小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第791回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

出張で使うワイヤレスNCヘッドフォン3機種でガチ悩み、コデラが選んだのは……

そろそろ新しいNCが欲しい

 筆者のノイズキャンセリング(NC)歴? は非常に長い。世界最初のコンシューマ製品であるソニー「MDR-NC10」と「MDR-NC20」の両方を喜んで買ったのが1995年の事だから、もう20年以上前という事になる。その後も後継機の「NC100」を買ってみたり、はたまたボーズのQuietComfortシリーズに行ってみたり、それ以外の他社製品にも手を出してみたりと紆余曲折あるのだが、やっぱり「音」、「装着感」、「NC能力」、「アフターサポート」を総合的に見ると、やはりソニーかボーズに戻ってきてしまう。

左上から時計回りにソニー「MDR-1000X」、ボーズ「QuietComfort 35」、「QuietControl 30」

 ノイズキャンセリングヘッドフォンは、Bluetooth隆盛時代においてもしばらくはワイヤード製品しかなかった。筆者の記憶では、2014年頃には低価格なイヤフォンタイプの製品はあったが、本格的なオーバーヘッド型は2015年にデノンとソニーが相次いで発表、2016年にはかなりのメーカーがこの分野に参入、といった流れである。

 先日CES取材のために渡米したのだが、機内ではワイヤードのNCヘッドフォンを使っていた。音質的にはそれほど不満はないものの、奧の席の人がトイレに立つ時だとか、ブランケットをかけるだとかいったときにケーブルがわちゃわちゃして、結局ケーブルをいったん抜いてどうにか始末を付けるような羽目になってしまう。

 やはりワイヤレスがいいという事と、最近はNC効果も以前と比べるとまた一段と性能が上がってきているという話なので、次回4月のNAB渡米用に新調したい。そこで今回は、Bluetooth対応のノイズキャンセリングヘッドフォン・イヤフォンのうち、市場で評価が高い製品3つをテストしてみる。

 ソニー「MDR-1000X」、ボーズ「QuietControl 30」、「QuietComfort 35」3モデルだ。QuietComfort 35は以前もレビューしているが、実際に買う気で選ぶとなれば選択肢から外せないため、もう一度お借りした。話題の3製品の実力を試してみよう。

 なお、飛行機の中でのワイヤレスヘッドフォンの使用については、2014年9月のルール変更により、利用できる機体が増加しているが、乗る機体がわかった時点で事前に確認しておきたい。航空会社のサイトや、機内のパンフレットにも記載されている場合もある。客室乗務員に確認するのもいいだろう。

まずはポイントをチェック

 では実際に聴いてみる前に、3製品のポイントを押さえておこう。

製品名Bluetoothコーデック有線接続重量発売時期価格
MDR-1000X4.1SBC/AAC/aptX/LDAC275g2016年
10月
40,000円前後
(実売)
QC35非公開非公開
(SBC/AAC)
240g2016年
6月
37,000円
QC30非公開非公開
(SBC/AAC)
×63g2016年
10月
32,000円

 先週のBluetoothイヤフォン特集でもご紹介したが、Bluetooth接続の場合、対応コーデックの確認は必須である。どのプレーヤーと接続するとよりパフォーマンスが発揮できるかの指針になるからだ。

 この点においては、MDR-1000Xの全方位対応はさすがだ。もちろんLDAC対応のプレーヤーと組み合わせるとベストなパフォーマンスが発揮できるのは言うまでもない。

 一方ボーズの場合、公式にはBluetoothのバージョンやコーデック情報は非公開である。コーデックに関しては、来日したエンジニアへの取材でaptXは非対応だということはわかっている。SBCへの対応は当然として、AACが使用できるかMac miniでテストしたところ、使用できることを確認した。

QC 35およびQC 30でAACが使用できることを確認

 なおBluetoothの対応バージョンも非公開だ。ボーズの場合、比較的製品開発スパンが長い事もあって、細かいスペックを公開しないことで製品の陳腐化を避ける意味があるのかもしれない。ただ、そこそこいいお値段のする商品なので、選択の基準として納得できるパラメータは情報として欲しいところである。

 今回の試聴環境だが、全部AAC対応と言うことで、iPhone 7 PlusにてSpotify、もしくはGoole Play Musicを使用して楽曲再生、それぞれのヘッドホン・イヤホンで聴いてみた。MDR-1000XならLDACがもっともいいというのは承知だが、日常的な利用を考えると妥当なところだろう。

機能いろいろ、ソニー「MDR-1000X」

 MDR-1000Xは、NCヘッドフォンというのみならず、ワイヤレスヘッドフォンとしても現時点でソニーのフラッグシップモデルである。カラーバリエーションが多く好評だったNC MDR-100の上位モデルという位置づけだ。

ソニーワイヤレスヘッドフォンとしても最高峰のMDR-1000X

 カラーはブラックと、グレーベージュの2色。グレーベージュは、以前Parrot Zik 3に似たような色があったが、ヘッドフォンとしては珍しいカラーである。エンクロージャの表面が革っぽくなっている点も、デザイン的にParrot Zikの影響があるのかもしれない。ただ、Parrotのクロコダイル柄は色によってはかなりキモい感じになるが、MDR-1000Xはエンクロージャのデザインがスマートなので、気持ち悪さはない。

