同コンソーシアムは、デジタルによる映像制作と配給、上映システムなどのグローバルスタンダードの確立を目指し、2000年に慶応義塾大学SFC研究所で設立。2001年度の幹事会員企業は、松竹株式会社、住友商事株式会社、株式会社博報堂、プログレッシブ・ピクチャーズ株式会社、松下電器産業株式会社の5社となっている。
「遠隔操作によるデジタルシネマ撮影」では、IPv6ネットワーク網を利用したシステム「RSS(Remote Shooting System)」を開発した。これは、デジタルシネマHDカメラの映像をDVデータに変換し、DV/SD形式で映像および音声をストリーミング配信するシステム。データの遅延を考慮した設計を行なったという。 実証実験では、香港と東京それぞれで撮影した映像をリアルタイムでSFCで合成し、その合成映像をリアルタイムにロサンゼルスに送信した。ハリウッドのマーク・ディッペ監督もこれに協力し、6月公開予定の作品には、実験で使用した映像が含まれている。 「デジタルシネマの家庭への配信」は、MPEG-2によるHD映像を各家庭へ配信することを目的にしたもので、100MbpsのIPv6網の利用が前提になっている。実験はIPv6普及・高度化推進協議会の活動の一環として行なわれ、Net.Liferium 2001の会場で実施された。また、Bic P kan有楽町店などに展示されたIPv6のショールーム「GALLERIA v6」でも展示。各会場で「実用化を求む声など、ポジティブな反応が得られた」という。 なお、このMPEG2-HDを使った研究は、劇場への映画の配信ではなく、各家庭への配信が主目的となる。同コンソーシアムでは、デジタルによる映画の製作および配信が実用化されると、これまで配給が難しかった10分程度のショートムービーが1つのジャンルとして台頭すると予測し、それらを「デジタルショート」と命名。「気軽さとコストを考えると需要がある」と分析している。
会場では、稲蔭代表プロデュースによる3作品が上映された。実際の配信をシミュレートし、MPEG-2をサーバーからデコーダへ送信、それを業務用DLPプロジェクタで投影。解像感や動きなどは、フィルムとほぼ同じレベルを実現していた。
また、「MIVE(マイヴ)」という映像イベントを3月16日に実施した。これは、上映中の作品に対し、インターネット接続機能付き携帯電話で意見や感想を送信すると、グラフなどが上映と平行して表示されるというもの。「初回の視聴では集中できない」といった意見があった一方、「2、3回目から楽しめるようになった」とのフィードバックも得られたという。「映画館の新しい使用法を提案する意味で、観るだけでない映画の新しい楽しみ方を体験していただけた」としている。 なお、「劇場へのデジタル配信は視野に入れてないのか」という質問に対して、「劇場作品のデジタル化は我々の範疇ではない。だまっていてもハリウッドが進行してくれるだろう」との回答があった。現在のところ、あくまでもブロードバンドが普及した環境での家庭への配信を考えているという。
□デジタルシネマ・研究コンソーシアムのホームページ (2002年4月2日) [orimoto@impress.co.jp] |
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