西田宗千佳のRandomTracking

「Xbox One独自」にこだわり。Xbox 360との互換実現

「HoloLens」でゲームプレイ。E3マイクロソフト詳報

 今年もE3へ取材に来ている。ゲームメーカーのプレスカンファレンスは、現地時間の日曜日から始まっているのだが、筆者が取材対象としているゲームプラットフォーマーのプレスカンファレンスは、現地時間・6月15日朝の、マイクロソフトのものからスタートする。

 昨年同様マイクロソフトは、Xbox Oneの「ゲーム」だけに集中する戦略だった。映像系やテレビ系については一切言及せず、Xbox Oneユーザーが求めている部分を着実に改善するやり方だ。

E3の会場となるロサンゼルス・コンベンションセンター。プレスカンファレンスは、この会場周囲で分散して行なわれる
マイクロソフトのプレスカンファレンス会場となった、Galen Center

「Xbox One独自」に拘り、Xbox 360との互換実現

 今回マイクロソフトは、プレスカンファレンスにて、Xbox Oneエクスクルーシブなタイトルのプレゼンテーションに特化した。エクスクルーシブでないタイトルはごく少なく抑え、「Xbox Oneだけでできる体験」のアピールに注力したわけだ。その中核となるのは、マイクロソフトが開発に出資する、いわゆる「ファーストパーティー・タイトル」の数々だ。具体的なゲームタイトルの詳細については、僚誌GAME Watchをご参照いただきたいが、特に今年はファーストパーティー製タイトルが厚かった印象を受けた。

Xbox One独占タイトルの一つ「Halo 5」。Xboxシリーズを支える人気作で、アメリカでの発売は10月27日
Haloと同様にXboxを支える看板タイトル「FORZA MOTORSPORTS」の最新作「6」が9月15日に登場。Ford GTの実写が会場上から登場するど派手なアピール

 一方、システム的な改善として、会場で大きな歓声を浴びていたのが、XboxOneでのXbox 360タイトルの動作(いわゆるバックワードコンパチビリティの確保)である。

 米・マイクソフトのXbox事業責任者である、Chief of Xboxのフィル・スペンサー氏は、プレスカンファレンスで次のように述べた。

Xbox事業の責任者であるフィル・スペンサー氏。「独自の体験があること」「Xbox 360ファンにとって買い時であること」を強くアピールした

「我々は、Xboxファンの声に真摯に耳を傾けてきた。昨年以降、XboxOneには、毎月重要な機能を追加してきている。今回我々は、Xbox 360タイトルをXbox Oneで動作させることにした。とても難しいことだったが、エンジニアの努力により実現した。ダウンロードタイトルはもちろん、店頭販売されたディスクタイトルもプレイ可能だ。Xbox Oneの機能はすべて使える。GameDVR(録画機能)ももちろん使える。デベロッパーはなにもする必要はない。互換プレイを承認するだけでいい」

Xbox OneでのXbox 360タイトルの「互換」を発表。システムソフトウエアのアップデートにより、秋に提供を開始。ディスクタイトルも動作する
Xbox 360互換機能動作中の画面。ゲーム録画やアプリの動作など、Xbox One独自の機能が同時に使える

 ウェブで公開された情報と組み合わせて考えると、こういうことのようだ。Xbox Oneの互換は、オンラインからダウンロードしたタイトルを動作させる形で実現している。ディスクタイトルは、ディスクを入れた時に認証され、互換タイトルをダウンロードし、そののちプレイする。互換が認証されたタイトルは、今秋のスタート段階では100程度。その後、毎月100ずつ追加される。過去、プレイステーションや任天堂のゲーム機であったような、「ディスクを入れるとそのまま過去のゲーム機として動作する」というタイプの互換ではない。互換プレイ機能は正式には秋に公開されるが、プレビュー登録をしているユーザーには、本日から提供されるという(ただし、これらはすべて米国版の話であり、日本版がどうなるのか、現地ではまだ情報が得られていない)。

 Xbox OneのSoCのCPU部は、Xbox 360のCPUとはアーキテクチャが異なるのものの、演算力はエミュレーションをするのに十分なほどある。GPUは構造が大きく異なるものの、マイクロソフトは一貫してDirectXを使っているので、世代間での違いを分析し、吸収するのも、他社製品に比べれば楽になっている。その辺、慎重に互換性チェックを進めつつも、なんとか過去のタイトルを動かすことに成功したのだろう、と予想できる。

 これは、ユーザーが持っている過去のゲーム資産をプレイするのに有効である、という事以上の意味を持つ。例えばUbi Softは、今秋販売の新作「Rainbow Six:SIEGE」のプロモーションとして、過去のシリーズ作である「Rainbow Six Vegas」シリーズを無償で購入者に提供する、と発表した。この作品はXbox 360用であり、Xbox One向けの新作を購入する人々にとっては、古いゲーム機を持ち出さなくても同じゲームが遊べる、ということを示している。

 ダウンロード提供が定着した今は、こうしたプロモーションも積極的に行なわれるものだ。Xbox Oneの購入に対するハードルを下げる意味でも、なかなか巧みなやり方だ。

