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シンプルかつマニアックに熟成した新ブルーレイDIGA

BD→HDDムーブやアニメ原画解像度、放送転送の実際


左から高画質技術担当の甲野氏、高音質技術担当の梅迫氏、ネットワークやi.LINKなどを担当した大西氏、ネットワーク関連担当の三宅氏、高画質技術担当の則竹氏

 パナソニックの秋冬モデルとなる新「ブルーレイDIGA」6モデルが9月15日から発売された。春モデルでは、Blu-ray 3D対応という大きなトピックがあったが、新モデルでも「DMR-BWT3100」など上位3モデルはBlu-ray 3Dに対応している。

 とはいえ、メインLSIの「ユニフィエ(Uniphier)」などのハードウェアのプラットフォームは春モデルを踏襲しており、デザイン面でも大きな変更は見受けられない。秋冬商戦をにらんだマイナーチェンジモデルにも映る。

 しかしよく見てみると、2番組同時録画時の動作制限の大幅な緩和、BD→HDD書き戻し、DLNA機能の強化、最長12.5倍のAVC録画、アニメモードの改善、大容量Blu-ray「BDXL」対応など、かなり魅力的な機能強化が行なわれた、フルモデルチェンジともいえそうな仕上がりだ。

 新ブルーレイDIGAの目指したものとは何か? パナソニックの開発陣に聞いた。


DMR-BWT3100 Blu-ray 3D対応のDMR-BWT3100/2100/1100 DMR-BW890/690とDMR-BR590
型番 HDD容量 特徴 チューナ HDMI出力 店頭予想価格
DMR-BWT3100 2TB BDXL記録
Blu-ray 3D再生
フルHD 12.5倍録画
BD→HDD書き戻し
地上/BS/110度
CSデジタル×2
地上アナログ×1
2 28万円前後
DMR-BWT2100 1TB 1 16万円前後
DMR-BWT1100 500GB 12万円前後
DMR-BW890 1TB BDXL記録
フルHD 12.5倍録画
BD→HDD書き戻し
15万円前後
DMR-BW690 500GB 11万円前後
DMR-BR590 500GB BDXL記録
フルHD 10倍録画
BD→HDD書き戻し
地上/BS/110度CS
デジタル×1
地上アナログ×1
9万円前後

 


■ ソフトウェアを突き詰め同時動作性能を大幅向上。機能も細かく“熟成”

 同時動作制限の大幅な緩和、12.5倍長時間録画や画質/音質改善など多くの機能向上が図られた新ブルーレイDIGA。しかし、メインLSIのUniPhier(ユニフィエ)など、基盤となるハードウェアに大きな変更はないのだという。

AVCネットワークス社 ホームAVビジネスユニット 商品技術センター 先行開発グループ 主幹技師 甲野和彦氏

甲野氏(以下敬称略):春のモデルで新世代のユニフィエを導入しましたが、その能力をさらに引き出すフェーズに入ったのが新モデルです。同時動作についてもW AVC(2番組同時のAVC変換)録画中のBDビデオ再生やダビングなどが可能になりました。

 新ブルーレイDIGAでは、第5世代のMPEG-4 AVC/H.264エンコーダ「新アドバンスドAVCエンコーダ」を搭載し、フルHDで最長12.5倍のAVC録画に対応。2番組同時のAVC録画に対応するだけでなく、2番組同時AVC録画時にBDビデオやBlu-ray 3D(BWTシリーズのみ)の再生、BDへの高速ダビング、再エンコードダビングなどに対応するなど、従来モデルに存在した多くの同時動作制限が撤廃された。

甲野:W AVC録画+高速ダビングまでは他社製品もできると思いますが、新DIGAでは、W AVC録画中に再エンコードを伴う等速ダビングまでできるようになりました。また、従来もAVC録画中にオートチャプタを付けることはできたのですが、録画が終らないとチャプタの操作ができませんでした。今回は、W AVC録画中にチャプタが付けられるようになったので、追っかけ再生中にチャプタをスキップしたり、戻したりできます。こういう細かい改善をたくさん入れました。

