込みのCPUを内蔵しています。常にここには電源が供給され、PS4の電源がオフである時にも、すべてのIOシステムを監視しています。組み込みCPUとサウスブリッジは、ダウンロードのプロセスと、ハードディスクへのアクセスをすべて司ります。もちろん、電源がオフの時もです。

伊藤:第二のカスタムチップの役割としては、環境問題への配慮もあります。バッググラウンドでダウンロードする際、いちいちメインCPUを立ち上げていると、非常に消費電力が大きくなるので、第二のカスタムチップだけで行ないます。特に欧州では、消費電力に関して厳しい規制がありますので、この方法で対応しよう、ということも一つの目的です。

サーニー:ネットワークの帯域対策の面もあります。バックグラウンドダウンロードにより、帯域が足りない時でもスムーズに大容量のダウンロードを実現する、という効果があります。
 しかし、なにより大きいのは、ゲームをプレイ可能にするまでの時間を大幅に短縮できる、ということです。同時に、初期のダウンロード容量を削減する試みも行なっています。最初の数GBだけをプレイ時にダウンロードし、プレイを続けているうちに、残りの部分をダウンロードします。もちろん、メイン電源がオフになっていても、残りのダウンロードは続きます。
 とにかくまずは、プレイ前のダウンロード時間を大幅に削減することです。

 すなわち、第二のカスタムチップは「独立したもうひとつのCPU」であり、PS4はここが常に動き続けることでゲームプレイの快適さを実現する。会見では、ゲームの事前ダウンロードだけでなく、サスペンド・レジュームの実現も、この機構で行なうとされている。ハードディスクへのアクセスを司っているため、そういう部分を担当すると考えられる。
 では、そうした仕組みはどこから発想したものなのだろうか?

サーニー:最初から発想していたものです。なぜなら、我々がゲーマーとしてゲームをプレイするとき、あまりにも「プレイ前にダウンロードを待たされる」時間が長すぎるからです。毎日ゲーム機のブートとダウンロードを待つのは辛すぎないですか(笑)。ゲーマーの自然な欲求として、新しいコンソールでは「すぐにゲームができる」ようにしたかったんですよ。
 こうした発想と第二のカスタムチップは不可分の存在です。初期からセットで考えてきました。そういった部分のディスカッションは、2009年くらいだったかな……、数年前に本格化しました。

 分割ダウンロードのための仕組みは簡素なもので、開発に手間はかからない、とサーニー氏は言う。そしてそれは、ダウンロード型のゲームだけでなく、Blu-rayディスクで提供されるタイトルにもプラスに働く。

サーニー:データを論理的にいくつかの塊に分けて、特別なスクリプトを記述してあげるだけです。しかも、スクリプトの書き方で色々とカスタマイズが可能です。例えば、シングルプレイを先にダウンロードしたり、マルチプレイを先にダウンロードしたりと……。 それに関連する話としてですが……。システムメモリーはPS3時代に比べ16倍大きくなりましたが、Blu-rayドライブの転送速度はほんの数倍しか速くなっていません。そのため、先ほどのアプローチと同じような、論理的なデータの塊とスクリプトを併用する手法を使い、Blu-rayドライブからゲームの主要部分だけをハードディスクへと転送し、ゲームを始めることができます。そうすれば、素早いハードディスクから快適で短いロード時間でプレイできます。もちろん、巨大なデータをBlu-rayから直接読み込みつつプレイすることもできます。

動画共有とVita連携のために映像エンコーダを内蔵

PS4のゲーム動画共有機能。常にバックグラウンドでゲームの動画が生成され、ボタン一つで共有できるようになっている

 PS4の特徴として大きくフィーチャーされているのが「SHARE」(共有)機能だ。コントローラーには専用ボタンが用意され、ゲームの動画共有が簡単にできるようになる。どういった目的でこの機能は作られたのだろうか? そして、そのためにはどのようなハードウエアが用意されているのだろうか?

