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オルトフォン定番MC型カートリッジ進化「MC X」。ステンレスフレーム、高純度銀線コイル採用
2025年5月19日 11:20
オルトフォンジャパンは、MC型カートリッジの定番シリーズを刷新、新たにフラッグシップの「40」を加えたMC Xシリーズを5月に発売する。全モデルに高純度銀線コイル、軽量かつ高精度な十字型アーマチュア、シリーズ初のハニカム天面を備えたMIM成型によるステンレス製フレームなどを採用している。価格は以下の通り。
- MC X10 53,900円
- MC X20 89,100円
- MC X30 125,400円
- MC X40 179,300円
【MC Xシリーズ】
- MC X10 33,000円
- MC X20 53,900円
- MC X30 75,900円
- MC X40 107,800円
【針交換価格】
歴代のフラッグシップやハイエンドモデルで培ったノウハウをXシリーズに投入。「初めてのMCを検討される方から数多くのMC型カートリッジをご愛用頂いているベテランの皆様に至るまで、より多くの皆様にお楽しみ頂くことにした」という。
MC Xシリーズでは、本体上部のトッププレート天面にハニカム形状のリブを配置。リブとトッププレート、カートリッジの背骨となるフレーム部分まで一体成型にすることで、レコード再生時に発生する不要共振を徹底的に排除した。
トッププレートとフレームには、MC10・20・30シリーズでは史上初めて重質量なステンレス素材を採用。カートリッジのメインフレームやハウジングにステンレスを用いることは、ハイエンドモデルの「MC Xpression」や「MC 90X」などでも行なわれており、ステンレス特有の質量を伴った高い制振効果によって再生音の定位感向上の効果があるという。
しかし、複雑な形状での加工が難しいこと、様々なトーンアームの対応自重に適合可能な重量に収めることが困難であること、その双方をクリアするためには高コストな特殊加工技術を要することから、これまではハイエンドモデルでの採用に留まっていた。
そこで、MC Xシリーズでは、慣例を打破すべくトッププレートとフレームの素材にステンレスを採用。表面には先に述べたハニカム形状のリブを施すことで、剛性を保持しながら軽量化もあわせて実現。先代のMC Qシリーズでは従来型アルミフレームと磁気回路の組み合わせで自重9gであったのに対し、MC Xシリーズでは重質量なステンレスフレームの使用にもかかわらず自重は8.6gとなっている。
なお、難削材のステンレスを用いて一体成型のトッププレートとフレームを切削加工で製作し、加えてその表面にハニカムリブを設けるのは非常に困難であるため、フレーム製作にあたりMIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成型法)と呼ばれる技術を採用。金属粉末に可塑剤を練り合わせ、そのペーストを高精度な金型に射出成型してから脱脂し、最後に加熱することで元の金属粉末を焼結させるもので、「MC Windfeld/Cadenza」シリーズなど上位モデルのアルミ製サイドハウジングに使っているもの。
ステンレスフレームには、先代のQシリーズを凌ぐ新型のMC用磁気回路を固定。近年の加工技術の進歩により部品点数を減らすことに成功し、構成部品の一体化と高精度化をさらに一歩進めたという。その結果、磁束密度の分布がより均一になり、磁気回路を組み上げる際の組立精度が格段に向上。カートリッジのチャンネルバランスや再生音の定位感に寄与している。
全モデルに高純度銀線のコイルワイヤーを使用。音声信号の伝送速度が最も速い銀(Ag)は、信号劣化も最小限で済むため、微弱信号の伝送には理想的な金属導体だという。新モデルでは、この高純度銀線コイルワイヤーを軽質量な十字型のアーマチュアに巻き付け、その背後にある各モデル専用のダンパーゴムのはたらきによって、振動系を適切に支持。不要共振の制動も行なわれている。
MC X10
オルトフォンMCカートリッジのエントリーモデル。「仕様や音づくりに一切の妥協はない」としており、上位モデルと共通のステンレスフレームや高純度銀線コイルと十字型アーマチュア、高精度な磁気回路を採用。これに王道のアルミカンチレバーと楕円針をあわせ、「新時代のオルトフォン・サウンドを体現する存在」になったという。
MC X20
MC20シリーズは、1970年代からオルトフォンのチーフエンジニアをつとめたペア・ウィンフェルド氏を開発責任者として誕生した。無垢楕円針の採用によりX10を超える高解像度とワイドレンジを得ており、「再生する音楽ジャンルを問わずにダイナミックで鮮烈なサウンドが特徴」という。
あわせて質量の大きな(重い)ステンレス一体成型フレームにより、再生音の重心位置が下がったことで、SPUシリーズの重厚さともまた異なる、腰の据わった低音が魅力という。「高純度銀線の煌びやかさも相まって、聴き応えのあるパンチを効かせた音色は躍動感にも満ちており、まさにアナログサウンドの醍醐味と呼ぶにふさわしい逸品」とのこと。
MC X30
仕様策定にあたっては原点に立ち返るため、栄光の「30」初代モデルを範としている。初代30では無垢ファインラインのスタイラスチップとアルミカンチレバーを用いており、X30はこれを忠実に踏襲。
また、初代30はオルトフォン製品の中でもいち早く銀線コイルを採用したモデルのひとつだったが、X30はこれらの伝統をそのまま継承。「初代30と近似したコンセプトをもちながら、現代技術の粋である新型磁気回路とハニカムリブのステンレスフレームでリファインされたネオ・MC30」でもあるという。