小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第601回:カスタムできるBluetoothスピーカー、Creative D5xm
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第601回:カスタムできるBluetoothスピーカー、Creative D5xm
複数繋いで大システムに拡張。スマホで設定
(2013/1/30 11:00)
来るかBluetoothブーム
いよいよケータイが本格的にスマホに変わりつつある。電車の中を見回しても、今やフィーチャーフォンを持っているのは4月までお預けをくらった高校生か、何かコダワリを持って使っている人ぐらいになってきて、気がつくと自分のまわり3人ぐらいが全員LINEバブルやってて画面こすりまくりみたいな事になっている。
さらに昨年後半の7型タブレット祭りで、多くの人にタブレットが行き渡った事と思う。中には10型、7.9型、7型といったサイズ違いで、いつのまにか揃ってしまった人もあるかもしれない。
映像コンテンツを享受する端末としては、画面サイズと解像度を中心に語られるところではあるが、では一方で音はどうするのか。内蔵スピーカーでは心もとなく、かといって家の中でずっとイヤホンしているのも鬱陶しいわけで、今年は何か一つBluetoothスピーカーを、と考えている人も多い事だろう。今年は色々面白いスピーカーが出てくると思うので、本連載でも積極的に取り上げていきたい。
さて、そんな動きの第一弾としては、昨年12月にスピーカー内蔵シーリングライトをご紹介したところだが、今回はPC向けスピーカーとしてメジャーな、クリエイティブの製品「D5xm」を取り上げてみる。
「D5xm」はすでに昨年から発売が開始されている製品だが、複数台の同型モデルをリンクさせることで、システムとして拡張できるというのが特徴だ。また、スマホ/タブレット用アプリで、サウンドのモディファイも可能だ。
それではさっそく試してみよう。
シンプルながら綺麗なデザイン
D5xmは、同社Bluetoothスピーカー「Creative Dxm Signatureシリーズ」の中では上位モデルにあたる。直販価格は29,800円と、他社Bluetoothスピーカーの高級モデルと比較しても同程度の価格だ。
さらに、下位モデルの「D3xm」(直販14,800円)と、組み合わせるサブウーファ「DSxm」(直販14,800円)も用意されている。今回はD5xmを3台と、サブウーファのDSxmを1台お借りしている。トータルでは、104,200円のシステムという事になる。
まずD5xmだが、横425mmの長方形のボックスで、いわゆるサウンドバー型を短くしたような形だ。2011年からこれと同型でドック化も可能な「ZiiSound D5」というモデルがあり、外装はほとんど同じだ。これをベースに、機能アップしたということだろう。
スピーカーの内部構造は資料がないのでよくわからないが、指で触った感じでは、5cmか5.5cmクラスのフルレンジスピーカーが左右に一つずつ搭載されているようだ。背面にはバスレフポートがある。
背面に電源ボタンがあり、電源は15VのかなりがっしりしたACアダプタが付属している。そのほか外部入力用のステレオミニジャックがあるほか、サービス用のミニUSBポートがある。USBスピーカーとしての機能はなく、おそらくファームウェアのアップデートに使われるものと思われる。
表面にボタン類はなく、すべて中央にあるアクリル部分のタッチセンサーで操作する。ボリュームは天面を上下になぞる、CONNECTと書かれた文字の上をタッチすると、Bluetoothペアリングモードに入るといった調子だ。その下のLINKという文字のところが、他のスピーカーとのリンクに使われるボタンだ。
アプリとしては、「Creative Central」というのがiOS/Android用にそれぞれリリースされており、無料で利用できる。D5xm単体では普通のBluetoothスピーカーなので、OSのBluetooth設定のところからペアリングすれば普通に音は鳴るのだが、アプリを使えばサウンドコントロールができる。
まずはD5xm1台で鳴らしてみよう。専用アプリでペアリングすると、システムのコントロールパネルにアクセスできるようになる。まずルームキャリブレーションを試してみよう。
これはD5xm側からスイープ波を出し、それをスマートフォンやタブレットのマイクで集音することで部屋の音響特性を測定、特性がフラットになるよう調整するという機能だ。
今回はGoogle Nexus 7で試してみた。マイクの位置が不明な場合は、デバイス名を選ぶと、イラストでマイクの位置を示してくれる。これをスピーカーに向けて測定する。
