西田宗千佳のRandomTracking

復活の4インチ「iPhone SE」、見た目以上の変化「iPad Pro」。アップル新製品に触れた

 3月21日(米国時間)、アップルはカリフォルニア州サンノゼにある同社本社内で発表会を開き、iPhone SEや9.7型のiPad Proなどの新製品群を発表した。発表の内容は後ほど詳報するが、まずは発表会後開かれたハンズオンにて触れられた、新製品のファーストインプレッションをお伝えしたい。なお、詳しくスペックや価格については別記事をご参照願いたい(9.7型iPad ProiPhone SE)

発表会の開かれたアップル本社

良くも悪くも「そのまま」、復活の4インチiPhone

 iPhoneの人気が特に高い日本から見ると、まず気になるのは、4インチの最新モデルとなる「iPhone SE」だろう。プロセッサがA9になり、パフォーマンス的にはiPhone 5sの倍以上になった。

iPhone SE。デザインテイストはiPhone 5sのまま、カラーバリエーションがローズゴールドを加えて4色になった

 とはいうものの、実際に触ってみるといい意味でも悪い意味でも「iPhone 5sと変わらない」ように見える。長時間好きにアプリを入れて触れたわけではないので、パフォーマンスや写真のクオリティを云々できる状態にはない。だから、外装のカラーが変わった以外はそのままに感じるのだ。新鮮味という意味ではマイナスだが、使い慣れた4インチiPhoneのサイズにiPhone 6sの性能が入った、と思えば、これはこれでいい。

iPhone SEローズゴールドモデル。アルミ以外のところはホワイト仕上げ。サイズ感もiPhone 5sと変わらず、馴染んだ大きさである
iPhone 5sローズゴールドの背面
側面
厚みは7.6mm
背面には「SE」のロゴが

 カメラモジュールは、iPhone 6以降と異なり、本体から出っ張っていない。ここもデザイン的には好ましい。カメラもスペック的にはiPhone 6sと同等だが、こちらは「まったく同じモジュールである」とまでは断言されていないので、写りに若干の差がある可能性もある。そこは、今後試してみる必要があるだろう。

 個人的はiPhone 6以降のサイズに否定的ではないため、「4インチ待望論」と「スマートフォン大型化トレンド」のどちらがより多くの支持を得るのか、興味深いところでもある。

iPad Air2からもiPad Proからも進化した「9.7インチ版iPad Pro」

 ハードウェア的に、意外なほど変化を遂げたのは「9.7インチ版iPad Pro」だ。

9.7インチ版iPad Pro
9.7インチ版iPad Pro。一見12.9インチ版iPad Proにも見えるが、サイズはそのまま縮小。カラーバリエーションは4つになり、こちらにもローズゴールドが追加になっている

 ディスプレイサイズ・本体サイズともに現行のiPad Air2と大きな差がないが、底面には、昨年発売された12.9インチ版iPad Proと同じようにSmart Connectorを備え、専用周辺機器であるSmart Keyboardを装着できる。専用ペンの「Apple Pencil」が使えることも同じだ。すなわち、「Smart Keyboardでの入力性向上」と「ペンによるクリエイティビティ」を備えるのがiPad Proシリーズであり、サイズが2バリエーションになった、と考えれば良い。

 Smart Connectorは12.9インチ版でも9.7インチ版でも変わりなく、キーボードのサイズが変更されている。現地で試してみることはできなかったが、「機構は変わっていないので、9.7インチ版に12.9インチ版のキーボードをつけることも、おそらく可能」(アップル説明員)という。

9.7インチ版iPad ProのSmart Keyboard。キートップサイズは12.9インチ版と変わらないが、全体サイズは10インチクラスに合わせてある。

 サイズ以外には違いがないように思えるが、9.7インチ版は12.9インチ版からのアップデートが、特にディスプレイ周りで行なわれている。12.9インチ版のスペックは公開されていないが、9.7インチ版は500nitに明るくなり、400nitだったiPad Air2よりも明るさ・発色・色域の点で改善されている。見る限り、12.9インチ版よりも、色域については9.7インチ版の方が良いと思える。

 12.9インチ版にもないのが「Tune Toneディスプレイ」という機能。これは、周囲の明るさ・色温度をセンサーで読み取り、画面の色を調整する機能。どの状態でも、特に白の多い書類などが読みやすくなる。一方、色が変わると写真加工などでは困るので、OSの設定でオフにすることもできる。

9.7インチ版iPad Proの設定には「Tune Toneディスプレイ」に関する項目が追加に

 大幅な性能アップとなったのがカメラモジュール。12.9インチ版とiPad Air2のセンサーが800万画素だったのに対し、9.7インチ版では1,200万画素。アップルが「Focus Pixels」と呼ぶ像面位相差オートフォーカスも組み込まれた。レンズカバーもサファイヤクリスタルガラスだ。これはiPhone 6s系と同じであり、カメラモジュールがiPhone 6s系のものに変わったのだろう、と予測できる。

 その代償として、iPad系のカメラとしては初めて、レンズカバーの周囲に「出っ張り」ができた。これはデザイン上の退化だと感じる。机の上に置いてペンで絵や文字を描くiPadとしては、この出っ張りにより「ガタつき」が出ると厳しい。実際、iPhone 6系の製品を机の上に置くとガタついてしまう。しかし幸い、9.7インチiPad Proは面積が広いため、この程度の出っ張りでは顕著なガタつきは起きなかった。その点は安心していい。

カメラモジュールは大幅に進化したが、iPhone 6シリーズ同様、周囲に出っ張りが生まれてしまった。実使用上大きな問題はないが、デザイン的には美しくない

 デザイン上の大きな変化は、Wi-Fi版にはなく、セルラー版の方にある。従来、セルラー版iPadはアンテナ部が大きなプラスチックで覆われているのが特徴だったが、9.7インチ版iPad Proでは細い線のようになった。iPhoneの背面にあるアンテナ分割部に近い処理だ。おそらくアップルは今後、セルラー版でのデザイン処理をこうした形に変えていくのだろう。

9.7インチ版iPad Proセルラーモデルのアンテナ部。デザイン的処理がこれまでのiPadとは大きく変わっている

Apple Watchは季節ごとにバンド・デザインを追加

 最後に少しだけ、Apple Watchの話をしておきたい。

 Apple Watchは本体のリニューアルはなく、最低価格を299ドル(日本では36,800円)に改定し、新しいバンドのデザインバリエーションを増やされた。新しいバンドは日本製で、縫製用の機器をアップルが共同開発して製造しているという。ウレタン系のバンドよりは、これからの季節にはふさわしく思える。

新しいApple Watchのバンド。日本製で実物の質感は良好
人気のミラネーゼループにブラックモデルが登場

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41