サーニー:ゲームの動画共有などに使うため、PS4には専用のエンコーダが載っています。いくつかの専用エンコーダ機能と、専用デコーダ機能が使えます。ごく少数のAPUを使って動作します。MP3などで圧縮されたゲーム内のオーディオ再生や、オーディオチャットなどにも使います。
 システムがフルに起動している時には、x86CPUコアが、映像共有のシステムをコントロールします。しかしサウスブリッジには、ネットワークトラフィックのコントロールを助けるための機能が搭載されています。

 動画を共有するということは、「PS4でなにができるのか」「なにをすべきか」という将来的な検討の中で出てきたもの、とサーニー氏は言う。

サーニー:ハードウエアの初期デザインを検討しはじめた時から、将来的にどのようなことが重要になるだろうか、という点を考えていました。すべてのハードウエアコンポーネントは、ゲームをとりまくよりよいユーザー体験実現のために用意されたものです。
 我々のチームは、非常に幅広く「コンピュータエンタテインメント」というものの存在を考えました。ソニーの他のグループに属する人々も参加し、様々なアングルから検討を重ねたのです。我々は「ゲーム」の人間ですが、ユーザーインターフェースの専門家もいますし、リチャード・マークス博士(筆者注:EyetoyやPS Moveなど、SCEの画像認識を使ったナチュラル・ユーザーインターフェース系の産みの親)も関わっています。
 そういったバラエティ豊かなチームが数週間にわたり、どんなに素晴らしいユーザー体験を実現できるかを議論し合いました。

 では、それがゲームにどう影響するのだろうか?

伊藤:例えば、PS4を持っていなくても、今回はPlayStation Appを使い、ゲームの内容を見れます。PS4を持っていなくても「ああ、このゲームは面白そうだ」「このゲームはいいじゃないか」という体験ができます。それによって、PS4の良さが伝わると思っています。
 もちろん、ユーザーがFacebook上に映像などをシェアすれば、PlayStation Appがなくても、Facebookから見えます。

PlayStation Appによる「ゲーム体験共有」の例。ゲームの感想や映像、ゲームプレイの一部などが、専用アプリ「PlayStaion App」経由で自由に見られるようになるという

 他機器との連動という意味で、若干特別な位置付けにあるのがPlayStaion Vitaだ。前出の映像エンコーダを生かし、Vitaは「PS4のリモートプレイヤー」になる。

サーニー:Vitaでの連携は、特別なものです。
 スマートフォンやタブレットについては、PS4内のゲームに関する情報を、色々なところで見られるようにする、体験できるようにする、という狙いです。スマートフォンなどの他、PCにも提供されます。こちらはウェブプラットフォームとして、です。
 PS4にはビデオ圧縮ハードウエアがあり、Vitaのビデオ展開機能を組み合わせて使います。VitaでのコントロールをPS4に送り、これらを組み合わせて使うことで、Vitaでは、本質的には、ほとんどオーバーヘッドなく、なんの苦痛もなく、PS4のゲームをリモートプレイできるようになります。少なくとも我々は、そうなることを目指していますし、これまで(PS3時代)に比べ圧倒的に広範なリモートプレイのサポートを目指しています。もちろんこの機能は、DUALSHOCK(PS3・PS4のコントローラー)で操作することを前提としたゲームの話です。カメラを使うゲーム(筆者注:PS MoveやPS4コントローラーの位置認識機能を使うもの)はプレイできません。
 それはともかく、Vitaのリモートプレイは、自宅内でできる限り完璧にPS4のゲームプレイを実現することに注力して開発されたものです。直接Wi-FiネットワークにVitaを接続し、低いレイテンシーの中で使うことを前提にしています。誰かがテレビを使っている時でも、PS4のゲームをそのままプレイできるように考えてのことです。

「壁のない」ゲームプレイを狙い「実名制」を推進、OS層はBSDベースのリッチなものに

 PS4のゲーム映像を共有したり、Vitaでテレビに縛られずプレイしたりという要素には共通の狙いがある。それは「ゲームのプレイ環境を自由にする」ことだ、とサーニー氏は説明する。例えば、PS4の会見では、ゲームプレイ中に、ネットワークの向こうにいる友人に、プレイを「代わってもらう」機能の可能性が紹介された。PS4のコントロール情報を、ネットワークを介して別のPS4と入れ替える、という仕組みだが、そこからは、PS4における「人との関わり方」「ゲームのプレイのあり方」の変化が見えてくる。

