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iPodデジタル接続対応、ケンウッド「K-521」を試す

−実売45,000円でiPodを高音質再生


シルバーモデル。スピーカーのエンクロージャは木目となる

11月下旬発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:45,000円前後

 iPod内の楽曲をデジタルデータのまま取り出し、DACなどに渡して高音質再生するというiPodトランスポート機器はWadia170の「iTransport」(62,790円)をキッカケに、オーディオ界の1つのトレンドとなっている。最近ではオンキヨーが「iTransport」よりも豊富な機能を揃えつつも、実売15,000円を切る低価格な「ND-S1」を投入。発売当初は店舗や通販サイトで品切れ状態になった。一方で、パイオニアやヤマハなど、AVアンプやCDプレーヤーでiPodデジタル接続に対応する機器も珍しくなくなった。

 こうした“iPodデジタル接続対応機器”は、本格的なピュアオーディオ機器やAVアンプなどと接続されるケースが多いほか、DAC内蔵ヘッドフォンアンプと組み合わせて省スペースで高品位なヘッドフォン再生環境を構築したり、DAC内蔵小型アンプやアクティブスピーカーなどと組み合わせ、PCの近くで使用しているユーザーも多いようだ。

 一方で、ミニコンポやハイコンポ、iPodスピーカーでもiPodデジタル接続対応モデルは増えている。最近ではティアックのハイコンポ「Reference 500」シリーズの「CR-H500NT」(89,250円)や、デザイン性の高いパイオニアの一体型iPodスピーカー「NAS5」(XW-NAS5/49,800円)などが登場。その特徴から、音質の高さを訴求したモデルとしてラインナップされている。

 そんな中、ケンウッドからハイコンポの代名詞とも言える「Kseries」の名を冠した小型コンポ「K-521」が発売される。iPodのデジタル接続に対応し、フルデジタルアンプを内蔵したメインユニットと、2ウェイスピーカーを付属。さらにメインユニットにCD/USB/チューナも内蔵しながら、実売45,000円前後に抑えられており、仕様的にはかなりコストパフォーマンスが高いと思われる1台だ。


■ 天面にiPodとUSBメモリを搭載可能

ブラックモデルはスピーカーもブラック。薄型テレビなどとのマッチングを想定している
 カラーはブラック(B)とシルバー(S)の2色をラインナップし、ブラックはスピーカーもブラック。シルバーは木目を活かした仕上げとなる。シルバーは一般的なコンポというデザインだが、ブラックは光沢のある素材を使い、BD/DVDレコーダや薄型テレビとのデザインマッチも考慮したという。

 外形寸法は約200×299×95mm(幅×奥行き×高さ)だが、突起部のボリュームノブとスピーカーターミナルが含まれているためで、筐体自体の奥行きは290mm程度。アナログアンプを採用したコンポは、正面から見ると横幅がコンパクトだが、奥行きが驚くほど長いものが多いため、小型コンポでは奥行きが短めなのが好印象。放熱スリットなどが少ないのもデジタルアンプならではの特徴で、設置の自由度にも寄与している。


奥行きは299mm。アナログアンプを搭載した製品と比べて奥行きは短い デジタルアンプを使っているため、天面に放熱用の穴などは空いていない

 特徴的なのは操作部で、天面前部にタッチセンサータイプの操作キーが並んでいる。再生、停止、スキップアップ/ダウン、ソース切換を用意。フロントパネルにはディスプレイとディスクトレイ、ボリューム、イヤフォン出力しかなく、全体として凹凸の少ないシンプルなデザインになっている。天面にiPod用DockとUSB端子を備えているため、上からアクセスする事が多く、天面の操作キー配置は合理的だ。電源ON時は操作キーとボリューム上部がライトアップされ、ブラックモデルはブルーイルミが美しい。

