IPTVも高画質化。新エンジン搭載の「BRAVIA」

-ニコニコ実況/Facebook対応で「ネットテレビ元年」


KDL-55HX920

 ソニーが液晶テレビ「BRAVIA」の新シリーズを4月下旬より発売する。

 新BRAVIAの特徴は、新映像エンジン「X-Reality PRO」の搭載による高画質化。さらに、ネットワーク機能の強化も図られ、ニコニコ実況やfacebookなどコミュニケーションサービス対応に注力したという。

 上位シリーズのHX920/HX820/HX720シリーズは4倍速/240Hzパネルを採用し、HX920は直下型のLEDバックライト。NX720シリーズは2倍速/120Hzパネルを採用する。全モデルで3D表示に対応している。

 BRAVIAの新ラインナップの主要機能をチェックしてみた。


型番サイズ特徴店頭予想価格
KDL-55HX92055型X-Reality PRO
直下型LED
無線LAN
モノリシックデザイン
43万円前後
KDL-46HX92046型35万円前後
KDL-55HX82055型X-Reality PRO
エッジ型LED
無線LAN
モノリシックデザイン
37万円前後
KDL-46HX82046型29万円前後
KDL-46HX72046型X-Reality PRO
エッジ型LED
27万円前後
KDL-40HX72040型21万円前後
KDL-46NX72046型X-Reality
エッジ型LED
モノリシックデザイン
無線LAN
27万円前後
KDL-40NX72040型21万円前後

KDL-46HX820KDL-46HX720KDL-40NX720


■ 「X-Reality PRO」により画質向上

X-Reality PRO。X-Reality(左)とXCA7(右)から構成される

 4月下旬発売の新BRAVIAは、HX920、HX820、HX720とNX720の4シリーズ。HX型番の製品には、データベース型複数枚超解像技術を搭載した新映像エンジン「X-Reality PRO」を搭載。NX720シリーズは、EXシリーズと同様のX-Realityを搭載する。今回の画質面の最大の進化点はX-Reality PROといえる。

 3月発売の「BRAVIA EX720」などから採用が始まったX-Realityは、従来のブラビアエンジン3の高画質機能に加え、インテリジェントイメージエンハンサーや、強化したMPEGノイズリダクションなどを追加したLSI。BRAVIAの映像処理の中核チップとなる。

 X-Reality PROは、このX-Realityに加えて「XCA7」という新LSIを組合わせて構成。XCA-7により、X-Realityの機能を拡張し、データベース型複数枚超解像技術に対応する。

 データベース型複数枚超解像技術は、映像のHD、SDや、アップコンバート、ネット動画など、ソースごとに特徴的なデータを用意。数千種類に及ぶデータベースから最適なパターンを参照し、映像の元信号から復元するだけでなく創造するというもの。このデータベース技術と、前後のフレームを解析し、超解像処理を行なう複数枚超解像技術を組み合わせることで、解像感の向上などが図られる。

 従来のX-Realityでは同一フレームの近接する画素からの超解像処理を導入していたが、X-Reality PROでは複数枚のフレームからの動きの相関を検出し、処理を行なうことで、特に「動き」のある映像の解像感を改善するという。

X-Reality PROの概要最大の特徴がデータベース型複数枚超解像処理4種位のノイズリダクションを搭載

 実際に2010年モデルのKDL-55HX900と最新のHX920を見比べてみた。BSデジタル番組を見ると、確かに動きがスムーズでS/Nが上がったような映像。細かなディテールの周囲に発生していた、モスキート状のノイズやちらつきがきれいに消える。特にゆっくりとカメラがズームしたりパンした際の、城壁や森などのディテールのギラつきがすっきりと無くなるったのが印象的だ。

データベース型複数枚超解像は[リアリティクリエイション]の項目で調節できる

 さらに顕著に向上が確認できるのが480iのSD映像。桜や城壁などのシーンを見比べたが、i/p変換時にディテールが波打ってしまったり、その周囲に発生していたモスキートノイズなどがすっきりと消えて、ぐっと映像が浮き出てくる。同じ480i映像を入力しているのに、HX900が480iでHX920が720pぐらいの映像に感じられた。

 この効果が高いのがネット動画。YouTubeのQVGA程度のテレビ向け動画でも、ネット動画特有の大きなブロックノイズがかなり低減される。北川景子出演のソニーのCM見ると、のっぺりしとした階調は完全にネット動画そのものなのだが、ブロックノイズや輪郭線の破綻などがうまく抑えられており、字幕の可読性も向上する。ネット動画っぽさを残しながらも、明らかに高画質になったと感じる。特に米国市場では、こうしたネット動画の画質改善のニーズが高く、X-Reality PROでもこの改善を重視したという。

 X-Reality PROにおける高画質化は、HDMIやテレビ放送などの入力系統をチェックしているのでなく、あくまで入力信号を解析したうえで、最適な処理を行なうという設計になっている。そのため、IPTV用の処理やHD用の処理などをユーザーが選択する必要はない。ただし、画質設定の「リアリティクリエイション」の項目で、効果の調整は可能となっている。

 複数枚型の超解像は東芝もCEVOエンジンで取り組んでいるが、ソニーはデータベースの利用や、画素やフレーム間の動き検出精度の高さなどに自信を見せている。

SBM for Videoを搭載

 また、8bitの映像信号入力を14bit相当にまで拡張し、表示する「SBM for Video」も搭載している。

 HXシリーズは4倍速パネルを採用し、残像感を低減。3D表示にも対応する。加えてHX920シリーズは、直下型のLEDバックライトを採用し、エリア制御や3D対応のタイミングコントローラと組み合わせて16倍速相当の「モーションフロー XR 960」を謳う。HX820/720は8倍速相当の「モーションフロー XR 480」。

