ソニーは、新LSI「ベガエンジン」を搭載した、4シリーズ計9機種のWEGA(ベガ)シリーズを発表した。内訳は、プラズマテレビ2機種、液晶テレビ1機種、リアプロジェクションテレビ(グランドベガ)3機種、CRTテレビ3機種。ラインナップと発売日は下表の通り。
今回発表の9機種には、すべて新設計の高画質化LSI「ベガエンジン」を搭載している。また、全モデルとも地上波ダブルチューナに加え、BSデジタル/110度CSデジタルチューナを搭載。480i/480p/720p/1080iの入力に対応する。
音質面でも共通部分が多い。特徴的なのは「センタースピーカー入力端子」の存在で、これは内蔵スピーカー(L/R)をサラウンド環境でのセンタースピーカーとして利用できるというもの。また、内蔵スピーカーだけでBSデジタル放送のMPEG-AAC 5.1chを再現するという「TruSurround DIGITAL 5.1CH」を備える。 任意のチャンネルを初期画面に登録できる「MYプラス機能」や、AVマウス、コントロールS端子といった従来からの装備も継承。メモリースティックスロットも全機種が装備しており、デジタルカメラなどで撮影した静止画をテレビ画面に表示できる。
新搭載のベガエンジンは、これまでシステム内で混在していたAD変換とDA変換を最小限にするため、信号入力の入り口でデジタル化するもの。信号劣化やノイズを低減できるほか、「DRC-MF V1」といった高画質化回路の性能を一層引き出すことができるとし、今回発表された製品のすべてに採用している。 ベガエンジンは、「CCP(コンポジット・コンポーネント・プロセッサー)」、「DRC-MF V1(デジタル・リアリティー・クリエーション・マルチファンクション V1)」、「MID-XU(マルチ・イメージ・ドライバーXU)」の3つのLSIで構成された、統合型の高画質化システム。
具体的には、すべてのソースをCCPで79.99MHzにデジタル変換。これをDRFC-MF V1が4倍密変換する。さらに、フォーマット統合機能を持ったMID-XUが各表示デバイスにあった変換を行なう。これらにより、SN感、f特性、パルス特性などが向上。さらに、エンハンス機能や、動きベクトルを利用するノイズ低減機能も搭載している。 加えて、プラズマテレビや液晶テレビといった固定画素表示モデルには「DCP(デジタル・コンポーネント・プロセッサー)」と、「高画質パネルドライバーLSI」を採用。DCPは、液晶やプラズマディスプレイパネルの特性に応じて、より自然な色再現を行なうという。 また、パネルドライバーにはPDP用とLCD用が用意され、PDP用は低輝度領域の分解能を高め、LCD用は応答速度が遅い中間領域に強制ドライブ変調をかける。これにより、動きのあるシーンで残像感が低下している。 同社ではベガエンジンを様々なモデルに採用する予定で、映像機器の中核デバイスとして位置づけるという。また、海外ではCRTリアプロジェクタへの投入も検討している。
■ プラズマベガ 50V型の「KDE-P50HX1」と、42V型の「KDE-P42HX1」をラインナップ。パネル解像度は、P50HX1が1,365×768ドット、P42HX1が1,024×768ドット。「メディアレシーバー」と呼ぶ、外付けチューナが付属する。ディスプレイ部の消費電力はそれぞれ550W、360W、メディアレシーバーは61W。 パネル部分を透明なアクリルパネルにはめ込んだデザインを採用し、「あたかも画面が宙に浮かんでいるような雰囲気をかもし出す」としている。さらに、インジケータやロゴがアクリルパネル部分で浮かび上がるなど、従来のプラズマテレビにはない意匠が施されている。
スピーカーにはパッシブラジエータを採用し、新設計のウーファを搭載している。また、新開発のツイータとの組み合わせにより、薄型スピーカーとしては「迫力のある低音と伸びのある中高音再生が可能」としている。アンプは15W×2chのデジタルアンプで、BBE回路も搭載している。 メディアレシーバーの前面パネルには、パネル上側をフロスト仕上げ、下側をハーフミラーとし、「隠さずあえて見せるスタイリッシュなデザイン」を採用したという。また、前面パネル中央には、入力信号により浮き上がる青色のLEDを配置する。 なお、チューナ一体型の「KZ-32TS1」と「KZ-42TS1」は引き続き併売される。
