プレイバック2016
ガルパンのために極上の爆音を追求、シン・ゴジラ迎撃兵器をフライング導入 by 鳥居一豊
2016年12月28日 08:10
極上の爆音を追求し、我が家のシステムの音を磨き上げた1年
今年も飽きもせずにいろいろな製品やソフトを購入した。もちろん、映画やアニメもたくさん見たが、この1年は例年に増して映画館へ足を運ぶことが増えたのも大きな変化だ。自宅にそれなりのホームシアターがあるのだから、わざわざ映画館へ行くこともないとは思っていたが、イベント性も含めてロードショー公開の劇場へ行くのは楽しい。そして、音の評判の良い映画館の音をじっくりと聴くのは、自分のホームシアターの音を磨き上げるうえでもかなり参考になった。来年以降も、バランスよく自宅視聴と映画館での鑑賞をまじえていきたい。
新規に導入した機器としては、Ultra HD Blu-rayの再生のためにパナソニック「DMP-UB900」、iPhone 7(Apple PayというよりSuicaが使えるとわかって決断)、iPhone 7のためのポタアンOPPO「HA-2SE」などがある。DMP-UB900をはじめ、オーディオ&ビジュアルの趣味としてもおおいに役立っている機器だが、今年の本命となると、やはりサブウーファのイクリプス「TD725SWMK2」(実売価格51万7,140円)が2台だろう。
ガルパンのためのグレードアップは、当然、あらゆる映画や音楽でも効果絶大
このサブウーファ導入の理由が、「ガールズ・アンド・パンツァー劇場版」を極上の爆音で楽しむためというのは、連載記事でも触れた通りだ。もちろん、強烈な爆音と空気が震えるかのような低音の伸びは見事なもので、もはや我が家のシステムはこれなしでは成立しないほどのものと言っていい。25cmウーファをハイスピードで鳴らすための構造や強固なエンクロージャーは見事なもので、最低限のセッティングだけでも今までは感じられなかった低音の伸びが得られた。
「ガールズ・アンド・パンツァー劇場版」の強烈な砲撃音が、劇場で体感したものと相似の迫力で再現できたことはもちろんだが、低音の伸びがぐっと下まで伸びたことで、不思議と劇伴などの音楽自体もひときわ冴えた鳴り方をするようになった。例えばチューバーやコントラバスのような低音楽器の出すかなり低い音の基音がしっかりと出ることで、楽器自体の存在感が増し、それより上の帯域の音まで芯の通った再現に感じられた。それどころか、サウンドバランス全体が重心が下がり、安定感を増したことでサブウーファとは関係のないダイアローグや歌声までもがより明瞭で粒立ちよく再現されたようにすぐに気付いた。我が家のシステムの音がサブウーファなしでは成立しないというのはこのためだ。
もちろん、床は振動してしまう。鳴らし込みをしていると、2階は震度1~2くらいのかすかな揺れを感じるほどだ。また、シアタールームに隣接する洗面所にあるブレーカーが共振してビリビリと不快な音を立てていたので、ブチルゴムの制振材を使って不要な鳴きを止める対策を行なった。あわせて、改めて家の外に漏れる騒音をチェックして、日中以外は隣人に迷惑のならない音量に下げることを徹底することになった。
床への振動は、サブウーファの振動が伝わるというよりは床自体が共振していると考えられるので、対策は困難。気休めにとインシュレーター(クライナ TP4-M8)を装着。TD725SWMK2には、もともと底面にM8サイズのネジ穴が設けてあり、M8のネジで装着するタイプのインシュレーターが使えるようになっているのだ。クライナを選んだのは、スパイクタイプでしかもスパイク受け皿が一体となった構造を採用しているため。重量が約50kgもあるので別体のスパイクとスパイク受けだと、床を痛めたり怪我をすることが容易に予想できたため。
これが意外に効果があった。床の振動もわずかながら減ったし、なによりも低音の解像感がさらに際立った。これは床の振動が本体に伝わって音を汚していたためだろう。これに気をよくして、さらにJ1プロジェクトの樹脂系のインシュレーターも重ねている。これで床への振動もずいぶんと減った。最終的には視聴時に座るソファの脚の下にもブチルゴムを挟んで制振し、床は振動するがそれが座っている自分にまでは伝わらないようにした。最終的には何らかの方法で床自体の強化も検討する必要がありそうだ。
低音の再現が大きく変わると、映画がますます面白くなる。購入当初は鳴らし込みと称して手持ちのBDソフトをほとんど聴き直すくらいの勢いで毎日上映会が繰り広げられた。ハリウッドのアクション映画はますます強烈な音となって、臨場感が倍増するし、音楽作品を見れば低音だけでなく、中高音やボーカルまでも瑞々しい音で再現される。
ここでふと気がついた。ステレオ再生でもTD725SWMK2を使えないだろうか? いわゆる2.2ch再生だ。メインのスピーカーであるB&W マトリックス801 S3は、30cmウーファを備えるので、僕自身もそこにサブウーファを追加する必要はないはずだと考えていた。TD725SWMK2自体は、こうしたホームシアターでのサラウンドシステムと、ステレオシステムとの共用もきちんと考えられており、2系統の入力端子を備えている。音量やクロスオーバーも独立して調整でき、入力切り替えだけえ使い分けが可能。しかも入力2はバランス入力にも対応する。
