小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第715回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

横綱相撲完結!? ワイヤレスTV「新プライベート・ビエラ」

何でもアリの10型、約4万円で買えるデッカイ19型を試す

進化するポータブルテレビ

 どこにでもテレビを持っていきたいというニーズは、ずいぶん昔から存在した。1960年に世界初の直視型ポータブルトランジスタテレビとして、ソニー「TV8-301」が登場。2年後にはマイクロテレビこと「TV5-303」が登場し、世間をあっと言わせた。今から50年以上前の事である。

今回取り上げるプライベート・ビエラ。かなり性格の違うUN-10T5(左)とUN-19F5(右)

 アナログ放送時代には、カシオら小型化が得意なメーカーがポータブルテレビを積極的に商品化したが、デジタル放送以降はワンセグ放送が存在したため、次第にケータイに市場を奪われていった。

 一方でチューナ部からWi-Fiを使ってディスプレイに伝送する、いわゆるワイヤレステレビという商品がでてきたのが、2000年だった。当時商品化された「エアボード」は、後継機も産みながら、最終的には「ロケーションフリー」という形で開花したのは、記憶に新しいところである。

2012年に登場した「DIGA+」

 さてそんなワイヤレステレビだが、一方で防水機能を強化した「お風呂テレビ」というジャンルを生み出している。パナソニックでは、防水のワンセグテレビ、ビエラ・ワンセグこと「SV-ME75」を2009年に商品化しているが、当時は本体での直接受信を行なっていた。その後2012年には、DIGAにワイヤレスモニタをプラスするという格好で、「DIGA+」を商品化。価格が4万円程度、本体はレコーダとして使えるということで、本格的なお風呂テレビ時代の幕開け……となったのかどうかはよくわからない。

 お風呂に限らずキッチン等の水回りに置くテレビとしても、防水機能はありがたいはずだ。昨年パナソニックは、ワイヤレスディスプレイ付きテレビチューナーを「プライベート・ビエラ」と銘打ち、10型と15型の2モデルを投入した。ここに勝機アリと睨んだのか、この6月には一気に5モデルを投入した。モデル名と価格は以下の通り。

モデル名 UN-15T5 UN-10T5 UN-15E5 UN-10E5 UN-19F5
モニタ
サイズ
15型 10型 15型 10型 19型
店頭
予想価格
81,000円
前後
61,000円
前後
65,000円
前後
45,000円
前後
50,000円
前後
防水
タッチパネル
バッテリ内蔵
マグネット
タッチ式
ACアダプタ
リモコン 別売 別売 防水型
付属
防水型
付属
付属
チューナ 視聴×1
録画×1
視聴×1
録画×1
視聴・録画×1 視聴・録画×1 視聴・録画×1
内蔵HDD 500GB 500GB
USB HDD対応
ブラウザ
おでかけ番組
外からどこでも
スマホで視聴

今回は中でも注目度の高いと思われる小型で全部入りの10型「UN-10T5」と、19型と大型だが低価格な「UN-19F5」の2モデルをお借りした。同じ技術を使いながら性格の違うこの2モデル、さっそく試してみよう。

小さいが高機能な10T5

 19型の「19F5」より小型の「10T5」のほうが高いということで、奇妙に思われる方もいるかもしれないが、スペックを見ると機能的にはかなり違うことがわかる。この2モデルに限定してポイントを整理しよう。まず10T5は防水仕様だが、19F5は防水機能は無く、部屋で落ち着いて見るというのが前提だ。操作は10T5はタッチパネルなのに対し、19F5はタッチパネルではなく、テレビリモコンでの操作となる。

モデル名 UN-10T5 UN-19F5
モニタ
サイズ
10型 19型
防水
タッチパネル
バッテリ内蔵
マグネット
タッチ式
ACアダプタ
ブラウザ
おでかけ番組
外からどこでも
スマホで視聴

 また10T5はディスプレイ部にバッテリを搭載しており、電源無しで視聴できるが、19F5は常時ACアダプタから給電する必要がある。まったく同スペックで19インチを作るとどうしても高価格になってしまうが、19インチではやらなそうなことをどんどん外して、買いやすい価格にまとめたというところがポイントであろう。

