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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第577回:DIGAに無線モニタをプラス! DIGA+を試す

〜お風呂視聴もイケる自己完結型レコーダ〜


■ライフスタイル提案型テレビ?

 どうやらワイヤレスでテレビを見るというソリューションは、タブレットの台頭と共に日本で注目されている。先週のiPad/iPhone用「デジタルTVチューナ」も、以前から気になっていた人は多かったようだ。

 まずタブレットありきからスタートする方向では、チューナ/レコーダはタブレットの周辺機器という扱いになる。一方レコーダからスタートする方向では、タブレットが周辺機器という事になる。

 どちらが使いやすいかは、各ユーザーのスキルに大きく左右される。最近パナソニックがテレビコマーシャルなどで訴求している「DIGA+」は、どうも女性にターゲットを絞った商品のように見える。公式サイトの活用事例写真も女性がメインだ。

 ラインナップとしては、10.1型の「UN-JL10T1」と、19型の「UN-JL19T1」の2タイプがあるが、今回は10.1型のモデルをお借りしている。店頭予想価格で8万円前後となっているが、すでにネットでは5万円台まで下がってきているようだ。

 従来ワイヤレステレビというのは、主に男性のユーザーを想定したものだった。休日にベランダでビール飲みながらゴルフ中継を見るとか、そういうシーン想定がされていたものだ。だがDIGA+の10.1型は、防水仕様で(19型は非防水)、お風呂テレビという側面もある。半身浴しながらゆっくりドラマ、というのはいかにも女性ウケしそうだ。

 ワイヤレステレビ、特にお風呂でテレビというのは、家電メーカーが以前から取り組んでいる分野ではあるが、性能的にも価格的にもこなれたなー、というのが今回のDIGA+である。さっそくその使い勝手を試してみよう。




■小さくても中味は充実

本体はネットワークプレーヤー程度のコンパクトさ

 本製品は、ディスプレイ部と本体部に分かれている。まずは本体部から見てみよう。サイズ的にはネットワークプレーヤーぐらいのサイズで、外形寸法183×180×33mm(幅×奥行き×高さ)。小型のワイヤレスアンテナが横に付いている。

 外観は単なるテレビチューナに見えるが、320GBのHDDを搭載した、ちゃんとしたレコーダである。詳しくは後述しよう。

 光学ドライブがないので、正面には開く部分はどこにもない。電源と、ディスプレイとのリンクボタンがあるぐらいで、あとはステータスLEDがいくつかあるだけである。

 背面に回ってみよう。地デジと衛星放送系のRF端子があり、スルーもちゃんと付いている。コンパクトながらきっちり手を抜いていない設計には好感が持てる。端子の形がD字型に潰れたようになっており、筆者はこういうタイプは初めて見た。特殊なケーブルは不要で、普通のF型接栓が繋がるが、どういうメリットがあって採用したのか興味あるところだ。


正面には電源とリンクボタンがあるだけ D字型のRF端子がユニーク
B-CASカードは背面に挿入

 チューナはダブルチューナだが、ダブル録画はできない。録画は1系統のみで、もう一つは放送をモニタに転送するライブ視聴用である。B-CASカードはminiタイプで、3波対応のものだ。

 Ethernet端子はネットワーク接続のためにあるが、ホームネットワークの無線LANに繋ぐ事もできるし、本機自体をアクセスポイントにすることもできる。このあたりは家電とはいえ、もはや当たり前の機能になりつつある。

 USB端子は、外部HDDを接続するためのものだ。ただ外部HDDに直接録画することはできず、いったん内部HDDに録画したものを保存のためにダビングするためのものである。

 標準HDMI端子を備えており、テレビに繋ぐことで普通のDIGAとしても機能する。電源も直挿しで、ACアダプタではない。この小さいボディの中に電源まで入っているということだ。


 リモコンも付属している。最新のDIGA上位機のリモコンはタッチセンサー付きだが、それよりは簡素化されたものだ。ただ、機能的にはほぼ従来型DIGAと遜色ない。「もっとTV」ボタンが付いているあたりは、さすが最新のレコーダである。