そこで、入力1にはAVアンプからのサブウーファ出力を接続。入力2にはプリアンプとして使用しているUSB DACのOPPO Digital「HA-1」の余っていたバランス出力をサブウーファに接続した。ものは試しとやってみると、ステレオ再生でも大幅な音質の向上が実感できた。ステージがより雄大になったことに加えて、情報量の多いハイレゾ音源主体となっていることもあり、中高域の情報量までさらに増えたような感触がある。
実は、AVアンプの設定でステレオ再生時でもサブウーファにステレオ音声を出力する設定があり、これを使えばケーブル配線を増やす必要はない。最初はこれを試したのだが、AVアンプ内でサブウーファへ出力されるステレオ音声は一度左右が混ざったモノラル信号となり、左右のサブウーファへまったく同じ信号が送られる。これは、サブウーファの2台使いをするユーザーが必ずしもステレオスピーカーのように左右対称の配置で置いているとは限らないことに対処するためだ。
だから、このAVアンプからの出力と、プリアンプからダイレクトに左右の信号をセパレート出力するのとでは、ステレオセパレーションが大きく違った。ちなみに、スピーカー自体が大型であることもあり、スピーカーの音色に与える影響は最小限にしたかったので、クロスオーバー周波数は最低の30Hz。つまり、30Hz以下の低音しかサブウーファからは出ていないという理屈だ。30Hz以下の低音そのものに指向性はほとんどなく、ステレオの定位やセパレーションにはまったく影響はないはずだが、ステレオ再生の装置として再生してみると、ステレオ感には大きな違いがある。特に低音の左右への広がりが増したのは見事なものだ。
そもそもサブウーファを2台としたのは、低音の量感と伸びを両立するためだが、15畳強の我が家のシアタールームではTD725SWMK2が1台でも十分に量感と伸びを確保でき、2台使いはオーバースペックだった。それでも2台としたのは低音まできちんと左右で分けるため。コスト負担が大きくなるので誰にでもおすすめできるわけではないが、特にステレオ再生の低音増強としてサブウーファを使う場合は、2台使いのメリットは大きい。
「シン・ゴジラ」のためにステレオ再生系の強化を決断
秋が近くなり、サブウーファのレベル調整の設定もサラウンド、ステレオともに落ち着く頃には、わずか半年前とは見違えるほどに我が家の音は向上した。しかし、人間の欲というものは本当に際限がなく、もっともっと良い音を追求したくなる。そのためのプランはサブウーファ導入前から頭にあったのだが、予算的な理由で先延ばしにていたのだった。
きっかけとなったのは、「シン・ゴジラ」だ。映画も素晴らしかったし、サウンドトラックの「シン・ゴジラ音楽集」にも感激した。1日も早く「シン・ゴジラ」を我が家で上映する日が待ち遠しかった。
前方主体の3.1ch音声であり、センターレス構成の我が家では2.1chへダウンミックスしての再生となるわけだが(先日ようやくリリースが決まった「シン・ゴジラ」のBD/UHD BDは3.1chおよび2ch音声を収録)、こうしたステレオ音声に近い音ならば、潔くAVアンプを使わずにステレオ再生のためのシステムで聴く方が音質的には有利なのではないか。
そう考えたとき、すぐにパワーアンプの追加を考えていた。晩秋だったその当時、BDの発売は年末と予想していたので、中古オーディオ店の在庫をチェックして即決に近いような感じでアキュフェーズのA-46を手に入れた。我ながらこういうときのフットワークの軽さには呆れる。
A-46は、フロントスピーカーにバイワイヤー接続。A-46はアンバランス入力とバランス入力があるので、アンバランス入力はAVアンプのプリアウト出力を接続。バランス入力にHA-1のバランス出力を接続した。これで、PCでのハイレゾ再生時などはHA-1→A-46→マトリックス801 S3と、AVアンプを使わない再生系が確立できた。もちろん、サラウンド再生でもフロントチャンネルはA-46による駆動だ。
使い始めてすぐは、パワーアンプの電源の入れ忘れや入力切り替えの間違いでフロントチャンネルの音が出ないなどの小さなトラブルもあったが、その音は見事なもので、ステレオ再生では音の純度が一層高まり、上質にして力感も兼ね備えた音に仕上がった。
もちろんサラウンド再生でも、フロント音場の音の純度の向上はさらに豊かな臨場感の実現につながった。不思議なことに、フロント音場だけでなく、リアのマトリックス801 S3の音まで音の粒立ちが良くなった気さえする。これは、フルボリュームに近い再生音量のため、AVアンプのスピーカー出力が限界付近に達していたためだろう。フロントchの負担が減ったことで、それ以外のスピーカーへの出力に余裕ができ、結果として音質的な向上に近いものを感じたと思う。フロントchのパワーアンプ追加は意外にそのメリットが大きいこともよくわかった。現行のAVアンプをフルボリューム付近で使う人は決して多くないかもしれないが、そんな人にはおすすめだ。
ともあれ、こうして1年を振り返ってみると、UHD BDの登場した年にも関わらず、オーディオ方面に多くのコストと時間を費やしていた(UHD BD方面については来年の課題となりそう)。いずれにしても、自分にとっての良い作品との出会いがあると、オーディオやビジュアルへの熱もどんどん上がっていくことがよく実感できた。自分の本業はハード側の優れた製品を紹介することだが、そうした製品を購入したいという動機になる良いソフトも積極的に紹介していきたいと思う。
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