小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第706回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

もはや空飛ぶカメラ? 手軽にドラマチック空撮Parrot「Bebop Drone」

いよいよ発売開始

 昨年9月にParrotのミニドローン 2モデルをテストした。この内、クワッドコプターの「Rolling Spider」は、スマホ・タブレットでコントロールできる簡単操作が売りだったが、空撮機能としては真下の写真が撮れるだけで、どちらかと言えば操縦を楽しむものだった。

Bebop Drone

 一方、この当時からカメラを前面に搭載した上位モデル「Bebop Drone」の開発がアナウンスされており、空撮をやるならこれ待ちといった方も多かったのではないだろうか。待ちきれずにDJIの「Phantom2 Vision+」に行った方もあっただろう。

 今年のCESではParrotもサウスホールに大きなブースを出し、Bebop Droneも大量に展示されていた。この時すでにラスベガスのAppleStoreでは機体も販売されていたが、日本で使用するためには技適認証が必要なため、購入しなかった。

 欧米から遅れること4カ月、いよいよ日本でも4月3日からBebop Droneの発売が開始された。ネット通販大手だけでなく、家電量販店でも扱っている。価格は、機体のみのタイプが70,900円。ハードウェアのコントローラ「Skycontroller」とのセットが130,900円だ。

 コントローラーを使わず、スマホのアプリから簡単に飛ばせるのは、既にRolling Spiderで紹介した通り。「Bebop Drone」でもそれは同じだが、今回はより長距離までコントロール可能な「SkyController」とのセットモデルをお借りした。空撮メインの機体、Bebop Droneでどんな絵が撮れるのだろうか。さっそく試してみよう。

よく考えられた機体設計

 Bebop Droneはイエロー、レッド、ブルー3色のカラーバリエーションがある。機体の色に合わせてSkyControllerも同じ色のものが同梱されている。今回はイエローをお借りした。

機体とコントローラは同じ色で統一

 まず機体のサイズだが、ローターも込みで横33cm、縦29cm、対角38cmと、市販のクワッドコプターとしては中型機となる。重量は機体のみで実測275g、バッテリが117g、総重量392g。ローターガードの「ハル」も加えると416gだ。

機体サイズは中級機クラス

 バッテリはケーブルで接続した後、背後から差し込むと、機体と完全に一体化する。脱落防止のためのベルトも付いている。機体の骨組みはABS樹脂だが、黄色の着色部分は発泡スチロールのような素材で軽量化が図られている。

斜めにカットされたデザインのバッテリ
本体とはケーブルで接続したのち、合体
機体の黄色い部分は発泡スチロールのような軽量素材

 ボディは実際には上下2つに分かれており、ローター部を支える骨組みの上に、ショックアブソーバーを経由してカメラおよびバッテリ、内部基板がある胴体部が乗っかっているという構造だ。天面にはGPSモジュールがあるが、表からは見えない。底部には位置ズレを検出するための小型カメラ、高度を検出するための超音波センサーが搭載されている。本機はかなりの高度まで飛べるが、高度センサーとして気圧計も搭載されている。

ボディは2層構造
4点のショックアブソーバで繋がれている
底部には小型カメラと超音波センサー

 内蔵のプロセッサは、日本向けのWebサイトには「パロットP7プロセッサー、ダブルコアCPU Cortex 9」とあるが、おそらく「デュアルコアCortex A9」のことだろう。これはAndroidの7インチタブレットなどで使われるARM系のプロセッサである。電源を入れると放熱のためか、やや大きな空冷ファンの音がする。

 気になるカメラだが、レンズは180度の魚眼レンズで、F2.2。やや下向きに角度を付けて搭載されている。センサーは1,400万画素のCMOSで、解像度は4,096×3,072ドット。ただし記録はこのうちの1,920×1,080ドット/30fpsとなる。つまり、センサーによるHD切り出しだ。画質モードなどはなく、MPEG-4 AVC/H.246の動画か、JPEGもしくはDNGの静止画となっている。Webの仕様表では「RAW」とも記載されているが、現時点ではこれ以外はメニューに出てこない。