 ディスプレイ部を見ていこう。一見するとAndroidタブレットのようにも見えるが、汎用的な機能はなく、テレビ視聴専用ディスプレイである。解像度は1,024×600ドット。

本体とディスプレイを並べたところ。10インチディスプレイよりも本体が小さいことがわかる 付属リモコン。「もっとTV」ボタンがポイント 10.1型のディスプレイ部

 10.1型とは言うものの、画面は16:9なので、一般的な10型タブレットよりも横に長い。また額縁部分もかなり幅があるので、iPadなどよりは一回り大きい印象だ。重さは820gで、iPadよりは重いが、両手なら持っていられないほどでもない。

 厚みもそれなりにあり、iPadの倍ぐらいである。背面上部が少し膨れているのは、おそらくバッテリースペースだろう。持ち運び用のハンドルのようなものはないが、背面がエンボス加工されており、滑りにくくなっている。外形寸法は275×15.5×184.5mm(幅×奥行き×高さ)だ。

真横から見たところ。上部が少し膨らんでいる 背面はエンボスによる滑り止め加工が

 ボタン類としては上部右肩に電源ボタンがあるのみで、額縁部右の音量やホームボタンはタッチ式。画面そのものもタッチスクリーンになっており、メニュー操作はタッチで可能だ。

 電源ボタンの横には、ヘッドフォン端子と充電用のACアダプタ端子がある。もっとも充電用にはクレードルも付属しているので、そちらを使うというのが普通だろう。なおこの端子は防水仕様ではないので、お風呂などで使う時はしっかりフタをしなければならない。

 クレードルは、背面からACアダプタを挿す作りになっており、ディスプレイを立てかけると充電されるようになっている。両脇には音を前に送るようダクトが付けられており、日常的な視聴はクレードルに載せて使うことになるだろう。

電源ボタンと防水用のフタ 背面に充電用の接点が 重厚なクレードル。ACアダプタを挿して充電にも対応

 これ以外にもお風呂用のスタンドも付属している。充電機能はなく、単に立てるだけのものだが、底部に吸盤がついており、これをタイルなどに固定して使う。ワイヤレステレビセットとして、かなりよくできている。

吸盤付きお風呂スタンド 平滑な面ならどこにでも固定できる



■快適なワイヤレス視聴

ネットワークへの接続は2タイプから選択

 ではまず、ディスプレイでの視聴環境を見ていこう。本体とのリンクは、ダイレクトに接続する場合、本体のリンクボタンを5秒以上押したのち、ディスプレイ側のボタンをタップするだけという簡単さだ。

 そのほか、ディスプレイと本体の両方をホームネットワークに接続して、既存の家庭内Wi-Fiを利用して視聴するというリンク方法もある。ただ、これはホームネットワーク全体のトラフィックに左右されるので、ベストなパフォーマンスが欲しい場合は、ダイレクト接続のほうがいいようだ。

 リンクされていれば、次からは電源を入れるだけでテレビ視聴が可能だ。このディスプレイだけで基本的な設定はできるので、テレビがなくても最低限の機能は使うことができる。ただ、ディスプレイ側にはスリープモードのようなものはなく、電源OFFからテレビが映るまで、毎回30秒ぐらいかかる。

シンプルな「ホーム」画面

 ホームボタンは「予約する」、「テレビを見る」、「再生する」の3機能があるのみで、あとは「設定する」だけである。またテレビ画面をタップすると、チャンネル切り換えの12キーや、音質、画質設定などへダイレクトにアクセスできる。ホームボタンから操作するより、この画面を使った方が便利だろう。