コントロール部にはタッチセンサーを採用 触れるだけで操作可能。ボリュームツマミはブルーにライトアップされる 付属のリモコンではより細かな操作ができる

 操作は付属のリモコンからも可能。CDはCD-R/RW再生に対応し、MP3/WMAファイルの再生も可能。FM/AMチューナも備えている。端子は光デジタル入出力と、RCAのアナログ音声入出力を各1系統。同社のポータブルプレーヤーなどをアナログ接続するためのD-AUDIO入力を1系統、サブウーファプリアウトも1系統備えている。なお、光デジタル出力はCDのみで、iPodからの音をデジタル出力する事はできない。

 天面に備えるUSB端子はUSBメモリやUSBマスストレージクラス対応のポータブルプレーヤー内の音楽ファイルを再生するためのもの。PCとのUSB接続には対応していない。

iPhone 3GSを乗せたところ。非対応モデルだが編集部でテストしたところ、「この製品では動作しない」というお馴染みのアラートが出るものの、音も出て操作も可能だった 天面のiPod Dock部。右にあるUSBはUSBメモリなどを接続するためのもの

 同社製品ではお馴染み、CDやデジタル入力に適用できる独自の帯域補間技術「Supreme EX」を搭載。iPod再生時にも使用できる。圧縮時に失われた高域成分を補間し、原音に近いサウンドを再現するという機能だが、音楽CD再生やデジタル入力時にも利用でき、その場合は20kHz以上の高調波成分を付加。空気感や楽器の美しい響きを再現する。

 スピーカーは標準的な2ウェイブックシェルフで、エンクロージャには15mm厚のMDF材を全周に使用、四方留め構造でつなぎ目の見えないシンプルなデザインに仕上げており、背面も綺麗だ。ユニットは2.5cmドーム型ツイータと、11cm径ウーファ。ウーファは新開発で、振動板にはディンプル加工を施したペーパーコーン。キャップにクロス素材を使い、適度な分割振動を持たせている。

シルバーモデルのスピーカー 構成は標準的な2ウェイブックシェルフ ツイータは2.5cm径のドーム型
ウーファはの口径は11cm 四方留め構造を採用し、つなぎ目の無いエンクロージャが特徴 背面にはバスレフポートを用意。スピーカーターミナルはバネ式


■ システムステレオとしてCONEQを世界初採用

 iPodデジタル接続が気になるところだが、もう1つの特徴として、リアルサウンドラボの音響パワー補正技術「CONEQ」を、システムステレオとしては世界で初めて採用している。業務用機器で採用されている技術で、スピーカーの再生音を計測し、その結果をもとに信号補正を行ない、再生音をフラットに近づけるというAVアンプの自動音場補正機能と似た機能だ。

 「CONEQ」の特徴は、リスニングポイント1点で測定するのではなく、約400点ものポイントで測定すること。点ではなく、“面”で球面波を捕らえ、音響パワーの周波数特性を総合的に補正するというのがウリだ。タイムアライメントの補正も行なってくれる。

 とは言っても、ユーザーが400点もの測定を行なうわけではなく、測定用マイクも付属しない。開発時にセットのスピーカーで測定を行なっており、補正のパラメータを保存した状態で出荷されるというわけだ。再生環境に合わせた補正ではないが、面白い試みと言えるだろう。ただ、当然ながら付属ではないスピーカーを接続した場合は意味が無くなる。

 今回「CONEQ」が採用されたのは、「K-521」が小型の一体型システムであるためだ。一般的に機器が小型化すると、搭載される音質に関係する部品も小型化し、特定の帯域にエネルギーが偏在してキツめの音になったり、振動が急峻に収縮することで音の伸びが不足。スピーカーでも同様に小型すると周波数特性に細かなピークやディップが発生しやすく、指向性も高まる。上位モデルや単品コンポでは大きなシャーシや大型の電源トランス、大型のコンデンサなどを採用して問題を克服するのだが、コンパクトで低価格なK-521ではそうした手法がとれないため、CONEQで補正していると言うわけだ。

CONEQのパラメータはユーザーが変更する事が出来る 変更している所。音の変化については後述すり

 iPodのデジタル接続を含め、アンプ部にも触れておこう。iPod内からデジタルのまま取り出した楽曲データを含め、USBメモリ、光デジタル入力、CDから読み込んだ各種のデジタルデータは、本体内蔵のサンプリングレートコンバータを通した後、DSPで処理。前述のCONEQや、トーンコントロール、独自の高域補間技術「Supreme EX」などもこの部分で適用している。

