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iPad Pro、新Apple TV、iPhone 6s/6s Plusを早速体験

3D Touchで進化したiPhone。TVは中身もビジネスも一新

 9月9日(現地時間)、アップルは米・サンフランシスコにて発表会を開き、今年末に向けた新製品群を発表した。ここでは発表会の詳報に先駆けて、発表会後に開かれたハンズオンの模様をお伝える。結果的には、手のひらサイズからテレビサイズまで、3つの領域がテーマの発表となった。

“最大”iPad Proの実力は? KeyboardやApple Pencilに注目

 新製品としてまず注目は、やはり「iPad Pro」だ。12.9型/2,732×2,048ドットのディスプレイは、今までのiPad(9.7インチモデル)に比べ大きく、特に背面から見た時のインパクトは大きい。

iPad Pro

 とはいえ、実際持ってみると、サイズに比べて軽く感じる。実際の重量は713g(Wi-Fiモデル)で決して軽いわけではないのだが、薄いため、バランス的にそこまで重く感じないのだろう。

iPad Pro。カラーはシルバー・スペースグレイ・ゴールドの3種類。
背面のアップルロゴのサイズと比較した場合、全体の大きさがわかる
今回新製品として投入された「iPad mini4」。外観はこれまでのモデルとほとんど同じ
左から、iPad mini4、iPad Air2、iPad Pro

 これが、別売の「Smart Keyboard」をつけると、なにやら非常に見慣れたサイズに感じられる。要は、モバイルPC、マイクロソフトのSurfaceなどで多く採用されている大きさだからなのだが。

別売の「Smart Keyboard」をセットで使うと、とたんにモバイルPCのように見えてくる
Smart Keyboardをつけて横から。カバーがキーと本体をしっかり保持するため、膝の上でもタイプできる

 Smart KeyboardこれまでのiPadのカバーと同じように折り畳み構造だが、キーの分大きくなった、という感じになっている。直接的な比較として、SurfaceのTypeカバーキーボードに対する利点は2つある。一つは、折りたたみ構造で本体とキーボードをしっかり支えるため、膝の上でもクラムシェル型のPCと同じようにタイプできることで、二つ目はタイプ感が良好であることだ。

 キーはファブリック素材でできているが、その弾力でキーのスイッチのような感触を実現している。「チャカチャカ」というタイプ感ではないが、一つ一つのキーを押した感じはしっかりある。タイプストロークの浅さは最新のMacBookぽくもある。決しておまけという感じではなく、しっかりと「使える」キーボードだ。

素材感としては、従来のiPad用スマートカバーにかなり近い
キーとiPadは独自のコネクタで接続されるため、Bluetoothなどは使わないし、ペアリングの手間もない
キートップ。配列は一般的なiPad用キーボードに近い。キーは正方形に近く、角丸が大きめ。タイプ感は見た目に反し、なかなか本格的だ。

 もう一つの機能的特徴は、別売の「Apple Pencil」を併用すると、本格的な手描きが実現できることだ。スティーブ・ジョブズは「人間にはすばらいしい指がある」と、スタイラスに否定的な姿勢をみせてきたが、iPadのアクセサリーとして大量にスタイラスが売られていることからも、「紙のように描きたい」というニーズの大きさは明確だった。そこでアップルは、「圧倒的な精度を持ったペン」を導入することで、その矛盾を解決している。

Apple Pencil(別売、99ドル)とのセットで、本格的なドローイング・タブレットになる
Apple Pencilにはロゴの刻印も

 使ってみて感じたのは、その自然さだ。反応速度がきわめて速く、スタイラスにありがちな遅延が感じられなかった。ペン先もかなり細かく認識しているので、殴り書きで細い字を書いても問題は感じなかった。同じ文字を紙とタブレットに書く場合では、どうしても紙と同じように細かく書くのは難しい。iPad ProとApple Pencilの組み合わせは紙と同じである……と思えるほどに使う時間はなかったため、使い勝手に関する結論を下すのは、製品が近くなってから、にしたいとは思うものの、高価なWindowsタブレットにも劣らない、という第一印象は得た。

 また、ペンの筆圧や傾き検知もしっかり行なわれているし、手のひらをつけた時の誤動作を防ぐ「パームリジェクション」も当然のように働く。アプリによって使い勝手は異なりそうだが、正直、出来には期待できそうだ。