 装着感は、筆者の頭のサイズからするとややきつめ。ただイヤーパッドの作りがいいので、長時間の装着も苦にはならない。

イヤーパッドは柔らかいが中に芯がある感じ
QuietComfort 35とサイズは互角

 ボタン類は左側の下部に3つあり、慣れないと押し間違う。ボタン部の突起が「短い」 - 「長い」 -「短い」という順に並んでいるので、手探りでボタンは探れるのだが、3つ目のAmbient Sound選択ボタンが想像以上に後の方にあるので、若干戸惑う。

ボタン類は左後ろにある
有線接続にも対応

 ノイズキャンセリングに関しては、各個人の違い、例えば挟まっている髪の毛の量やメガネの有無、位置のズレなどを測定して補正する「パーソナルNCオプティマイザー」を搭載する。NCボタンを長押しすると、オルガントーンのような複数の周波数の混じった音階が聴こえ、測定を行なう。どんな人でも確実にNC効果が得られるという点で、ユニークな機能だ。

 純粋なNC以外に、「アンビエントサウンドモード」も備えている。これにはノイズを低減しつつ人や声のアナウンスなどを取り込む「ボイスモード」、自然に周囲の音を取り込む「ノーマルモード」の2つがある。このアンビエントサウンドモードは、通常のNC機能と排他使用になっている。今どっちのモードになっているかは、ヘッドフォンのボタン部のLEDで確認できる。

 また、これは以前から搭載されているが、ソニーのNCは環境音に合わせてモードが自動的に変わる「フルオートAIノイズキャンセリング」を搭載している。以前のモデルでは自分でモードが選べたものもあったのだが、最近は自動で切り換えをやってくれる。

 右側のハウジング部には、タッチセンサーが備わっている。右側を手のひらで覆うように触ると、一時的に音楽ボリュームを下げ、周囲の音を大きく取り込める。駅のアナウンスを確認するときなどに便利だ。ただ、利き手や利き耳がどっちかという問題もあるだろう。できれば両方にタッチセンサーを付けて欲しかったところだ。

 また右のハウジングを指でなぞることで、再生のコントロールもできる。ダブルタップで音楽のポーズと再生、上下になぞるとボリュームのアップダウン、左右になぞると曲の送り・戻りがコントロールできる。これはParrot Zikに搭載されていた機能と同じで、やはり影響を受けていることは間違いないようだ。

 音質的には、圧縮音源もハイレゾ相当にアップコンバートする独自の「DSEE HX」を搭載していることもあり、圧縮音源でもなかなか豊かな広がりで、上手く聴かせてくれる。クセのない素直な音が特徴、というか筆者がソニー製ヘッドフォンを聴き慣れすぎているせいもあるのでこのあたりは大目に見ていただきたいのだが、最近のソニーらしい、低域が若干強く出る新世代の音である。

 こうしたサウンド、NCの特徴に加えて、Parrotでいいなと思っていたエンクロージャでのコントロール機能もあり、多くのユーザーが最強という理由がよくわかる。

色々新しいQuietControl 30

 続いて全然タイプの違うイヤフォン型の「QuietControl 30」を試してみよう。首にかけるネックバンド部からケーブルが出てイヤフォンに繋がっているというスタイルだ。製品発表自体は2016年6月に行なわれたが、実際に製品が発売されたのは10月だった。発売当初は品薄が続き、なかなか入手できなかったが、今は公式サイトを始め、各店舗でも在庫ありと表示されている。

品薄が続いていたQuietControl 30
イヤフォン部はやや厚みがある

 ボーズのNCイヤフォンには、2015年に発売された「QuietComfort 20」というモデルがある。ボーズのNCでは初のイヤフォン型ということで話題になったが、個人的には電池部分のサイズが気になり、購入には至らなかった。

 一方QuietControl 30は、イヤフォン型NCでワイヤレスになったというだけではない。名前が「Confort」から「Control」に変わっているように、本機はNCのレベルを連続値で可変できる。正確には12段階あるのだが、使用感としては無段階のように感じられる。

 イヤフォン右側のケーブルの途中にコントローラがある。真ん中の凹みが曲の再生・ポーズで、その上下がボリュームだ。側面にある上下キーが、NCのレベルを調整するボタンである。

イヤフォンの途中にコントローラ
側面にNCのレベルコントロールが

 この機能で面白いのが、NCのレベルを変えても、出てくる音質にはほとんど影響がない事だ。これは一見簡単なことのように思えるかもしれないが、多くのNCヘッドフォンでは、NCのONとOFFで音質が大きく変わる。これを12ステップそれぞれで音質が同じになるようにチューニングするのは、大変な作業だっただろう。

 NCレベルは、外の音が聞こえた方がいいのか、聞こえない方がいいのかを自分で選ぶという使い方になる。ゲート前で飛行機を待っているときには、アナウンスが聞こえるようにNCは低めに設定しておき、機内ではMAXに設定するなど、シーンは自分で選べ、という事である。