■ 液晶ベガ 今回発表されたのは、BSデジタル/110度CSデジタルチューナ内蔵の30V型「KDL-L30HX1」。これで液晶ベガは、現行の15V型、ワイド17V型、ワイド23V型とあわせて、計4機種のラインナップとなった。 同時発表のプラズマベガと同じく、ディスプレイパネルをアクリル板で囲んだ「フローティングデザイン」を採用。パネル解像度は1,280×768ドット。ベガエンジンとともに、新開発の「応答速度改善回路」を搭載し、「残像感を低減し、動きの早い映像も見やすくくっきりと再現できる」としている。
■ グランドベガ 解像度1,366×768ドットの液晶パネルを採用したリアプロジェクションテレビで、2月に発売された「KDF-HD800シリーズ」の後継モデルになる。60V型の「KDF-60HD900」、50V型の「KDF-50HD900」、42V型の「KDF-42HD900」が発売される。 KDF-HD800シリーズとの主な違いは、ベガエンジンの採用と、センターおよびサブウーファ端子の搭載。代わりに、5.1chアナログ出力は省略された。消費電力も4~8W低減している。また42HD900は、前モデルの42HD800にはなかったBSデジタルチューナ/110度CSデジタルチューナを搭載する。
■ ベガ CRTモデルは、ワイド36型の「KD-36HD900」、ワイド32型の「KD-32HD900」、ワイド28型の「KD-28HD900」をラインナップ。前モデル「KD-HD800シリーズ」に引き続き、スーパーファインピッチFDトリニトロン管を搭載。さらに、110度CSデジタルチューナを標準搭載した。なお、D4入力を装備するが、720pは1080iに変換して表示する。 KD-HD800シリーズとの主な違いは、高画質回路「ベガエンジン」を採用したこと。また、アナログ5.1ch出力が省略され、代わりにセンター入力端子を新たに装備した。 内蔵スピーカーも変更され、4×12cmミッドレンジスピーカー2本、5cm丸型ツイーター2本、12cm丸型ウーファ(7.5リットルBOX)の「3D5スピーカー」という構成になった。さらに、リモコンに外部機器(DVD/VTR/HDD)操作用の独立ボタンを追加している。
それによると、民生用トリニトロン管は2002年で累計2,600万本を出荷し、カラーテレビのシェアにおいては、米国で34%、国内で24%というシェアを獲得している(出荷金額、ソニー調べ)。 挨拶に立った安藤国威社長は、'60~'70年代の黎明期にシャドウマスクと争ったトリニトロンブラウン管の成功を挙げ、「ソニーの代表的な商品といえば、個人的にはカラーテレビだと思う」と述べた。 今回の新製品についても「ブロードバンド時代はデジタル家電の復権のときであり、テレビが家庭のエンターテイメントの中心になる」と、ベガをコアビジネスの1つとして位置づけた。ただし、5月の経営説明会で発表された、バイオと連携するベガについては明らかにされなかった。 また、「ここにきて、ブラウン管からフラットパネルへの変革が起きている」ことを示唆し、「(ブラウン管という)1つのデバイスにはこだわらない。PDP、液晶、ブラウン管、グランドベガなど、ソニーとって大事なベガというラインナップが、今回で確固たるものになった。デバイスだけでなく、画質、完成度などで見て欲しい」と自信の程を語った。
なお、「フラットディスプレイでもソニーはシェアを取れるのか」という記者からの質問に対し、ホームネットワークカンパニーの山下勉プレジデントは、「総合的にもジャンル個別にも1位をとりたい」と回答。また、フラットディスプレイの自社開発についても質問が及んだが、PALCの開発断念と、有機ELおよびFEDへのシフトが再確認されたにとどまった。
□ソニーのホームページ (2002年8月21日) [orimoto@impress.co.jp] |
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp