鳥居一豊の「良作×良品」

PCオーディオにも対応する単コン。デノン「1500REシリーズ」

ロック/ポップス楽曲で楽しむハイレゾ楽曲の魅力

 PCオーディオやハイレゾ配信が話題を集めるようになり、それにともなって、Hi-Fiオーディオと呼ばれる単品コンポーネントもいつになく盛り上がっているように感じる。僕自身も再生機器はPCやネットワークプレーヤー、ディスク再生はユニバーサル仕様のBDプレーヤーとなり、アンプはマルチチャンネル内蔵のAVアンプを使うようになってかなり経つので、ステレオ再生に特化したSACD/CDプレーヤーやプリメインアンプへの関心が低くなっていた。

デノン「DCD-1500RE」と「PMA-1500RE」

 オーディオとAVを同じ環境で再生できるAVアンプを中心としたシステムは、両方を楽しむには都合が良いが、手持ちのCDやハイレゾ楽曲をメインに聴くならば、再生機器はステレオシステムでいい。特にハイレゾ楽曲はクラシックやジャズだけでなく、ロックやポップスのラインアップもかなり充実してきた。しかもその多くはアナログ録音された過去の大ヒット曲や名作の数々であり、中高年世代が再びオーディオ趣味に戻ってくるのにも良いタイミングだ。

 そんな質の高い音楽をあまり気張らずに楽しみたいという場合、重要になってくるのは、憧れの高級機よりも、手の届く価格帯にあるモデルの充実度だ。PCオーディオの盛り上がりのおかげもあり、ここ数年になってSACD/CDプレーヤーやプリメインアンプといった製品にも力の入ったモデルが目立って増えてきた。

 もちろん、今になって突然現れたわけではなく、市場が縮小を続けた過去10年ほどの時期も含めて、着実にラインアップを維持してきたからこそ、ハイレゾや新しいオーディオ再生のスタイルに合わせ、音質的にも現代的なクオリティーを備えた製品をきちんと投入できた。今回取り上げるデノンのSACD/CDプレーヤー「DCD-1500RE」、プリメインアンプ「PMA-1500RE」もそんな製品のひとつだ。

上級モデルの設計思想を受け継いだミドルクラスモデル

DCD-1500REの前面。オーソドックスなデザインで、基本操作ボタンなどが整然と配置されている

 まずは、両者の概要から紹介していこう。SACD/CDプレーヤーのDCD-1500REは、直接的には、DCD-1650REの技術を受け継いだ実売価格およそ10万円前後のミドルクラスモデル。デジタル音楽信号を32bit精度にハイビット化するとともに、16倍アップサンプリングを組み合わせ、より高精度にデジタル信号処理を行なう「Advanced AL32 Processing」は、最新のアルゴリズムを搭載したバーションとなる。

 D/Aコンバータの直近に置かれるロージッタータイプのクロックは、44.1kHz系と48kHz系の2つを内蔵し、それぞれの信号に合わせて使い分け、理想的なD/A変換を行なう。このほかにも、自社開発による低重心設計のオリジナルドライブメカの搭載、信号経路を短縮した回路設計によるS/Nやオーディオ特性の向上など、最新のオーディオ機器として作り込まれている。

 最大のポイントは、PCと接続できるUSB DAC機能を備えること。比較的安価な価格でありながら、最大192kHzのハイレゾ音源、2.8/5.6MHzのDSD音源に対応。伝送方式もASIOドライバによるネイティブ再生とDoP(DSD over PCM Frames)に対応と万全な内容だ。

 音楽ソフトの提供はハイレゾも含めてネットワーク配信が主流となっている現在、SACD/CDプレーヤーに特化した専用プレーヤーは将来性を考えると積極的に購入することに躊躇いのある機器だ。しかし、現時点で流通するあらゆるハイレゾのステレオ音源に対応可能なUSB DACとしての機能も持ち合わせるので、いざメインソースが配信された音楽データとなっても、本機が無用の存在になることはない。同時に今まで購入したディスクの再生もできるのだから、USB DACを購入するよりも活用の幅は広いと言える。