Apple Pencilにはロゴの刻印も
鉛筆で色を塗るように、Apple Pencilを傾けて使うこともできる。傾きと筆圧の検知がしっかりしているからできることだ

 ペンは電力を使う電磁誘導式だが、バッテリーの充電はApple Pencilのお尻にあるLightningコネクタで行う。iPad Proに差し込むことはペアリングも兼ねており、アップル側の説明によれば「15秒の充電で30分使えるという。

Apple Pencilのお尻にあるLightningコネクタを、iPad Proに接続して充電。15秒の充電で30分使えるという

 残念ながら、iPad Proの性能などを詳しく試すことはできなかったが、ディスプレイの発色はかなり良好である印象だった。「iPadとしての性能」面では、おそらくほとんど心配する必要はないだろう。

3D Touchで本質的に操作性を改善「iPhone 6s/6s Plus」

 そして、機器の販売数量の面でも、アップルの収益の面でも、一般の人々の注目という意味でも最も大きいのは、やはりiPhoneだろう。今回は、昨年のiPhone 6シリーズを受けて「iPhone 6s」シリーズになった。4.7インチの「iPhone 6s」と、5.5インチの「iPhone 6s Plus」の2ラインナップ構成で、カラーがシルバー、ゴールド、スペースグレイに加え、ローズゴールドが追加された。

iPhone 6sと6s Plus。新色のローズゴールドが追加された。
ローズゴールド版の背面。アンテナを仕切る樹脂部は白

 新色の追加を除けば、前のモデルとの変化は、見た目上ほとんどない。0.2mm厚くなっているので、ピッチリサイズを合わせたケースなどの場合、前モデルのものが使えなくなる可能性もあるが、横に並べても見た目ではほとんど違いがわからない。

シルバーのiPhone 6sシリーズ。ここだけ見るとほぼ前との違いはわからない。
背面。カメラが若干でっぱるところも、残念ながら前モデルから変化がなかった
サイドもチェック。端子やボタンの位置も変わっていない

 カメラ機能やプロセッサーの進化はハンズオンでは確かめづらいので、そこに着目するとiPhone 6との差はますますわかりづらい。だが、本質的な変化として投入されたのが「3D Touch」である。こちらはしっかりと試すことができた。

 3D Touchはいわゆる「押し込み」を再現するインターフェースだが、基本的な使い方は2方向に分けられる。

 一つ目は、「付加機能を呼び出す」ための使い方。アプリアイコンをぐっと押し込むと、指に振動が伝わって「押した感じ」がして、そのアプリで使う機能へのショートカットが現れる。これはいわば、マウスの「右クリック」に当たる。最近電話をかけた人にもう一度かけたり、地図の地点情報からナビを呼び出したりする際に使う。

 これをアップルは「クイックアクション」と呼んでいる。

3D Touchの例。アプリアイコンを「ぐっと押し込む」と、そのアプリでよく使われる機能がでてくる
マップアプリでの例。地点情報を「ぐっと押し込む」と、そこへの道順や電話番号を呼び出す機能がでてくる

 そしてもう一つの方向性が「チラ見」だ。メールアプリを例に説明しよう。未読メールの上で「ぐっと押し込む」と、そのメールのプレビューが表示される。そして、指を離すとプレビューは消える。さらに再度「ぐっと押す」と、そのメールは全画面表示になる。ウェブのURLがあった時も、「ぐっと押し込む」とウェブサイトのプレビューが出て、指を離すとプレビューは消える。さらに「ぐっと押し込む」と、ウェブが全画面表示される。Instagramアプリでは、「ぐっと押し込む」と投稿者の投稿内容を一覧したり、特定の写真の中身をチェックしたりできる。

 これのどこが便利なのかは、やってみればわかるのだが、言葉で説明するのが難しい。

 スマートフォンでは、アプリ内で画面を「行ったり来たり」することが多い。「戻るボタンが欲しい」と言われるのはそのためだ。アップルは今回、3D Touchで「内容をちょっと確認する」だけで画面が完全に遷移するのを避けるUIを実現しようとしている。メールの中身やInstagramアプリで「ちょっと見」できるようになると、確かに便利ではある。

