“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第445回:【CES】アウトドアとインドアの技術

adidasとSENNHEISERがコラボレーション
~ ホームエンタテイメントのハブ化するrovi ~



■ 悲しいプレスのランチ事情

 今年のCESの何が悲惨かというと、プレスランチである。毎年プレスセンターでは無料のランチボックスが配られるのだが、例年ならば1時ぐらいに行ってもまだ十分な量があった。しかし今年は用意されているランチ数が異様に少なく、およそ100人ぐらいのプレス関係者が空腹を抱えてそこらへんのテーブルに残っているポテチやクッキーの残骸を奪い合ったり、膝を抱えてドナドナを謳ったりする羽目になるという、恐ろしい事態となっている。

 さて会期3日目の今日は、コンベンションセンターの外でいろいろ見てきたので、その情報をお伝えしていこう。


■ ランニングに新しいタッグ、adidasとSENNHEISER

 ランニングとオーディオ機器というのは、結構以前からコラボレーションが行なわれている。03年にはNikeとPhilipsがコラボレーションし、FMラジオ、CDプレーヤー、MP3プレーヤーといった製品をNikeブランドで展開した。

 06年にはNikeとAppleがコラボし、Nike+iPodスポーツキットを製品化した。このコラボは現在も続いており、筆者もこれを使ってほぼ毎日6kmほどのランニングを続けている。

 そして今回のCESで発表になったのがスポーツブランドadidasと、マイク、ヘッドホンなどオーディオ製品を手がけるSENNHEISERのコラボである。adidasがmicoach(マイコーチ)という、ランニング指導プログラムとセンサーギアを製品化、それにフィットするイヤホンをSENNHEISERが提供する。

 実は本日偶然ではあるが、このadidas micoachを体験することができた。宿泊中のホテルからランニングに出かけたのだが、ちょうど折り返し地点あたりのところにadidasのショップがあった。コラボの話だけは聞いていたので何かあるかなーと思いつつ入っていったら、micoachの無料体験コーナーができていたのである。

 普通にランニングしてただけなので、カメラを持ってなかったのは残念だったが、実際の製品に触れることができた。micoachは、サイト上にあるランニングプラン管理サービスで、自分が走りたい目的、例えばダイエットとか気晴らしとか大会に出るとかいったものを選ぶと、それに合わせてベストフィットするランニングプランを自動で作ってくれる。

サイト上のmicoachでランニングの目的を選ぶランニング頻度、性別、体重などを入力すると、ベストなプランを作成してくれる

 adidasが提供するmicoach Parcerは、Nike+でいうところのレシーバとセンサーのセットに相当する。靴に付けるセンサーのほかに、ゴムベルトで胸に巻き付ける心拍数測定のセンサーも装着する必要がある。レシーバー部分は、PCと接続することでサイト上で作成したランニングプランを自動的にダウンロード、ランニング中はこの両方のセンサーからの情報を受けて、ランニングプランに照らし合わせながらもっと速くとか、そろそろクールダウンしろとか、イヤホン経由でいろいろ指示してくれるわけである。

胸に巻き付ける心拍数センサー

センサーの情報を受けて指示をだしてくれるレシーバー

靴ひも部分に取り付けるセンサー

 レシーバ部分には、音楽再生機能はない。ただステレオミニジャックが付いており、別途音楽プレイヤーを繋いでレシーバ経由で音楽を聴くこともできる。コーチの指示の声が出るときは、自動的に音楽のボリュームを下げて割り込むのだという。

 心拍数センサーもあることから、きちんと管理されたランニングができるとは思うが、ランニング途中で本屋に寄ったりコンビニで牛乳買ったりとかするいい加減なオジサンランナーの筆者には、正直ガチすぎる。おそらくフィットネスクラブに行くぐらいのモチベーションの高い人に向いていると思われる。

CX 680 Sportsは今回リリースの4モデル中唯一のカナル型

 米国ではすでにmiCoach Parcerは発売中で、価格は139ドル。センサーとレシーバをリストバンド型にまとめたmiCoach Zoneはこのあと発売で65ドル。

 さてここまで書いてAV機器の話が一つもでてこないことに自分でびっくりしている。肝心のコラボのSENNHEISERだが、同社とadidas両ブランドを背負ったランニング向けイヤホン4種類を発売する。以前からSENNHEISERでもスポーツモデルをリリースしてはいるが、今回の4モデルいずれも防滴仕様となっており、色も黒と蛍光イエローで統一されている。