テストした部屋は和室で、音響特性的にはかなりデッドだ。測定カーブによれば、250Hzから上のところで特性が暴れており、180Hz付近からなだらかに落ちている。ただ普通こんなに綺麗に落ちるとは考えにくいので、音を出しているスピーカーの特性に引っぱられているという可能性は否定できない。
補正カーブによれば、一応まっすぐな特性になっている。ただ、キャリブレーション機能をON・OFFして聴き比べてみたが、低域の特性に関しては改善されている様子は確認出来なかった。やはりスピーカーの特性として、そんなに下まで出ないということかもしれない。
そのほか、このアプリでは、オフも含めて6種類のサウンドモードが選択できる。オフで音楽を再生してみたところ、やや高域寄りながら、あまりクセのない鳴り方をするようだ。一方「ボーカル」を選択すると、音声のフォルマントが改善されるのがわかる。
「編集」をタップすると、複数のパラメータにアクセスできる。ここで自分の気に入るようにモディファイできるわけだ。これはあとでもう少し詳しく試してみよう。
とりあえずプリセットだけいろいろ試してみたが、アニメのような台詞中心のコンテンツでは「クリアダイアログ」を、ドンパチ映画では「シネマティックアクション」を、といった具合に、イメージどおりのサウンドになる。このアプリのおかげで、グッといじりがいが出てくるのはなかなか楽しい。
別スピーカーをワイヤレスでリンク
別スピーカーとのリンクは、まずどれか1台のD5xmがマスターになり、そこと他のスピーカーがワイヤレスでリンクしていくという格好だ。従ってスマホやタブレットから認識されているBluetoothスピーカーは、マスターのD5xmだけである。つまりスピーカー同士は、ローカルで繋がっているだけということだ。
スピーカー間の通信は5GHz帯を使用する。これはいわゆるIEEE 802.11a規格ではなく、独自規格による通信だそうである。帯域が混んでいる2.4GHz帯を避けるという点、また通信速度の面でもメリットがある。
次のステップとしては、やはりサブウーファの追加が妥当なところだろう。いきなり同じD5xmを2個買って拡張するというのも、あまり考えられない。
DSxmは、前面にアクティブスピーカー、左右にパッシブスピーカーを搭載したサブウーファだ。サイズ的には、5.1chなど、本格的なホームシアター用のサブウーファよりはやや小さくなってはいるが、それほど小型というほどでもない。外形寸法は220×290×220mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約4.63kgだ。
電源はACアダプタではなく、コンセント直挿しである。電源ボタンはなく、横にあるのはLINKボタンだ。USBのサービス端子はあるが、外部入力端子がないので、まさにこのリンクシステムでしか動かない。
リンクの方法は2つある。1つは、スピーカーにあるリンクボタンを使って地道に接続していく方法だ。これは一見簡単そうに見えるが、なかなか動作状況が見えないので大変だ。というのも、そもそもD5xmのリンクボタンがタッチセンサーなので、何か接触不良のようにLEDがちらちら点滅する事もあり、ちゃんとボタンとして反応しないことがあった。ワイヤレス機器の場合、視覚的に何が起こっているのかよくわからないので、今がどういうステータスなのかが把握しづらい。
もう一つは、アプリを使って認識させていく方法だ。こちらのほうが今どうなってるのか視覚的にわかるので、便利である。スピーカーのセットアップという項目で、「サブウーファの追加」ボタンをタップしたあと、DSxmのリンクボタンを、前面のLEDが点滅するまで押し続けるとリンクする。ただ点滅し始めたらすぐ指を離さないと、上手くリンクモードに入らないところが難しい。
サブウーファを追加して、改めてルームキャリブレーションしてみたところ、測定値の段階で低域の不足が補われている事がわかる。キャリブレーションはほとんどされていないようだ。
このシステムで改めて音楽を再生してみると、サウンドモードがOFFの状態でもかなり低域が出る。映画などでは迫力があっていいだろうが、音楽再生ではドッコンドッコン出過ぎである。
サブウーファには独立してボリュームがあるので、それを絞ってもいいのだが、アプリで調整できるので、そっちでいじったほうが面白いだろう。先ほどの「ボーカル」をベースにいじってみる。
デフォルトではパラメータが「Cystalizer」のみONになっているが、「Bass」をONにして、クロスオーバー周波数とレベルを調整してやる。さらに細かく特性を調整したい場合は、「イコライザー」に進むと10バンドのグラフィックイコライザーを使う事もできる。あらかじめ音楽ジャンル別にプリセットもあるので、それを基本にして自分でいじっていくといいだろう。
さらに同型スピーカーを追加
これだけでも音質的にはだいぶいい感じになってきたが、もう少しサラウンド感が欲しいという場合には、D5xmをもう一台繋いで、それぞれをLRのスピーカーとして使うというセッティングができる。これを試してみよう。