DCD-1500RE
DCD-1500REの左側には電源ボタンと、ヘッドフォン出力とボリュームがある。そのほか、SACDの再生レイヤー層切り替え、音の純度を高めるPURE DIRECTボタンを備える
右側には、操作ボタンとソース切り替え(DISC/光デジタル/同軸デジタル/USB/USB DAC)。USB端子も
DCD-1500REのトレイ部分。叩いてみてもカチカチとカン高い音を発さず、振動吸収性能も高そうな樹脂を使っている
天面部分。リブで補強された天板側板一体型の鋼板は一般的なものだが、従来に比べて1.2倍の厚さの鋼板を使用し、振動に強い構造とした
厚めのフロントパネルの上部には、目立たない色合いでSACDとCDのロゴマークが印刷されている
側板部分。こちらにもリブを設けて強度を高めている。円形のインシュレーターも大型で制振性を高めている
背面は、左側に入出力端子、右側に電源コード用のインレット端子がある。電源ケーブルは太めのものが付属するが、3極タイプのケーブルとの交換も可能だ
右側の入出力端子を拡大。光と同時のデジタル入出力と、USB DAC端子(Bタイプ)がある。下側のアナログ音声出力端子は間隔も広く、極太ケーブルの使用も可能
PMA-1500REの正面。中央にボリュームを配置し、トーンコントロール(低音/高音)とバランス調整つまみも備える

 そして、PMA-150REは同じグレードのプリメインアンプで、こちらもPMA-2000REの技術を受け継いでいる。実売価格はこちらも10万円前後だ。同社の看板的技術でもあるUHC-MOSを出力素子としたシングルプッシュプル構成のパワーアンプを備える。電源部のトランスは2つのトランスを使いそれぞれ逆向きの配置することで互いの漏洩磁束をキャンセルするなど、これまでの高音質化ノウハウも惜しみなく投入されている。

 PMA-1500REはサイズ的にはそれほど大きくはなく、DCD-1500REとほぼ同サイズ。しかし、その質量は16.1kgとずっしり重く、筐体の剛性の高さも含めてかなりしっかりと作られていることがわかる。また、入力端子および入力セレクターにはいち早く「NETWORK」と表記されている。ネットワークプレーヤーの接続を意識したもので、ちょっと前のプリメインアンプでは見られなかったもの。現代の最新オーディオ機器だということが改めて実感できる。

中央の大型ボリューム。操作感のフィーリングにもこだわった質の高いパーツを奢っている。電動モーター付きでリモコンでの音量調整も可能だ
左側にある入力セレクター。ネットワークプレーヤーを意識した「NETWORK」という入力が用意されているのが現代的だ
側面はリブ補強を加えてボディの強度を高めている。アンプとしては比較的背が低く、コンパクトなサイズとなっている(重量は重めだが)
左側から、入出力端子群、プリアウトやパワーアンプ出力なども備える。フォノ入力はMM/MCカートリッジに対応している(切り替え式)。
中央のスピーカー出力は真鍮を使ったバナナプラグ対応端子。シンプルな形状ながら滑り止めのローレット加工が施され、ケーブルをしっかりと締め込める。
付属のリモコンはDCD-1500RE、PMA-1500REともに共通。CDプレーヤーの操作、プリメインアンプの操作のどちらも行なえる

 これらのモデルは、以前試聴を行なったときに、2つでおよそ20万円の価格とは思えない音の良さで驚かされたモデルで、ハイレゾ音源を含めてもっとじっくりと聴いてみたいと思っていた。

シルバー系の落ち着いた輝きと緩やかにカーブするフロントパネルが良い雰囲気

 さっそく自宅の視聴室に設置してみたが、プリメインアンプが少々重いものの、接続自体はシンプル。プレーヤーとアンプをアナログ接続でつなぎ、スピーカー(B&W Matrix801 S3)をバイワイヤリング接続としている。

 まずは軽く音を出してみたが、電源を接続してすぐだとちょっと粗っぽい音になる。各回路に使われているコンデンサ類に十分通電しないと本来の音が発揮されれないのは、当然と言えば当然。オーディオコンポーネントはこうした「電源を入れてすぐに本領を発揮できない」ことが多いが、より大型のコンデンサーを搭載するなど音質重視の設計がその理由だろう。このあたりは、いきなりがっかりしてしまうのではなく、軽く1日くらい電源オンのまま置いておくと十分で通電された状態になり、本来の実力が発揮できるようになるだろう。もちろん、本格的にエージングが進み音がこなれてゆくにはもう少し時間がかかる。

 それにしても、シルバーのボディの機器はちょっと新鮮だ。AVアンプなどはブラック塗装が主体なので、我が家に置くとちょっと目立つ。白熱灯のちょっと暗めの照明の下で落ち着いた輝きを見せるたたずまいは、なかなか良い雰囲気だ。部屋を真っ暗にして視聴するAV再生では黒の方が視覚的に邪魔になりにくいのだが、音のみの音楽再生では、このくらい機器の存在感が際立つ方が良い感じだ。