10インチ「UN-10T5」
19インチ「UN-19F5」

 ではまず10T5のほうから見ていこう。お借りしているのはブラックだが、ホワイトモデルもある。ディスプレイサイズは10インチで、解像度は1,024×600ドット。重量は830gと、同サイズのタブレットよりは若干重い。

小さいので持ち運びはラクラクだ

 今回の特徴は、従来型のディスプレイよりもガツッとしたスタンドが付いているところだ。縦置きでは5段階に角度が固定できるほか、平置きにもなるという作りだ。背中はヒンジ部分が円筒状に太くなっているが、おそらくこの中に18650型バッテリが3本ぐらい入っているのではないかと予想する。

頑丈な作りを思わせる10T5
背面には金属製のスタンドが
写真は4枚だが、スタンドは5段階で固定できる。ディスプレイの前側にスタンドを持ってきて、ディスプレイを“うつむかせる”事もできる。浴槽につかって視聴する時に便利なスタイルだ

 充電は付属のACアダプタで行なうが、端子先端はマグネットでくっつくようになっている。防水仕様だが、充電端子は露出したままでOKのようだ。内蔵バッテリでの動作時間は、約3.5時間。

ACアダプタはマグネット式の防水仕様

 電源端子奥にはヘッドフォン端子があり、ここは防水キャップでカバーされているが、キャップ無しでも防水仕様の端子になっているそうだ。同じ側面にはmicroSDカードスロットもある。本体(チューナ部)で録画した番組をこのカードに転送し、本体の電波の届かない場所で視聴する事もできる。ボタン類は右サイドに電源ボタンがあるのみで、操作はすべて画面タッチで行なう。

ヘッドフォン端子。防水キャップでカバーされているが、キャップ無しでも防水仕様だ
録画番組を転送できるmicroSDカードスロットを装備

 スピーカーは底部にあり、アクリルのガードが音を前向きに反射させるよう設計されている。底部にはシリコンの足があり、濡れたタイルの上でも滑らない。

 チューナ部も見ておこう。外寸は204mm×156×44mm(幅×奥行き×高さ)で、だいたい1Uハーフラックサイズぐらいだと思っておけばいいだろう。上部に電源とリンクボタン、あとはフロントパネルにステータスLEDがあるだけの、シンプルなボックスだ。

スピーカーは底部に
チューナ部はハーフラックサイズの箱型
上部に電源とリンクボタンがあるだけ

 背面には地デジとBS/CS110デジタルのアンテナ端子があり、HDMI出力も1系統ある。無線LAN(11a/b/g/n)も搭載しているが、有線LANのポートもある。録画用に500GBのHDDを搭載しているが、別途外部USB HDDも使える。B-CASカードはmicroタイプが1枚付属する。

背面端子類はレコーダに近い

 本体とディスプレイ部の接続は、Wi-Fiによるダイレクト接続がデフォルトだが、家庭内のWi-Fiを経由することもできる。このあたりは、家庭内のお部屋ジャンプリンク機能付きの機器と併用したいかどうかで考えればいいだろう。

使用感も上々の10T5

 では実際に10T5を使ってみよう。普通のテレビと違うのは、電源を入れてすぐ画面が出るわけではないという事だ。まず内部OSが起動し、その後Wi-Fiで本体と接続する時間が必要になる。時間にしておよそ20秒程度。これがPC的なものだと思えば納得するが、テレビだという認識でいると、ちょっとイラッとするかもしれない。

起動のたびに毎回チューナ部と接続する時間が必要

 起動すると、現在放送中の番組の上にホーム画面が表示される。そのまま放送中のテレビを見てもいいし、録画番組を見てもいいというスタイルだ。予約録画は、EPGから取得した番組表を使って行なうという、至ってオーソドックスなスタイル。チューナは録画用と視聴用の2つが搭載されているが、2番組同時録画には対応しない。