180度魚眼レンズを備える

 バッテリは充電におよそ1時間、飛行時間はおよそ11分となっている。ただバッテリ切れギリギリまで飛ばすわけにもいかないので、実際には7〜8分といったところだろう。

専用充電器で1時間充電

 Bebop Droneは、本体とスマホ/タブレットがあれば操縦できる。専用のコントロールアプリをインストールし、本体とWi-Fi接続すれば、一通りの操縦や撮影が可能だ。本体とスマホによる操作については、すでに僚誌PC Watchで石井英男氏のレビューが掲載されているので、そちらを参考にしていただきたい。

 今回はスマホ/タブレットではなく、SkyControllerで操縦する。別途コントローラを使う理由は、2つある。一つは、ハードウェアコントローラに慣れた人にとっては、スマホのジャイロセンサーを使った操縦よりも、細かい操作が可能になること。もう一つは、飛行範囲が大幅に拡張されることだ。本体とスマホの直接接続では、およそ300m程度しか電波が届かないが、SkyController搭載のアンテナを使う事で、最長2kmまでのコントロールが可能になる。

細かいコントロールには必須のSkyController
作りはかなり本格的
大型アンテナを装備

 実際に2kmも離れると、もう機体は目視では見えない。したがってリアルタイムで送られてくるカメラ映像(FPV:First Person Viewing)を見ながら操縦する事になる。長距離のFPVを実現するためにも、SkyControllerは必須というわけだ。

 SkyControllerは横幅およそ38cmと、コントローラとしてはかなり大型だ。重量はバッテリ込みで約1.5kg。バッテリーは本体と共通で、背面に装着する。中央部にタブレットを挟み込む機構があり、これも含めての総重量は2kgを超える。これでは長時間持っていられてないので、首から提げるためのストラップが付属している。

バッテリは背面に装着
中央部にタブレットをはめ込める

 Wi-Fi接続は、まず機体とSkyControllerを接続、その後SkyControllerとタブレットをWi-Fi接続することで、本体からの映像も、SkyControllerの長距離アンテナ経由でタブレットに伝送できる。

 レバーの操作方法は、日本で売られているモデルはいわゆる「モード2」になっている。モード1とモード2の操縦法の違いは以下のようになっている。

左レバー 右レバー
モード1 前進後退 上昇下降
左右に旋回 左右移動
モード2 上昇下降 前進後退
左右に旋回 左右移動

 一方機体のカメラの切り出し位置は、右上のジョイスティックで行なう。モード2では、機体の前進後退や左右移動といったカメラ移動が右手になり、さらにカメラポジションも右手になるので、1人で両方を操作するのは至難の業だ。カメラコントロールまで入れれば、モード1のほうが操作は楽だろう。なおParrotでは、ソフトウェアでモードの変更ができるように開発中だという。

右側のジョイスティックでカメラの切り出し位置を制御

さすがの安定感

 飛ばしてみる前に、制御用アプリのFreeFlight3.0で、いくつか設定を行なう必要がある。まずローターガードのハルを使用するか否かを設定する。屋内では安全のために付けておいた方がいいだろうが、屋外ではこの手のガードは風の影響を受けやすく、操作が難しくなってしまうので、付けないのが普通である。

ローターガードのハルは簡単に着脱可能
ハルを装着したところ

 そのほか録画モード、操縦モードなどを選択する。今回最大高度は30mに設定した。ネットワーク設定では、室内か屋内かを選択する。本機は2.4GHz帯と5GHz帯の両方を使用できるが、比較的空いている5GHz帯は許認可の関係で、室内でしか使用できない。