 デノンの機器のフロントパネルは上下が緩やかにラウンドした柔らかいフォルムになっているが、光が当たることでこのラインが強調され、柔らかい印象になる。ディスクトレイを出し入れしたり、ボリュームつまみを回したりしていると、質の良いオーディオ機器を触っている実感がある。HiFiオーディオ機器としては決して高すぎはしないが、それでも2台の20万円ほどの価格は十分に高価なので、こうした見た目や操作の感触といった質感まできちんとしているのは当然のこととはいえ、触っているだけでうれしくなってくる。

ハイレゾでしかもポップスの新譜、スティング「the Last Ship」をじっくり鑑賞

スティング「the Last Ship」

 これに組み合わせる良品としては、ハイレゾ音源でしかも新譜となるスティング「the Last Ship」を選んだ(WAV/FLACとも24bit/96kHz 4,200円)。ポール・マッカートニー「NEW」も捨てがたかったし、moraでもハイレゾ音源が一挙に配信開始され、ロックやポップスの名曲がかなり充実してきたので、ここはクラシックやジャズではなくポップスで行こうと思っていた。楽器の生の音の感触や演奏技術の高さが重要になるクラシックやジャズでハイレゾの良さがわかるのは当然だが、ロックやポップスだってハイレゾで聴けることには大きな価値があると思うし、どうせならば今まで聴いたことのない新譜でハイレゾの良さを確認してみたかったのだ。

 「the Last Ship」は、CD版のライナーノーツにある通り、全曲新曲のアルバムとしては10年振りのもので、どちらかというと思い出したくない記憶が多いらしい、少年期を過ごした造船所のある生まれ育った町を舞台に、物語性豊かな一連の楽曲が綴られている。宗教的な世界観を感じさせる詩や内省的な部分もかなり強く出ているし、そのうえで、閉鎖の決まった造船所とそれを中心で生活してきた町の人々の生活や気持ちを豊かに描いている。

 そうしたドラマ性も惹きつけられるものがあるし、なにより、スティングの朗々とした深みのある歌声に聴き惚れてしまったのが一番の理由だ。

 試聴では、まずはCD版の再生から始めた。ハイレゾ再生がメインではあるが、それではCDプレーヤーではなくUSB DAC機能だけしか触れられないし、なによりも44.1kHzのCDと96kHzのハイレゾにどれだけの差があるのかを聴き比べてみたかったからだ。

 曲は表題曲でもある1曲目の「the Last Ship」。閉鎖が決まった造船所から最後の船が完成し、海へ出て行く。誕生と終わりが同時に訪れるというもの悲しいシチュエーションの曲で、いくつかのアコースティック楽器と歌によるシンプルな構成の曲だ。その音は実体感のある再現で、スティングの声も厚みがあり歌声の強さもしっかりと出る。音色は忠実感が高く、ストレートな再現となっている。声やギターといった構成楽器の音がしっかりと立ち、くっきりと粒立ちよく再現される。

 細かい部分までよく聞こえるというオーディオ的な面白さと、歌や楽器の音の生々しさを味わえる音楽の魅力が実にバランスよく両立されている音で、じっくりと聴き込める。

 これを、今後は再生機器をMAJIK DS(336,000円)に変え、同じCDからリッピングしたWAV 44.1kHz音源で聴いてみる。ディスク再生 vs 楽曲データ再生という趣向だ。聴いてすぐわかるのは、MAJIK DSでの再生の方が空間が広々とし、ステージの奥行きが豊かになると感じることだ。ただし、これは情報量などに違いがあるという質的な差ではなく、両者のプレーヤーの音の個性だろう。スティングの声の厚みや抑えた歌い方ながらも熱っぽく語りかけるような雰囲気はデノンの方が濃厚に伝わる。音楽全体を見通すような描き方をするMAJIK DSか、個々の音をより強く伝えてくるデノンかという違いだ。

 これはプレーヤーの価格差を考えても驚くべき結果で、これまでの経験ではディスク再生の方がやや音質が劣ることが少なくなかったが、デノンはディスク再生でもネットワーク再生と並ぶ優れた表現を可能にしていると言える。ネットワーク再生の優位性に対し、長い歴史を持つディスク再生もこれまでの経験やノウハウ、技術を使いこなすことで同等の実力を引き出せるというのは、まさにこれまでの積み重ねの重要さを実感する。