 耳へのフィット感は、イヤーチップが楕円形をしているため、密着度が上がっている。脱落防止のスタビライザーも一体化されており、「緩そうに感じるが意外に抜けない」というフィット感を実現している。ただコントローラがケーブルの途中にあるため、コントローラを触るとどうしてもイヤフォンの装着感が緩む。コントローラはネックバンド上にあったほうがよかったのではないだろうか。

イヤーチップの作りは相変わらず上手い
3サイズのイヤーチップで装着感を調整できる

 またカラーリングが黒しかなく、ネックバンドも幅が広いため、ファッションによっては合わない事もある。特に女性にとっては、無骨な感じがするだろう。

ネックバンド部には電源・ペアリングボタンのみ

 音質としては、ボーズ特有の低域の持ち上げ感は健在で、いつもの「ロック感」を感じる。高域の解像度も高いが、逆にそれが圧縮音源を聴いたときに、高域の伸びのかすれも聴こえてしまう結果となる。

 またボーズでは、接続やファームウェア管理用のアプリ「ボーズ CONNECT APP」を提供している。これを使うと、NCのレベルやボリュームをスマホからコントロールできる。さらに最新のファームウェア(1.2.8)では、Bluetoothを使ってもう一台のボーズ製品に対して同じ曲を共有できる。要するに、両方鳴るのだ。もちろん相手も、Bluetoothヘッドフォンかイヤフォンでなければならない。

アプリでNCレベルの調整も可能
もう1台のボーズヘッドフォンに対して音楽を共有できる

 音楽を共有するという点ではあまり関心が薄いかもしれないが、1つの動画を2人で見たい場合に、2人ともNCヘッドフォンで視聴できるというのはなかなか魅力的ではないだろうか。まあそれもこれも飛行機の中でイチャイチャできる相手が居ての話ですからオレタチには関係ねーっつかいい加減しろよコノヤロウって機能である。

 さらにBluetooth接続では、最大2台の機器を同時接続しておけるのも面白い機能だ。同時に2つの音源を鳴らす意味はあまりないが、スマホで音楽を聴きながら仕事していて、PCの動画の音を確認したい時などに、いちいちイヤフォンを外さなくても済むのは便利である。

同時に2台の機器に繋ぎっぱなしにできる

QuietComfort 35

 QuietComfort 35は一度レビューしているので軽くおさらい程度になるが、ボーズヘッドフォン最大の特徴だと思っている、深く包み込むようなフィット感の良さは、このモデルでも変わらない。重量も軽く、ソフトなあたりの良さはワイヤードのQuietComfortと同じである。

選択肢としては外せないQuietComfort 35
ソフトなあたりのイヤーパッドが絶品

 機能的には本当にシンプルで、ボリューム上下と再生・停止ぐらいしか機能がなく、NCのOFFもできない。有線接続の端子も、ヘッドフォン側が2.5mm径なので、普通のケーブルは使えない。それでいて価格がMDR-1000Xとほぼ同じということを考えれば、割高な気がする。ただボーズ製品の価格が下がることは、為替レートが大きく変わるときぐらいしかないので、待っていても仕方がないだろう。

有線接続もできるが、専用ケーブルが必要
右側表面に電源スイッチ
曲の再生・ポーズとボリュームアップダウンぐらいしか機能がない

 掃除も洗濯も料理もできないセクシー美女のお嬢様をキミは嫁にできるか、という究極の選択を迫られる感じだ。

総論

 Bluetooth + NCで人気の製品3つを実際に聴き比べてみたわけだが、NCの性能としてはもはや甲乙を付ける事は難しいレベルだ。いたずらに100%のNCを期待するより、再生音に影響を与えない現実的なキャンセリングであるかが今後の評価軸になるだろう。

 そうした中では、NCレベルを自分でコントロールするQuietControl 30、様々なシーンに応じてモード変更で対応するMDR-1000Xは、ONしかないQuietComfort 35よりも現実的なアプローチだと言える。

 音質面では、どちらも音のイメージが浸透しているメーカーであり、音質には定評があるだけに、どれがいい音だとかいった評価はあまり意味がない。普段よく聴く音楽を、どれがより魅力的に鳴らせるのか、そこが評価軸になる。

 4月までに購入することを考えれば、この中からどれかを選ばないといけないわけで、その選択はDS版ドラクエVの嫁選びで一晩考えされられる時の心境である。MDR-1000Xがビアンカ、QuietControl 30がフローラ、QuietComfort 35がデボラだ。

 筆者も一晩寝ないで考えた結果、出した結論は「QuietControl 30」だった。イヤフォン型でヘッドフォンとほぼ同じ音が楽しめること、軽量さ、可変できるNCが決め手となった。こうして分析すると簡単な結論のように見えるが、MDR-1000XのタッチコントロールとaptX対応も捨てがたいし、長時間利用を考えるとQuietComfort 35のフィット感の良さも捨てがたい魅力がある。

 ここは皆さんの選択も伺ってみたいところだ。ぜひTwitterなどで感想をお寄せいただきたい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。