サーニー:確かに、ネットワーク経由でコントロールを代わってもらう機能を検討しています。ただ、そうした機能のすべてが「Day1」(発売初日)から揃っているフィーチャーというわけではありません。すべて、プラットフォームとしてサポート可能な機能として準備を進めている、と理解してください。
 どちらにしろ、ソーシャルな関係を介してゲームプレイを活性化する機能は、とても大きな武器になるはずです。
 イメージですが……。リビングルームにいても、ゲームをするときの友人との間を隔てる壁のようなものがなにもない、と考えてください。何百人もの友人と、近くにいてゲームをするような間隔で、ネットワーク越しにゲームを遊ぶような感覚です。我々はその仲立ちをしたいのです。実際の世界の友人と、実際に会って楽しむように、です。数年の間に、この目的のために必要なすべての機能をサポートします。

PS4の会見での解説より。「あなたとゲームの間を隔てるものはない」とサーニー氏は説明。ネットワーク機能や即時動作などの機能により、ゲームの可能性を広げることを狙っている

 そのため、PS4のOS層は、PS3時代に比べても、Vitaに比べてもかなりリッチなものになる。ネットワーク越しに、様々な要素が同時に動く必要があるからだ。

サーニー:OSはBSDベースです。このアーキテクチャをゲーム機に使うのは初めてのはずです。
 OSサイドから見ると、PS4では、非常に様々な機能を同時に利用することができるようになります。我々の目標としては、プレイしたゲームのビデオ送信から、すぐそのままゲームにスイッチしてプレイし、友人のゲームプレイビデオの視聴へとさらに切り換え、そのビデオについて友人と話す。なにかいいものを見つけたらストアに移動し、ストアで買い、友人に「これでいいの?」と尋ねて……。といった感じで、自由に行ったり来たりしながら使えるようにすることです。マルチプレイヤーゲームでも、ゲームを「中止」することなく、バッググラウンドで動かしたまま、こういった行為ができます。
 OSとの連携により、きわめてリッチなことができるようになります。

 他方で、PS4でのネットワーク・コミュニケーションは「実名制」が基本になる。同様に、実名制SNSであるFacebookとの連携も行なわれる。

PS4でのネットワークプレイの例。実名でどのようなゲームをプレイしているかが公開され、より濃密なコミュニケーションを目指す

 この点については疑問を感じる人もいるはずだ。ゲームはこれまで「匿名」でプレイされることが多かった。筆者も、ゲームプレイヤーは必ずしも実名を好まない、と感じる部分がある。だがサーニー氏は、これからのゲームプレイは「実名」が多くなると信じており、その部分での変化が、PS4にとってのチャレンジにもなるだろう。

サーニー:ネットゲームなら匿名、という発想は「現在のパラダイム」でのことです。例えば、現在のマルチプレイヤーゲームで「デスマッチ」を争うのであれば、匿名である方がいいでしょう。しかし「協力」の要素やソーシャルな関係を生かしたコミュニケーションをゲームに持ち込むのであれば、匿名でない方がいい。
 例えば、ゲームで手に入れたアイテムを友人にプレゼントするとしましょう。その時の感情は、プレイする時のものとはずいぶん異なるはずです。
 もちろん、我々は今の匿名によるゲームプレイをリスペクトしています。そうしたプレイもサポートします。匿名で激しいデスマッチを繰り広げることは、PS4でもできます。しかし同時に、実際の世界の友人とゲームを楽しむ要素もサポートしたいのです。例えば、長らく会っていなかった大学時代の友人にゲームで再会するなんて、ステキだと思いませんか?

西田 宗千佳

1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)などがある。  個人メディアサービス「MAGon」では「西田宗千佳のRandom Analysis」を毎月第2・4週水曜日に配信中。 Twitterは@mnishi41