トピック
4Kテレビが65,000円? 中国とグローバルブランド、二手に分かれる4K市場
(2014/5/29 09:30)
2014年の薄型テレビ市場最大のトピックは「4K」だ。国内大手メーカーが各社が最新モデルを市場投入したほか、6月には4K試験放送が、10月にはひかりTVによる4Kビデオ・オン・デマンド配信が予定されるなど、テレビだけでなく周辺環境の準備も進みつつある。
もちろん、4Kというトレンドは先進国を中心に全世界的なものだ。テレビ最大手のSamsungやLG、中国系のTCLやHisenseなども4Kテレビを投入している。その狙いは高付加価値化=プレミアム化による単価向上と大画面化による映像体験の向上だ。
しかし、中国においては事情が異なっている。先日もスマートフォン市場で急伸している中国Xiaomi(小米科技)が3,999元、日本円で約65,000円という低価格な49型4Kテレビ「Mi TV 2」を発表し話題となった。日本で50型の4Kテレビといえば、安くなったとはいえまだ25万円以上はする。Xiaomiの10万円を大きく下回るという価格設定は、フルHDテレビとしても安価な部類で、「4Kテレビがここまで安く……」というインパクトは大きかった。
なぜ、中国では4Kテレビが安いのだろうか? 実は中国はすでに「4Kテレビ大国」といえ、調査会社のDisplaySearchの発表では、2013年の4Kテレビ世界出荷160万台のうち84%が中国を占めており、圧倒的に出荷台数が多い市場になっている。
その理由は、中国市場の「4Kテレビ」はグローバルブランドとは別の戦略で推進されているからだ。4月のIFA GPCにおいて、DisplaySearchのPaul Gray氏は、「中国ブランドと、Samsungやソニーなどのグローバルブランドは、4Kテレビにおいて全く異なる戦略を取っており、中国とその他の国における“4K”の意味合いは全く異なっている」と説明した。
中国では「4K」というキーワードが、機能上の重要なマーケティングワードとなっており、僅かな価格のプラスのみで積極的に拡販されている。
画面サイズも39型、50型などで、Smasungやソニーなどのグローバルブランドが55型、65型などの大画面に注力しているのに比べると小さい。
つまり、中国では4Kというスペック、キーワードがマーケティング的に優先され、比較的低価格なモデルの差別化要素となっている。一方、日本や韓国メーカーなどのグローバルブランドは、画質や次世代テレビとしての高付加価値を訴求するという戦略をとっているというわけだ。
ただし、中国市場以外でも4Kテレビの拡大が見込まれている。前出のPaul Gray氏も「4Kは野に放たれた」と表現し、グローバルでの市場の急拡大を予測。2014年には1,000万台、2017年には6,000万台市場になると見込む。
2014年には、北米を皮切りにビデオ配信サービス大手Netflixによる4K映像配信がスタートするほか、Amazonなどの事業者の対応も予想されている。ソニーやLG、パナソニックなどの4KテレビがHEVCデコーダを搭載するのも、Netflixを始めとする4K配信への対応を想定してのことだ(中国市場では必要ない)。テレビ側とともにコンテンツ側の対応も揃いつつあることから、米国や欧州、日本のほか、中東地域での市場拡大を見込む。
ただし、4K放送については、放送業界において、120Hzなどのハイフレームレート化への期待が高まっているほか、色空間の拡大(BT.2020)などの検討も始まっている。先進国においては、こうした放送ロードマップに対応した高付加価値方向での進化が見込まれるため、収益化を優先する韓国メーカーを含むグローバルブランドが中国のような低価格競争にすぐに走るとは考えにくい。
とはいえ、高付加価値を志向するグローバルブランドは低価格化へ、一方で低価格な中国ブランドは高機能化へ進んでいくことは間違いなく、その差は徐々に近づいていくと予想される。実際に先進国市場においても、欧州でTCLが1,000ユーロ(15万円弱)の49型4Kテレビを発表するなど、低価格競争も始まりつつある。
また、画質はさほど重要ではなくても、PC作業用に解像度だけ欲しい、といったニーズや、インフォメーションディスプレイなど、画質以外の軸での活用の幅も出てくるだろう。中国ほどの急速な低価格化は考えにくいとはいえ、「4K」という一大トレンドの中、テレビやディスプレイデバイスを取り巻く環境は今後も大きく変化していくことだろう。