ハルの利用有無を選択
動画か写真の記録モードを選択
操縦モードと最大高度を決定
ネットワーク設定では電波の混雑状況がわかる

 屋外で飛ばす場合は、なるべく電波利用の少ない地域を選んで飛ばすべきだろう。なおキャプチャ画面は筆者宅で撮影したので混雑しているが、今回フライトした場所はほぼ無人だったので、2.4GHz帯でも自分の電波しか補足できなかった。

 機体とSkyControllerがリンクすると、グリップの支柱部分のLEDでWi-Fiの強度、コントローラのバッテリ残量、機体のバッテリ残量が示される。録画すればRECボタンが赤く点灯する。タブレットなしでも、最低限のことはコントローラだけでわかるようになっている。

機体とリンクすると、グリップ下の支柱部分のLEDがステータスを示す

 コントローラ脇にはHDMI端子もあるので、ここにヘッドマウントディスプレイやモニターを接続すれば、FPVの映像を有線接続で確認する事もできる。

 ではさっそく飛ばしてみよう。SkyControllerでの操縦は、一般的なクワッドコプターと似ている。ただ離陸と着陸は、右手側にある専用ボタンを押すだけである。離陸ボタンを押すと、その場で1mぐらい浮き上がって静止する。録画は左手のグリップ部にあるボタンだ。

 位置のズレは下向きのカメラで地面を補足して、自動的に修正される。ホバリングのためだけに細かい操作が必要な、いわゆるラジコンクラスの機体と違い、自動で姿勢制御まで行なうのがドローンのいいところである。そうは言っても風が吹けばゆっくり流される感じもあるので、撮影のために同じ位置で浮いていたいのなら、多少の微調整は必要だ。

機体とリンクすると、グリップ下の支柱部分のLEDがステータスを示す

 この機体でも、Rolling Spiderのようなアクロバット飛行は可能だ。だがここまでの機体で宙返りなどのパフォーマンスをしても、大仰すぎてあまり面白くない。操縦を楽しむより、撮影を楽しむ機体として使った方がメリットが大きいだろう。

飛行しているところ

 関東地方は今桜も終盤で、最後の見頃を迎えている。今回は桜並木を撮影してみた。桜の木を下から上へ上がっていき、向こうの風景が見えるといったショットは、これまでは大がかりなクレーンを持ってこなければ撮影できなかったが、ドローンを使えば簡単に撮影できる。

桜の木を上にゆっくりクレーンアップ
up_1080p.mov(101MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 垂直に上がるだけなので、カメラ自体もそれほど傾くわけではないが、リアルタイムで補正され、なめらかだ。画質的にはフルHD/30fpsで音声なしの30Mbpsなので、かなり良好だ。遠景の細かい木々の枝などはもう少し解像度が欲しいところではあるが、このあたりはレンズとセンサーの限界だろう。欲を言えばきりがないが、歪み補正もきちんとしており、画質的にはテレビ放送でも使えるレベルである。もっとも最近ではGoProの画質でもガンガンに放送で使われているので、番組演出にハマれば画質はあまりうるさく言わなくなってきている。

 続いて桜並木の下を直進、方向を変えて横向きに飛んでみた。横向きでは機体は進行方向に傾いているので、水平ではないはずだが、カメラの補正機能で水平を保っている。いわゆるジンバル付きの機体ならこれぐらいは当たり前だが、カメラ一体型の小型軽量機体で、この補正力と映像の安定感はすごい。

桜並木を移動
side_1080p.mov(123MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 直線距離でおよそ50mぐらいの移動になるが、これぐらいでも離れれば機体の向きは見えない。FPVの画像が頼りだ。ただFPVの映像は、ディレイが15フレームぐらいあるので、これだけを頼りに対象物に接近するのは危険である。ぶつかりそうと思ったときにはすでにぶつかっている可能性もあるわけだ。基本的には目視で状況が確認できる範囲に留めるべきだろう。FPVのフレームレートは、状況によって変わる。調子がよければ30fpsぐらいで確認できるが、ところによってはコマが飛ぶことも多い。

