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5万円以下でデュアルDACやバランス対応など、注目のハイレゾプレーヤーを一気に紹介
2016年8月26日 10:00
ポータブルハイレゾプレーヤーで目立つのは10万円を超えるような高級モデルだが、実際にはなかなか手が出ない。一方で、スマートフォンからのステップアップとして購入しやすい2万円や3万円台のプレーヤーに注目の製品が増えてきた。また、もう少し頑張って5、6万円の製品まで候補に入れると、DSDのネイティブ再生やバランス出力といった、高級プレーヤーにも負けない機能を備えたモデルが登場している。
ここでは、6万円程度を上限とするニューフェイスの中から、注目モデルを、特徴を比較しながら紹介する。
DSDネイティブ再生、メモリ容量、発展性にも注目
スマートフォンとの“2台持ち”になる事が多いポータブルプレーヤー。2、3万円の製品では、そうした2台持ちでも邪魔になりにくい、板のように薄いソニーの「ウォークマン A」(NW-A20)や、手のひらサイズのCOWON「PLENUE D」に注目だ。
どちらもDSDの再生には対応していないが、PCMは192kHz/24bitまでサポート。PLENUE Dでは豊富なイコライザが、ウォークマン Aではノイズキャンセル機能が利用できるなど、機能面でもスマホからのステップアップが実感できる。
4万円、5万円台のプレーヤーでは、より個性が出て、音質面もこだわった製品が多い。注目ポイントはDSD。ハイレゾ楽曲のDSD配信も増加してきたので、DSD再生対応プレーヤーが欲しいところだが、一口に再生できると言っても大きく分けて2種類がある。1つはDSDデータをそのまま“ネイティブ再生”するもの、もう1つは搭載DACや処理能力の問題などでDSDをPCMに変換してから再生する“PCM変換再生”だ。どちらも再生はできるのだが、DSDの良さをそのまま味わうのはやはり“ネイティブ再生”が望ましい。
このネイティブ再生も、今までは高級プレーヤーの専売特許だったが、4万円、5万円台のプレーヤーにも対応モデルが登場し始めている。
また、プレーヤーの基本スペックで気になるのは内蔵メモリ容量。低価格な機種では容量が少ない事が多いが、microSDカードスロットを備え、メモリの拡張が可能な機種が増えているのでさほど気にならなくなっているのが現状。中にはスロットを2つ備えているモデルもある。
マニアックな点としては、バランス出力も見逃せない。対応するケーブル&イヤフォンを用意すれば、通常のステレオミニ出力より、チャンネルセパレーションや駆動力に優れた再生が楽しめる。今現在、バランス駆動対応のイヤフォン/ヘッドフォン/ケーブルを持っていなかったとしても、将来的なステップアップを考慮し、対応したプレーヤーを選ぶのもアリだろう。
ステップアップと言えば、デジタル出力の有無も気にしておきたい。光デジタル出力を備えたモデルや、スマホのようにUSBオーディオデジタル出力が可能なモデルもあり、音質に不満が出てきたらDAC内蔵のポータブルアンプと組み合わせる事も可能だ。
これらの特徴を備えた注目はAstell&Kern「AK70」。DSDはPCMへの変換再生だが、バランス出力やUSBデジタルオーディオ出力にも対応。Luxury & precision「L3」は、デュアルDACを備え、DSDネイティブ再生対応。バランス出力も備えた多機能さながら、49,800円に抑えている。
注目製品をピックアップ
【 Astell&Kern:AK70】
50万円を超えるプレーヤーもラインナップされている、Astell&KernのハイレゾプレーヤーAKシリーズのエントリーモデル。「AK Jr」の後継機種で、上位モデルをそのまま小さくしたようなデザインが特徴。なおかつ、上位機の機能も多く取り入れた戦略的モデルだ。カラーがミスティミントのみであるのもユニークなポイント。
内蔵メモリは64GBで、128GBまでのカードが利用できるmicroSDカードスロットも装備。DACは、シーラス・ロジックの「CS4398」。AK第3世代は旭化成の「AK4490」を採用しているが、AK70は、第2世代の「AK240/120II/100II」で搭載されていた「CS4398」を使っている。個数は1個(シングル)。
ヘッドフォン出力は、ステレオミニに加え、2.5mm 4極のバランス出力も搭載。アウトプットレベルもアンバランスが2.3Vrms、バランスが2.3Vrms(負荷なし)と、第3世代譲りのパワフルさがある。