カスタマイズ可能な「Elite Controller」登場

 もうひとつ、Xbox Oneについての不満点を解決するものとして発表されたのが、新しい「Elite Controller」と呼ばれる周辺機器だ。

 既存のXbox 360ユーザーには、Xbox Oneのコントローラーに不満を持つ人も多かったようだ。そこで、使い勝手を上げるだけでなく、パッドの操作感を変えられる機構を搭載、プレイヤーの思い通りになる「より高級なコントローラー」として、Elite Controllerを用意したようだ。価格や正式な発売時期は公開されなかったが、年末のホリデーシーズンまでには出荷されるようだ。

Xbox Oneの「Elite Conttoller」。操作感の向上に加え、スティックのパッドを交換するなど、「自分に合わせたカスタマイズ」ができるのが特徴

ゲームの中に入る新鮮な体験! HoloLensでのゲームプレイが公開に

 新しい要素として注目されたのは「VR」と「AR」だ。今年のE3は「VRが主役」と言われているが、マイクロソフトもその要素を見逃すことはなかった。

 先週6月11日、Oculus VRはプレスカンファレンスを開き、2016年上半期に発売される「コンシューマ版Oculus Rift」を公開したが、その際、マイクロソフトとの提携も発表している。提携内容は、Oclulus RiftにXbox Oneのコントローラーがバンドルされることと、Windows 10での操作について、マイクロソフトとの間で開発協力が行なわれること、そして、Xbox Oneのゲームを、Windows 10が備える「ストリーミング・ゲーム」の機能を使って受け取り、Windows 10が動作するPCに接続されたOculus Riftの中で動作させる、ということだ。特に最後のものは少々わかりづらい。Xbox OneとOculus Riftが直接つながるのではなく、Xbox Oneのゲームを、Windows 10を介してプレイできる、ということになっている。

Oculusとの連携を改めて説明。しかし新しい情報はなかった

 プレスカンファレンスに登場した、クドー・ツノダ氏は、Oculusとの提携について改めて発表したのち、「VRについてはValveとも提携した」と発表した。ValveはHTCと共同で、独自のHMD「Vive」を開発中だ。マイクロソフトはこれについても関わることになるようだが、どのように生かすかはコメントがなかった。

Microsoft Studio所属で、HoloLensの開発にも大きく関わっているクドー・ツノダ氏。以前はKinect開発の責任者として露出することが多かったが、今回はVRとARの技術開発について説明した

 だが、マイクロソフトがアピールしたかったのは、OculusやValveとの提携ではない。より先にある存在であり、自社開発している「Hololens」のゲームへの応用についてであった。

マイクロソフトが開発中の「HoloLens」。Windows 10で動作するスタンドアローンのコンピュータであり、AR技術を前面に押し立てている

 「HoloLensは、クリエーションとエンターテインメントにおいて、まったく新しい体験をもたらす」とツノダ氏は語った。その一例としてデモされたのが、Hololensを使ったMinecraftのプレイ体験だ。

Minecraftは、大人気の「クリエーション系」ゲーム。昨年9月に開発元のmojangがマイクロソフトに買収され、今や同社を代表するゲームになった。

 Minecraftは、掘ったり採取したりして集めたブロックを組み合わせて世界を作っていくゲームだが、通常はいわゆる一人称視点でプレイする。HoloLensのデモでは、「AR」として机の上に世界を積み上げ、さらにはそこをのぞき込んだり、ブロックをつまんだりしながらプレイができた。没入感に加え、現実の中にゲームの映像を埋め込むことで、いままでにないビジュアル表現が可能になっている。

中央の人物が小脇に抱えているのがHoloLens。VRディスプレイとPCの機能を併せ持っている。今回も実機映像ではなく、外部のカメラを使った映像でデモが行なわれた
画面に表示されているのは、HoloLensの表示を再現したもの。タブレットでプレイ中のMinecraftが、窓のように空間に映像として浮かんでいる

 HoloLensについてわかっていることは少ない。今回の基調講演でも、ハードウエア構成やXbox Oneとの関係、発売時期などはまったくコメントがなかった。だが、HoloLensはいわゆるHMDではなく、スタンドアローンで動作する「ディスプレイ内蔵のコンピュータ」であり、Windows 10で動作することが分かっている。マイクロソフトとしては、同社の考えるエンターテインメントとして、HoloLensのような、他社がまだ手がけていない世界を着実に開発中である……ということをアピールしたかったのだろう。

Minecraftで制作中のワールドを、机の上に再現。好きな方向から見たり、のぞき込んだりもできる
HoloLensには位置センサーや手を認識する機能も備わっているため、ブロックを手でつまんで操作することもできる。まさにゲームの中に「手を突っ込む」ような感じだ

 HoloLensやVRへの取り組みについては、E3期間中に、プレスカンファレンスにも登場したクドー・ツノダ氏へのインタビューを予定している。詳しくは後日の記事をお待ちいただきたい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41