ボーズの新Lifestyle「Unifyテクノロジー」を体験してみた

-初のTrueHD対応。家族全員が使えるシアターに


左からV35、V25のコンソール。中央はセンタースピーカー

6月12日発売

標準価格:246,750円~399,000円

 ボーズが6月12日から発売する、5.1chホームシアター「Lifestyle」シリーズの新3モデル。いずれもお馴染みの小型サテライトスピーカーと、サブウーファの「Acoustimass module」を採用するシステムで、機能的に大きな2つのトピックがある。

 1つは同社製品として初めてドルビーTrueHD、つまりHDオーディオのデコードに対応した事。Blu-rayソフトの非圧縮音声を再生できるため、音質面のクオリティアップが期待できる。

 そしてもう1つは、「これまで市場に存在しなかった、真に簡略化された操作性を誇る」という、「Unifyテクノロジー」を採用したことだ。

 今回、サウンド面の進化と共に、この「Unifyテクノロジー」を体験してみた。


■ 基本仕様をチェック

 詳細は既報の通りだが、新しいLifestyleシリーズは、「Lifestyle V35 home entertainment system」(399,000円)、「Lifestyle V25 home entertainment system」(299,250円)、「Lifestyle T20 home theater system」(246,750円)の3機種をラインナップしている。今回試用したのは、最上位の「V35」だ。

Lifestyle V35 home entertainment systemLifestyle V25 home entertainment systemLifestyle T20 home theater system

3機種の機能差表。FM/AMチューナとiPodドックの有無、サテライトスピーカーの違いなどがある
 価格だけを他社の単品AVアンプと比べると中級~上級モデルの価格だが、Lifestyleシリーズは5.1chスピーカーもセットにした“シアターセット”であり、5+1個のスピーカーも加えた値段である。サテライトスピーカーがあまりに小さいので、ついその事を忘れそうになるが、「Unifyテクノロジー」と合わせて、ホームシアター初心者にも訴求できるセットとなっている。

 3機種の基本構成は共通で、入力端子などを備えたコンソールと、5個の小型サテライトスピーカー、そしてサブウーファの「Acoustimass module」で構成されている。機種間の違いは、V35のサテライトが、ネオジウム・マグネットを使った超小型の「Jewel Cube」、V25とT20が一回り大きな「Direct/Reflecting」スピーカーになっている事。両スピーカーは2個のスピーカーが上下に結合されており、向きを変える事で音場が変化するのが特徴だ。

 また、V35とV25はFM/AMチューナを内蔵し、専用のiPod用ドックも付属。ラジオをサラウンド再生できるほか、iPod/iPhoneの映像/音声も楽しめる。V35/V25のリモコンはディスプレイを搭載しているのも違いとなっている。


V35のコンソールT20のコンソール。カラーがシルバーになっている全体的に丸みを帯びたフォルムが特徴。サイドパネルも光沢のあるラインで高級感がある
フロントパネルを開いたところ。USB入力などを備え、JPEG静止画表示も可能V35のセンタースピーカーV35のサテライトスピーカー「Jewel Cube」。コンパクトだがネオジウム・マグネットを採用し、強力な出力を持っている
V25、T20のサテライト「Direct/Reflecting」(左)と、「Jewel Cube」(右)のサイズ比較お馴染みのAcoustimass module。指向性の少ない低域を担当するため、置き場所を選ばない左がT20付属のリモコン、右がV35のリモコン。主な違いは上部のディスプレイの有無


■ 至れり尽くせりなUnifyテクノロジー

 最大の特徴の「Unifyテクノロジー」だが、簡単に言うと「簡単セットアップ機能」のようなものだ。しかし、その“簡単さ”が大きな進歩を遂げている。また、セットアップ時だけでなく、日常の使用時でも恩恵が受けられる“使いやすさ”や“分かりやすさ”にまで踏み込んでいるのが特徴と言える。