FPVの画像。機体の傾きはアイコンで示される
事前に現地の地図データをダウンロードしておけば、衛星写真で現在地が確認できる

 カメラの見回し範囲は、センターを中心にして上下左右およそ90度といったところである。センサーの読み出し範囲を変えているだけなので、撮影されているパン・チルトはなめらかだが、FPVではディレイがあるため、何かを狙おうとしても大抵“行きすぎ”る。上下はカメラを動かすしかないが、左右は目視で機体を見ながら、機体ごと振った方が確実だろう。

30m上空でカメラの可変範囲を確認
pan_1080p.mov(105MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

高度な撮影も可能

 次に自転車に乗る人を追いかけるというシーンを撮影してみた。この場合、機体のスピードや位置取りなどはFPVが頼りだ。ディレイはあるものの、ある程度スピードやコースが一定ならば、それほど難しくはない。正面からの撮影は、逆に機体を自転車のほうで追いながら調整してもらうことでカバーできる。ちょっとしたドラマでこういったシーンがあると、ずいぶん演出としても拡がるだろう。

走っている自転車を撮影
follow_1080p.mov(141MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 最後にGo Home機能を試してみた。これは機体の位置や方向を見失って、自力で機体を戻せなくなった場合に使える機能だ。コントローラ右手側の家マークのボタンを押すと、機体は離陸した地点向かって方向を変え、自動で戻ってくる。高さは公式サイトには2mまで下降と書いてあるが、試したところ静止位置は3mぐらいではないかと思われる。そこまで戻ってきたら、あとは安全に着陸できる場所まで機体を誘導し、着陸ボタンで降ろす。
 撮影した映像は、8GBの内蔵フラッシュメモリに記録されている。映像はWi-Fi経由でタブレットなどに転送するか、microUSB端子を使ってPCなどに吸い上げるという仕組みだ。うっかり撮影を停止する前に電源を切ってしまったファイルは、タブレットではエラーが出て転送できない。だがPCに接続してのファイルコピーは可能だ。USB接続という手段も用意してあるのは、なかなかよく考えられている。

撮影した映像はタブレットに転送して内容を確認する

 ちなみにファイルストラクチャからすると、中身はAndroidのようである。つまり空飛ぶカメラというよりは、“空飛ぶスマホ”と言った方が正しいのかもしれない。

 なお撮影された動画を解析してみると、フレームレートは29.455fpsになっていた。29.97fpsに少し足りないため、一般的なビデオカメラの映像と合成すると、微妙に尺がずれていく事になる。もう少し正確にフレームレートを出して欲しいところだ。

総論

 これまで、キチンとした撮影ができる最低限のオールインワン機材といえば、やはりDJI「Phantom2 Vision+」というのが定説であった。以前は15万円弱で販売されていたが、現在は円安の影響もあってか、2万円ほど値上がりしているようだ。

 一方Bebop Droneは、機体だけなら7万円強で購入でき、基本的な撮影は十分に可能だ。SkyController付きのフルセットは価格が約2倍になるが、飛行距離が2kmまで伸ばせ、細かい制御も可能になるため、ホビーではあっても本格的に撮影したい人にとっては、Phantom2 Vision+よりもちょっと安い。

 機体制御は自動で、安定度も高い。キャリブレーションも難しくないので、誰でも空撮できるというのは嘘ではない。しかし機体もそこそこ大きく、カメラも高性能なので、使う場合は、ドローンを飛ばす際のマナーや常識、周囲への安全や騒音、プライバシーといった事に十分配慮する必要があるだろう。

 ドローンへの期待は、日に日に高まっている。元々は軍事用に開発されてきた技術ではあるが、事故、災害時など人が行けない場所の探索、緊急物資の輸送など、平和利用の方向にも拡がってきている。まさに物理インフラの常識を変えつつあるところだ。

 このような機材を使って何ができるのか、いろんなトライアルがこれから起きていく事だろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。