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REGZA Zの「FF XIII-2」最適画質モードとは?

−画質調整の狙いと効果を解説


デジタル映像商品技術担当 TV映像マイスタの住吉氏。FFXIII-2最適化画質モードも監修。FFシリーズのファンで前作をオールクリア済み

 東芝は、12月15日に発売されたスクウェア・エニックスのPlayStation 3/Xbox 360向けRPG「ファイナルファンタジーXIII-2」(FFXIII-2)の最適画質のガイドラインを発表し、これをREGZAの公式サイトにて公開を開始した。

 そこで今回、最適画質設定の基本情報から、そこに込められた意図までをまとめてみた。今回、紹介している考察情報は、FFXIII-2のプレーヤーはもちろんのこと、ゲームファンにとってもゲームプレイ用テレビの画質調整の参考になれば幸いだ。

 今回のレポートの作成にあたっては、メタブレイン時代からREGZA映像エンジンのアーキテクトを担当し、FXIII-2最適化画質モードを監修した、東芝デジタルメディアエンジニアリング デジタル映像商品技術担当 TV映像マイスタの住吉肇氏にお話を伺っている。



■ 「ファイナルファンタジーXIII-2」最適化画質とはなにか?

REGZA ZP3。東芝とスクウェアエニックスがコラボ・キャンペーン

 今回、発表された「ファイナルファンタジーXIII-2」最適化画質とは、その名の通り、「ファイナルファンタジーXIII-2」の美しい映像表現を最良な形で表示できるように調整した画質になる。

 公式サイトには、2011年発売の映像エンジン「REGZAエンジンCEVO」を搭載した薄型テレビ、REGZA ZP2、ZP3、ZG2、Z3シリーズ向けの設定が公開されており、ユーザーは、このサイトに記載された手順に従ってパラメータを設定していかなければならない。

 ネットからファームウェアやプロファイルのようなものをダウンロードして手持ちのREGZAにインストールするというものではない点に注意したい(将来的にはそうしたサービスも実現されるべきだとは思うが)。

 ある程度REGZAを使いこなしているユーザーは、「REGZAには“ゲームモード”があるので、これに切り換えるだけでいいのでは?」という疑問を持つかも知れない。実際のところ、ゲームモードに設定するだけでもゲーム映像に適した映像表現になったり、低表示遅延モードになったりするのだが、今回のこれはFFXIII-2開発元のスクウェア・エニックスとのコラボ企画なので、東芝側としては「ゲームモードをよりFFXIII-2向けに追い込んだ」と言うことだろう。

 このFFXIII-2向け画質パラメータを決定したのは前出の東芝 住吉氏。住吉氏は前作のFFXIIIをクリアしており、ミニクエストの方もオールクリアしたほどのFFXIIIファンなのだそうだ。


■ 「ファイナルファンタジーXIII-2」最適化画質の設定手順とその意味

 実際のFFXIII-2の最適化画質の設定手順を紹介すると共にその意味を解説していこう。

【1】画調モードを「ゲーム」にする

「ゲーム」を選択

 ゲーム画調モードはご存じのようにREGZAシリーズのウリの機能の1つで、ゲーム映像のようなベースバンド映像に適した画調が設定されると共に、徹底した低表示遅延を実現してくれるものだ。

 リモコンの[設定]ボタンを押して設定メニューを開き、「映像メニュー」から「ゲーム」を選択する。余談ながら、REGZAの画調モードは4桁型番のREGZAの頃から筆者のアイディアも採用されており、自分も普段から愛用している。


【2】ドットバイドットを選択する

Dot by Dotを選択

 放送映像でもなく、MPEGコーデックで圧縮された映像でもない(ムービーシーンは除く)ゲーム機からの映像は、製作段階で映像フレーム全域を使用して映像が作り込まれている。この場合、最良の表示状態とは、ゲーム機からの映像の各ドットをREGZA側のフルHD液晶パネルの各ドットに1対1に対応させる形で過不足なく表示させることだ。これを実現するには、いわゆる「ドットバイドット表示」の設定をしなければならない。

 これをやらないと映像が微妙に拡大表示されてしまい、1ドット単位の表現が周囲に拡散されてぼけてしまう。きめ細やかな髪の毛の線分テクスチャ等の表現の鮮明度はこの設定と関係性が深い。

 ドットバイドットの設定は、リモコンの[クイック]ボタンを押して「ゲーム画面サイズ」メニューを選択し、ここから「Dot by Dot」を選択する。

 デフォルトでは「ゲームフル」-「ジャストスキャン」(いわゆるアンダースキャンモード)になっており、これも実は実質的にはドットバイドット表示だ。なのになぜこの設定をやる必要があるのか。

髪の毛のようなドット単位の表現を美しく描き出すためにはドットバイドット表示の設定が不可欠だ

 内部処理的な話題になるのだが、テレビ製品ではゲーム機からのRGB信号が入力された場合でも一度YCbCr(色差)信号に変換している。後段のガンマ補正やら超解像処理やらの各種高画質処理で演算誤差を生まないために、この変換時に元のRGB信号を多ビットの色差信号に変換するのが最近の映像エンジンの流行だ。REGZAのCEVOエンジンでは「ゲームフル」-「ジャストスキャン」のモードではこれを10bit 4:4:4(総計30bit )で処理するが、「Dot By Dot」モードでは12ビット4:4:4(総計36bit)で処理する。

 たかだかYCbCr、各2ビットずつの違いではあるが微妙な色ディテール表現の違いが比較評価をすると出てくるため、テレビメーカーサイド、ゲームスタジオサイドとしては、より高い表現能力が生まれる設定を使って欲しい…ということのようだ。

【3】ユニカラーを若干絞る

ユニカラー設定

 FFXIII-2では、純色表現が鋭いシーンが一般的なゲームよりも多い傾向にある。【1】で選択した画調モードとしての「ゲーム」モードは、「あざやか」モードほどではないものの、やや記憶色再現的な味付けをして「艶やか風味」の色調になっているため、FFXIII-2のような映像表現では純色の最明部で色飽和を起こしやすい。そこでFFXIII-2最適化画質モードでは、このアーティファクトを起きにくくする調整を行なったという。


こうした、純色ベースの明るい表現箇所での色飽和を押さえる意味合いがある

 この調整を行なうには、[設定]ボタンを押して開く「映像調整」メニュー内にある「ユニカラー」をいじる。具体的にはデフォルトでは「100」となっている設定を、FFXIII-2最適化画質モードでは「90」と設定するよう指示されている。

 これにより純色表現のゲインが絞られることとなり、最明部付近の純色による陰影表現なども見えやすくなる。


【4】超解像処理のチューニング

 

超解像の設定

 近年のREGZAには「レゾリューションプラス」と命名された超解像処理の機能が搭載されている。超解像処理とは、入力された映像を「解像度が失われた映像」と仮定して、その失われた解像度情報を復元する処理を行なう高画質化処理だ。

 FFXIII-2に限らず、ゲームの映像はベースバンド映像なのでドット単位の表現が多く、例えば輪郭などは、実写映像よりも各段に鮮明だ。いうなればゲームの映像は「解像度が失われていない映像」ということができ、こうした映像に対して超解像を掛けた場合、元々鮮鋭度の高い箇所にリンギングノイズが表れたりする。これはREGZAに限ったことではなく、一般的な超解像処理には常について回るアーティファクトなのだが、FFXIII-2最適化画質モードではこれを低減させるチューニングを組み込んでいる。


このようなドット単位の表現が多く、輪郭や色境界も鮮明なゲーム映像では、超解像処理を効かせすぎると逆に不自然さが増してしまう

 これを行なうには、メニュー階層をやや潜ることになるが、「詳細調整」メニューの「レゾリューションプラス設定」を開き、ここの「補正レベル」をデフォルトの「オート」から「中」に設定する。この「補正レベル」とは「超解像処理の結果をどの程度、原映像に反映させるか」のパラメータになり、「中」設定は「原映像と超解像処理の結果をバランスよく合成する」ような設定というイメージだ。

 ちなみに、デフォルトの「オート」は、入力映像に適した超解像処理を行なうのだが、機能の効果を見せるためにやや強めに補正される。住吉氏も「FFXIII-2以外でも、中設定での常用がお勧めかも」と述べていた。


 FFXIII-2最適化画質モードのレゾリューションプラス関連の設定については、もう一点、調整を奨励している。それは「フィルムグレイン抑制」の設定だ。

 フィルムグレインとはアナログのフィルム撮影された映画などにおいて生じるフィルム映像特有の時間方向のざわめくような粒状アーティファクトだ。フィルムグレインはデジタル画像処理の観点からすればただのノイズなのだが、愛好家の間ではフィルム映画の「味わい」として見る向きも大きいためこの設定が設けられているのだ。