 これをアップルは「Peek」と呼んでいる。Peek時には背景がぼやけるので、レイヤー構造も把握しやすい。なお、二度ぐっと押し込んで全画面に開く動作を「Poke」と呼ぶ。画面遷移が多いUIがいいか、「ぐっと押す」という動作をおぼえる代わりに、よりシンプルに使えるようにするのか、という二択を、アップルは提示しているように思える。押し込みの強さ設定もかなり調整されているらしく、力を必要以上にいれたり、「長押し」になるほどずっと押し続けたりする必要はない。

6s用に開発中のInstagramアプリより。写真や投稿一覧を「チラっと見る」=Peekするためにぐっと押し込み、確認できたら指を離して消す、というイメージで使う

 iOS 9とOS X El Capitanより、普段は写真だが、必要な時はそれを短いムービーとしてみせる「Live Photos」が導入され、iPhone 6sでもフィーチャーされる。「写真」アプリから見るだけでなく、ロック画面のいわゆる「壁紙」にも、Live Photosは使える。Live Photosの再生には3D Touchの「押し込み」を使うようになっている。アップルの説明員の話では、「Live Photosで通常の最高画質写真の1.7倍程度のデータを使うはず」とのことだが、詳細はまだわからない。

 iPhone 6sシリーズでは4K動画の撮影が可能になった。また、スローモーションの場合最高240fpsでの撮影が可能だという。

Live Photosの再生は3D Touchの「押し込み」で。ロック画面でも有効だ。

Apple TVが中身もビジネスも一新。SiriでNetflixやHulu検索

 久々のリニューアルとなったのが、テレビ用STBである「Apple TV」だ。外観的には「少し厚くなった」程度だが、中身もビジネスモデルも大きく変化している。

新Apple TV。サイズが若干厚くなったが、基本的なイメージは同じ。映像出力は1080pまで

 今回の最大の変化は、「tvOS」の登場によって、Apple TV がアプリプラットフォームになったことである。その是非は別途記事で解説するが、操作感的な大きな変化は、音声認識の活用だろう。

 Apple TVのような機器では文字入力が難しいので、リモコンに「Siriボタン」があり、同社の音声認識UIである「Siri」に声で命令を与える。例えば「子供向けの番組」とか「アクション映画が見たい」といえば、大量のVODから適切なものをピックアップしてくれる。しかもアメリカの場合には、HBO、Netflix、Hulu、iTunesが対象で、番組を「串刺し検索」して、どこで見れるかを見つけてくれる。

新Apple TVのユーザーインターフェース。リモコンのSiriボタンから音声検索を多用する

 アップル関係者の説明によれば、これは各VODがアプリで対応しており、しかも、番組情報へのアクセスをSDKに基づく形で出しているため実現できている、とのことだ。アプリプラットフォームになると「まずゲーム」という印象もあるだろうが、それだけでなく、VODの追加対応が容易になることも重要である。日本でも、iPhoneやiPad向けにVODを展開している企業であれば、tvOSへの対応は「まったく難しくない」(アップル関係者)という。

子供向けのムービーを音声検索する様をムービーで。かなりスピードも速い

 また、「今聞き取れなかった」といえば、20秒映像を巻き戻した上でクローズドキャプションをオンにし、「セリフがなんだったか」を表示してくれたりもする。しかも、クローズドキャプションはしばらくすると「自動でオフに戻る」親切ぶりだ。この辺は、VODが軸であるアメリカ型機器の典型であるApple TV と、放送と録画がベースである日本のテレビの差が見える。

 アプリベースになるために、リモコンはBluetoothベースで音声ボタンやタッチパッド、振動センサーのあるものに変わった。充電は、リモコン底部にあるLightning端子が担当する。HDMI CEC連携で音量や電源のコントロールが行なえる。

 なお、Apple TVのSiriは「テレビとスポーツに特化している」(アップル関係者)とのことで、音楽やネット情報の検索、ジョークなどには対応していない、という。

Apple TVのリモコン。上部がガラスタッチパッドになっていて、デジタルカーソルはなくなった
充電用のLightningコネクターが見える。一回フル充電にすると3カ月持つ、という
トラディショナルなBluetoothコントローラーも使える。ただし、「Made for iPhone機器で、tvOS用動作検証をしたもの」(アップル説明員)が対象だという
リモコンは横に持って、ゲームコントローラーとしても使える。操作はタッチパッドのほか、モーションコントロールとボタンを使う。モーションコントロール時の安全のため、ストラップもつけられる。任天堂のWiiの影響が色濃い

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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