 まずはセットアップ。実際にBDプレーヤーをV35に接続する流れを見てみよう。コンソール前面パネルにあるセットアップボタンを押すと、ブルーを基調としたデザイン性の高いセットアップメニューが現れ、表示言語や、自動音場補正の「ADAPTiQ」など、様々な機能にアクセスできる。接続の際はこの中から、「新たな機器の追加」を選ぶ。

 すると、「どのような機器を接続しますか?」という表示と共に、CATVチューナー、DVDプレーヤー、BDプレーヤー、iPod、Wii、PlayStation、Xboxといったゲーム機まで、豊富な名前が現れる。

セットアップメニュー。上にあるのがUnifyマーク「新たな機器を追加」を選ぶと、新たに接続する機器の種類を選ぶ画面になるHDMI出力のある機器では、HDMI接続を推奨するメッセージ

 ここからBDプレーヤーを選ぶと、「その機器にはHDMI出力がありますか?」、「HDMIケーブルをお持ちの場合はHDMI接続が最適です」など、HDMI接続を促す説明文が、HDMI端子のイラストと共に表示。先に進むと、V35のHDMI入力への接続をナビゲートするフェーズに移る。

 このように対話形式でセットアップできると同時に、豊富なカラー画像を使って説明されるのが特徴で、端子の種類や名前がわからなくても、絵と見比べながら接続ができる。また、例えば「HDMI 1に接続してください」と書かれているのに、誤ってHDMI 2に接続すると、アラート音と共に「誤った端子に接続されています」という注意文が表示され、正しく接続すると「ポロリン」というような“正解音”が鳴る仕組みも用意されている。最後に、BDプレーヤーの映像が見えるかどうか、小画面でチェックするフェーズも用意。至れり尽くせりなセットアップ補助になっている。

V35の背面画像を使い、接続場所を指示しているところ指示と異なる端子に接続すると、アラート音とメッセージで知らせてくれる接続後、BDプレーヤーの画面がきちんと表示されているかどうか、小画面でチェックできる

 リモコンコード設定も簡単だ。普通のAV機器では説明書のコード表と見比べながら作業するハードルの高い設定だが、Unifyの場合はBDプレーヤーに付属する他社のリモコンを、メインコンソールに向けて、指定されたボタンをプッシュするだけ。コンソールに他メーカーのリモコンコードが保存されており、どのメーカーの製品なのかを自動判別。V35の付属リモコンで、接続機器の基本操作ができるようになる。

 なお、付属リモコンは電波式だが、接続機器の制御には赤外線を使っている。赤外線信号はリモコンからではなく、リモコン操作を受けたコンソール側から発せられるのが特徴。また、コンソールとBDプレーヤーが離れた場所にあったり、ラックの奥に収納されていても対応できるよう、赤外線のエミッタも同梱されている。

BDプレーヤー付属のリモコンを、コンソールに向けて操作するよう指示される。これにより自動でリモコンコードが設定されるBDプレーヤー接続後のソース切り換えメニュー。接続されている機器だけが表示されるのがミソ赤外線の制御信号は本体から発せられるが、直接届かない機器向けに、エミッタも同梱されている

 セットアップが完了すると、ソース選択メニューの中に「BDプレーヤー」という項目が新たに現れる。AV機器にありがちな「入力1」、「入力2」といった数字表示は一切無く、「BDプレーヤー」、「Xbox」などの機器名が表示され、また、接続されていない端子は一覧に現れない。

 AV機器に詳しい人ならば、セットアップは補助無しで可能だろう。しかし“どの入力端子にどの機器が接続されているのか?”は、セットアップした人でなければわからなくなりがちで、AV機器に詳しくない人が利用する際のハードルになる。「お父さんがいるとAVアンプで映画が楽しめるけれど、お母さんや子供しかいないと使い方がわからず、結局テレビのスピーカーで音を出している……」なんてケースも多いだろう。この事がHDMI CEC機能が重宝される下地にもなっているが、ボーズはセットアップメニューや切り替えメニューなどを作り込むことにより、解決を図ったというわけだ。