 ちなみに、FFXIII-2最適化画質モードでは、これをデフォルトの「オート」から「強」設定にするガイドラインを示している。

肌の質感を表現する色ディテール部分には触れず、それ以外のテクスチャ表現を先鋭化する調整を「フィルムグレイン抑制」の設定を利用して行なった

 FFXIII-2では、肌の質感などにおいて、繊細な色ディテール表現を多用しているが、「オート」では、こうした色ディテール表現が過度に先鋭化される傾向にある。肌の色ディテール表現などは、実際にはフィルムグレインではないのだが、そうした表現がたまたまフィルムグレインの周波数に近いと言うことで、「フィルムグレイン抑制」設定を「強」としたところ、そうした「不本意な先鋭化」を避けられたようだ。

 ちなみに「強」設定に悪いイメージを持つ人もいるかも知れないが、「フィルムグレイン抑制=強」設定はむしろ超解像処理の結果を控えめに、原映像の割合が「強」という意味なので原信号重視のユーザーはむしろここは「強」にすべきなのだ。

 原信号至上主義ユーザーの中には「超解像処理はいらない」「モニター画質でプレイしたい」という人もいるだろう。そうしたユーザーは単純に「レゾリューションプラス」機能そのものを「オフ」設定にすれば良い。


【5】LEDエリアコントロールを弱める

LEDエリアコントロール

 FFXIII-2最適化画質モードでは「詳細調整」メニュー階層下の「LEDエリアコントロール」をデフォルト設定の「中」から「弱」への変更を促している。

 LEDエリアコントロールとは液晶パネルの背面にあるLEDバックライトの制御にまつわるパラメータだ。

 REGZAでは入力された映像の平均輝度をリアルタイムに検出して、その表示フレーム中の明部表現、暗部表現の双方がほどよく描写され、なおかつコントラスト感も最大に得られるように、バックライトの照度を調整している。REGZA ZP2、ZP3、ZG2、Z3の場合は、LEDバックライトをフレーム全体ではなく、映像内の領域ごとに照度を調整できるため、映像中の明部に対応する箇所に対してはLEDバックライトを照度を強め、暗部に対しては逆にLEDバックライトの照度を弱める制御を行なっている。

 FFXIII-2最適化画質モードでは、この制御を弱めるチューニングをしていることになるわけだが、実際の効果としては、LEDバックライトをある程度、明るい方で安定させつつ照度の強弱制御が行なわれることになる。

こうした閃光表現のダイナミックレンジ感を最大限、享受できるようなチューニングが「LEDエリアコントロール=中」設定だ

 FFXIII-2では、魔法発動時の閃光表現など、多彩なパーティクルエフェクトが多用されている。東芝、スクウェア・エニックスとしては、そうした表現のダイナミックレンジ感を際立たせたいためにこのような設定を推奨としたようだ。実際問題として、「弱」設定にしたことにより、暗部の沈み込みは弱まることになるため、背景が暗いシーンなどでは「中」設定時よりも黒浮きは強くなる。

 洞窟などを探検するような暗部表現の多いゲームではここは「中」のままの方がいいが、昼間の屋外シーンなどが中心なゲームでは、FFXIII-2のように「弱」とするといいだろう。


【6】質感リアライザーの設定でガンマを追い込む

ZP3/ZP3での質感質感リアライザー調整。明部を[5]、暗部を[7]に設定

 REGZA ZP3、Z3の画調パラメータ「質感リアライザー」とは、一般的な画質用語でいうとダイナミックガンマ(動的階調補正)機能に相当するものだ。実際、ZG2、ZP2では「ダイナミックガンマ」というパラメータ名になっている。この設定だけ、ZP3/Z3と、ZG2/ZP2で項目名や設定方法が異なっているので注意したい。

 FFXIII-2最適化画質モードでは、「詳細調整」メニュー階層下の「質感リアライザー」(ZG2、ZP2では「ダイナミックガンマ」)項目をデフォルト設定の「オート」から「手動」へと変更。ZP3/ZP3では、この中の「明部ゲイン」を「5」に、「暗部ゲイン」を「7」に設定。ZG2/ZP2では「6」にする。

 REGZAの動的階調補正では、明部の階調特性と暗部の階調特性を独立に設定することができ、FFXIII-2最適化画質モードでは、それぞれに最適な設定値を与えたという格好だ。ZP3/Z3の「明部ゲイン」「暗部ゲイン」は0〜10の値を取ることができ、0は事実上の補正なし、1〜10は数字が高いほど補正強度を強める意味合いとなる。

 FFXIII-2最適化画質モードの「明部ゲイン=5」は、最明部付近の陰影を殺さない程度に明部を持ち上げる設定となる。「LEDエリアコントロール=弱」で明部のダイナミックレンジ重視の画調設定としたFFXIII-2最適化画質モードだが、「明部ゲイン=5」は最明部付近の階調をちゃんと描き出すための「振り戻し」の意味合いがあるのかも知れない。

このシーンのような、暗表現と明表現が同居する映像での最適化に相当するのがここの設定だ

 一方で「暗部ゲイン=7」は、「暗部階調はやや強めに沈ませる」設定に相当する。効果としては明るいシーンであっても暗部が引き締まるため、パリっとしたコントラスト感が得られるようになる。こちらも「LEDエリアコントロール=弱」で明部のダイナミックレンジ重視のFFXIII-2最適化画質モードで起こりうる暗部の「浮き」を抑え込む意味合いがあるのではないかと推察できる。

 この設定を、他のゲームで応用したい場合には、「明部階調の飛び(あるいは暗部階調の死に)を回避したい場合には設定値を低めに」「コントラスト感を重視したいならば高めに」という考え方で調整を詰めていくといいだろう。

備考:PS3のHDMI階調レベル設定

PlayStation 3の階調レベル設定

 REGZAについては上記のとおりだが、PS3でプレイする場合は、HDMI出力時の階調レベル設定にも注意したい。FFXIII-2最適化画質モードでは、PS3メニューの「設定」-「ディスプレイ設定」の「RGBフルレンジ(HDMI)」の設定の確認を促している。この項目を「フル」に設定する必要がある。

 これは筆者の連載記事「大画面☆マニア」ではたびたび取り上げているHDMI階調レベルの設定だ。

 HDMIでは階調表現を16〜235の範囲で伝送するビデオコンテンツ向けの階調レンジと、0〜255の範囲で伝送するPCやゲーム機向けの階調レンジがあり、映像出力機器側と映像表示機器側でこれを合わせてやらないと正しい階調表現が得られない。映像が映ってしまうため潜在的に、これを意識しないで(気がつけず)使用しているユーザーがとても多い。今回、テレビメーカーである東芝と、ゲームメーカーであるスクウェアエニックスが公に「この設定を確認せよ」とメッセージを打ち出したことは筆者としては高く評価している。

 さて、FFXIII-2に限らずほぼ全てのRGB出力を前提としたゲームは0-255の「フルレンジ」で映像(グラフィックス)が設計されているため、PS3側の設定をこれに合わせる必要がある(詳しくは触れないがPC接続時も同様)。

 今回取り上げているREGZA ZP2、ZP3、ZG2、Z3シリーズはこの階調認識のオートが優秀なので、これに関連した設定をあえて行なう必要はないが、旧機種や、あえて明示的設定したい場合は、REGZAの「機能設定」-「外部入力設定」-「RGBレンジ設定」において「フル」を設定してやればいい。


■ おわりに

 ゲームはプレイ体験としてのコンテンツの面白さが最重要視されるが、それ以前に、ゲームは映像メディアの1つであることは間違いない。だからこそ、そうした映像作品を作り上げたゲーム開発元としては、ユーザーに各自のプレイ環境で、最適な映像表示状態で楽しんでもらえることを望んでいる。

 しかし、これまで、「ゲームに適した映像表示をどうするか」というような課題は「ゲーム機メーカー側が取り組むべき」、あるいは「テレビメーカー側が取り組むべき」というふうに捉えられ、ゲーム開発元の意向のようなものが反映される機会は非常に少なかった。

ゲームは映像メディアでもある。その作品を制作者の意図する状態で見たいという欲求はユーザー側にもあったが、それを実現するための手段がこれまではなさ過ぎた?

 今回のような「FFXIII-2最適化画質モードの提案」は、直接的には「FFXIII-2を最良画質でプレイするための設定指南」というFFXIII-2ファン向けのサービスでしかないが、副次効果として「ゲームユーザーに今一度、自分のテレビで正しいゲーム映像表示が行なわれているのか確認して欲しい」という訴えや、「ゲーム開発元はその作品の映像を最良の状態で見て欲しいと考えている」と言う事実に目を向けさせるきっかけをもたらすのではないかと思う。そしてなにより、テレビメーカーの東芝とゲームメーカーのスクウェア・エニックスがコラボ企画で取り組んだという事実が、これに重みを生む。

 今回のようなテーマには、やや「マニアックな話題」という印象を持った読者も多いとは思うが、「高いお金を払って買ったテレビ、ゲーム機、ゲームソフトを、最大限にフルポテンシャルで楽しんで元を取ってやろうよ」という視点から見れば、だれもがすぐに試せるお得情報、活用術とも捉えられるはずだ。参考にして頂きたい。

 

 


(2011年 12月 15日)

[Reported by トライゼット西川善司]