 また、「録画した番組の詳細情報が見られない」という指摘もいただいていましたが、今回からはBDやHDDに録画した後も、番組の詳細情報が見られるようになりました。

大西:あと、同時動作については、i.LINK利用中にチューナ1系統が利用できるようになりました。CATVユーザーの方に活用していただければと思います。i.LINKとスカパー! HD録画の同時動作もできます。

 また、細かいが重要な改善点が「録画一覧」。従来は、HDDとBDの切替をリモコンのHDD、BDボタンで切り替える方式で、各ドライブの切替が必要だった。

 しかし、新モデルからは[録画一覧]ボタンを押すと、BD-R/REディスクが入っている場合、自動的に一番左にBDの番組内容を表示するように仕様変更された。これにより、HDD内の[録画一覧]利用中に、カーソル操作だけでBD内の番組も確認可能になり、BD/HDDをシームレスに移行できる。

 なお、BD-ROMの場合は、リモコンでドライブを切り替える必要がある。

録画一覧。新たに光ディスクとHDDを切り替えることなく、同一の画面で管理できるようになった DMR-BWT3100のリモコンは無線方式

 


■ BD→HDDムーブバック対応は「やらないとダメだ!」

 BDドライブは、大容量BD規格の「BDXL」に対応した新しい世代のものを採用。BD関連の大きなトピックとしては、デジタル放送を録画したBD-R/REからHDDへの書き戻し(ムーブバック)に対応したという点も挙げられる。

 既報の通り、技術的な経緯としては、BDの著作権保護に利用される「AACS」の最終仕様(Final License)が2009年6月に策定/ライセンス開始されたことで、BDからのムーブが可能になり、その後、2009年11月にDpa(デジタル放送推進協会)がAACS Final Licenseを認定したことで、BDに録画された日本のデジタル放送録画番組もムーブが可能になった。

 動作確認を謳うのはDIGAで録画したBD-R/RE(BDXL含む)ディスクだ。ただし、ファイナライズ済みのディスクについてはムーブバックできないという点は注意が必要だ。

 DIGAでダビングしたディスクは、高速(再エンコード無し)でムーブバックが可能。速度については、ディスクの性能など様々な要素があり公表値は出していない。なお、SD解像度のFRおよびXP〜EPモードでBD-RE/Rに録画した番組と、旧機種のDMR-BW900/800/700、BR500で、録画モードHG〜HEのディスク記録音声を「オート」で高速ダビングした番組については、等速でのムーブバックになるという。

 他社製レコーダでダビングしたディスクについても基本的には高速でムーブバックできるはずだが、様々なストリームがあるため「保証はできない」とする。ただし、DIGAで再生できる番組であれば、最低でも等速でムーブバックはできるという。

 ディスクの活用幅を広げてくれそうな、このムーブバック機能。パナソニックが初の対応だが、どういう意図を持って対応したのだろうか?

AVCネットワークス社 ホームAVビジネスユニット AV商品技術センター 先行開発グループ  主任技師 則竹俊哉氏

甲野:私も映画をディスクに録りますが、例えば2本映画を録って保存しておいても、そのあと、録画した映画の続編“2”とかが放送されたりしますよね? これを整理したい、書き戻したいな、などと思うことがありました。人によっていろいろなケースがあると思いますが、いろいろな意味で便利になるんじゃないかな、と思っています。彼(大西氏)なんかは、AACSの規格という話がでてきた時から、「絶対にやらないとダメだ」と騒いでしましたね。

則竹:やはり、我々開発者であると共にユーザーですから。障壁が無くなって、ムーブバックできるようになったことで、ようやく使いやすくなったかなと。開発内部もそうですし、ユーザーからの声も高かったですしね。

