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第484回:行くところまで行っちゃったレコーダ、DIGA「BWT3100」

〜 画質と外部接続性を極めた1台 〜



■ レコーダ新世代の始まり

 レコーダの機能というのは、あれも欲しいこれも欲しいというユーザーのニーズに引っぱられてここまで来たわけだが、もうそろそろネタ的には提案型へと転換する時期に入ってきたのかな、と思う。これまでは単純に放送波を録画するだけではなく、録った番組をどうするのか、光メディアへの書き出し、ホームネットワークへの配信などの機能を充実させてきた。

 その一方で、レコーダ以外の機器でもテレビ番組が録画できるようになっている。テレビに録画機能が付いたり、PCで録画できるものもある。そういったものを、どの機器がまとめていくのか。サーバー、クライアントという考え方ではなく、もっと大きな枠でAVライフの中心となり得る機器は何なのか。

DMR-BWT3100

 ご存じのように日本は非常にアクセスコントロールに厳しい国である。有料コンテンツが厳しいのは当然だが、無料放送にも同様の制限が課せられているため、他国では何の問題もないことができない。米国を中心に発展しているPCでは、日本のAVの中心にはなり得ないのである。そこで中心に躍り出てくるのが、レコーダではないかと思う。

 この9月から発売が開始されているパナソニックの「DIGA DMR-BWT3100」(以下BWT3100)は、そのあたりを狙い始めた、最初のレコーダではないか、という気がする。新搭載された機能の多くは、ユーザーの想定を越えてきている。そんな機能は使わねーよ、という余計な提案ではなく、そういうことができるのか、という驚きがある機材だ。

 すでに発売されて1カ月ほどが経過しているが、あらためてBWT3100の実力を検証してみよう。



■ シンプルでスマートな外観

 BWT3100は、この秋発売のラインナップ中で最上位モデルである。今年3月までは、BWシリーズがメインストリームだったが、4月に3D対応のBWTシリーズを発売、事実上DIGAのハイエンドは、BWTシリーズとなっている。最上位モデルだけあって、インシュレータなどには気を配ってるが、全体的なルックスは気張った感じがなく、薄さ、奥行きの短さなどは従来機種同様である。

薄さ、奥行きの短さは従来どおり 音質重視の印、高級インシュレータを装備

 

フェザータッチを採用した電源とイジェクトスイッチ
 電源、メディアイジェクトボタンの位置も従来通りだが、ハードウェアスイッチではなく、フェザータッチとなっている。見た目はただの凹みだ。手でホコリを払っただけで電源が切れてしまうという難点はあるが、逆にスイッチの隙間からホコリが入ることがない。長期的に見れば、安定動作が見込めるだろう。

 前面パネル内には端子・スロットをまとめており、i.LINK端子、SDカードスロット、USB端子、B-CASスロットがある。BDドライブはBDXL対応の新ドライブで、今回のモデルからはBDの番組をHDDにムーブで書き戻す機能を搭載した。HDDは2TBで、書き戻し作業領域を考えても十分な容量である。画質モードはDRを除くと6段階で以前と変わらないが、最低ビットレートのHBモードは10倍ではなく、12.5倍までビットレートを下げている。また各モードともエンコーダを改善しているという。

前面は端子・スロットを上手くまとめている

BDXL対応ドライブを搭載


【録画モードと録画時間】
モード名 ビットレート 2TB 録画時間
DR地デジ 17Mbps 約254時間
DRBSデジ 24Mbps 約180時間
HG 約12.9Mbps 約320時間
HX 約8.6Mbps 約508時間
HE 約5.72Mbps 約762時間
HL 約4.27Mbps 約1,016時間
HM 約2.96Mbps 約1,440時間
HB 約1.879Mbps 約2,250時間

 

HDMI端子を2系統装備する
 背面に回ってみよう。チューナは地デジ/地アナ兼用端子、BSデジ/CS110度デジ兼用端子となっている。そろそろレコーダもハイエンドモデルに至るまで地アナ搭載を辞めたメーカーも出てきているが、パナソニックはまだ辞めないようだ。アナログAV入力2系統、出力は1系統のほか、D端子を備える。デジタル音声は光と同軸を装備した。HDMI端子は高音質対策としてMainとSubの2系統となっている。i.LINK端子は背面にも搭載している。

 ネットワークはEthernet端子もあるが、本機には以前は別売だったUSB接続用の無線LANアダプタが同梱されている。なおこのアダプタは前面のUSBポートでも使用可能だが、当然パネルが閉まらなくなる。背面に付けると出っ張るが、USBの延長ケーブルも付いているので、これを使って背面に付けた方が見栄えはいいだろう。AV機器の無線LAN化は早急に対応して欲しい機能である。


無線LAN用アダプタが付属 前面にも付けられるが、パネルが閉まらなくなる

 

リモコンはBWT3000から採用のものを継承
 リモコンも見ていこう。以前のBW880あたりのリモコンでは、再生関係のボタンが表にあり、数字キーはフタを開けて押すというスタイルだった。しかし一つ前のモデルBWT3000から採用の新リモコンは、大きなフタ方式をやめて放送波も数字キーも表面に出ており、再生関係のボタンと同時に利用できるようになっている。ヘヴィユーザーの間ではこのフタの開け閉めが面倒という声もあったが、これで解消できそうだ。

