デジタルシネマ・研究コンソーシアム、IPv6でのHD配信など研究成果を報告


参考展示された松下電器製のIPv6対応ホームゲートウェイ
4月2日発表



 デジタルシネマ・研究コンソーシアムは2日、ネットワークを使ったデジタルシネマの製作や、IPv6を利用するHD映像の配信実験などの研究成果報告を都内で行なった。

 同コンソーシアムは、デジタルによる映像制作と配給、上映システムなどのグローバルスタンダードの確立を目指し、2000年に慶応義塾大学SFC研究所で設立。2001年度の幹事会員企業は、松竹株式会社住友商事株式会社株式会社博報堂、プログレッシブ・ピクチャーズ株式会社、松下電器産業株式会社の5社となっている。

稲蔭正彦代表
 同コンソーシアムがこれまで行なった実証実験は、「遠隔操作によるデジタルシネマ撮影」、「デジタルシネマの家庭への配信」、「デジタルシネマを使った双方向映像イベント」など。報告は代表の稲蔭正彦代表が行なった。

 「遠隔操作によるデジタルシネマ撮影」では、IPv6ネットワーク網を利用したシステム「RSS(Remote Shooting System)」を開発した。これは、デジタルシネマHDカメラの映像をDVデータに変換し、DV/SD形式で映像および音声をストリーミング配信するシステム。データの遅延を考慮した設計を行なったという。

 実証実験では、香港と東京それぞれで撮影した映像をリアルタイムでSFCで合成し、その合成映像をリアルタイムにロサンゼルスに送信した。ハリウッドのマーク・ディッペ監督もこれに協力し、6月公開予定の作品には、実験で使用した映像が含まれている。

 「デジタルシネマの家庭への配信」は、MPEG-2によるHD映像を各家庭へ配信することを目的にしたもので、100MbpsのIPv6網の利用が前提になっている。実験はIPv6普及・高度化推進協議会の活動の一環として行なわれ、Net.Liferium 2001の会場で実施された。また、Bic P kan有楽町店などに展示されたIPv6のショールーム「GALLERIA v6」でも展示。各会場で「実用化を求む声など、ポジティブな反応が得られた」という。

 なお、このMPEG2-HDを使った研究は、劇場への映画の配信ではなく、各家庭への配信が主目的となる。同コンソーシアムでは、デジタルによる映画の製作および配信が実用化されると、これまで配給が難しかった10分程度のショートムービーが1つのジャンルとして台頭すると予測し、それらを「デジタルショート」と命名。「気軽さとコストを考えると需要がある」と分析している。

 会場では、稲蔭代表プロデュースによる3作品が上映された。実際の配信をシミュレートし、MPEG-2をサーバーからデコーダへ送信、それを業務用DLPプロジェクタで投影。解像感や動きなどは、フィルムとほぼ同じレベルを実現していた。

松下電器の720pバリアブルカメラを使用したという、万田邦敏監督の「THE DAY I WAS BORN」(約10分)。手に触れたものすべてから悲劇的な音が聞こえるようになった男の話 池田爆発郎監督の「Qshami」(約3分)。あがり症のピーターが放った1発のくしゃみは、彼にひとつのアイデアを思いつかせた 阿部勉監督の「落雷」(約13分)。雷に打たれ、異次元空間に入り込んだセスナ機。すれ違ったのは第二次世界大戦中に行方不明となったB29だった
(C)デジタルシネマ・研究コンソーシアム

 また、「MIVE(マイヴ)」という映像イベントを3月16日に実施した。これは、上映中の作品に対し、インターネット接続機能付き携帯電話で意見や感想を送信すると、グラフなどが上映と平行して表示されるというもの。「初回の視聴では集中できない」といった意見があった一方、「2、3回目から楽しめるようになった」とのフィードバックも得られたという。「映画館の新しい使用法を提案する意味で、観るだけでない映画の新しい楽しみ方を体験していただけた」としている。

 なお、「劇場へのデジタル配信は視野に入れてないのか」という質問に対して、「劇場作品のデジタル化は我々の範疇ではない。だまっていてもハリウッドが進行してくれるだろう」との回答があった。現在のところ、あくまでもブロードバンドが普及した環境での家庭への配信を考えているという。

□デジタルシネマ・研究コンソーシアムのホームページ
http://dcc.imgl.sfc.keio.ac.jp/
□SFC研究所のホームページ
http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/
□関連記事
【2001年11月5日】松下、デジタルシネマに本格参入、新HDカメラを発表
―ビデオカメラ初の可変フレームレート機構を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011105/pana.htm

(2002年4月2日)

[orimoto@impress.co.jp]

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