MX 680 Sportsはシンプルなインイヤー型OMX 680 Sportsは、耳かけリング付きのインイヤー型PMX 680 Sportsはネックバンド式のインイヤー型
MX 680 Sportsの同梱品。細かいサイズ調整が可能

 今回MX 680を試用できる事になったので、早速使ってみた。同梱パーツはかなり種類が多い。

 写真一段目が耳に固定するためのフィンが3サイズ。フィンを使用しない場合の保護リングもある。2段目はイヤホンの外周に付ける、サイズ調整のためのイヤパッド。この2つとスポンジのアダプタをセットで使うのが基本のようである。3段目はエアクッション付きのアダプタ。スポンジがいやな人はこちらを付けることになる。

 実際にこれを付けてランニングもしてみたわけだが、フィンがあるおかげで全く耳から外れることはなかった。普通のインイヤーなのに、これがあるだけでずいぶんと違うものである。

延長コード兼用ボリュームも付属

 音質的には、以前廉価ながら評判の良かったMX 500とよく似ている。ただしスポンジを付けた状態でバランスが取れており、エアクッションのみの場合は低音が出ず、音が堅い。ランニングするとどうしても汗がスポンジに染みこんでしまうので、衛生的にはスポンジなしのほうが望ましいのだが、音質的には厳しいのが残念だ。

 SENNHEISERブースでカナル型のCX 680 Sportsも試聴してみたが、こちらは耳穴に突っ込むだけあって、低音の延びが良く、音質的には一番満足できる。固定用のフィンもあるので、カナル型特有の歩いたり走ったりすると耳の中でボコボコいう現象も少ない。ただ外音があまり聞こえないので、一般道を走る場合には他のインイヤーのほうが安全だろう。

 製品自体は、プレスリリースでは1月発売となっているが、adidusショップにはまだ入荷していなかった。価格はだいたい決まっているはずだが、adidus直営店と一般家電量販店との価格調整がまだということで、価格は非公開ということであった。


■ テレビがコンテンツのアグリゲータに? roviのTotalGuide

番組表にもサムネイルが表示されるTotal Guide

 昨年7月にMacrovision Solutionsから社名変更したrovi。以前のようにDRM技術だけでなく、映像と音楽のメタデータ、日本でも番組表でお馴染みのGemstar、音楽・映像認識技術のAMGなどを買収し、トータルなエンタテイメント用バックグラウンド技術の提供会社となっている。

 昨年8月に日本でも発表されたが、シーザーズパレスでのプライベートショーでは、組み込み型メディアプラットフォーム「Total Guide」の実機デモンストレーションを見ることができた。放送のテレビ番組表だけでなく、ネット上の動画配信サービスからもコンテンツがシームレスに検索できるのが特徴。

 例えば名前で検索した映画から俳優を選び、他の出演映画を調べるなどといった操作が、テレビリモコンの十字キーと決定キーだけで行なえる。同様の機能はTivoにも見られるが、GUIはかなり洗練されていてシンプルに見える。レコーダに搭載されれば、未来の番組だけでなく、録画済みの番組も含めて検索、視聴することもできる。

Men in Blackからトミー・リー・ジョーンズ出演作を検索

 最初のバージョンではまだDLNAを使ったホームネットワークには対応しないが、次期バージョンでは別のレコーダやPC内のコンテンツも検索対象にすることも検討してゆくという。

 rovi自体はハードウェアを製造するわけではなく、あくまでも組み込みプラットフォームとして提供するだけということだが、米国ではこのようなビジネスがはまりやすい。というのも、米国のテレビ視聴の中心はほとんどCATVのSTBになってしまうため、視聴者の関心、すなわちコンテンツフィーを含む課金がCATVに流れてしまう。テレビは単なるモニターになってしまって、テレビメーカーがやることがなくなっているという事情もあるようだ。

 日本でも一部のメーカーが、これまた一部のネットワーク配信サービスを組み込んだりした例もあるが、有料無料問わず、加入したネットサービス全部を貫き検索できるプラットフォームは、これからのテレビを語る上で欠かせない機能である。

 日本での展開はまだ先、おそらくアナログ停波以降になるということだが、電波受信が主体で録画後にはEPGデータを使わせないだとか、有料WEBコンテンツがほとんどうまくいっていないという日本の状況を変えていかないと、携帯電話同様テレビ視聴スタイルまで20世紀に押し込められたままガラパゴス化してしまう危機感を感じた。

(2010年 1月 10日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]