OSは上位モデルと同様Androidベースだが、アイコンが並ぶ“Android然”としたものではなく、アプリの追加などもできない。Androidである事を意識する部分は少ない。ディスプレイは3.3型の液晶で、解像度は480×800ドット。静電容量式のタッチパネル。
無線LAN機能や、DLNA対応、Bluetoothもサポートするなど多機能。底部にmicroUSB端子を備えて、PCと接続してUSB DACとして動作したり(96kHz/24bit対応)、スマートフォンのようにUSBから音楽をデジタルのまま出力し、外部のUSB DACと連携もできる。
こうした多機能さと共に、こなれたDAC「CS4398」を使った再生音のクオリティは高く、上位機種となる第3世代シリーズの駆動力が高いアンプも組み合わさり、隙のない仕上がり。エントリー価格帯のベンチマーク的なプレーヤーと言えるだろう。
【 iBasso Audio:DX80】
3.2型のタッチパネルディスプレイを備えたプレーヤー。5万円を切る価格ながら、DSD 5.6MHzまでのネイティブ再生が可能。内蔵メモリは無いが、microSDカードスロットを2基搭載。さらに、シーラスロジックのDAC「CS4398」をモノラルモードで2基、L/R個別に搭載するなど、マニアックな仕様が魅力だ。
クロックには、SiTime社のMEMS発振器を2基採用。水晶を使用しないシリコンベースのクロックで、周波数安定度と低位相ノイズ、低ジッタが特徴だという。150ステップのデジタルボリュームも採用し、微細な音量調整ができる。
USB DAC機能も用意。3,600mAhのリチウムポリマーバッテリを内蔵し、最大13時間の長時間再生も実現した。
【 Luxury & precision:L3】
「COLORFLY C4」などを手がけたColourflyブランドの開発チームメンバーが、独立・設立したのがLuxury & precision。その新プレーヤーが「L3」だ。e☆イヤホンの通販サイト、店頭で販売している。
5万円を切る価格ながら、DACチップにシーラスロジックの「CS4398」を2基搭載。DACからローパスフィルタの入出力/信号拡大回路に至るまで、LRチャンネルを完全分離したフルバランス回路設計を採用。チャンネルセパレーションを高め、低ノイズ化を図っている。さらに、フェムト秒級の超高精度温度補償水晶発振器(TCXO)も搭載するなど豪華な仕様だ。
ステレオミニに加え、2.5mm 4極のバランス出力も搭載。同軸デジタル出力を兼ねたラインアウトも1系統備えている。
OSは、MicroC/OSをベースに開発した独自システム。高音質の再現性の高さを追求したほか、DSDをネイティブで再生しても、CPUの動作周波数は100MHzに抑え、低EMIと低消費電力化も実現したという。
デフォルトの言語設定が中国語だったり、タッチパネルの反応がいまひとつだったり、ボタン類の並び方が独特だったりと、クセのある部分もあるが、コストパフォーマンスの高さは見逃せない。サウンドは素直で、AK70などと比べると低域の馬力はやや足りないが、中高域の情報量は多く、クリアで繊細な描写が楽しめる。
【 iBasso Audio:DX90j】
内蔵メモリは8GBと少ないが、microSDカードスロットを装備している。PCMは192kHz/24bitまで、DSDは2.8MHzまでだが、88.2kHz/24bitへリアルタイム変換再生となる。
大きな特徴は、DACにESSの「ES9018K2M」を2個、L/R個別に搭載している事。この価格のプレーヤーでデュアルDACはかなりリッチな仕様だ。なお、中国のメーカーの製品だが、中国で販売しているものとは異なり、ハンダに銀含有率高い無鉛銀ハンダを使い、電気伝導率を高めた日本スペシャルモデルとなっている。
音量調整もES9018K2M内蔵の256ステップのデジタルボリュームを活用。ボリューム素子を信号経路に使用していない。また、アンプ部は左右それぞれにTIのオペアンプ「OPA1611」と、高速バッファ「BUF634」を搭載。I/V 変換やアンプ部にもモノラル構造を採用することでセパレーションと駆動能力を高めている。
【 ソニー:ウォークマン NW-ZX100 】
ウォークマンの中堅モデル。最大の特徴は、ソニー独自のデジタルアンプ“S-Master HX”を採用している事。繊細な表現が可能なデバイスだが、従来の「NW-ZX1」と比べ、低音の量感や音場の広さ、定位の明確さなど音質は全般的にアップ。最上位「NW-ZX2」譲りのクオリティが楽しめる。ただし、DSDは5.6MHzまでの再生が可能だが、PCMへの変換再生となる。この変換再生時のクオリティにも注力しているという。
ディスプレイは3型だが、タッチパネルではなく、下部に備えたボタンで操作するのがユニーク。再生中の曲に合わせて歌詞を表示できる「歌詞ピタ」機能なども備えている。