10T5のホーム画面。WEBブラウザまで搭載している

 ニュースや天気情報番組を自動で録画する機能もある。これは昨今のビエラに搭載されている機能で、いつでも最新のニュースや天気をチェックすることができる。ただこの機能で録画予約された番組と、手動で録画予約した時間帯が被っていると、二重予約の警告画面が表示される。これは当然手動予約を優先し、ニュースの自動録画は中止するといった挙動が欲しいところだ。

ニュース番組の自動録画機能も搭載
番組表は画面が小さいため、大きな文字のタブ型

 今回のテスト視聴はまず、本体を仕事部屋に置き、廊下を挟んで反対側にあるキッチンで使ってみた。接続は本体とダイレクト接続である。

 最近の家には多いカウンターキッチンであれば、カウンター越しにリビングのテレビが見られるようになっているところも多いだろう。だが昔ながらの水回りでは、壁に向かって料理するような作りになっている。うちもそうなのだが、この構造だとテレビが真後ろにあるので、調理中はテレビを点けても見られない。

 だが10T5があれば、壁際にちょっと立てかけておくだけでテレビが楽しめる。家では普段18時半ぐらいから調理開始なので、丁度ニュースを見ながら料理できる事になる。これが用途的にはピッタリハマる。

 チャンネルチェンジも画面タッチで済むし、濡れた手で触っても拭き取ればいいので、扱いは楽だ。もし、粉だらけの手でリモコンを触らなければならないとしたら、洗えないし拭き取れないしで大変である。なお非タッチパネルの姉妹機「Eシリーズ」には防水のリモコンが付属しており、汚れても洗えるようになっている。

 チャンネルの変更やボリューム操作は、画面上に出てくるパネル上で操作する。チャンネルの変更は数字をタッチするという、至って普通のインターフェースも使えるが、画面の横フリックで切り換えも可能だ。さらに画面下部の「チャンネルを選ぶ」をタッチすると、現在放送中のEPG情報が一覧表示され、そこから選ぶ事もできる。

画面をタッチすると、操作パネルが出てくる

 続いて定番ソリューションとも言える、お風呂場で視聴してみたい。過去同様の製品を同じ環境に持ち込んだことがあるが、従来製品は2.4GHz帯しかサポートしていないものが多かった。ご存知のように、2.4GHz帯は利用が加速度的に増えており、帯域が混雑している。さらに言えば、お風呂場は大抵家の中の端の方にあるので、隣家に近い位置となる。そうなるとお風呂場では隣家の電波のほうが強くなり、自分ちの電波は拾いにくくなることも多い。

 今回のシリーズは全モデルとも5GHz帯を採用、こちらは帯域がそれほど混雑していないこともあり、伝送される映像はかなり安定している。お風呂テレビもかなり現実的なものとなった。

 また防水のスマートフォンをお風呂で使ったことがある方は、ある現象にお気づきだろう。スマホ本体は濡らしていないが、湿度が高いお風呂の中で冷えたガラスが結露してしまい、誤動作が頻発することがある。水は電気を通すので、水滴が静電式タッチパネルを誤動作させるわけだ。

 本機ではこの現象が起こらないよう、画面のタッチセンサーをロックできる機能がある。画面に出る錠前のマークを3秒以上押し続けると、画面操作がロックされる。それ以降は画面をタッチしても、錠前のマークしか出てこなくなる。解除はその錠前マークを3秒以上押し続ける。

 本体部にHDMI端子があるが、ここにテレビなどHDMI入力ができる機器を繋いでおくと、テレビチューナとしても動作する。本機の場合は2チューナ搭載しているので、HDMI出力とワイヤレスディスプレイ側と別々の番組を視聴することも可能だ。ただ本体側のチャンネル操作は、ディスプレイ側で行なうしかないので、自由度はそれほどない。