 その後、40W×2ch(4Ω時)のデジタルアンプで増幅。最後にフィルタを通してアナログ信号に戻してスピーカーをドライブする、フルデジタル処理になっている。片チャンネル40Wのデジタルアンプは左右で独立しており、干渉を抑えた機構になっているのも特徴だ。なお、チューナや外部アナログ力の音声はADコンバータでデジタル化され、同じ処理を通る。 


■ クリアでストレート、“真面目なサウンド”

 CDを再生してみる。サウンドは極めてストレートで“真面目”の一言に尽きる。入力からDSP処理、増幅までクリアに保たれているだけあり、中低域の解像感の良さ、高域の伸びやかさが心地良い。ブックシェルフならではの音像定位の良さと相まって、高さを含めて音場が綺麗に広がる。個々の楽器の動きやヴォーカルの口の動きもよくわかる。

ボリュームツマミは質感が良い大型のものを採用
底面のインシュレーター
CDトレイを出したところ
独自の高域補間技術「Supreme EX」も備えている
 エンクロージャの付帯音も無く、良く伸びる高域を汚さない。JAZZで「Kenny Barron Trio」の「Fragile」を再生すると、ケニーバロンがピアノを強く打鍵した際の、固い硬質な音と和音の柔らかな響きが同居しつつも、別々にしっかり描写される。ルーファス・リードの分厚いベースも肉厚ながら細かな弦の動きも描いている。

 「ダイアモンド クレバス50/50」(中島愛+May'n)の音場の広がりと、高域の透明感が素晴らしい。ラジカセやPC用アクティブスピーカーなどとは次元の違うワイドレンジサウンドで、小型筐体や価格からイメージする音とは異なる、ピュアオーディオライクな正統派サウンド。高域に漂う気品は確かにKseriesだと感じさせてくれるものだ。

 次にiPodを乗せてみる。対応iPodはClassic、nano(第2〜5世代)、iPod touchで、iPhoneは含まれていないが、iPhone 3GSを乗せたところ「この製品では動作しない」というお馴染みのアラートが出るものの、操作/出音共に可能だった。

 クリアかつストレートな音という印象はCDと同じで、中低域の分解能、高域の伸びの良さなど、アナログ入力では曖昧になりがちな部分がキッチリ描写される。ボリュームを上げていっても、個々の音像が形や細かさを保ったまま勢いを増してくれるので、下品なサウンドにならない。分解能が低いとダンゴにくっついた音が部屋に充満するだけなので、音楽が大味になり、逆につまらなく、うるさく感じてしまうが、そういった心配は無い。

 次に、CDと、そのCDからロスレス(Apple Lossless)でリッピングしたファイルをiPodに入れて聴き比べてみた。K-521でも確かに違いがわかり、S/Nが向上。アコースティック楽器の小編成(AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS/運命 SADAME)をiPodから再生すると、個々の音が綺麗に横に並び、音場が整理された印象だ。

 CDではアコースティックギターが前に出て主張し、背後のヴァイオリンもよりダイナミックに聞こえる。ただ、音場の広さや収録現場の雰囲気はiPodからのほうがよく見通せ、より音場重視のピュアオーディオらしい音になるようだ。クラシック(ホルストの組曲・惑星から木星)もiPodの利点が活かせる。逆にロックなどでは、CDの音の方がダイナミックで好みという人もいるだろう。

 iPodの操作は本体、もしくはリモコンで可能。本体からは再生/一時停止、スキップアップダウン、早送り/早戻しが可能。リモコンではさらに、リピートやシャッフルモードの切り換え、アルバムスキップも可能だ。