大西:これでREの価値が出てくるかなと思います。消せるだけでなく、コレクション、集めなおすことができるというのも大きいと思います。

甲野:この辺(開発陣)は皆(DIGAを)使っていますから、「規格化されたら当然やらないと」と思っていました。

 細かい使い勝手に触れると、ディスクから録画モードを指定して、HDDにムーブバックする、といった使い方も可能。「ただ、ディスクから指定すると実時間(等速)かかかりますので、高速で戻してからHDDで録画モード変換したほうがいいかもしれません」(大西氏)

 なお、ディスクの著作権保護の仕組みが違うため、AVCRECのDVDディスクからのムーブバックは規格上不可能とのこと。

 


■ DLNA対応強化。DIGAをVIERAなどのチューナにする「放送転送」

 ネットワーク機能の強化も大きな進化点だ。「お部屋ジャンプリンク」機能により、DLNA/DTCP-IPサーバーとして動作するのは従来どおりだが、新たにDLNA/DTCP-IPクライアントとしても動作するようになった。レコーダを“クライアント”として利用するのはどんなシーンを想定しているのだろうか?

パナソニック AVCテクノロジー 第二技術グループ DAV第一チーム 大西康仁氏

三宅:当初はレコーダだから『サーバーでいい』としていましたが、内部からもユーザーからも「クライアント対応してほしい」といいう要望がかなりありました。既存のテレビにDIGAをつないだ時も、様々な機器のクライアントとして動作するというのは便利だと考えています。あとは、複数台のDIGAをお持ちの人も増えていますので、他のDIGAの番組を別の場所のDIGAで見られるというのもメリットかなと思っています。

則竹:私の家だと、テレビがちょっと古くてHDMIが1系統しかないんですね。そういう場合でも、最新のDIGAからDLNAで再生すると、最新DIGAの再生処理を使って出力できます。買い増ししていただくことで、今まで録画したコンテンツも最新の画質処理を使って見られるという点も画質系の担当としてはアピールしたいですね。

大西:i.LINKをやっている側からいうと、D-VHSデッキをお持ちのお客様も、同様に最新の高画質デコーダを活用できるようになります。


AVCネットワークス社 ネットワーク事業グループ ホームAVビジネスユニット AV商品技術センター ビデオ商品技術グループ プラットフォームソフト設計チーム主任技師 三宅康司氏

 「お部屋ジャンプリンク」については、DIGAに録画した番組だけでなく、放送中の番組でも、LAN接続した別室の対応テレビなどで視聴できる「放送転送」が可能になった。DIGAを「家庭内アンテナ」のように利用できるのが特徴だ。これはどのような狙いで搭載した機能なのだろうか?

三宅:元々は「ポータブルVIERA」を活用するための機能として考えました。ポータブルVIERAでは、チューナは地デジしかありませんが、無線LANを搭載しており、DLNAのクライアントが載っています。これでBS/CSを見るためにはどうしたらいいかを考えたときに、ポータブルVIERAの画面から離れた場所のDIGAのBSチューナを指定すれば、放送が見られるんじゃないか、というコンセプトです。

 無線LANが前提ですので、DRでBS放送の20Mbps以上をそのまま転送するとなると、なかなか難しく、絵もカタカタしてしまう。そこで、DIGAで一度HEモード(6Mbps)で録画して、その映像を転送しています。放送そのままの『ライブ伝送』と混同されてしまうかもしれませんが、再送信というイメージで『放送転送』という名称にしました。

放送転送の利用イメージ

 放送転送機能の対応クライアントは、新ブルーレイDIGAのほか、ポータブルVIERA「DMP-BV200」、「DMP-HV100/HV50」やBDプレーヤー「DMP-BDT900/BD65」、VT2シリーズなど最新の「VIERA」などで、同社ホームページで案内している。

 これにより、様々な場所でDIGAのチューナを共有できる。例えばリビングのDIGAで受信したBS放送を、別の場所のポータブルVIERAでも見る、といった活用もできるようになる。また、ポータブルVIERAで受信感度が悪い場所の場合は、代わりにDIGAのチューナを使う、といったことも可能だ。

三宅:仕組み的には、ストリーミングの部分はDLNAを使っていますが、録画をキックするなどの制御については、弊社独自の部分があります。DLNAでも録画しながら追いかけるという規定は一部ありますが、細かい部分は決まっていないので、メーカー独自で拡張しているという段階です。

 DIGAで録画している番組を、DLNA越しに追っかけ再生するという機能もあります。それを拡張して実現したものです。残念ながらこの『追っかけ』の部分については、他社製品では利用できませんが、自社の『お部屋ジャンプリンク』の世界では実現できます。

 ユーザーから見れば、ポータブルVIERAやVIERAから、DIGAのチャンネルを選んで再生している、という風に見える。また、一時停止やスキップ、バックにも対応する。では、視聴終了後に、その番組を「録画」にすることはできるのだろうか?

三宅:それは今の段階ではできません。データは自動的に消えます。放送転送の仕組みとしては、VIERAとDIGAのHDMI連携で番組を一時録画/停止できる「番組キープ」という機能がありますが、それと同じようなことをネットワークでやっているというイメージですね。録画したい場合は「サーバー側で録画実行した番組を追っかけ再生」していただくことになります。

 なお、放送転送を使っている場合、録画が始まると、この機能は自動停止されてしまう。

三宅:「放送転送」機能とDIGAの録画は排他制御ということになります。

 同じDLNA機能を使ったスカパー!HDがらみの同時録画の制限はなにかあるのだろうか?

大西:これまでと同じく、スカパー! HD録画中の録画が1系統、DIGAのチューナが1系統となります。2番組録画中のスカパー! HD録画はできません。単にストリームを記録しているだけ、と思われるかもしれませんが、互換性を保つために、そのストリームがBDフォーマットに合うかを確認しているため、どうしても録画パスが1系統必要になります。

 また、他のDLNA/DTCP-IPダビング対応機器からのムーブイン対応を強化した点も特徴。従来のような対応VIERAやスカパー! HDチューナだけでなく、日立のWoooシリーズやアイ・オー・データのLAN HDDなどからのムーブインも動作検証しているという。

三宅:DLNAのDTCPムーブの仕様策定が昨年の10月に完了しました。DLNAガイドライン準拠になっていますので、ガイドラインに準拠した製品であれば、つながるようにしています。

 なお、REGZAについては独自の認証が必要と思われ、残念ながらムーブインの対応機種とはなっていない。ただし、アイ・オー・データの「RECBOX」や東芝の「VARIDA」などを介してであれば、REGZA→RECBOX→DIGAといった具合につながることは確認しているという。

 ダビング速度は、「1倍速」とのこと。「再エンコードはしていませんが、BDのフォーマットに合うようきちんとチェックしているためです。番組をディスクに焼いて、ほかの機器に持って行ったときのことまで考えると、この段階で互換性をきっちり確保しておく必要があると考えています」(大西氏)

 ムーブアウトについては、現行機種では対応していない。「今後については、ユーザーの声をお聞きしながら考えていきたいと思います」(甲野氏)

 


■ クロマ処理など画質向上。“大作以外”の対応を改善した新アニメモード

 画質/音質については、従来から「原画・原音忠実再生」というコンセプトで開発しているという。PHL(パナソニックハリウッド研究所)との共同作業による画質改善も継続して行なっており、「今回も、BD-ROMの画質を進化させています」(甲野氏)という。

リアルクロマプロセッサをチューニングして、画質向上

 再生系のアップデートは、まずはリアルクロマプロセッサの進化だ。再生系の画質面の大きなポイントでもある、クロマアップサンプリングだが、4:2:0から4:4:4へクロマアップサンプリングすることにより、ディスクメディアや放送でカットされている「色(クロマ)情報を補完し、色が生み出す解像度の情報量によりリアリティを増す、という考え方に変化はない。ただし、PHLでの原画比較確認とチューニングを経ながら、高域の波形再現性を改善しているという。

甲野:従来からマルチタップのクロマ処理によって色のf特(周波数特性)が伸びるといってきました。今回は伸ばすだけでなく、波形再現性の改善を重視しました。超高域の波形再現性を正しくすることで、原画により近い精細感を目指しました。「原画に近くて、自然な絵」という狙いです。

則竹:f特だけでなく、位相特性などを原画と比較しながらバランスを取っています。f特を伸ばすだけだと、バランスが崩れるところもありますので、そこのバランスをチューニングしたということです。

 もう一点大きな変更が「アニメモード」だ。アニメモードは、春モデルから搭載したものの、劇場公開の超大作“以外”のアニメも意識して、大きく改善してきたのが新DIGAの特徴だ。

 というのも、開発陣の中でも、生粋のアニメファンである大西氏から、強く改善要望が出たのだという。

アニメモードの強化点

則竹:春モデルでもくっきり、すっきりとした絵を見せるということで、アニメに取り組みました。当初はSDのDVD用を想定し、ハイビジョン系はもともときれいなので「それほどすることないかな?」と思っていました。今までは、スタジオジブリ作品やディズニー作品などを前提にしていて、満足のいく画質が出せていると感じていました。しかし、世の中にはもっといろいろなアニメがあるということがわかってきて……

 そこにいる大西が、「どうにかせい」ということで、本当にいろいろな課題を持ってきまして。「なるほど、これは何とかしなければならん」、と。実はアニメには、アニメ特有のさまざまな難しい課題がある、とわかって取り組んだのがこの秋モデルになります。大きく分けると、プログレッシブ処理の改善、エッジ/ノイズ処理の改善、そしてアップコンバートされた原画解像度に戻す、原画解像度変換という3種類の技術を導入しました。

 では、新しいプログレッシブ処理とはどういうものだろうか?

則竹:アニメによっては、コマ数が不規則なものがあります。同じシーンの中で、24コマ、12コマ、8コマなど異なるコマで製作された場合、シーンチェンジでコーミング(櫛状)ノイズが出たりするという課題がありました

 今までは、24コマ用の逆3-2プルダウン検出だけだったのですが、新たに、12コマ用の5-5検出、8コマ用の逆8-7検出とかの処理を入れました。これでインターレース妨害を抑えています。さらに、編集点もアニメの場合唐突にくるので、きちんと検出できるように高精度なシーン検出処理を入れることで、コーミングノイズを低減しています。ソフトウェア担当がかなり無理をしていますので、春モデルには入れられなかったと。

甲野:プログレッシブ処理については、アニメが本当に技術的に一番難しい。逃げようがなくて、きっちりやらないとダメだとわかりました。特に、あまりたくさんのお金をかけることができないテレビアニメとかだと(笑)。

 ノイズリダクションについては、シーン適応型の処理を導入。超解像処理のアニメ用チューニングにより、HD素材にも超解像処理を行なうことで、リンギング(輪郭の破綻)やモスキートノイズを抑えてなめらかな輪郭線を表現できるようにしたという。

アニメモードでプログレッシブ処理に伴う、様々な課題を解決 ノイズリダクション処理も新アニメモードで改善

原画解像度変換の概要

 そして、最もマニアックなのが、「原画解像度変換」だ。1080iでデジタル放送されるアニメでも、実はもともとの映像は480i、480p、720pなど、制作環境により異なっている。つまり、1080iとして放送されていても、納品時や放送局のアップコンバート処理によっては、ジャギーやコーミング、インターレース妨害など、さまざまな画質劣化の要因があると推定される。

 原画解像度変換は、元の解像度を480系(i/p)、720系(i/p)など明示的にユーザーが指定し、原画解像度に戻してから、再度DIGAでアップコンバートすることで、解像感やS/Nの向上を図るというものだ。

則竹:(アップコンバートの弊害による)インターレース妨害で、スジだらけのハイビジョン映像が“原画”として入力されても、どうにもならない。であれば、アップコンバート前の映像に一回戻すしかない。元の解像度の成分を抽出し、それに対し、スケーリングやNRなどをかけていくものです。

「戻す」ということは、ユーザーが480iとか、解像度を指定する必要があるわけですか?

画質モードでアニメを選んだ後、[原画解像度]で480i/p、720i/pを選択

甲野:そうです。絵を見て、480i/pか、720i/pを選んでいただくことになります。

則竹:大西によれば、ユーザーは意外とご存知ですよと。わかっている人は。

大西:(原画の解像度は)本当にケースバイケースで、いろいろな放送があります。中には縦360本しかないみたいな番組もあったみたいですけど、お客様が記録したものは資産として残っているものなので、きれいに再生したかったんです。

甲野:今回はわかりやすい、480i/pと720i/pだけにとどめていますが(笑)。

則竹:やってみてわかったのですが、スケーリングでスジが出てしまうのは、当然、原画解像度に戻すことで消えます。さ実は、解像度を落とすことで、ハイビジョンで録画していた番組のノイズがきれいに消えます。もともと原画の情報はハイビジョン帯域にはないので、ハイビジョン帯域の信号は全てノイズなんですね。だから、これを原画解像度に落とせばモスキートやブロックノイズはきれいに消えます。

甲野:非常に優秀なノイズリダクションになりますね。原画は全然ボケない。いいとこだらけですね。

則竹:ドット妨害についても、解像度をSDに下げるとクロマのライン相関性などが復活しますので、結果的に低減されます。思ったより効果がありました。残念な点は、解像度が外れると逆効果になるということですね。そこはもうお客さんにおまかせ、となってしまいますが。

 実際にデモ映像として、録画されたアニメ「聖痕のクェイサー」を見てみたが、確かに1080iの放送(原画は720i?)を[標準]にして特定のシーンを見ると、かなり酷いジャギーやモスキートノイズが見受けられる。しかし、これを原画に近いと思われる[720i/p]に切り替えると、明らかに輪郭線がなめらかで、周囲に発生していたモスキート状のノイズや疑似輪郭もキレイに消え、すっきりと見える。驚くべき効果だ。

 基本的に、エラーが起きるのは、映像ソース(原画)に起因する問題であるが、ユーザーのストレスを解消しようという試みとして、興味深い。なお、原画解像度変換は、基本的にハイビジョン(それもアップコンバートされた素材)に対して効果を発揮するものとなるほか、HDDやBDに録画したデジタル放送番組にのみ適用され、市販のBDビデオでは効果を発揮しない。「いろいろな事情があり、BD-ROMで実現するのは、なかなか難しい」(甲野氏)

則竹:BD-ROMは基本きれいだろうと、当初思っていたんですけど、最近は放送と同じくあまりよくないものもあると聞いていますので、これは今後の課題だなと考えています。

 なお、この機能は現時点ではアニメモードのみの機能でドラマなどには適用できない。ただし、「裏ワザ的には、アニメモードの状態で、アドバンス設定で超解像を[0]にして、HDオプティマイザーを「0」にすれば、ノーマルモードに近い画質設置になりますので、アニメ以外の素材でも同様の効果を見られます(則竹氏)」

甲野:よくできたBlu-rayタイトルをどこまで高画質に再生できるかという、いわば画質の頂点を追求する一方で、我々の目に入る映像は、もっと雑多で、あまりきれいでないという場合も確かにあります。幅を広げていろいろな高画質化をやっていこうと、最近考えています。

則竹:再生系の品質が上がってきたこともあり、従来きれいだと思っていたものの、アラが見えるようにもなりました。より、きれいな映像を見せるといういろいろな方法があると感じています。

甲野:情報量を最大限に出したうえで、抑えるものを抑えるというのも重要だと思っています。

第5世代のアドバンストAVCエンコーダを搭載し、録画画質も向上

 録画系についても、新たにアドバンストAVCエンコーダを改善し、高画質化を図った。また、新たに全録画モードで音声の2ストリーム(日本語/英語)や、字幕データの記録に対応したという。

甲野:長時間の12.5倍を追加しただけでなく、全録画モードの画質改善を行なっています。

 「シーン適応符号化の改善」により、高画質化を図ったという。具体的にはどういうことをやったのだろうか?

甲野:主にノイズを減らそう、という狙いです。シーンに応じて、エンコードのパラメータを適応制御しています。例えば、動きの少ない、もしくは中ぐらいのシーンであればモスキートノイズを従来より減らす。動きの大きいシーンでは、ブロックノイズを減らすという方向で取り組んでいます。

パナソニック AVCネットワークス社 ビデオビジネスユニット 商品技術グループ レコーダハード設計チーム 主任技師 梅迫実氏

 音質面での改善は、チューニングが中心。上位モデル「DMR-BWT3100」における2系統のHDMIや、低クロックジッタシステムなど基本構成は春モデルDMR-BWT3000を踏襲している。春の基本設計を踏襲しながら、細かいチューニングを施したのが新モデルとなる。

梅迫:今までの音響用コンデンサに加え、電源ユニットのコンデンサなどのOFC化を進めました。これにより情報量はかなり増えたと思います

 また、春モデルと同時に発売したBDプレーヤーの「DMP-BDT900」の担当と一緒に、音調整を行ないました。板金と板金の間に導電性のシートを追加するなど外装部分まで手を加えることで、細かく音調整し、さらに音を良くするよう取り組みました。


HDMI低クロックジッタシステムは既存モデルを踏襲 2系統のHDMI出力を装備 電源ユニットやコンデンサのOFC化を進めた

 DMR-BWT3100では、BDビデオなどの再生時にHDD回転を止め、高音質再生を図る「シアターモード」も引き続き搭載しているが、この運用ルールを変更している。

 シアターモード使用時に録画予約ができないのは従来どおりだが、従来はシアターモードでディスク再生を試みた際、録画予約が入っている場合などで、シアターモードの移行確認画面で[いいえ]を押すと、ディスク再生を行なわず、録画開始を待つという運用になっていた。シアターモードの解除には初期設定画面に戻り、設定を行なう必要があった。

 新モデルでは、[いいえ]を押すと、シアターモードに入らずに、そのままディスク再生を行なうという仕様になった。

梅迫:最高の音や絵を求めるのであれば、シアターモードですが、すぐにディスクを再生したいのに、初期設定に戻って[切]にする、というのはなかなか厳しい。そこで、そのままシアターモードに入らずに、使えるようにしました

 また、真空管サウンドやマルチチャンネル・デジタル・リ.マスターも32bit演算出力データをそのままDACに出力する構成となった。これらは、BWT3000の世代からユニフィエ内で32bit演算していたが、「HDMIが24bitまでなのでDACには24bitで出していた(梅迫氏)」という。

 これを内部バスで32bitのままDAC「AK4390」に出力することで、DACの能力をフルに生かして変換。表現力の向上を図ったという。

真空管サウンドもDACに32bitデータを直接入力する仕様になった シアターモードなど各種高音質化技術は踏襲

 


■ ユーザー視点で熟成した新ブルーレイDIGA

 大きなハードウェア変更はないものの、同時動作に代表される使い勝手の向上、さらに、放送転送に代表される新たな利用提案がなされている。プラットフォーム作りでは先行してきたDIGAならではの“熟成”が行なわれたモデルといえる。

 インタビュー中に、何度も出てきたのが「我々もユーザーですから」という言葉。同時動作系の緩和や、ダビング関連、再生一覧など、新DIGAで追加された機能のあちこちに、ユーザー視点が感じられるのが頼もしい。


(2010年 10月 7日)

[ AV Watch編集部 臼田勤哉]