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TBS作品3,000本追加へ。日本のコンテンツを強化するHuluの狙い

フールージャパン 日本代表のバディ・マリーニ氏

 フールージャパンは1日、TBSテレビと包括的コンテンツ・パートナーシップを締結し、映像配信サービス「Hulu」においてTBSのドラマ作品などを多数配信開始した。TBS関連のコンテンツは1日時点では250作品が配信開始となり、今後順次追加することで、合計3,000エピソード以上となる見込みだ。

 約14,000本であったHuluのコンテンツの中に、3,000本が追加されるというインパクトは大きい。2011年のHulu日本参入時から、海外ドラマやハリウッド映画に強かったものの、日本のコンテンツはやや物足りなさがあった。しかし、最近ではアニメや日本のドラマも増えてきており、9月には「世界の中心で、愛をさけぶ」など東宝の映画、10月には「北斗の拳」や「スラムダンク」など東映アニメのアニメ作品を配信開始するなど、かなり日本のコンテンツを増やしてきている。

 Huluは今後日本市場でどう展開していくのか、フールージャパン 日本代表 マネージングディレクターのバディ・マリーニ氏に聞いた。

TBSとの「包括的コンテンツ・パートナーシップ」とは?

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(C)TBS

--TBSとの協力で、3,000ものコンテンツが追加されます。かつては、「Hulu、日本のコンテンツ足りない」という声はよく上がっていました。その日本のコンテンツが最近大幅に増えているのですが、なにか理由があるのでしょうか?

マリーニ:会員は順調に伸びていますが、2年前から日本の作品を増やして欲しいという声は多く頂いていました。今回、TBSさんという大手テレビ局と、包括的なパートナーシップを結べたことは、我々のビジネスにおいても大きなマイルストーンだと思っています。

 2年前は、テレビ局やスタジオと話をしていく中で、「定額制の動画配信とはなにか」ということから説明しなければなりませんでした。彼らにとって「どういうビジネスへの影響があるか、がわからない」という状況でした。しかし、Huluが立ち上がり、ビジネスしていく中で、コンテンツパートナーの皆さんに、マネタイズできる、より多くの人に見てもらえる、ということが、理解されてきた。我々のサービスへの理解が高まってきたと感じています。

--TBSとの「包括的なパートナーシップ」とは、これまでの各社とのパートナーシップとは違うのですか?

マリーニ:違います。今回の契約では、TBSオンデマンドが定額制映像配信用の権利をクリアしたものについては、Huluでほぼ全て配信できる、というものです。TBSオンデマンドにとっても、フールージャパンにとっても、作品数において過去最高のディールになります。

--3,000タイトルはいつまでに揃うのでしょうか?

マリーニ:決まっていません。配信の品質確認などもしなければならないので、準備が揃い次第「順次」となります(注:初日の11月1日には約250本が追加されている)。

モバイルやリビング利用が拡大中

--デバイスの対応拡大については、どうお考えでしょう。PlayStation Vita TVへの対応も発表されましたが、これは発売初日(11月14日)から対応するのでしょうか。また、PlayStation 4やXbox Oneへの対応はいかがでしょう?

マリーニ:Vita TVについては準備を進めていますが、“いつ”というのはまだ決まっていません。また、ほかのデバイスについても検討はしていますが、未定です。

 ただし、パソコンでもスマートフォンでも、テレビ/リビングでも、「いろいろなデバイスで見れる」ということが、Huluが支持され、満足いただいている点だと考えています。第三者調査でも、顧客満足度や実際の利用率などで評価頂いています。単に対応機器を増やすだけでなく、そのデバイスにあわせたユーザーインターフェイスの使いやすさ、に力を入れています。全て自分たちで開発し、デザインしている。それがHuluの強みだと思っています。

江原:(フールージャパン江原槙子PRマネージャー)また、ユーザーさんからの声が多く、この1年で力を入れてきたのが、決済方法を増やすことです。ドコモさんやauさんのキャリア決済などに対応しました。

--デバイス毎の利用状況についてはいかがでしょう? 以前お尋ねしたときは、スマートフォンなど「モバイル」、「パソコン」、ゲームやテレビなどの「リビング」でそれぞれ1/3ずつぐらい、とお聞きしましたが。

マリーニ:大きくは無いですが、変化はあります。モバイルとリビングが少しづつ増えています。PCが大きく減っている、というわけではないですが、トレンドとしてモバイルやリビングが増えつつあります。

江原:Androidなどの対応機器を増やしたり、インターフェイスの改良も進めているので、モバイルでも見やすい環境ができてきたと思います。あとやはり「キャリア決済」の対応ですね。ケータイを通して登録する人が増えました。また、Wii Uなどの対応により、テレビ周りの視聴時間も増えています。

Huluの強みとは? ダウンロード対応の予定はない

-- 一方で定額の動画配信サービスが増えています。特にドコモなどのケータイキャリア。携帯電話販売店での販促など、営業力も強いと思いますが、それらのサービスに対し、危機感はありますか? また、Huluの強みとは?