 コンパクトコンポとしては素晴らしい音質だが、スピーカーのサイズから来る低域不足を感じる面もある。リアバスレフではあるが、最低域はあまり沈まず、どちらかというと腰高な再生音だ。クラシックのティンパニーの音圧や、JAZZのアコースティックベースの量感、ロックのスネアなどにもう少し迫力が欲しいと思うシーンがある。また、非常に雑味を排除したサウンドのため、女性ヴォーカルのソロなどを再生すると、木製エンクロージャの“艶”というか、中域の量感がもう少し欲しいなとも感じる。


D-BASSの効果を調整しているところ
USBメモリ内の楽曲再生時には楽曲名の表示も可能
 そこでトーンコントロールや低域増幅のD-BASSを調整してみたが、D-BASSの増幅が非常に良くできている。低価格なアンプでバスブーストすると、数値を増やしても中域が出っ張り、音楽がモコモコするだけで、低音がほとんど太くならない事があるが、K-521では低域部分の迫力がキチンと増していく一方、クリアな中高域にほとんど影響が出ない。プラス3くらいにすると、理想的なバランスになった。

 イコライジングついでに「CONEQ」の効果も体験してみる。環境に合わせて効果モードが1〜3から選択でき、デッドな部屋で再生しながら切り換えてみた。当初、細かな違いも聞き漏らすまいと、スピーカーに顔を寄せるようにして聴いていたのだが、正直あまり違いがわからない。

 そこで三角形の頂点、通常のリスニングポイントに座り、音像に注意しながら切り換えてみると、急に違いがわかるようになった。音色そのものに変化は無いのだが、数値を上げて行くとヴォーカルとバックバンドの音像の輪郭が明瞭になっていくのだ。デジカメ画像のレタッチでコントラストを上げたり、シャープネスをかけたような印象で、中央に定位するヴォーカル音像の“彫りが深く”なったように感じる。左右のスピーカーをわずかに外向きに動かしてクロストークを減らしていくようなイメージ。色々な曲で聴き比べた結果、「2」が個人的にベストな数値だった。



■ iPod高音質再生は小型コンポの標準機になるか?

 PCを頻繁に使う人は、オンキヨー「ND-S1」のようなUSBオーディオ機能が欲しくなるかもしれない。だが、K-521のスピーカーや本体サイズは、PCまわりで使うには少し大きく、「Prodino」などの方が適しているだろう。やはり寝室やリビングなどに置き、単体でお洒落に使いたいシステムだ。

背面。光デジタル出力を備えているが、iPodからの音はデジタル出力できない

 欲を言えば光デジタル出力を備えているので、CDの音だけでなく、iPodの音もデジタル出力可能にして、将来より高級なコンポにステップアップした時でも、iPodトランスポートとして利用でき、使わない時は別の部屋のサブシステムとして使える……といった機能があると理想的だった。だが、マニアックな機能追加での価格上昇は、この製品には合わないかもしれない。この機能と音質、スピーカーも付いて実売45,000円という価格は、かなりのコストパフォーマンスが高いと言って良い。

 利便性を重視すると、大量の音楽を蓄積したPCにアクティブスピーカーを繋げたり、iPodスピーカーで済ませてしまいたくなる。そうした流れを受け、従来のミニコンポやラジカセ市場は縮小傾向にあるのだが、“音楽を聴くためにPCを起動しなければならない”、“iPodスピーカーでは音質が物足りない”、“ラジオとの親和性が低い”など、PCやiPodスピーカーにも不満がある人は多いだろう。

 K-521のような新時代の小型コンポは、ラジオやCDが手軽に楽しめる従来のコンポの良さと、iPodの高音質再生&充電という新しいトレンドを取り込んだことで、1台あると家庭の中で何かと活躍する事の多い製品と言えそうだ。また、iPodのデジタル接続は、小型コンポでも“音質へのこだわり意識”を高めるキッカケになり、製品ジャンル全体での高音質化や、小型化など、新たな流れを作り出す可能性も秘めている。そういった意味で、iPodとイヤフォン、ヘッドフォンがメインの再生スタイルとなりつつある若い世代の音楽ファンに、本格的なコンポの世界への足がかりにもなりうる1台と言えそうだ。



(2009年 11月 24日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎]


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