 なおリモコン下部に小さなフタがあり、この中にはタイムワープ、録画モード、録画、Gコードといったボタンが格納されている。またこのリモコンは赤外線だけでなく、無線モードへも切り換えることができる。リモコンの向きや、レコーダの設置位置を気にせず使用できるので、無線モードのほうが便利だ。もっともこれまでのクセで、無駄に画面のほうへリモコンを向けてしまうわけだが、徐々にリモコン文化も変わっていくことだろう。


■ 進化したGガイドを搭載

 では実際に使ってみよう。まず番組表だが、お馴染みのGガイドとなっている。最少で3、最多で19チャンネルの表示が可能だが、最多表示では小さな番組はもはや番組名もわからないぐらいの密度となる。その地域での放送チャンネル数にもよるとおもうが、現実的なところでは、7〜9チャンネル程度の表示が一番見やすいだろう。

番組表最多の19チャンネル表示 最少の3チャンネル表示

 多チャンネル表示で気になるのは、画面内で余白が相当あるところである。ただでさえGガイドは左側に広告枠があるために番組表示エリアが狭いのだが、全体の表示が内側に寄せてあるために、余計番組表が狭く感じられる。これはアナログテレビに接続しているユーザーが、画面の全域が見られないという問題に配慮したものだが、早々にデジタルテレビに移行した、総務省的にもメーカー的にも優良なユーザーのほうが不便を被るという、無念な結果になってしまっている。

 デジタルテレビに接続しているかどうかはHDMI接続の状況を監視していればわかることなので、今後はデジタルテレビに接続していると判断された場合には、フルフレームで番組表の表示領域を稼ぐといった工夫が欲しいところである。

 番組表の新機能としては、「注目番組一覧」からNHKの番組の特集ページが追加された。特集された番組情報では、番組のサムネイルも貼られており、さらに詳細情報に入ると複数のサムネイルが貼られている。情報量としては、テレビ情報誌よりもリッチな感じがする。またこの「特集」では、約2週間先の番組情報まで見ることができる。

注目番組にNHKが登場 番組解説では複数のサムネイルが貼られている

 

横のタブに移動するのに縦方向で選ぶ妙なGUI
 ただGUIの実装は、もう一つだ。いくつかの特殊が横方向のタブに分かれているが、「タブ切換」を行なうと、縦の選択項目から選ぶことになる。見せ方は横、選ぶのは縦と、妙なことになっている。これはタブをそのまま横にすんなり切り換える機能が必要だろう。

 なおこれらのメタデータは、放送波からではなく、ネット経由で更新される。以前はネットからの情報は放送波と同じものを配信するという縛りがあったが、2009年9月に緩和されて、放送波にはない情報もネット経由で送っていいことになった。

 Gガイドを運営するRoviでは、毎月20日に約40日分のデータを配信する用意があるそうである。以前はWOWOWだけが1カ月番組表を出していたが、NHKもこれに踏み切った。本機にはNHKの1カ月番組表は実装されていないようだが、これからは民放も長期の番組データをネットに出す時代がくるかもしれない。

 今回改善された画質モードを検証してみよう。評価対象として録画したのは、10月16日にテレビ埼玉で放送された「浦和レッズスーパーマッチ・浦和レッズ×セレッソ大阪」である。各モードで10分間録画し、それぞれ再生してみた。6段階ある圧縮モードで、筆者の感覚でまあここまでならいいんじゃないの、というモードは、HLまでであった。もちろん圧縮していることがわからないわけではないが、荒れが気になって視聴に集中できなくなるほとではない。

 もっとも高圧縮のHBモードも、意外に健闘している。以前の10倍圧縮も結構良かったが、それと遜色ない印象だ。もちろん人が沢山写る引き絵では破綻してしまうが、選手のアップをテレ端で狙って背景がぼけているようなショットでは、これが1.879Mbpsかとおどろくほどの画が出ている。ただ2TBものHDDを積んでそれほどキツキツに圧縮しなくちゃいけないかというと、そういうことはないだろう。光メディアにギリギリに詰め込むといったときに、選択肢としてあり得る、という使い方になると思われる。

 ダビングまで含めた同時動作は、以前は2系統のAVC録画の最中に再圧縮なしの高速ダビングが可能だったが、今回からはさらに、2系統のAVC録画中に、等速の再エンコードダビングまで可能になった。同時に3エンコーダが走ることになるわけだ。さらにAVC録画中のオートチャプタも、追っかけ再生中に利用できるようになった。これまでは録画が完了しないとチャプタ操作ができなかったが、その制限も撤廃された。



■ BD保存の常識を変える、書き戻し機能搭載

番組を書き込んだBDは、メディア切り換えなしに再生できる

 では今回のシリーズの目玉機能とも言える、BDからの書き戻し機能を試してみよう。これまでBDへのダビングは、行ったっきりだと考えられてきた。とくにRメディアは、いったん書いたらそこで終わりと思われてきた。これがHDDに書き戻せるとなれば、将来的なメディアチェンジにも対応できることになる。