テレビ視聴中に画面をタッチすると、コントローラが表示される

 予約は、「日付を選んで予約する」か、「今日の番組を予約する」の二択になる。普通に番組表を見ながら予約したい場合は、「今日の番組を予約する」を選ぶ。

 番組表は、テレビ局ごとに見ていくスタイルで、情報量はかなり少ない。普通のタブレットよりもかなりテレビ的GUIだと言える。液晶の解像度は1,024×600ドットなので、もう少し精細なGUI表示も可能だろうが、そのあたりはタブレットに非ずということだろう。ただ画面スクロールもレスポンスが良く軽快に動くので、操作上の不満はない。


予約機能はかなりシンプル 番組表はチャンネル単位で表示

 番組予約は、予約した番組をタッチして、「この番組のみ」か、毎週、毎日といった選択をする。

 予約時に録画画質の設定は出てこない。「設定」の録画モード設定で指定した画質モードで予約録画されるだけだ。選択肢としては、DR、3倍録、5倍録、15倍録から選べるようになっている。

予約設定もシンプル 画質は4タイプから選択

 本体から転送されてくる映像は、帯域を考えれば当然圧縮されているはずだが、受信状態が良ければ画質的な荒れは感じない。ただ普通のテレビと比べると、1秒ぐらいディレイがあるようだ。映像品質は無線優先と画質優先の2モードがあるが、自動に設定しておけば無線LANの実行速度によって自動的にモードが変わる。

 テレビ的な設定としては、画質・音質ともにモードを持っている。画質ではスタンダード、ダイナミック、ナイトのほか、ユーザーがカスタマイズできる詳細設定がある。ただ、明るさ、色の濃さ、色合いが変えられる程度である。

通信と画質のバランスは自動で十分対応できる 画質も音質もモード選択が可能 画質設定はマニュアルで調整もできる

 音質はスタンダード、シニア、お風呂の3モードがある。シニアは高域を補強しているのがわかるが、お風呂モードは正直何をしているのかわからない。説明書には「反響を抑える」という説明がなされているが、スタンダードとシニアの中間ぐらいの低域削減量のように聞こえる。低域がワンワンしてしまうのを削減するということかもしれない。



■テレビに繋げば普通にDIGA

小型ボディながら、DIGAのフル機能を装備

 さて、これまで付属ディスプレイだけでできることを見てきた。こうしてみると、録画もできるワイヤレステレビとして作り込まれた製品というイメージを持たれるかもしれない。しかしHDMI端子を使ってテレビなどに接続すると、そのイメージは一変する。

 リモコンのスタートボタンを押すと、まったく普通にDIGAのメニューが出てくる。機能的にはシングルチューナータイプのDIGAとほぼ同じ機能が乗っていると考えていいだろう。

 DIGAの小型モデルは、以前「DMR-BF200」をレビューしたことがある。本機は光学ドライブこそ乗っていないが、BF200よりも小さく薄くなり、逆に機能的には増えている。たった2年でここまで進化するとは驚きである。

 画質モードはプリセットでは4モードしかないように見えるが、サブメニューボタンを押すと通常のDIGAのように、かなり細かい単位で画質を選択できる。表に見えるプリセットとしては4つしか見えないというだけだ。

 番組表も付属ディスプレイと違い、フル機能が利用できる。まもなくロンドンオリンピックの開幕だが、これには「関連番組まとめて検索」が役に立つだろう。各競技別に複数の番組を一発で検索、予約できる。特定のスポーツのファンであれば、相当便利な機能だ。


サブメニューに入れば画質も細かく選べる 番組表もフル装備 オリンピックの特定の競技を一発予約
外部HDDへのダビング機能を搭載

 録画は内蔵HDDにしかできないが、いかんせん320GBしかなく、イマドキのレコーダとしては少ない方だろう。画質的に納得できる5倍録画モードでは、145時間の録画が可能だ。まあ録画的には実質シングルチューナ機なので、それほど急激に録画番組数が増えるというわけでもないだろう。

 消したくないコンテンツは、外部HDDに待避できる。内蔵HDDからUSB HDDへのダビングでは、てっきり回数を1回減らしてダビングされると思っていたら、10回のダビング回数まるごとのムーブになる。本当の意味での待避となるようだ。