下部に備えたWM-PORTからのデジタル出力も可能。USB DAC内蔵ポータブルアンプなどと連携する事も可能だ。
音質は、S-Master HXの繊細な描写が楽しめつつ、従来モデル「NW-ZX1」と比べると主に低域の量感や音場が拡大。最上位のZX2には及ばないが、ハイレゾ楽曲の良さがわかる十分なクオリティを備えている。
ノイズキャンセリング(NC)機能にも対応しており、別売のMDR-NW750N/MDR-NC31/MDR-NWNC33などと組み合わせる事で利用できる。
【 ソニー:ウォークマン A 】
ウォークマンのエントリーモデル。従来のA10シリーズから進化し、ハイレゾ再生とデジタルノイズキャンセリング機能が併用できるようになった。パーツの見直しなどで音質自体もアップしている。
A20HNは、付属のイヤフォンでハイレゾとNCを併用できるが、イヤフォンを同梱しない「A20」もラインナップ。その場合も、別売イヤフォン「MDR-NW750N」の利用で、ハイレゾ/NC両対応となる。NC機能に興味のあるユーザーには注目の製品だ。
内蔵メモリに加え、拡張用のmicroSDカードスロットも装備。PCMは192kHz/24bitまで。DSDの再生はサポートしていないが、ソフトウェアのMediaGoを使い、DSDからFLACへ変換して転送することはできる。
薄型で縦に長いデザイン。ディスプレイはタッチパネル非対応で、その下に配置した5方向ボタンで操作する。
「DSEE HX」を搭載し、帯域拡張技術とビット拡張技術により、MP3などの圧縮音源を最高192kHz/24bit相当にアップコンバート。ハイレゾに近づけて再生できる。
フルデジタルアンプ「S-Master HX」を採用。クリアですっきりとしたサウンドが特徴。10mW×2ch(16Ω)と出力はそれほど大きくないため、能率の悪いヘッドフォンとの組み合わせはいまひとつだ。低域のパワーも控えめだ。薄型筐体を活かし、カジュアルかつ気軽にハイレゾが楽しめるプレーヤーだ。
【 COWON:PLENUE D 】
PLENUEシリーズの小型軽量モデル。サイズは77.2×53.1×14.9mm(縦×横×厚さ)、重量は94gとまさに手のひらサイズ。スマホと一緒に携帯してもかさばらないのが魅力だ。
ハイレゾ再生機能としては、DSDの再生に対応していないのがネックだが、32GBメモリを内蔵し、microSDカードスロットも備えるなど、コンパクトながら基本的な部分はしっかりしている。
また、PLENUEシリーズの特徴として、豊富なサウンドエフェクト機能を備えているのもポイント。5バンドのイコライザや、音を鮮明にするという「BBE+」、スペシャルエフェクトなどが使える「JetEffect 5」も利用できる。
【 パイオニア:XDP-100R 】
4.7型のディスプレイを備え、Android OSを採用。音楽再生だけでなく、Google Playを使ったアプリの追加も可能でマルチに使えるプレーヤー。内蔵メモリは32GBとさほど大きくはないが、microSDカードスロットを2基用意。各200GBまでのカードが利用でき、最大で432GBまでの拡張が可能。膨大なハイレゾライブラリを持ち歩きたいという人にマッチしている。
ユニークな機能としては、e-onkyo musicで購入したハイレゾ音楽の直接ダウンロードや、メリディアンが開発した新ハイレゾフォーマットMQAにも対応する。端子やケーブルへの衝撃を緩和する着脱可能なバンパーを備える点もマニアックだ。オンキヨー製のフルレンジスピーカーを搭載しているのも、プレーヤーとしては珍しいポイントだ。
DACはESSの「ES9018K2M」。PCMは384kHz/32bitまでの対応だが、384kHzは192kHzに、32bit float/integerは24bitにダウンコンバートして再生。DSDは11.2MHzまでサポートするが、PCMへの変換再生となる。定格出力は75mW×2ch(32Ω)。対応インピーダンスは16~300Ω。
【 オンキヨー:DP-X1 】
前述のパイオニア「XDP-100R」と共通する仕様が多いが、大きな違いとして「DP-X1 」はバランス出力に対応している。4.7型ディスプレイに、Android OS採用、内蔵メモリ32GB、2基のmicroSDスロットを装備。microSDは1枚200GBのカードまで対応。DACにESSの「ES9018K2M」×2基を搭載しているのはXDP-100Rと同じだ。