ディスプレイに表示される本体操作用のリモコン画面

もっと大型を! の声に応えた19F5

 では続いて大型モデルの19F5を試してみよう。ディスプレイ部を正面から見ると、10T5をそのまま大きくしただけのように見えるが、バッテリを搭載しないため、背面に出っ張りがない。またスタンドもグリップタイプではなく、背面から斜めに引っ張り出すタイプとなっている。背面の上部にはかなり深い取っ手が付けられており、持ち運びの指がかりを良くしている。

手前が10インチの10T5、奥が19インチの19F5
ポータブルテレビとしてはやや大型の19F5
スタンドは背面から引っ張り出すタイプ
かなり指がかりをの深い取っ手

 ACアダプタの端子は、バッテリを搭載しないため簡単に外れても困るということで、よくある同軸型のコネクタとなっている。ボタン類は背面にあり、電源ボタンをはじめボリューム、チャンネルアップダウン、放送波切り換えと、一通りのものが揃っている。リモコン操作が基本だが、リモコンが見当たらなくても最低限の動作は本体だけでできるようにしてあるということだろう。

ACアダプタは一般的な同軸端子で接続
背面に操作ボタンが並ぶ
普通のテレビリモコンが付属

 チューナ部の方も見てみよう。外見は10T5のものとほとんど変わらず、背面の端子類も同じだ。唯一の違いは、正面に描いてある型番ぐらいである。ただ内部的には結構違っており、チューナ数は視聴と録画が兼用の1つしかない。したがって録画中は、裏番組の視聴ができない。

見た目は10T5と同じに見える19F5のチューナ部
端子類は全く一緒

 またHDDを内蔵していないので、そもそも本体だけでは録画ができない。録画するには、別途USB HDDが必要になる。ホームメニューも機能が少なく、ニュースの自動録画機能もない。WEBブラウザ機能もない。

ホームメニューも機能が少ない
番組表は画面サイズが大きいので、レコーダなどと同じ

 ないない尽くしではあるが、19インチのワイヤレステレビが実売4万円強といった価格は、魅力的だ。筆者の自宅には2階にアンテナ線をひいてないので、テレビを見るには必ず1階に降りなければならなかった。さっそく本体を1階に設置、テレビを2階に持っていった。接続は、家庭内Wi-Fiを通してみた。

 ルータはバッファローの「WHR-1166DHP2」で11acにも対応しているが、19F5のほうが11acに対応していないので、11a接続である。普段から通信も不自由なくよく通る方なのだが、テレビ視聴も問題なく行なう事ができた。バッテリがないので常にACアダプタを接続しないと見られないが、サイズがサイズなので、頻繁にあちこち持ち歩くというより、半固定といった使い方になるだろう。

 液晶パネルも視野角が広く、斜めから見る場合も不満はない。1チャンネルのみだがレコーダ機能も付いており、スマホアプリ「Panasonic Media Access」を使って、録画した番組を宅外視聴する事も可能だ。一人暮らしの学生に持たせるような使い方としては、機能的にも十分だろう。

総論

 2012年にレビューしたDIGA+は、ほぼDIGAのフル機能が付いており、まさに名前の通りレコーダにワイヤレスモニターが付いたという製品だった。一方プライベート・ビエラは、レコーダとしての機能はそれほど高いわけではなく、あくまでもテレビとしての使い勝手を優先した作りとなっている。

 ただ、テレビというのであれば、本体にはHDMI出力ではなく、入力が欲しかったように思う。専用ディスプレイがあることがアドバンテージなのに、わざわざ別のモニタを繋いだりするだろうか、というのが素朴な疑問だ。それよりも、カメラの外部モニタになるといった使い方がしたかったところだ。

 ただ今回実際に試してみて、4万円程度でワイヤレステレビが買えるのか! という素朴な驚きがあった。今回はテストしていないが、すでにレコーダのDIGAがあれば、お部屋ジャンプリンクを使って録画番組もワイヤレスで楽しめる。スマホで見ればいいじゃないかという話もあるが、スマホはスマホでコミュニケーションに使うわけだから、どうしても2つのディスプレイは必要だ。

 そういう用途にも、上手くハマる製品のように思えた。

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プライベートビエラ
UN-10T5
プライベートビエラ
UN-19F5


小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。