 ダビング元とダビング先を同じに指定した場合は、コピー回数を1回減らして同一HDD内で複製ができるという機能がある。これでコピーを増やしたあと、別HDDにムーブすれば、本体に番組を残したままUSB-HDDにも番組がコピーされることになる。

 光学ドライブがないので、ダビング回数を減らすコピーよりも、いろいろやりくりしやすいという事かもしれないが、普通のコピー機能も欲しいところだ。

「もっとTV」にも対応している

 ネットワーク機能としては、「もっとTV」にも対応した。もっとTVは、電通と民放連が4月にスタートしたVODサービスで、7月7日からはNHKオンデマンドも参加している。

 実は「もっとTV」を実際に体験してみるのは初めてだが、テレビ視聴中にリモコンの専用ボタンを押すと、その局のVODサービスに直接ジャンプできる。何かのポータルの玄関にいったん行ったのちに探すのではなく、いきなりカタログが目に入ってくるので、より直接的なサービスになったと言えるだろう。

 ただサービスインする前の説明では、テレビ視聴を阻害しないために、視聴中の番組が子画面になってサービスに入るということだったと思うが、本機の場合、子画面表示機能はないようだ。

 視聴中の局のVODに直接行けるというのは、放送局にとってはメリットがあると思えるのかもしれないが、視聴者には割とどうでもいい。というか、レコーダのユーザーは基本的にどの番組がどの局のものかなどは、それほど記憶していないのではないだろうか。

 「もっとTV」も上のポータル画面に戻れば、放送局縛りでバラバラにサービスがあるだけで、サービスの見通しが悪い。ただし、検索機能を使えば、ジャンルごとにつらぬき検索できるので、サービスの全体像が把握しやすい。個人的には、ジャンル検索機能をもっと前面に押し出したほうがいいと思うのだが、そうなるとアクトビラと何が違うのかという話になって、うまくないのだろう。

 VODとしては「もっとTV」を大きくフィーチャーしたが、従来のネット機能もちゃんと搭載されており、幅広いサービスが利用できるのは魅力だ。

 

もっとTVのポータル画面。各社のVODサービスが集まっているだけと言ってしまえばそれまでだが…… ジャンル検索すれば「もっとTV」内のコンテンツを貫き検索できる ネット機能も相変わらず充実



■総論

 DIGA+は、付属ディスプレイで見る世界と、HDMIでテレビ接続して使う世界の二面性を持った製品だ。基本はレコーダで、ディスプレイでの視聴は拡張機能としての扱いかと思っていたのだが、実際にはディスプレイだけで使っても、ある程度完結できる商品である。

 その場合は、女性でも簡単に使えるように機能が絞り込まれており、誰の手も借りずに自分でセットアップできる程度の難易度になっている。もちろんHDMIでテレビに繋げばフル機能にアクセスできるのだが、そこまでやらなくても全然魅力的な商品だ。

 ディスプレイがタブレット的な使い方ができないというデメリットはあるが、その代わり防水機能がある。これは19型モデルにはないメリットだ。

 実際にお風呂で試してみたが、子どもには大ウケだった。本体位置からお風呂場まで7〜8mあるので、電波到達距離としてはかなりギリギリでアンテナ1本程度の受信状況だったが、画質的な不満もなく視聴できた。まさに「これがあれば生活が変わる」ということが実感できる。

 「フル機能を利用するためにHDMIでテレビに繋ぐ」というのもいいが、最近はPCモニタもHDMI端子を装備してきている。1〜2万円も出せば23型くらいのPCモニタなら選び放題なので、こういうのを買ってきて繋げば、もうテレビはいらないのではないかと思える充実度だ。学生の一人暮らしには、十分だろう。

 ホームネットワークとテレビは、ようやくここに来て加速度的な進化を始めたと言っていいかもしれない。

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DIGA+
10.1型UN-JL10T1
(2012年 7月 25日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]