PCMは384kHz/32bitまでの対応だが、32bit float/integerは24bitにダウンコンバートして再生。DSDは11.2MHzまでサポートするが、PCMへの変換再生となる。USBオーディオデジタル出力からは、OTGケーブルを使い、ネイティブでの出力が可能。
ヘッドフォン出力はステレオミニのアンバランス(ライン出力モード対応)と、2.5mmバランスも搭載している。DAC以降はバランス構成。通常のBTLバランスモードのほか、オンキヨーが単品アンプに搭載している「Active control GND」駆動によりグランドを安定化するモードも利用できる。
【 Lotoo:PAW5000 】
スイスのオーディオメーカー、NAGRAのポータブルレコーダなどをODMで手掛けているインフォメディアによるオーディオブランド「Lotoo」。ハイエンドモデル「PAWGold」の技術を投入しつつ、価格を抑えたプレーヤーが「PAW5000」だ。
PAWGoldの高音質やパラメトリックイコライザなどの機能を継承しつつ、Bluetooth接続や、2.5mmバランス出力などを備えているのが特徴。
再生ファイルはDSDの2.8MHzまでサポートしているが、PCM変換再生となる。また、PCMが96kHzまでの対応になっているのが注意点だ。
1,700mAhのバッテリを搭載し、12時間の連続再生が可能。
【 FiiO:X5 2nd generation 】
2014年に発売された「FiiO X5」の後継機で、音質向上や5.6MHzまでのDSD対応強化、GUIのブラッシュアップなどが図られた。内蔵メモリは搭載していないが、最大128GBまで対応するmicroSDカードスロットを2基装備し、最大容量は256GBまで対応する。
DACはTI「PCM1792」、オペアンプは「OPA1652」、「OPA1612」を搭載し、低ノイズ/低歪を図っている。低域の強化のために2つの「BUF634U」も搭載。出力電流は初代X5比で67%アップの最大250mAとなる。
USB DACとしても利用でき、DSD 2.8MHzまでと192kHz/24bit PCMの再生に対応。一部のソフトウェアでは5.6MHz DSD出力までサポート。ライン/デジタル出力兼用端子(ステレオミニ)も備えている。
【 FiiO:X3 2nd generation 】
2013年9月に発売された「FiiO X3」から、DSD再生に対応するなど機能をグレードアップ、さらに「X1」のユーザーインターフェイスも取り入れた第2世代モデル。内蔵メモリは無く、microSDカードスロットは1基。最大128GBまでのカードが利用できる。
DACはシーラス・ロジック「CS4398」。TIの「OPA1642」をローパスフィルタとボルテージアンプに使い、ノイズと位相の歪みを低減させている。アナログ回路にはタンタル・コンデンサも導入し、内部抵抗を抑えている。低価格なモデルだが、44.1kHz系列と48kHz系列で個別のクリスタルオシレータを搭載するなど、音声転送におけるジッターロス減少も徹底している。
USB DAC機能も搭載。アナログラインアウトは同軸デジタル出力を兼用。外部アンプとも連携できる。なお、DSD出力時、同軸デジタル出力からはPCMに変換して出力される。DSD 2.8MHzは88.2kHz/24bitに、DSD 5.6MHzは176.4kHz/24bitになる。
【 FiiO:X1 】
FiiO Xシリーズのエントリーモデル。X型に配置されたボタンレイアウトは、上位モデルを踏襲している。再生機能もX3、X5から多く継承しているが、DSD再生とUSB DAC機能は省かれている。
内蔵メモリは非搭載だが、microSDカードスロットを装備し、128GBまでのカードが利用可能。SD/SDHC/SDXCに対応。さらに、8GBのカードを1枚同梱する
DACチップはTIの「PCM5142」。オペアンプバッファには「Intersil ISL28291」を採用している。
【 Cayin:N5 】
旭化成エレクトロニクスのDAC「AK4490EQ」を採用したプレーヤー。従来は59,700円だったが、7月16日から39,380円に値下げされた。
メモリは内蔵せず、microSDカードスロットを2基搭載。128GBまでのカードが利用でき、最大で256GBまでの拡張が可能だ。
PCMは192kHz/24bitまで、DSDは5.6MHzまでのネイティブ再生が可能。2基のクリスタルオシレータを備え、クロストークやジッタを低減している。USB DAC機能も搭載。
出力はステレオミニに加え、2.5mm 4極のバランス出力を用意するなど、低価格ながら多機能なプレーヤーだ。本体は航空機グレードのCNCアルミ削り出し。背面にはカーボンファイバーを使用。質感にもこだわっている。