 さらに、手持ちのノートPCで44.1kHzのWAVデータを再生してみた。再生ソフトはFoobar2000で、デノンの専用デバイスドライバをインストールし、USB接続でDCD-1500REと接続している。ちなみにこの状態でハイレゾ楽曲を一通り試してみたが、192kHz音源はもちろん、DSD2.8/5.6MHz音源も問題なく再生できた(Foobar2000には、ASIO対応のためのコンポーネントを追加済み)。

 こちらの音は、CD再生での音像の実体感に彫りの深さが加わった印象で、音像がより立体的になる。奥行きはMAJIK DSほどではないが広がり感はCD再生よりも豊かになる。この点はCD再生よりも優れていると言えるが、声の強さやエネルギー感がややおさまり、より情緒的な歌になる。より聴きやすく、質の高い演奏と言えないこともないが、CDの音のエッジがしっかりと立ちながら、溌剌とした音になる爽快感も捨てがたい。

 こうしたキャラクターの差は、気分によって、あるいは曲によって使い分けるなど、1台のプレーヤーで多彩な音を楽しめる良さがあるし、なによりもディスク再生の音を楽曲データ再生と明かな差を感じさせないレベルまで磨き上げた技術陣の奮闘に感心する。これならば、ハイレゾ音源は基本的にPCなどを使って聴き、聴き慣れたCDはディスクのまま気軽に再生するといった使い分けができる。

 ちなみにディスク再生については、手持ちのSACDソフトなども確認しているが、DSD収録でありながら、音像の粒立ちがよく、分厚い音が力強く鳴るなど、かなりエネルギー感のしっかりした再生音で、これはかなり聴き応えがある。決して解像度感の高さをアピールするような音調ではなく、むしろ音色の感触は穏やかで聴きやすいが、本質的な音の情報量や解像感は十分に高いし、そこに実体感豊かな音色の厚みが加わることで、音楽がより近いような、ライブ感に近い印象になる。ドライブメカの設計や振動対策など、しっかりと作り込まれたCDプレーヤーならば、PC側でのノイズやジッターの影響が生じない単体でのディスク再生にも音質的な優位性はあると思える。このあたりが、DCD-1500REのディスク再生の実力の特徴と言えそうだ。

96kHz音源になると、表情がより豊かに表現されるようになる

 続いては、96kHz音源だ。再生機器はノートPCでDCD-1500REにUSB接続して再生を行っている。同じ1曲目を聴いてみると、情報量豊かなのに聴きやすいバランスの良さは同じだが、より細かい音の変化が出るようになり、歌声の強弱の変化がより伝わるようになる。一言でいえばより情感豊かな再現だ。

 イギリスの伝統的な民謡のメロディーを採り入れた9曲目の「What Have We Got?」は、楽器の数もコーラスの人数も増え、大編成のにぎやかな楽曲だ。イギリスの田舎のカーニバルの曲という印象で、弦楽器の音色も小気味よく弾む。リズム感よく刻まれる打楽器やメロディーの強弱のニュアンスなど、ひとつひとつの音を混濁させずに明瞭に描き出し、楽しげなムードや力強く歌い上げるエネルギー感を表情豊かに描き出す。

 あえてCD版との違いを言うならば、楽器の数が増えたことでやや混濁感があり、お祭りのにぎやかな印象が強くなる。聴き比べてしまうと、元気はいいが、ちょっとやんちゃな印象になる。曲の力強さや歌声の表情の豊かさを聴き取るならば、当然ながらハイレゾ音源の方が豊かな印象になる。

 ブライアン・ジョンソンをフィーチャーした「Sky Hooks And Tartan Paint」は、スティングのエネルギッシュな歌声を満喫できる曲で、ハイレゾならではの音色の豊かさや音の充実度に驚かされる。スティングの歌は基本的にはゆったりとしたテンポで、タメのある懐の深い歌声を満喫できるが、サビの部分などでテンポを速めリズムよく歌詞を並べるところなど緩急自在な歌唱も聴き所。こうしたスピード感の変化を柔軟に追従し、ノリの良さを感じさせる再現は、プレーヤー側だけでなく、プリメインアンプのPMA-1500REのドライブ能力の高さも表れている部分だろう。