 過去に録画した番組が入っているBD-REメディアがあったので、これを書き戻してみよう。ちなみに今回から、記録型メディアに書き込まれた番組は、メディアを切り換える必要もなく、「録画一覧」のタブに現われるようになっている。市販ソフトはメディア切り換えしなければならないが、BDをあたかも拡張メディアとして扱うというのは、もっともな作りである。

 BDに入っていたのは5月17日の番組なので、おそらくこれはシャープ「BD-HDW53」のレビュー時に、テスト書き込みしたときのものだと思われる。

 書き戻し作業は何か難しい設定をするわけでもなく、従来のダビング同様「詳細ダビング」を選んで、ダビング方向をBD/DVDからHDDに指定するだけのことである。するとオリジナルは元のディスクから消去される旨の注意書きが表示され、ダビング(実際にはムーブ)が開始される。

ダビング方向をBDからHDDに指定するだけ 試しに2番組を書き戻してみる

 

ムーブ後のディスク内容。2つの番組が無くなって、HDDに書き戻されている
 ムーブが終了したディスクを改めて見てみると、指定した番組がなくなって、HDDの番組一覧のほうに移動しているのがわかる。DIGAシリーズで書き込んだものではなく、他機種で書き込んだメディアに対してもムーブできるというのは、かなり強力な機能である。

 ちなみに番組の書き戻しはBD-Rでも可能だ。BD-REと違って書き直すことはできないが、番組が書かれた部分を読み出し不可にして見えなくすることで、事実上のムーブを実現している。そのため、BD-REのように容量が戻ったりはしないが、それでも番組が移動できるというだけでも大きな前進だ。BD-Rはファイナライズされていると書き戻せないということなので、現在他機種を使っている人も、今後はBD-Rに書き込んだときにファイナライズしないでおいたほうが良さそうだ。


原画解像度に戻したのち再アップコンバートする「新アニメモード」

 もう一つ気になる機能として、「新アニメモード」がある。2010年春モデルでも搭載していたが、この秋では新たに「原画解像度」というパラメータを設けた。これはハイビジョン放送に乗せるために元の素材からアップコンバートしたときのエラーを改善するため、いったん720や480といった元の解像度に戻して、再度DIGA内でアップコンバートすることで、画質アップを図るという機能である。

 現在放送中のハイビジョンアニメでは、制作は720pで行なっているケースが多い。もちろんハイビジョン以前のアニメ作品は、480で制作されている。これらをユーザーが自分で判断して、設定を切り換えるという機能である。

 筆者が知るアニメ制作の例では、作画プロセスの主流は720pだが、中には960×540ピクセルというフルHDの縦横半分サイズで制作する会社もある。それらの素材を1080iにアップコンバートして編集するか、もしくは720pのままで編集したのち、局納品の前に1080iにアップコンバートしてHDCAMで納品している。720pは今のところ日本の放送局の番組交換基準には入ってないので、720pのままで局納品するケースはかなり特殊だと思われる。

 ということは、殆どのアニメのアップコンバート品質は制作会社というよりは、編集ポストプロダクション次第ということになる。ハードウェアとしてのアップコンバータもあるだろうし、After Effectsなどの合成ソフトウェアでアップコン処理を行なうケースもあるだろう。当然、上手い下手もいろいろ出てくると思われる。

 実際に現在地上波で放送中のアニメ番組をいくつか試してみたが、筆者の目にはこの機能を使うよりも、「標準」が一番しゃっきりした絵になっているように見えた。おそらくメジャーな作品では、アップコンバートもかなり上手く行なわれているようである。例えばもっと深夜枠のマイナーな作品や、CSで放送されている古い作品などには効き目があるのかもしれない。



■ 総論

 今回のBWT3100は、型番こそ前モデルから少ししか上がっていないが、録画文化に大きな変化をもたらす可能性がある一台である。BDからの書き戻し機能は、それだけのインパクトがある機能だ。大変な機能にも関わらず、操作的にはちっとも難しそうに見えないところも良くできている。

 今回紹介できなかった新機能としては、「放送転送」機能がある。これはDIGAで受信中の放送を離れた部屋のテレビなどで視聴するための機能で、BSのアンテナが引き回せないなどの時に利用できるという。あいにく対応機器が手元になかったのでテストできなかったが、言うなればロケフリHDのような使い勝手になるのだろう。

 当然これまでのモデルに搭載されてきた高画質・高音質機能を引き継いで、プラスアルファでこの機能である。おそらく購入者は、全部の機能をすべて使いこなすのは難しいかもしれない。しかし、1台がいろいろなこだわりに対応し、用途が化けるキカイに仕上がっている。

 しかもこれだけのこだわりポイントが、ほとんど世界では必要とされず、日本人のために実装されているところがすごい。ガラパゴスもここまで極めると、誰もついて来られない領域である。

 日本のメーカーが日本人のために作り上げた「レコーダ文化」が、さらに次の段階へ登ろうとしている。

(2010年 10月 20日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]