前モデルのリモコン(右)と、V35のリモコンを比較。デザインが洗練されたほか、手にすると高級感も新モデルのほうが格段に向上しているリモコンの裏面。ホールドすると指が当たる部分に、ライトアップ用ボタンを装備。床置した際に床と触れる上部パーツはゴム仕上げになっており、置いた際に音が出にくいようにしているなど、細かい工夫がある
ディスプレイに様々な情報が表示される各ボタンも自照式で、視認性は高い

 新たに追加された、iPodとの連携にもUnifyメニューやリモコンは活用されており、OSDメニューからiPod内の楽曲や映像ライブラリへアクセスし、再生選択が可能。ディスプレイ付きのリモコンであれば、ディスプレイにも同様の内容が表示される。なお、最近ではiPodとのデジタル接続を謳うAVアンプが多いが、新Lifestyleではアナログ接続になるという。

上位2モデルはiPod用ドックを同梱。映像・音声のどちらもシアターシステムで楽しめるiPod接続時のメニュー画面。OSDメニューからiPod内の楽曲やビデオにアクセスできる低解像度映像を表示した際の拡大表示も可能。拡大モードも写真のように複数用意している


■ 音質もチェック

 気になる音質もチェックしてみよう。ドルビーTrueHDで収録されている「ハリー・ポッターと謎のプリンス」から、迫力あるクィディッチ(魔法の箒に乗って行なう球技)のシーンを再生する。

 小さなサテライトスピーカーから出ているとは思えないほど広い音場と、Acoustimass moduleとの音の繋がりの良さは従来モデルから踏襲。中域が豊かな、映画を楽しく再生してくれるサウンドだ。細かい音も明瞭で、リアに向けて選手が飛び交う移動感もよくわかる。

 ドルビーTrueHDで試聴すると、音の情報量が多いため、前述のような“メインの音像”の外に広がる観客のざわめきや風の音、食堂での周囲の話し声など、細かい音がよくわかる。明確に音場が描かれる事で、サラウンド空間により奥行きや立体感が出たと感じた。

 なお、気になるのはDTS-HD Master Audioに対応していない事だが、これは「スタンダードになったと(同社が)判断したものをサポートする」という、ボーズの基本姿勢によるものだという。今回、上位モデルでiPod用ドックが同梱されているが、これも「iPodはスタンダードなソースになった」と、ボーズが認めた結果と言えるだろう。

 3機種にはほかにも、モノラルの映画など、様々なソースを5.1chのサラウンドに変換し、再生する「Videostage5デコーディング回路」や、小音量時でもセリフの明瞭さを失わないという「Digital Dynamic Range スピーカーコンプレッション回路」、どんな音量レベルでもバランスのとれた音質を提供するという「アクティブ・エレクトロニクス・イコライゼーション」などの機能が搭載されている。また、ソース面でもUSB端子を備えており、JPEG静止画表示をサポート。全機種1080pまでのアップスケーリング機能も備え、機能面でも通常のAVアンプに負けない充実ぶりとなっている。

V35の背面T20の背面


■ 多機能化と使いやすさの両立

 機能をシンプルに抑え、簡単な接続や操作性を維持。ボディもコンパクトだが、ひとたび鳴り出すと、驚くほど豊かな音を出す……というのが、多くの人がボーズ製品に抱くイメージだろう。

ボーズ・ファクトリーストアの佐野店
 新しいLifestyleシリーズは、“コンパクトなボディで驚くほどの音”というボーズらしい特徴を活かしつつ、iPod対応や接続機器制御といった機能面も強化。それにより複雑化しがちな接続・操作を、Unifyで、よりわかりやすく、使いやすくしたモデルと表現できる。HDオーディオ対応という事で、“新世代のLifestyleシリーズ”と表現できる3製品だが、“多機能化と使いやすさの両立”という、“ボーズの新しい挑戦”を感じさせるモデルとも言えそうだ。

 なお、新モデルの発売(6月12日)に合わせて、直営店のボーズ・ファクトリーストアの佐野店、入間店、仙台泉店、神戸店、御殿場店、士岐店、鳥栖店がリニューアル。シアターショー「True to Life」が新しくなり、V35などで、映画や音楽など、様々なソースをサラウンド体験できるという。



(2010年 6月 10日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]