 同じ曲をMAJIK DSで聴いてみると、よりニュアンスが豊かになり、柔らかく落ち着いた印象になる。ノリの良さや歌声の力の入れ具合といったダイナミックの再現ではデノンの方が気持ち良く聴けるが、個々の音の表情の豊かさ、ステージの見通しの良さではMAJIK DSが上回る。トータルのまとまりの良さも含めて、同じイギリス製のプレーヤーだから、イギリスの民謡的なメロディーだと相性もよいのかなと、あまり説得力のない理由を思いついてしまうくらいだ。

 いずれにしてもプレーヤーとしての実力差は思ったほどの差ではなく、当初から抱いていた合わせて20万円の機器としては驚くほどパフォーマンスが優秀で、価格的には上位にある機器に負けない音が楽しめる。そして、2つのプレーヤーの違い、ディスク再生とPCのUSB DAC再生の違いを見事に描き分けるPMA-1500REの表現力の豊かさにも感心する。決して自分の個性を主張するタイプではないが、忠実度の高さはかなりのもので、音源の違いや機器の違いに敏感に反応し、それぞれの良さをしっかりと鳴らし分ける。こうしたアンプだと、それこそ同じアルバムのハイレゾとCD音源の両方(SACDが発売されていればそれも買っていた)を購入してしまう筆者のようなオーディオマニアだと、聴き比べの楽しみが存分に味わえる。それでいて生真面目なオーディオ機器のような分析的で面白みのない音になってしまわず、気を抜いて気軽に再生していても、音楽のノリの良さ、スティングの歌唱の豊かさや表情の豊かさがよくわかる楽しい音でもある。

ポップスでもハイレゾで聴くとさらに音楽の豊かさがよくわかる

 仕事柄、オーディオ機器の試聴では録音が優れたものが多いクラシックやジャズを使うことが多いし、オーディオマニアにありがちな先入観として、ロックやポップスのハイレゾでは(オーディオ的な)試聴に耐えるソフトは決して多くはないのではないだろうか? そういう疑問は少々あった。

 そうなると、ハイレゾ音源でロックやポップスが増えても、すでに録音の良さや作品の質の高さで実績のある曲を選ぶことになる。そうした曲とは、すでにSACDなどでも発売されている曲でもあるわけで、ハイレゾ音源の配信でだけ手に入る新譜に手を出しにくくなるかも。そういう思いもあった。

 しかし、今回扱ったスティングやポール・マッカートニーの新譜は、ハイレゾの良さを実感できる音質の良さがきちんと作品に現れていた。その一方で、CD版も器の小さなメディアとはいえ、しっかりとした再生機器なら、かなりのレベルの音が楽しめることがわかった。

 もちろん、どちらを選ぶかと聞かれればハイレゾなわけで、今後はかつての名盤だけでなく、新譜もハイレゾ音源で買うことが増えるだろう。とはいえ、今までのCDをデータだけ残して処分してしまおうという気はない。これだけ質の高いディスクプレーヤーがあるのなら、ある日には気分を変えてディスク再生としゃれこんだり、両者の音質の聴き比べをするのも楽しい。

無理をしない価格で、ハイレゾ音源やオーディオを楽しむには最適なモデル

 そして、これから本格的なオーディオ機器を揃えてみようかという若い人、久しぶりにもう一度オーディオを楽しんでみようという人々にとっては、ディスク再生もこれからのハイレゾ音源再生も対応できるコンポーネントというのは安心感があるだろう。

 試聴を終えて、僕が個人的に考えているのは、DCD-1500REとPMA-1500REのペアと組み合わせるスピーカーのことだ。一般にアンプに対する負荷が大きく、鳴らしにくいと言われるB&W Matrix S3を十分に鳴らせていたのだから、比較的大きめのスピーカーでも不満なく鳴らせるだろう。そうなると、リビングではフロアー型のスピーカーを組み合わせるのもいいし、プライベートルームでは小型でも密度の高い音や立体的なステージ描写に長けたブックシェルフ型を組み合わせてみたい。いずれにしても、スピーカーの持ち味がより濃厚に出る鳴り方をすると思われるので、国内はもちろん、海外のさまざまな国の個性豊かなスピーカーの音を吟味して組み合わせてみたくなる。

 なんだか、デノンのペアを揃えるだけで、いろいろとオーディオ的な遊びができそうだ。そういう意味でも、オーディオの楽しさや音楽の魅力を味わう機器として、実に良く出来た製品だと思う。

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DCD-1500RE PMA-1500RE the Last Ship:
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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。