マリーニ:調査によれば、定額動画サービスを使ったことがある人は「4.8%」。興味ある、という人が2割強で、まだ使われていない人が多い。定額動画配信サービスは、新しい視聴の方法で、いつでもどこでも動画が見られる。これはライフスタイルチェンジです。理解して頂くためには、業界全体でメッセージを出していかないといかない。今の段階では、競合が多いということは、いいことだと思っています。動画配信の認知がもっと高まり、その中で違いが理解されていけばいい。Huluの強みは使いやすさであり、デバイスに合った簡単なインターフェイスです。

--競合という意味では、他の配信サービスでは「持ち運び」、「ダウンロード」に対応しているものもあります。Huluでの対応予定はありますか?

マリーニ:ダウンロードの対応予定はありません。ダウンロードしなくても、ストリーミングの配信の環境はどんどん良くなるばかり、と思っています。これからさらにいい環境が作られる中で、ダウンロードの重要性は低くなると思います。いまでもストリーミングでも高いクオリティで配信していますが、今後もっとクオリティを上げながら、いろいろなデバイスで対応していきます。

Huluの今後の展開とは?

--日本でのユーザーの伸びは堅調とのことですが現在の会員数は?

マリーニ:ユーザー数は公表していません。

江原:アメリカの有料会員の数は450万です

マリーニ:ただし、マーケットのサイズが違いますし、ビジネスモデル、ビジネスのステージも全く違いますので。ただ、日本では「順調に伸びています」。

--収益が赤字、黒字というのは……

マリーニ:(笑)。公表できません。

--アクティブ率や退会率はどうでしょう? Huluは「辞める」とか「一時的に課金を止める(アカウントホールド)」が容易というのは、個人的には魅力的だと思います。ただ、それ故、すぐに退会したり、見たいものが無い時は課金を止めているという人も多いのではないでしょうか?

マリーニ:数値は出せませんが、退会率はかなり低いです。我々が把握している業界平均や一般的なものと比べると低いはずです。エンゲージメント(1日にどれくらい見ているか)も高いです。

--アカウント ホールドはどうでしょう。一時的に課金をやめて、見たい作品が追加されたら課金に移れるということで、私もよく使っているのですが(笑)

マリーニ:我々としては、カスタマーが喜んでいただける機能を用意しようという精神でやっています。使われる人はかなり使っていますし、そこに価値を感じていただければ。ただ、全体として率はそれほど多くはないです。

--その割合は非公開?

マリーニ:「少ない」です(笑)。

江原:「ウォーキング・デッド」もそうですが、春からHuluで独占配信している「ミスフィッツ」では全話を一度に出すのではなく、1話ずつ形にしました。毎週金曜日に最新話を追加すると、金曜日に上映会をしたり、みんなで集まってみたり、というユーザーさんも出てきました。「いつでも・どこでも」がHuluの特徴でしたが、それだけでない楽しみ方もしていただけているようです。

--Huluでの最近の人気作は?

マリーニ:ウォーキング・デッド、ブレイキング・バッド、ミスフィッツなど海外ドラマ。あと、スラムダンクなどですね。東宝、東映アニメ、TBSと連続で国内コンテンツを揃えたことで、Huluのコンテンツの幅が増えたことは伝わっていると思います。

--配信コンテンツが変わると、ユーザー層も変わりますか?

マリーニ:まだ大きな変化はないです。今は25~40歳が多く、どちらかというと男性が多いけど、ほぼ男女半分。最近は女性の加入者が増えています。

江原:サービス開始当初は男性が多かったのですが、テレビのCMやコンテンツのラインナップも女性向けが増えてきました。認知度も高まって、ライトユーザーもHuluを知ってきているかもしれない。また、最近強化しているのは特集です。まだPCページだけなのですが、今日は「犬の日」だから犬関連の映画特集とか、ハロウィンだから関連作品を並べたりとか、目当ての作品が無くてもHuluに入れば「何かある」と感じてもらいたいですね。

マリーニ:Huluに入ると、「今日何を見よう」という冒険がある。そんなサービスにしていきたいですね。

(臼田勤哉)