 NX720シリーズは、2倍速だが、新タイミングコントローラの採用により3D表示を実現できる。

 いずれも3Dグラスは別売だが、トランスミッターは全モデルで内蔵。別売のメガネは新しい「TDG-BR250」を設定。重量は59g(ブラック)/61g(ホワイト)。USBで充電可能で、連続30時間の利用が行なえる。4月下旬に発売し、店頭予想価格は12,000円前後。

TDG-BR250
3DインテリジェントピークLED3D映像の高輝度化が図られている

 HX920のみの機能としては、LEDバックライトの消灯時に使っていない電力を点灯時に上乗せするLEDブーストを行なう「3DインテリジェントピークLED」を搭載し、明るい3D表示を実現。HX900比で「約2倍」の高輝度化を図ったとのこという。


オプティコントラストパネルの概要

 HX920/820とNX720は、液晶パネル前面にクリアなガラスを配し、ガラスとグレア加工のパネル部の間に特殊な樹脂を充填した「オプティコントラストパネル」を採用。HX720はクリアブラックパネル。

 オプティコントラストパネルは、あたかもパネル前面そのものが発光しているように見え、より艶やかな映像が楽しめる。HX900シリーズなど2010年モデルの上位機種でも導入されていたものだが、2011年モデルでは、表面ガラス部分にコーニングによる「ゴリラガラス」を採用した。従来はガラス厚が2.5mmだったが、ゴリラガラスでは0.7mmまで薄型化されたため、その特徴がさらに強化されている。

KDL-40NX720前モデル「KDL-40NX800」と同じインチサイズながら大幅な狭額縁化や、薄型化を実現した


■ ネット機能は「コミュニケーション」関連を強化

コミュニケーションサービスを強化

 新エンジンによる画質の向上だけでない大きな進化点が「ネットワーク」だ。コンテンツ系のサービスも強化しており、ビデオオンデマンドのQriocityでは、4月下旬から「モンスター・ハウス IN 3D」や「オープン・シーズン3D」などの3D配信を開始する。

 また、YouTube、アクトビラなどのビデオ配信系のサービスのサービスを充実しているだけでなく、Skype、Twitter、facebook、ニコニコ実況などのコミュニケーションサービス対応を拡充。ソニーでは、2011年を「インターネットテレビ元年」と位置づけ、テレビCMなどでもこれらの機能を訴求していく。そのため、HX920/HX820/NX720の各シリーズで無線LANを搭載している。

 Skype以外のコミュニケーション機能については、基本的にソニー独自のウィジェット「アプリキャスト」上で動作する。

 「ニコニコ実況」は、テレビ番組を見ながら他の視聴者がテキスト実況している様子が確認できるもの。地上波のNHKと民放5局に対応し、テレビ番組を見ながら画面の右側に表示されたウィジェットで中継コメントを確認できる。

 ただし、テレビのニコニコ実況からの実況(コメント投稿)はできない。ニコニコ実況のアプリ提供開始は2011年夏以降となる見込み。なお、ニコニコ実況は2008年以降のアプリキャスト対応BRAVIAで利用可能になる。

アプリキャストの標準機能としてニコニコ実況など提供(順次提供開始)ニコニコ実況

 Facebookアプリは4月下旬に提供予定。テレビを見ながらFacebookのニュースフィードを確認したり、友人とのメッセージなどの機能が利用できる。ただし、画像の表示には対応しないなど、テレビでのサービス実現のため、一部機能制限がある。Twitterについては、従来もアプリキャストで外部の開発者が作成したアプリがあったが、ソニー純正のアプリキャストを開発し、4月下旬より提供する。タイムラインやリプライなどのTwitterの基本機能が利用できる。

FacebookTwitterYouTubeにも対応

 これらのコミュニケーション機能を使うためには、「文字入力」が必要。この点においても工夫が施されている。VAIOと無線LANで連携する事で、VAIOをテレビの入力機器として使う「Media Remote」機能を4月下旬に提供予定。2011年発売のBRAVIAと、VAIOのWindows 7搭載モデルが対象となり、テレビでのYouTubeの動画検索や、Twitter/Facebookへの書き込みにVAIOのキーボードが利用できる。

 また、iOSやAndroid搭載のスマートフォン向けにアプリの「Media Remote」を提供。メニュー操作やチャンネル操作に加え、スマートフォンのキーボードを使った文字入力や、音声認識機能を使った、音声による文字入力も可能となっている。

Xperia Arcから文字入力

 Skypeにも対応(別売アクセサリが必要)。また、番組内で流れている音楽の情報を検索する「TrackID」機能も備えている。

 新しいアプリキャストとしては「ポケットチャンネル」を搭載。これは、テレビ番組で紹介されたレストランや商品などの情報を紹介するもの。

 同サービスでは番組終了後30分~1時間程度で、番組で紹介されたショップや、飲食店などの情報がアップ(直近8日間)され、その情報をアプリキャスト上で確認できる。このアプリは全画面での表示も可能なので、マップ上に示されたショップ位置や、店の電話番号や住所などをチェックできる、さらに、付属リモコンは無線方式で、FeliCaポートも備えているため、おサイフケータイをポートにかざして、ショップのURLなどをケータイに転送できる。

ポケットチャンネルポケットチャンネルは全画面表示にも対応リモコンのFeliCaポートを使って、ショップURLなどをFeliCa対応ケータイに転送できる
Skypeにも対応Skype用マイク内蔵カメラ「CMU-BR100」

(2011年 4月 8日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]