リンクの仕方は、先ほどサブウーファをリンクしたのと基本的には同じだ。ただ、新たにD5xmを接続する場合、繋ぎたいD5xmをいったん電源OFF(スタンバイ)状態にしておき、アプリで追加処理が始まったら電源を入れる、という段取りになる。
今度はマスターとなるD5xmがR chとなり、新たに追加する方がL chになる。LINKのLEDが、マスターは右側が点き、L用は左側が点くので、どっちがどっちなのかが本体を見てもわかるようになっている。
この2.1chシステムで、もう一度ルームキャリブレーションをしてみると、また違った結果になった。L/Rはかなり左右に離して設置しているため、真ん中が抜けている状態だが、今度は低域が上がりすぎており、これを補正カーブで抑えたようだ。
このぐらいのシステムになると、キャリブレーションのON・OFFでちゃんと違いがわかる。個人的な好みからすると、ちょっと高域がチキチキしすぎではあるものの、サウンドモードなどを使って補正しなくても、かなりまとまった音になっている。もう少し色気を足したい場合に、サウンドモードを編集していじるという使い方になるだろう。
サウンドモードはそれぞれ編集と保存はできるのだが、別名保存ができるわけではない。例えばボーカルで3種類プリセットを作るといったことができないのは、ちょっと残念だ。
全体の音量調整は、再生機側であるタブレットなどのボリューム操作がそのまま効くのに加えて、マスターとなっているD5xmのボリュームで全体の音量を調整できる。
では調子に乗って3台目、センタースピーカーもリンクしてみよう。ルームキャリブレーションを行なったところ、2.1chのセットをそのまま強調したような特性となった。
サウンドとしては、センタースピーカーを足した効果はあまり得られなかった。これはおそらく、日本家屋の6畳間程度では、聴き手がだいたい真ん中にいればそれほど中抜けしないからだろう。もっと左右の間隔が広かったり、左右対称ではない置き方をした場合に、ドラマなど台詞のあるコンテンツの視聴で有用性があるかもしれない。
ここまで3.1chシステムとして拡張してきたが、これとは別に「パーティモード」という使い方もある。これは全てのD5xmを、同じ特性で同時に鳴らすというモードだ。つまり部屋ごとにそれぞれD5xmをおいておけば、どこの部屋でも同じ音楽が同時に聞こえるというものだ。
なお、マスターになるスピーカーと、そこに接続するスピーカーのリンク距離は、見通し距離で最大約30mとなっている。そうはいっても、体育館みたいな部屋なら30mは飛ぶかもしれないが、実際には壁や床を抜けて伝送する事になるわけだから、日本家屋の用途では直線で10mも飛べばいいほうだろう。
試しに筆者宅で1階と2階でテストしてみたが、問題なく使う事ができた。いったん電源を切っても、次に電源を入れると同じモードで起動して、リンクするようだ。
ただ実際には、家中を使って“パーリナイツ”みたいなことは、あんまり日本人の習慣としてやらないので、それほど使い道はないモードかもしれない。一人暮らしなら、部屋のあちこちで同じ音楽を鳴らすことに問題はないかもしれないが、家族持ちには日常的には必要がない。
まあ使い方はアイデア次第だと思うので、自分なりに使える方法を考えていただきたい。
総論
複数のスピーカー間をワイヤレスで伝送するのは、技術的に興味深い。今回は1台でも成立するステレオスピーカーを複数台繋いでいくというソリューションだが、普通のセパレート型のスピーカーでもこういう仕組みがあっていいかもしれない。
もっとも電源がワイヤレスにはならないので、スピーカーそれぞれに電源が必要だ。その手間と配線の手間をどう考えるか、ということかもしれない。
サウンドプロセスに関しては、おそらくスピーカー本体側にDSPが乗っていて、それをアプリでコントロールするという構造になっているものと思われる。従って、使用するスマホ・タブレットの能力に依存しない効果が得られる点も、よく考えられている。
しかし、いざスピーカーを増やしたいと思った時に、マスター用スピーカーの値段(直販29,800円)×個数という、単純なかけ算でコストがかかるというのが難点になるだろう。あいにく廉価モデルの「D3xm」(直販14,800円)とは混在できないそうである。そう考えると、D3xmで2.1chシステムを組むというのが、一番コストパフォーマンスが高いかもしれない。
単品スピーカーが繋がると考えるか、あるいはマルチスピーカーシステムがバラバラでも動くと考えるか、どちらの方向にも考えられる製品である。あいにく5.1chまでには拡張できないが、サウンド的にはかなりいじれるので、ルームキャリブレーションも含めて色々遊んでみたい人には、かなり面白く使えるシステムである。
Dxm Signature SP-D5XM | Dxm Signature SP-D3XM | Dxm Signature SP-DSXM |
---|---|---|